「知力」の一夏君、果てなき宇宙(そら)を目指す 作:高橋ヒナタ
長らくお待たせして申し訳ありませんでした…
だいぶスランプ気味なので妙な所があるかもですが
それでも宜しければ読んでいってください。
皆でお料理パートその2です。
一夏んちでパーティーする回です。
──夏休み某日。
「兄さんの~実家~♪」
「私たちの~実家~♪」
「2人とも~急がなくても一夏は逃げないよ~?」
期待に満ち溢れた顔をした銀髪の少女と黒髪の少女
その後を追いかける金髪の少女、3人の少女が
学園から少し離れた住宅街を歩いていた。その3人
ラウラとマドカ、シャルロットが目指しているのは
今いる街の一角にあるという織斑一夏の自宅である。
昨日と今日の2日間で彼が自宅へ戻ると聞いたラウラが
自分の家でもある織斑宅をぜひ見に行きたいと言い出し
同調した義妹のマドカと共にシャルロットを連れ出して
ここ織斑宅のある街へすっ飛んできたのだ。
「おっ!あれだな!」
「あれが一夏兄さんの!」
「結構立派な家に住んでるんだね」
程なくしてたどり着いたのは、周りの一軒家よりも大きな
大豪邸とまでは行かずとも中々に立派な邸宅。
表札には「織斑」と刻まれている。
ピンポーン♪
ラウラが「ポチッとな!」とインターホンを鳴らす。
……………
「…あれ?」
が、バタバタと人が動き回っている気配こそしているが
中々住人が出てこない。
「ねぇ、本当に居るの?」
「むむ…千冬姉さんも確か『自宅に帰っている』と…」
マドカ曰く、一夏は間違いなく自宅に居るとの事。
情報のソースが寮長織斑千冬なのなら間違いは無いが…。
数分ほどしてインターホンから一夏の声が聞こえてきた。
『──あれ?!もう来たのか!ちょっと早くねぇか?』
「そうなの?」
『…1時間は早いぞ』
続けて一夏の口から出てきたのは、衝撃の事実。
シャルロットは視線をスッと2人の方へ向ける。
「ラウラー?マドカー?」
「…私はだな!少し早くやってきて驚かせてやろうと!」
「べ、べつに一夏兄さんに会いたくて急いだ訳では!」
如何にも「心当たりアリ」といった風にわたわたと
否定の言葉を並べ立てる2人。どこからどう見ても
兄の実家に行きたくて待ちきれなかったのが丸分かりだ。
割と朝早くに叩き起こされたシャルロットとしては
一言文句を言いたい所だが、その理由が理由なだけに
あれこれ言う事は憚られたため、せめてもの抗議として
2人へねっとりとしたジト目を向けてやるのだった。
ガチャッ…
また少し家の中がバタついた後、一夏が顔を出す。
「先リビング上がっててくれ!」
「おぉ!ここが兄さんと教官…千冬姉さんの家か!」
「そして私達の家となる場所でもある…っ!」
新たな実家へと案内されたラウラとマドカは
普段の冷静な性格がどこかへ吹っ飛んでいったような
キラキラした表情を浮かべ、早足でリビングへと向かう。
その勢いたるや、元気いっぱいの小学生が如く。
「………あー、うん。上がらせてもらうね」
(朝シャワー…だったのかな)
妹2人が大興奮で自宅へ飛び込んで行ったのに対し
シャルロットはというと。先程顔を出した一夏の姿──
ゆったりしたハーフパンツと首に掛けたタオルのみという
数秒間頭の上で
「ここが一夏の家かぁ…」
この織斑宅は千冬がIS日本代表を務めていた時期に
建てられた家なだけあって、屋根裏部屋込みで3階建て
それでいて敷地面積も2人暮らしとは思えない広さ。
住人2名がそれぞれ忙しい生活を送っているせいで
生活感こそ薄いが、内装もモダンインテリアで統一され
高級感のある落ち着いた雰囲気が漂うとても良い家だ。
「こ、このトロフィーはッ!第2回モンドグロッソの!」
「これがそうなのか?!流石は千冬姉さんだ…!」
ただし、相変わらず騒がしい妹2名が加わった事を筆頭に
