「知力」の一夏君、果てなき宇宙(そら)を目指す 作:高橋ヒナタ
かんちゃんvsたてなっちゃん回。
このパートも多分今回と次回での2本立て。
で、今回一応「オリキャラ」がいます。
問題はそのオリキャラなんですけど
だいぶはっちゃけさせてしまったので
合う合わないがある可能性が有ります…。
──学園最強が人知れず敗北を喫したその翌日。
「簪ちゃん…っ」
「……お姉ちゃん…!」
僅かな観客のみが見守るこのアリーナで
更識姉妹2人──簪と楯無が対峙していた。
楯無がどこか気まずさを含んだ顔色をしているのに対し
簪の方は力を示すべき相手へ鋭い視線を向けている。
戦闘への心構えといった点では簪の優勢だろうか。
「………あの時は…その──」
「言い訳は…いらない…!」
しどろもどろになりながらも謝罪の言葉を述べようとした
楯無に対し、姉の知らない所で成長を続けていた簪は
既に覚悟など決まりきっているためか、拡張領域から
夢現を取り出して姉へと切っ先を向ける。
「皆で作り上げたこの機体…それに私のスキル…。
私の全部をお姉ちゃんにぶつけるから…!」
自分達が抱える問題にむしろ言葉など不要だろう
自分がただその隣に並び立てる程強くなったと
守られるだけの存在ではなくなったのだと
戦果を以て証明すればいいだけの事なのだから。
そう考える簪は、ただ静かに得物を構えた。
『両者、準備は宜しいですか?』
管制担当の教師の声がアリーナに響く。
「………そうね」
一度目を閉じ、深呼吸をして。
楯無の右手に光が集まり、蒼流旋が現れる。
『──3、2、1、試合開始っ!』
バシューーーッ!!
ダダダダダダッ!!
左翼の荷電粒子砲が。槍に備え付けられた機関砲が。
それぞれから放たれた砲火が戦いの火蓋を切った。
春雷と蒼流旋内蔵ガトリングによって行われる
牽制射撃の応酬。簪は打鉄弐式の高い機動力で回避し
楯無はラスティー・ネイルの高圧水流での相殺や
アクアナノマシンでの軽減に最低限の回避を合わせて
それぞれ相手の遠距離武装を捌いていく。
「行って!ミサイルッ!」
バシュウッ!!バシュウッ!!
そんな中で先に動いたのは簪だ。
「…もう切ってくるのね…
「逃がさない…っ!」
両翼のミサイルコンテナから1発ずつ発射されたのは
山嵐専用FCSに対応した以外変わった点の無い
シンプルな誘導マイクロミサイル。
だが、その軌道は異様の一言に尽きるものであった。
専用のプログラムによって制御されたそのミサイルは
並の誘導兵器がオモチャに見えるレベル──
重力に引かれて落下する限界ギリギリの軌道すらも取る
凄まじいまでの誘導が掛けられているのだ。
「…くっ!」
流石の楯無もこんなイカれた軌道のミサイルへの対策は
した事など無い訳で。その信管が"近接"であった場合
迂闊に迎撃しようものならミサイルの爆発を
超至近距離で被弾しかねない。故に距離を取り
ガトリングやラスティー・ネイルを使うしかない。
「そこよっ!」
「っええいっ再誘導っ!」
「ま、曲がったっ?!」
しかしこのミサイル、真に曲者なのはここからだ。
ラスティー・ネイルで叩き切ろうとしたミサイルが
剣の射程に入る寸前でなんとあろうことか追尾を諦め
旋回飛行へと移ったのである。
「当てるっ!」
自身の側面へ抜けていった奇天烈なミサイルを
ほんの一瞬だけ顔ごと視線を向けて目で追った楯無。
背後を狙うのではないか、そう思っての行動だった。
ハイパーセンサーはその構造上やろうと思えば
首を回さずとも背後が見れるのだが、ほんの僅かな動揺と
人体の構造上どうしても慣れない動きである点が
彼女の視線をミサイルへ向けさせてしまった。
そこへ放たれるは春雷2門による追撃。
誘導ミサイルは楯無の予想通り背後から襲いかかり
