「知力」の一夏君、果てなき宇宙(そら)を目指す   作:高橋ヒナタ

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GX版7巻に突入でございます。

学園祭辺りから本格的に原作をブレイクして
独自のルートへ突入していきます。
まぁ元々原作とは雰囲気が違うとは思いますが…



7巻
第33話


 

 

 

「ねぇ~ウォーターワールドのチケット取れた~?」

 

「取れた取れた!争奪戦を制してやったわ!」

 

「近くで縁日があるらしいわ!行ってみましょ!」

 

「盆踊りもやってるかしら?」

 

 

臨海学校も終わり、学園は本格的に夏休みへと入った。

 

長期休暇を活かして母国へ里帰りしている生徒も多く

夏休みの到来に沸いているとは言っても

学園内は比較的静かなものである。

 

 

 

「…今年の一学期はほんと大忙しでしたね~」

 

「貴重なオフも台無しになりそうだ」

 

そんな学園内を、織斑千冬と山田真耶が

くたびれたような顔で歩いていた。

 

織斑一夏の発見に始まり、類を見ない人数の専用機持ち

VTシステムや銀の福音暴走など謎の事件の数々

そして何より、本人には言っていないものの

自由すぎる大天災篠ノ之束の存在。

学園教師たちは中々に胃の痛む思いをしている。

 

で、千冬と真耶はどこへ向かっているのかというと──

 

 

[学園長室]

 

学園長、轡木十蔵のいる部屋である。

 

 

「学園長、今回は何が………何故お前がいる?」

 

「ごめんなさいね千冬、イーリが…」

「ナタルが日本に行ったって言うからよ」

 

千冬は、学園長室へ入った瞬間酷い頭痛に襲われた。

偽名を使って日本へ来ると言っていた友人(ナターシャ)

もう1人友人を連れてきていたのだ。

 

「お前なぁ…」

 

「ははっ、引き継ぎとかはして来たし構わないさ」

 

ナターシャは束が福音暴走のお仕置として

福音共々接収すると米国政府へ通達しているので

問題は少ないが、イーリこと「イーリス・コーリング」は

一切関係が無いので、米国としては貴重な国家代表の

ISパイロットが突然ふらりと居なくなった形になる。

専用機は向こうに預けてきたとのことだが

あまり良い形の移籍でないのは確かだ。

 

ただ本人はナターシャを置いて1人帰る気は無いらしく

学園長室の来客用レザーソファへどかっと腰を下ろして

足を組み、出されたお茶を堪能しているので

彼女も受け入れるしかないのだろう。

 

千冬は目の前の友人(イーリス)を後で一発ぶん殴る事にした。

 

 

「君達を呼んだのは他でもない、彼女達のことでな」

 

「私が教師として移籍するのは聞いてるわよね?」

 

話を戻すが、学園長が千冬達をここへ呼んだのは

ナターシャが学園教師として就任するに当たって

諸々の説明や案内をしてもらいたいとの事だった。

 

 

「束から聞いている。分かった」

 

「アタシもついて行っていいかい?」

 

「お前は少し黙っていろイーリス」

 

「はいはい、相変わらずだな千冬は」

 

目にも止まらぬ速さで飛んだ千冬の鉄拳制裁は

銃弾が飛んだような爆音を響かせ

イーリスの手の中へ綺麗に収まっていた。

 

 

 

 

 

「──日本に来たらスシを食べたいと思っていてな」

 

「あるぞ、いい店が。今度紹介してやる」

 

渋々ながらイーリスを受け入れる事にした千冬は

世間話を交わしつつ学園内を一通り案内する。

 

千冬、真耶、ナターシャ、イーリスの4人は

代表候補生時代から何だかんだ知り合いであり

久々の再会ともなれば話は弾む訳で。

 

 

「そういえば千冬は『アストレア』を知っているか?」

 

「ん、アストレア…?知らんな」

 

そんな中で出てきたのは、数日前米国に現れたという

謎のIS乗り「アストレア」の話だった。

 

「ISが一機強奪されたらしい。…非公開だったか?」

 

「ちょっとイーリ!」

 

「ほう…アラクネに引き続きまた強奪か」

 

東海岸のとある基地が襲撃に遭い、保管されていたISが

一機奪われたとのこと。しかもイーリスが言うには

基地の隊員らには誰1人として死者は出ておらず

ISのみを徹底的に破壊して去っていったのだという。

 