まだまだ住人や一堂に会する人数は跳ね上がる予定なため
この織斑宅は某天才ウサギと家主の弟の手によって
家ごとの移転と
既に確定していたりする。
「こんなものしか無いけど、ゆっくりしていってくれ」
着替えを終えて戻ってきた一夏が冷蔵庫から
"5人分"の麦茶を取り出し、いくつかの米菓とセットで
テーブルへと持ってきた。
「…あれ?1個多くない?」
「あぁ、それか。それなら──」
何故か一つ多く用意された麦茶への疑問へ
一夏が回答を口にしようとした時。
ピンポーン♪
「お?」
来客を告げる音色が再び鳴らされた。
『──リップ・トリックのケーキを注文したのですが
私とした事が個数を間違えてしまいまして………。
宜しければご一緒に、とお訪ねした次第ですわ』
やって来たのはセシリア。と…
『もー!帰ってって言ってるでしょバカ兄!』
『俺にだって一夏に会うという目的があってだなぁ!』
『…人の家の前まで来て何やってんのよ』
インターホンの画面内で何やら喧嘩を繰り広げている
一夏の親友五反田弾にその妹蘭、そしてそれを1歩引いて
呆れた顔で眺めている凰鈴音の計4名だ。
「お、おう……………とりあえず上がってけよ」
「凄い量だね…何で10個も?」
リビングへと集まった8人の前に置かれているのは
最寄り駅の地下街にある有名なケーキショップ
国際大会での受賞経験を持つシェフが
「リップ・トリック」の苺ショートケーキ…
が、何故か10個も。
セシリア曰く、自分用で1個だけ予約を入れたつもりが
母国でのパーティーなどで来賓用を買う時のクセのせいか
ケタを一つ間違えて注文してしまったとの事。
「………お!流石、美味いな」
各々ケーキを口にする一夏達。
セシリアが選んだ店だけあって市販品とは思えない
甘美な味わいである。
「あ、そうだ!あのグラスは結局誰のなの?」
「…ひょっとして千冬姉さんか?」
少し落ち着いた辺りで、来客により流されてしまった
相も変わらず1人分多く用意されている謎のグラスの件を
再びシャルロットが問うた。
セシリア達4人が合流して8人になったのだから
追加するならそこは3つでは無いのか、と。
一夏はケーキの残りを少し手早く食べ切り
その答えを口に───
「…ぬぁ~にが『色々大変』だ!いい思いしやがって!
やっぱり俺の言った通りIS学園は女の園じゃないか!
確かに彼女作れとは言ったぞ?!だがなァ!」
「ちょっとバカ兄は黙ってて!…一夏さん!
この人達とどういう関係なのか教えてくださいよ!!
せっかくIS学園へ入学出来ると思ったのに!!」
する前に事情を知らない五反田兄妹が唐突にブチ切れた。
「おい弾、蘭も…少し落ち着けって」
「一夏!お前はやはり俺ら非リア充の敵だ!
しかもこんな巨乳美少女ばっかり引っ掛けて──」
「ちょっと弾!!なんで胸の話になった途端に
あたしの方見るのよ!ぶっ飛ばすわよ?!」
「いや誰も鈴の方なんか見てないだろ?!
ちょ…いてぇっ!ホント馬鹿力は蘭そっくりだな!」
「──ぬぁんですってェ?」
そして弾が鈴へも蘭へも喧嘩を売り、騒ぎ出す3人。
3年前の時点でこういった喧嘩は日常茶飯事であり
大抵は弾が恋愛関連やスタイル関連を意図せず突っつき
キレた蘭や鈴に叩きのめされる形で終わるのだ。
今回もまたテンプレート通りと言うべきか。
「弾くんだっけ?鈴の胸しっっっかり見てたよね」
「…一夏さん…止めなくて宜しいのですか?」
一夏はあまりにも"いつもの光景"と言わんばかりの
表情をしていたが、ボコボコにされる弾を見て
流石にセシリアやシャルロットからツッコミが入った。
「あぁ。好きなだけやらせとけ。…と言いたいが」
一夏曰く、弾はすぐに復活する
いつもなら気が済むまで放っておくとの事だが
今回に関してはそうもいかないらしい。
「何か事情が──」
バァンッ!!!