単騎による挟み撃ちが行われたのだ。
「くうっ…やるわね簪ちゃん…ッ!」
楯無は持ち前の戦闘スキルで以て荷電粒子砲を回避
追って来ていたミサイルは回避の勢いのまま
ラスティー・ネイルを振り抜いて粉砕する。
が──
「…まだまだ!」
「あうぅ…っ!!」
なぜわざわざ48発中46発もミサイルを残しているのか。
そう、荷電粒子砲との挟み撃ちから逃れた敵へ
回避狩りという最悪の形で"本命"を叩き込む為である。
先程の回避で春雷の射線を右側へ回避していた楯無は
左翼・左サイドスカートの山嵐ユニットに装填されていた
23発のミサイルを立て続けに直撃してしまった。
「…中々…えっっっげつないモン作るわね~」
これこそ、完成した山嵐の異常性。
ミサイルの推進剤が保つ限り、自由自在に空を舞い
ビットかと見紛う軌道で敵へ襲いかかるのだ。
マイクロミサイル一発に充填される推進剤の量は
それほど大したモノでも無いが、簪の情報処理能力──
その一点に限って言えば一夏にすら勝るとも劣らない
並外れた能力によって制御されることで
ミサイル一発とは思えない様な脅威度へ跳ね上がる。
それが1リロードで48発も飛んでくるのだから
厄介極まりないと言えた。
そして、
「私もちょ〜っとギアを上げないと…ね!」
だがそこはロシア代表にして学園最強たる更識楯無
直撃したとはいえアクアナノマシンによる防御で
ダメージは大きく軽減していた。
ドォンッ!!
キッ、と力強い視線が簪へ向けられたその刹那
強烈な爆発が先程ミサイルを吐き出していなかった
右翼側の山嵐ユニットに痛烈なダメージを与えた。
「うぅ…ッ!『
あの時一夏へ使った一撃必殺のソレ程ではないが
空気が白く霞んだ直後に巻き起こった大爆発はそう
ミステリアス・レイディのメイン火力たる"清き熱情"だ。
清き熱情のダメージにより右翼山嵐ユニットが機能停止
山嵐が48連装から32連装へパワーダウンしてしまう。
推進器系は生きているので右側のカスタムウイングは
完全なデッドウェイトにはならずに済んでいるが…。
ドォンッ!!ドォンッ!!
「私は…負けないッ…負ける訳にいかないッ!!
もう…ただ守られるだけなのは嫌だからッ!!!
だから…だからこうして腕を磨いてきたんだからッ!!!」
ドォンッ!!ドドォンッ!!
蒼流旋を突き出し、ラスティー・ネイルを振り抜き
そうして拡散したアクアナノマシンを使って
花火かのように繰り返し繰り返し炸裂する清き熱情。
先程とは一転、今度は簪が押されていく。
それでも、左翼側ユニットへミサイルを再装填しつつ
春雷もエネルギーが溜まり次第すぐさま次弾を叩き込み
両サイドスカートに残った16発のミサイルも吐き出して
清き熱情の僅かなインターバルを縫いながら反撃する簪。
バシューーーッ!!
「私だってね!そう簡単に認める訳にはいかないのよ!
幾ら強くて可愛い自慢の妹でも"世界の裏側"なんて
穢れた世界には入ってきて欲しく無いのよっ!!」
バシュウッ!!バシュウッ!!
優勢を保っているとはいえ、ミステリアス・レイディの
残りシールドエネルギーもジリジリと削られてきている。
積み上げてきた戦闘スキルか、はたまた自ら造り上げた
打鉄弐式のまだ見ぬ機能か──。何度も仕掛けている
清き熱情も綺麗に決まる事が少なくなってきていた。
相も変わらず奇天烈な軌道を描くミサイルの対処
相手のシールドエネルギーを削るための清き熱情
そして自身の機体を守るための水のベール。
2基の生成機から生み出されるアクアナノマシンは
先程からずっとフル稼働状態だ。
「だから力も知恵も磨いた!織斑君達に頼み込んで
軍隊式の護身術だって教えてもらった!!」
「簪ちゃんは甘いのよ!裏社会っていうのはね!
