「知力」の一夏君、果てなき宇宙(そら)を目指す   作:高橋ヒナタ

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少し遅れてしまいましたが更識姉妹編
ひとまず完結でございます。

ちょっと短くなってしまったので
とりあえず今回は4000文字ちょいで切り上げ。
次にシャル&ラウラ回あたりを挟み
プール回と夏祭り回を書いたら
いよいよ学園祭編へ向かおうかと。



第40話

 

 

 

ドォォォーーーンッ!!!

 

 

 

『かんちゃぁぁぁんっ!!』

 

 

ミステリアス・レイディの清き熱情が炸裂した。

シールドエネルギーが残りわずかだった打鉄弐式には

到底耐えられないような爆発がアリーナに輝く。

 

親友としてあの機体を共に組み上げた本音が

思わず悲痛な叫びを上げる。

 

 

 

だが、シールドエネルギーエンプティのアナウンスは

一向に流れてこない。

 

 

 

『かんちゃん…?』

 

まさか、と思ったそのまさかだ。

 

 

 

「私はまだ負けないっ!絶対に諦めないっ!!!」

 

 

「か、簪ちゃん…その機体は…っ!」

 

 

 

爆発の煙が晴れたそこに佇んでいたのは

元が打鉄とは思えないほどスマートな装甲を手にし

新たな姿(第二形態)となった打鉄弐式──否、打鉄参式(うちがねさんしき)であった。

 

目元を覆うバイザーの付いたヘッドギアや

全身装甲という程ではないが増設された軽量装甲が

16歳の少女らしからぬヒロイックさを醸し出していた。

両翼部と左右サイドスカートの山嵐ユニットは

一回りほど小型化された上で洗練されたデザインとなり

手には1本の西洋長剣が握られている。

 

 

 

「行くよバディっ!」『あぁッ!!』

 

「はっ、早いっ!?」

 

更に取り出されたプラズマ剣も手に、簪が駆け出した。

 

その速度たるや、流星が如く。

 

 

ガキィンッ!!

 

「くうぅ…ッ!」

 

蒼流旋と現世が激しい火花をあげてぶつかり合う。

 

──と思った直後、簪は蒼流旋を弾くようにして

再び機体に勢いを付けて清き熱情に呑まれるのを防ぐ。

清き熱情は不可視かつほぼ予測不可能とはいえ

高い機動力で動き回る敵機に当てるのは難しいのだ。

 

「行けっ!ミサイルッ!」

 

バシュバシュバシュバシュゥッ!!!

 

脚部スラスターを吹かして切り返した簪は

両翼部山嵐ユニットから発射した4発のミサイルと

同時攻撃を仕掛けにいく。

 

 

「うう~何よその速さっ!」

 

ガトリング砲やラスティー・ネイルで迎撃しようにも

打鉄参式は信じられない程の高機動を発揮し

歴戦の戦士たる楯無でさえ捕捉に苦労させられる。

 

これ程の高スペックを生み出しているのは──

 

 

 

[単一仕様能力:アイアムヒーロー]

 

 

(私は戦う…戦い抜いて見せる!お姉ちゃんの隣に立って

守り支え合うためにも…!)

 

 

立ち塞がる困難に、苦境に。決して負けない、諦めない。

己を駆る者に、ヒーローに相応しい意志があればあるほど

本来の機体性能を超越した圧倒的な力を発揮する。

それこそが、打鉄参式に発現した単一仕様能力

「アイアムヒーロー」の力であった。

 

決して越えられぬ、だが何としてでも超えねばならぬ

高く分厚い壁として長らく自身の中に根付いていた

楯無という"困難"に立ち向かうと決めた簪の強い意志は

打鉄参式に第四世代機にすら匹敵するであろう

圧倒的な力を与えたのである。

 

 

 

「これで決める…っ!」

 

遂に、決着の時が来る。

 

よりえげつない軌道を取るようになったミサイルと

出力が更に高まった荷電粒子砲「熱雷(ねつらい)」の2つが

満身創痍となったミステリアス・レイディに襲いかかる。

 

「…私だってねぇ!学園最強としての意地があるのよ!」

 

もはやまともな被弾は決して許されない楯無。

昨日の件はまだ公表されていないので学園最強の称号に

「元」は付いていないのだが、それでも。

自他ともに認める学園生最強であった彼女もまた

負けられない意地がある。

 

 

 

「さぁ…決着を付けましょ、簪ちゃん」

 

「…受けて立つ…ッ!」

 

 

両者が、己の最高の切り札を構える。

 

楯無はミステリアス・レイディが纏うアクアナノマシンを

防御に用いていたモノも全て含めて槍へ集中させ始め。

 

簪は現世のグリップエンドに夢幻を接続して

切っ先までをプラズマエネルギー刃が覆う

大型プラズマブレードへと変化させ。

 

 

 

そして。2人はそれを構えて飛び出す。

 

 

 

「「ハアァァァーーーッ!!!」」

 

 

 

ズドォォォーーーンッ!!!!!!