「…遅かったか」
「少し…静かにしてくれるか………?」
凄まじい轟音が響いてきた方向から現れたのは
そのバスローブ姿に似合わぬ鬼神が如きオーラを放つ
阿修羅すら凌駕する様な殺気全開の篠ノ之箒であった。
眠たげな表情からして見るからに寝不足であり
バスローブのまま寝てしまうほど疲れていたところを
叩き起こされたからか不機嫌極まれりといった様子。
「「「ハイッ!シズカニシマスッ!!」」」
何故か手にしていた木刀を向けられて睨まれては
弾は勿論気の強い鈴や蘭でさえ平謝りするしかない。
「……シャワーを浴びてくる」
部屋が静まり返ったのを確認したのち、そうとだけ告げ
箒は風呂のある方へと歩いていった。
「「「………」」」
明らかに"事後"としか言いようのない姿をしていたが
この日それにツッコミを入れる愚か者は現れなかった。
口にしたが最後一刀のもとに斬って捨てられた事だろう。
箒の恥ずか死は奇しくも自身の手で回避されたのである。
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──その日の夕方。
「…それでしたら、皆さんで夕食を作りませんか?」
IS学園組の間で流行っている
1本見終えた辺りで、夕食をどうするかとなった時
セシリアからそのような提案が成された。
最近やっと料理を1人で作れるようになって来たから
以前のように皆で何か料理を作ってみたい、と。
「おっ、いいなそれ」
「じゃあ何作るか決めましょ!」
この提案に全員が頷き、一夏が台所を漁り始める。
「とは言ったものの何か丁度いいのがあるかどうか…」
織斑宅は最近住人が揃って不在気味になってしまった為
賞味期限の長いもの以外は殆ど処分してしまっていた。
そんな中でメニュー決定のヒントになるような何かが
果たして見つかるのか。
「…!…少し買い出しに行く事になるが、良いか?」
「それは…カレールーか…!」
そんな中で見つけたのは、12皿分のカレールーであった。
肉も野菜も大して置いていないので買い出しが必要だが
先程帰宅した千冬を含めた10人分を用意するには
丁度良いメニューと言えよう。
「私丁度カレーを作ってみたいと思っていましたの!
とても素晴らしいタイミングですわ!」
「なら決まりだな!」
セシリアも二つ返事で快諾し、今日の夕食のメニューは
夏野菜カレーに決まったのであった。
「ドイツ軍仕込みのナイフ術を見せてやろう!」
「肉を切るのは、こうやるんだぁーッ!」
買い出しから帰ってまず始まったのは、材料のカットだ。
鶏もも肉400g、玉ねぎ2つにナスとピーマンが4つずつ
赤パプリカ1つと4分の1カットのカボチャが2つ。
さらにオクラ20本とトマトが2つ。
少し多めに12皿分まとめて作る事になった結果
材料を1口大に切る作業が凄まじい量になったのである。
何だかんだ色の濃いIS学園組──もとい一夏の友人組
ただ野菜と肉を切るだけでもとにかく濃い。
ラウラは何故か包丁ではなくサバイバルナイフを使い
ジャングルでの作戦行動が何たるかを説きながら
バッサバッサと野菜をカットしていき
実家が料理店を営んでいて切り方に自信があるからか
弾がついさっき見た
高らかに叫びながら鶏もも肉を切り刻んでいく。
「おい待てサラダ油はそんなに…っ!」
「適量とは何ですの?!何mlなんですの?!適量とは!!」
続いて厚手の鍋2つにまずは鶏肉を入れて炒めるのだが
サラダ油を入れる際にセシリアが勢い余って
大量の油をぶちまけてしまう事件が発生。
油の方は一夏がキッチンペーパーで拭き取って
リカバリーをしたのだが、ここで料理初心者のセシリア
よくレシピに出てくる「適量」への怒りが爆発する。
一夏や鈴、五反田兄妹にとってはそれで通じても
初心者にとって「適量」とは難しいもので。
「鶏肉に火が通ったら次は野菜だね」
「ナスは別、トマトは後から…と」
セシリアの怒りは置いておいて、肉の次は野菜だ。
レシピ本とにらめっこしながら入れる順番を確かめ