人の善意なんて欠片もない非情な世界なの!!」
2人は戦いの中でどんどんヒートアップしていき
機体が傷付くことなど厭わず撃ち合い、時に切り結ぶ。
実弾兵器である山嵐と蒼流旋内蔵ガトリング砲は
あっという間に残弾が減っていき、飛び交う攻撃は次第に
ジェネレータなどから供給され続けるエネルギーや
ナノマシンを用いた攻撃へと移り変わっていく。
「それなら!そんな時はお姉ちゃんが守ってよっ!!
私は私の出来ることでお姉ちゃんを守る!支える!
織斑君だって千冬さんと補い支え合える仲でありたいって
そう言ってたッ!!!」
「───ッ!!」
そんな中、楯無がほんの僅かな動揺を晒した。
「たあァァァーーーッ!!!」
その僅かな隙を見逃さなかった簪。
ありったけのミサイルを吐き出し、春雷を乱れ打ち
夢現を手に
もうミステリアス・レイディのシールドエネルギーも
殆ど残されていない。勿論それは打鉄弐式も同じだが
この一撃が届きさえすれば──!
「…立派なったわね、簪ちゃん…!」
キィィィ………ン!!
「!!!」
だが、更識楯無は更に1枚も2枚も
目の前には発動直前の清き熱情。
それもかなりのエネルギーが秘められた。
(こんな…っ!結局私はお姉ちゃんには勝てないの…!?
このままじゃ…またッ!)
間違いない。直撃コースだ。
スラスターの吹き直しで無理に避けようものなら
全身の骨が砕けて死んでしまう。避ける事は不可能。
(打鉄弐式…お願いッ!なんとか耐えてッ!!)
…しかし、簪は諦めきれなかった。
何のためにここまで来たのか。姉に力を認めて貰い
その隣に立って歩む為ではなかったか。
簪は叶わないと知りつつも、一縷の望みに賭けて
打鉄弐式が爆発を耐え抜く事を祈った──
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(……………ここ…は…?)
簪は、見た事も無い場所に立っていた。
ただただ無限のように広がる、鏡のように張った
澄み切った青空。ただそれだけの世界に。
(──ようやく会えたなぁ、ヒーロー!)
(誰っ?!)
そんな世界で、人と出会った。
背後から聞こえてきたどこか勇ましい声に振り返ると
何故かそこにあったビルの瓦礫のてっぺんに
太陽を背にして腕を組む謎の男が居たのだ。
(とうッ!!)
その男は、実に勇ましいポーズで飛び上がると
これまた華麗なポーズを決めて簪の目の前に降り立った。
(…貴方…は?)
(名前、か?そうだなぁ、考えた事も無かったな…。
そうだ!ならばオレの相棒であるキミが──
いや、そうか!なら『バディ』とでも呼んでくれ!)
目元を隠すバイザー付きのヒロイックなヘルメットと
棚びくマントを身につけ、真っ赤な戦闘服を身に纏う
どこかコミカルな彼は1人であれこれ思案したのち
「バディ」と名乗った。
(…相棒、キミはヒーローになりたいんだろう?)
(え?あ…うん…えーっと)
(なぁ~に心配しなくても良い!ここでの会話は
全てキミとオレだけのものだ!あぁ、キミのその勇気…
誇るべきモノとオレは思うが…その謙虚さもまた
キミの良い所!オレはその想いを尊重しようッ!!)
(あの………バディさん?)
突然自分一人で話を進めだしたバディ。
確かに。確かに簪は一切公にはしていないのだが
特に勧善懲悪もののアニメが好きな一面がある。
目の前の彼はそんな自分に強烈な影響を受けた
打鉄弐式のコア人格であることは何となく推察出来たが
どうも釈然としない気分になった簪だった。
(──であるからして!オレは君の想いに応えようと!
…おっと、どこまで話したっけな?)
(……………私は…確かにヒーローに憧れてる)
(おぉそうか!それでこそオレの相棒だぁッ!)
一々テンションが喧しくてペースが乱されそうになるが
ヒーローへの憧れを語った簪に対してバディは
感動の涙を流しながら1本の剣を出現させた。
(…これは?)
地面へと突き刺さったその西洋風の長剣は
どこか見覚えのあるデザインをしていて──
(よォォくぞ聞いてくれたぁッ!この剣は勇者の剣!