「最近物騒ですね…ちょっと怖いです」

 

「どんなヤツか少し気になるものだな」

 

その一件以降アストレアは現れていないようで

米軍が総力を挙げて行方を追っているが

現状手掛かりはほとんど無いらしい。

 

「私も基地に寄った時に聞いてみたのだけれど

白い4枚羽の機体だそうよ」

 

「4枚羽?ラファールのカスタム機では無いのか?」

 

「どうも新型機であることは確定らしい」

 

 

千冬達は学園内を巡りながら、アストレアについて

色々と情報交換を行ったのであった。

 

 

 

 

 

「──まぁ、紹介はこんなところだろう」

 

「後は追々ですね」

 

4人は食堂へ立ち寄り、昼食をとる。

 

忙しいとは言うものの学園は今は夏休みなので

普段ほど千冬達も時間に追われている訳では無い。

 

 

『それでは、本日のニュースです──』

 

食堂据え付けのテレビへ目を向けてみれば

ちょうど正午のニュースが。

 

何か少しでも良いニュースが流れていないものか、と

4人はアナウンサーの声に耳を傾ける。

 

 

『…えー、両陣営の衝突は尚も続いているとの事です』

 

 

「全く…気が滅入る」

 

「あそこは19世紀頃からそうだからな」

 

しかし、最近はまた良いニュースは減ったもので。

 

 

 

『──たったいま入ったニュースです!』

 

アナウンサーが少し慌てた様子を見せ

煙が上がる高層ビルの映像を呼び出した。

 

『えー、たった今ニューヨーク市内で

爆発物によるテロが発生した模様です!』

 

何と、ニューヨーク市で爆弾テロが起きたというのだ。

高層ビル街のど真ん中もど真ん中、しかも白昼堂々。

 

「何っ!?」

 

「一体何が…!?」

 

寝耳に水が如く突然飛び込んできた祖国でのテロに

イーリスとナターシャが驚愕の表情を浮かべる。

 

アナウンサー曰く死者は現状出ていないとの事だが

祖国を離れた直後にこんなことが起きては

元米国軍人としては良い気などしない。

 

 

 

『最新情報です。このテロによる死者は1名だそうです。

被害者は女性権利団体米国本部会長──』

 

「…なるほど」

 

証拠は一切無く容疑者に繋がる情報などは無いと

アナウンサーがあれこれ叫びだしたところで

4人はアナウンサーの声から意識を逸らした。

 

ここにいる4人は、特に千冬は正直どうでも良かった。

 

たった1人ピンポイントで殺された人物が

女性権利団体(織斑一夏を狙う奴ら)の本部会長だという時点で

その下手人に何となく想像がついたのだから。

証拠が綺麗さっぱり残っていないという完璧具合も

またその予想を確固たるものとする要素。

 

 

「………こんの馬鹿兎がァ!」

 

「間違いなく彼女の仕業でしょうね」

 

 

千冬の脳内には、死んだ女に冷徹な表情を向けた"兎"が

摩訶不思議な機械でその場を去る光景がハッキリと

浮かんでいたとか。

 

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

 

─生徒会室─

 

 

「……………むぅ~…」

 

手に持った扇子を意味もなくクルクルと回しながら

不機嫌極まれりといった表情で映像を眺める少女が1人。

 

 

「また妹様の事ですか?」

 

「またって何よ!私は妹に悪い虫がつかないようにね!」

 

1つ年上の幼なじみにからかわれてあたふたするのは

学園最強の称号を持つ生徒会長更識楯無である。

 

最近彼女は何故か生徒会の仕事に打ち込み切れず

突然上の空になったり不機嫌になったりと

とにかく不安定だった。そして、大抵そうなった時に

パソコンに食いついて眺めているのは

彼女の妹である簪が、同級生達と──特に織斑一夏と

仲良くしている映像で。

 

 

「そろそろ仲直りされたら如何です?」

 

「出来たらやってるわよっ!」

 

彼女の幼なじみで本音の姉、生徒会会計布仏虚は

楯無が妹との確執を抱えているのは知っているが

いい加減仲良くしてくれないものか、と悩む。

 

普段の楯無は掴みどころの無い性格でもって

人を振り回す事もあるのに、妹に対してはやたら不器用。

解決は期待できそうになかった。

 

 

 

「学園祭の資料貰ってきたよ~」

 

「今年の生徒会の出し物、何にします?」

 