2つの鍋へ均等に野菜を放り込んでいく。
「誰かナスを!ナスを炒めておいてっ!」
「こちらからでは手が届かん!兄さん!」
「ぐおぉっ誰でもいい俺の体を支えててくれっ!」
彩りを良くする為ナスは別で炒める事になったのだが
これに関しては失敗だった。何せ3つあるコンロのうち
2つをカレー鍋が占領しているので、とにかく狭い。
織斑宅のキッチンは広々としたアイランドキッチンで
コンロもIHヒーター式なのだが、カレー鍋の側には
セシリア達が材料投入のために集まっているので
ナスは背の高い一夏がキッチンの反対側から
手を伸ばして炒める事になってしまった。
炒めている肉と野菜にしっかりと油が馴染み
ナスを炒め終わったら少し落ち着きが戻る。
「アク…?アクとは何なのだ?」
「食材に含まれる雑味とかえぐみのことだな。
取らないと料理が不味くなっちまうんだ」
水を入れ終えたらひとまず沸騰を待つ事になるので
鍋の周りがバタつく要因が少なくなるからだ。
「これかっ!こいつがアクだな──あっ?」
「それは泡だよラウラ。きっとこっちが…違うの?」
意外と見分けが付かないアクを掬い取るのに
悪戦苦闘する"普段料理しない勢"。
国籍も生まれも全く異なるとは思えないような
微笑ましい光景に、一夏達"自炊勢"もつい笑顔になる。
カレールーを誰が入れるかでジャンケンが始まったが
後はトマトを追加してとろみがつくまで煮込むだけだ。
「美味しそうに出来ているじゃないか」
完成した夏野菜カレーがテーブルの上に並べられた。
トマトとパプリカの赤にピーマンとオクラの緑、と
彩り豊かに仕上がったカレーは美味しそうに湯気を立て
見る者の食欲をそそる。
「それじゃあ…」
「「「いただきま~す!」」」
全員揃ってカレーを口にし、そして表情が綻ぶ。
最高級の食材を使った三ツ星レストランの料理でさえも
こうして皆で作って皆で食べる料理には勝てないものだ。
多少不格好だろうと、友人との思い出という
唯一無二の調味料が美味しさを引き立てるのだから。
特にセシリアは、神の御業に魅せられたかの様な表情で
「これが『友情』の味…っ」と呟いていたほど。
自分達の手料理が、超一流シェフに作らせたカレーより
はるかに美味しく感じる事に感動を覚えているのだろう。
「よし、明日の仕事なんか知るか!イーリスのヤツに
適当に全部放り投げてやる!今日は宴会だ!飲むぞッ!」
あまりの美味しさに、千冬さえも"素"が出てきてしまう。
カキョッと小気味いい音を立てて開けられたビール缶を
グビっと1本あっという間にカラにすると
とてもいい笑顔で手当り次第ダル絡みし始める。
「こういう姉さんもいいな!ギャップ萌えというヤツか」
「確かに僕らは『織斑先生』しか知らなかったからね…」
ドイツ軍教官織斑千冬や学園教師織斑千冬しか知らない
IS学園組にとっては今の千冬の姿は非常に新鮮だったが
普段見せないその笑顔はとても眩しく見えた。
「いやぁ千冬さんはまだまだこんなもんじゃないぜ?
これは
「ほぉ~う弾、貴様死にたいらしいなァ?
…ついでにそこの某知り合い、貴様も逃がさんぞ」
「ヒエッチフユサン!?ジョーダンデスヨジョーダン!!」
「弾!!てめぇ俺を売ったなっ?!」
アイアンクローで男2名が締められた光景もまあ
心温まる"いつもの光景"と言える…のかもしれない。
その日酩酊状態となった家主が泊まりを提案した事で
翌朝、酷い二日酔いに苦しめられる超有名IS学園教師と
後片付けのせいで超絶寝不足な学園唯一の男子生徒が
女子学園生6人にあれこれ介抱されながら
学園へと戻る事になったのだが、それはまた別のお話。
出来ることならのほほんさんとかんちゃんも
ここに出してあげたかったんですが
あまりにも8人一緒というのは妙な気がしたので
代表候補生やらのお仕事で予定が合わずって事にして
代わりに五反田兄妹を放り込んでみました。
作者はFREEDOM未履修です…
早くGoogleTVに来ないかなぁ…
次回は多分ラウラ&シャルロット回。