その名もジャースティーースッ!!ブレェーーードッ!!!
愛する姉の為、その姉にすら立ち向かう覚悟を決めた
勇気あるキミに相応しい
オレの持てる力全てをつぎ込んで作り上げたのだぁッ!)
愛機と同じ薄水色のグリップに、青白く輝く刀身。
アクセントとして入れられた橙色。
デザインこそ違えど、見間違えようもない。
(これ…夢現?)
(ん?確かそんな名前が付けられていた気もするな…。
まぁそんな事はどうでもいい!さぁ相棒よッ!
この勇者にしか抜けぬ剣を引き抜き──)
(夢現と同じ超振動タイプの近接ブレードだ…
名前を付けるとしたら…何が良いかな…?)
(ってなぁぁぁにを勝手に抜いているぅッ!!相棒よ!
ココはキミが剣を引き抜き!オレが勇者として認める!
そういう流れだったのではないのかぁッ!?)
バディがあれこれうるさいが、とにかく見た目こそ違えど
夢現の改良型である事に間違いは無いようだ。
(…バディ、私は今お姉ちゃんと戦ってるの。
話なら部屋に戻った後で何時間でも付き合ってあげるから
今はちょっと落ち着いてくれる?)
(おぉそれはすまなかった!キミと会えた感動で思わず!
…そうだな、次はコレだぁッ!)
一旦落ち着かせたバディがどこからか取り出したのは
恐らくこちらも西洋剣と思しきグリップ部のみの剣。
バディ曰く「ブレイブ・ソード」と言うらしいが
どうやらこちらはプラズマブレードとなっている様だ。
ジャスティス・ブレードとブレイブ・ソード。
どちらも人に見せるには恥ずかし過ぎる名前なため
簪はバディには黙って超振動ブレードを「
プラズマブレードを「
(勿論、荷電粒子砲もパワーアップしてあるぞッ!
その名もラァブ・パゥワァー・キャノォォォン!!だッ!!)
当然の如くというか、他の武装の改良版にも
バディはいちいち恥ずかしい名前を付けているらしい。
「ラブ・パワー・キャノン」は、バディが言うには
友人や家族を想う愛の気持ちを力に変えて打ち出す
スーパーな武器との事。実際はただの荷電粒子砲で
打ち出すのもただの荷電粒子なのだが…。
(そして見よッ!キミの為に用意した最高の武器をッ!
これこそォォォ──)
(バディと言えどそれは譲れない。それは『山嵐』だから)
(そ、そうか。キミこだわりの名前なのだな…)
最後に紹介された山嵐の改良版についても
バディは何やら自作の名前を用意していたようだが
例え愛機の分身たるバディであっても
自力で組み上げた「山嵐」の名だけは譲らなかった。
バディはちょっと残念そうな顔をした。
(──だいぶ長くなってしまったな…流石にそろそろ
戦いに戻るとしようか)
(………ありがとう、バディ)
バディから手渡された新たな"剣"を手に
簪はこの精神世界から姉との戦いの場へと戻って行く。
たとえ勝利を掴めずとも、必ず姉の隣に立って見せる、と
強い勇気と揺るがぬ覚悟を胸に秘めて。
(ヒーロー…いや、簪!オレと共に戦う時の秘訣は
"決して諦めない事"だっ!!それを忘れるなァッ!!!)
(うん、忘れない…!絶対にっ!)
次回!簪vs楯無、決着!
【打鉄弐式コア人格「バディ」 cv.小西克幸】
イメージ元は某特戦隊の隊長。
打鉄弐式のコア人格は戦隊モノのレッド風
…としようとしてたんですが
あまり幼少期に戦隊モノを好まなかった私の中で
「戦隊」というキーワードで真っ先に出てくるのが
メンバーの全員が乳製品みてぇな名前した
事ある毎に独創的なポーズを取る某特戦隊でして…
見た目としてはグレートサイヤマン1号を
赤系のカラーで染め上げた感じですかね。
【「夢幻」と「現世」について】
夢現を、光学属性武装の「夢」と
物理属性武装の「現」に分けたうえで
「夢幻と現世は表裏の一重を成すもの故に
夢は真を写す鏡よ」という、とあるゲームの
大僧正のセリフから名前を取ってます。