生徒会メンバー達も「またか」といった感じの表情で

苦笑いしながら持ってきた書類を楯無へ手渡す。

 

 

「……それだわっ!!」

 

「うわっ!?」

「急にどうしたのさ会長」

 

突然ガタッと椅子から立ち上がった楯無。

 

彼女は、出し物のいい案が降りてきたわ~!と叫び

バタバタと生徒会室内を駆けずり回り始める。

 

 

「…何をなさる気です?お嬢様」

 

虚の問いかけに、楯無は自信満々な表情を浮かべ──

 

「観客参加型演劇『灰被姫(シンデレラ)』!面白そうでしょ!?」

 

学園中を大波乱に巻き込みそうな演目を

生徒会の出し物として提案したのだった。

 

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

 

で、先程まで楯無が見ていた映像というのは──

 

 

 

「それじゃあ始めるか!頼むぜ簪!」

 

「任せておいて。本音のクセは知ってるから」

 

「ぶぅ~かんちゃんだからって遠慮はしないよー?」

 

「なら僕は一夏と戦う事になるのかぁ…」

 

一夏、シャルロット、簪、本音の4人で行われた

白式第2形態[一角獣の騎士(ユニコーン・ナイト)]の稼働テストだった。

 

福音戦で負った損傷を応急処置したシャルの専用機

[ラファール・リペア]の稼働テストも兼ねた

模擬戦だったのだが、2機のデータ取り兼相方として

簪と本音が参加したことが──もとい、一夏の相方が

簪であったことが楯無にとっては不満だったのだ。

 

 

「どう~?戦えそう?」

 

「僕ならこれくらいは出来るよ」

 

そんな事は露も知らない4人は早速交戦に入る。

 

シャルのラファールは4枚のシールドと一部装甲を

福音に破壊されてしまった為、応急処置が行われたのだが

デュノア社の復権に伴いラファールリヴァイブのパーツが

飛ぶように売れて修理パーツが用意出来ず

同じくフランス産の量産機「コスモス」のパーツで

かなり強引な補修を行っていた。

 

コスモス自体は同世代機の中でも高出力な方で

ラファールとの噛み合いは決して良くは無く

エネルギー効率の悪いクセのある機体になってしまったが

シャルは持ち前の器用さでそれを補い戦う。

 

 

「同時操作は結構難しいな…」

 

「織斑君、滅茶苦茶な事言ってる自覚ある?」

 

一方の一夏はというと、二次移行で突然発現した

BT兵器の機能を持つシールドの扱いに難儀していた。

 

2基とはいえ複数の機能を内蔵したシールドだ。

同時操作でもしようものなら操作難易度が跳ね上がり

他の事が軒並み疎かになってしまう。

故に一夏は普段シールドは接続した状態で運用し

余裕のある時や必要最低限に限って分離運用していた。

それでも素人が見れば十分に扱えているのだが…。

 

 

お互い手の内を知る間柄、4人は適度に会話を交わしつつ

何度か模擬戦を行う。

 

「本音さんっ!」

 

「任せてぇ~っ♪」

 

「織斑君!」

 

「助かるッ!」

 

そうなれば、何度もそれぞれの連携が飛び交う訳で。

 

特に、技術者としても操縦者としても知識の豊富な

一夏と簪のペアは互いの武装構成を正しく理解し

相方の考えを素早く汲み取って、的確な連携を行う。

そこに技術者としての、IS乗りとしての信頼はあれど

恋愛感情といったものはほとんど無い。

何せ一夏と箒は学園生の多くが認める公認カップルであり

簪の方も略奪愛の「り」の字も知らない純粋な子だ。

 

だが、楯無の過保護フィルターを通してしまうと

一夏の事が「妹を篭絡する浮気者」に見える様で。

楯無の心の中でジェラシーの炎が燃え盛っていた理由は

そこにあったのである。

 

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

 

その日の夕方、事件は起こった。

 

 

 

「んじゃあまた明日な!」

 

「あぁ」

 

今日の日課を終えた一夏は箒と共に食堂で夕食を食べ

学生寮へと戻ってきていた。

 

その日は、日中に数回ほど模擬戦を行った分

普段行っている軍隊式擬きのトレーニングを取り止めた為

一夏の体力・集中力は比較的余裕のある状態だった。

ここ数週間の多忙ぶりをどうにか出来ないものか、と

予定の整理をするべく彼はドアノブへ手を掛ける。

 

クタクタになっていれば素直に扉を開けただろうが──

 

 

 

(────)

 

(何だっ?!)

 

その刹那、何やら異質な気を感じ取る。

 

"誰か居る"

 

本来であれば自分しか使わないハズの1025号室に

何故か先客が居るのだ。当然ながらロックは掛けており

学園内の施設だけあってセキュリティも超一流

並の人間が侵入出来る場所ではないのに、だ。

 

 

(……俺が入ってくるのを待ってる…?)

 

続けて感じた"気配"に、一夏は全身に鳥肌が立つような

ゾッとした寒気を覚えた。扉の向こうにいる侵入者は

何らかの形で一夏の事を狙っているらしい。

福音戦で殺意を向けられて以降鋭敏になり続けている

一夏の"カン"は、この侵入者を好きにさせてはいけない

そう全力で警鐘を鳴らしていた。

 

故に。

 

 

「いざとなればこの太刀で切り捨ててくれる…!」

 

「すまねぇ箒。…ほんと、頼もしいな」

 

一夏は応援を呼んだ。あまり呼びすぎると騒がしくなり

寮長サマ()が飛んできて必要以上の大事になってしまうので

とりあえずは先程自室へ入っていった箒を呼び戻した。

彼女の手には愛用の竹刀が握られている。

 

 

「スリーカウントで突入する。いいな?」

 

「あぁ。いつでもいいぞ」

 

そして、非常時用として携帯しているグロック26の

セーフティも外し、改めてドアノブへ手を掛けた。

 

「…3、2、1、GO!!」

 

 

 

 

 

「ご飯にする?お風呂にする?それとも──」

 

「ッ!?」

 

一夏は突入と同時に侵入者を抑え込むつもりだった。

 

タイマンなら軍人とも余裕でタメが張れる一夏だが

そこに居たのが、エプロン"のみ"を身につけた

水色髪の美少女(痴女)だった事でほんの一瞬判断が鈍る。

 

 

「ケダモノさんにはお仕置しちゃうわ──っ?!」

 

「この不埒者ーっ!!」

 

だが、続けて放たれた空をも裂かんばかりの一閃が

少女の着ていたエプロンと、その下に身につけていた

水着のヒモだけを綺麗に切り裂いていった。

 

常人ならばその身諸共切り裂かれていたであろう一撃

これを紙一重で躱してみせた少女を褒めるべきだろうか。

 

しかしそうはならなかった。

 

 

「みっ、見るなぁーっ!」

 

「ぐへぇっ?!」

 

そう、水色髪の少女が身にまとっていたエプロンと水着は

その形を支えていた紐を失い剥がれ落ちてしまう。

どういう事かというと、最後の防壁(ビキニのボトム)のみを残して

彼女の素肌が──綺麗な双丘が丸見えになっていた。

 

そうして素肌を晒してしまった少女の姿にほんの一瞬だけ

顔を赤らめてしまった一夏へ、"篠ノ之箒"による

()制裁が飛んだのである。

 

 

その結果、顔を真っ赤にして狼狽える水色髪の少女と

感情の整理が付かなくなって慌てふためく箒

綺麗すぎる一撃を受け伸びてしまった一夏

そしてそれを玄関口から覗く女子生徒(野次馬)達、という

意味のわからない状況が出来上がっていた。

 

 

 

「全く…何をどうやったらこうなるんだ」

 

「スミマセン…」

 

事態を聞きつけやってきた織斑千冬すらも頭を抱える

生徒会長更識楯無の起こした珍事は公にされる事も無く

幕を閉じたが、生徒たちの間で噂として広まる事となり

彼女のミステリアスな仮面には確かにヒビが入っていた。

 

ただし、何故この様な行動を起こしたのかという問いに

楯無が口を割ることは無かったという…。

 

 

 





ようやく楯無さんを本編入りさせられそうです。
学年が違ううえ彼女の立場もあるので
中々一夏達に絡ませるのは苦労しそうですが
何とか調整して行こうと思っております。

イーリスさんについてはナターシャ以上に
GX版での活躍が無い、というか出てすらいないので
性格や口調は基本的に想像任せです。
他作者様の作品もいくつも読んでいるので
それらの影響は少なからず受けていそうですが…



今年もご愛読ありがとうございます!

評価、感想、たいへん励みになりました。
これからもマイペースにではありますが
投稿を続けていこうと思いますので
「天才少年シンジ君」共々
どうか応援宜しくお願い致します。
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