 

 

 

直後、剣と槍がぶつかり合い、光が弾けた。

 

 

 

 

 

最後まで立っていたのは──

 

 

 

『更識楯無機、シールドエネルギーエンプティ!!!

勝者、更識簪っ!!!』

 

打鉄参式。更識簪であった。

 

 

 

 

 

「簪ちゃん…!」

 

ダメージレベルCに突入しボロボロになった機体で

妹の元までやってきた楯無。

相も変わらず妹の前ではぎこちなくというか

照れ臭そうにというか、ややキョドる彼女だが

声色にはどこか晴れやかな気分が乗っている。

 

 

「………私が困ったら…助けてくれる…?」

 

「…っ!!うんっ!必ず…必ず助けるよっ!」

 

簪にはただただその一言で十分だった。

 

無事に和解を果たしたその姉妹は、お互いに足りない所を

補い合いながら成長を続けていくことだろう。

どこかポンコツな一面のある姉を、しっかり者の妹が

文句を言いながらもフォローする凸凹シスターズとして。

 

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

 

──試合を終えて少しして。

 

 

「かいちょーさ〜ん!ここのパーツ足りないです〜!」

 

「あれー?!無かったっけ?!」

 

「はいー!予備はそんなに要らないってかいちょーが!」

 

「…あーーーっ!!じゃあまた注文しなきゃじゃない!」

 

「かんちゃ〜ん!ジェネレータ用燃料無い~?!」

 

「え?打鉄弐式…あいや参式は補充したばっかだよ?」

 

「それと関節用の予備パーツと潤滑油をえーっと──」

 

「ちょ…ちょっと待って…!今持ってくから!」

 

 

整備室は、大騒ぎになっていた。

 

それぞれのメンテナンスベッドで整備を受けているのは

先程の試合で激闘を繰り広げていた打鉄参式と

ミステリアス・レイディの2機。

そこまでは普通の試合でも割とよく見る光景。

試合後のメンテナンスは機体を良好な状態に保つ為にも

欠かすことのできない大切な作業だからだ。

 

では何故整備室がこれほどバタついているのかというと

それは両機の損傷率にあった。

 

 

 

「お嬢様…『ミストルティンの槍』を使われたのですか」

 

「…虚ちゃん…!カッコよく決めたかったのよ…だって!

簪ちゃんとの本気の試合よ!?せっかくなんだから

全力を出し切りたいじゃない?」

 

まずミステリアス・レイディの方について。

 

楯無が最後の激突の際に自爆すら覚悟して使ったのは

全てのアクアナノマシンを一点集中で攻性形成し

並の機体ならば一撃でSEエンプティに追い込むほどの

大爆発を引き起こすミステリアス・レイディの大技

「ミストルティンの槍」。

 

それが簪の攻撃と干渉したことで暴発を起こしたため

ミステリアス・レイディは自らの攻撃で盛大に自爆し

全身のパーツがボロボロになっていたのだ。

 

「生徒会のお仕事、その腕で出来るのですか?」

 

「…うぐっ!虚ちゃん…手伝ってくれたりは──」

 

「お嬢様の選択なのですから自己責任ということで」

 

「デスヨネー」

 

楯無自身は、槍を持っていた右腕の骨折と火傷で

2週間ほどの安静が医師()により言い渡されていた。

その程度の怪我で済んだのは幸運と言えるのだが

本人は「また仕事が溜まってしまう」と嘆いている。

 

 

 

続いて、打鉄参式について。

 

「かんちゃんなら分かるよね〜?やりすぎ、って。

パワーサプライヤ、3分の1を取り替えなくちゃなんだよ?

あとはね、関節用アクチュエータとスラスターノズルも

交換ラインを超えちゃってるの」

 

「…ごめん、本音」

 

単一仕様能力が齎す圧倒的なエネルギーをそのままに

出力全開で機体をぶん回した結果、推進器系や駆動系など

機体制御関連を中心にあちこちで損傷が発生し

二次移行したばかりにも関わらず部品交換もいくつか

行わねばならぬ状態に陥っていたのだ。

 

しかも、二次移行直後ということで一部パーツに関しては

専用設計のものを特注するという形となるので

修理に2週間ほど掛かる羽目になってしまっていた。

 

「直るまでは下手に動かしちゃダメだからね〜?

基本はシミュレーターで済ませることー!」

 

「そ、そう…」

 

(せっかく二次移行したのに…まだ動かせないなんて…!)

『あ…相棒との共闘がしばらく出来なくなるとはァ!!!』

 

簪がここまで機体を容赦なくぶん回した理由だが

愛機がパワーアップしたのだから、対峙する相手を

圧倒する様なカッコイイ戦いをしてみたかった

という想いがあったとかなかったとか。

 

 

 

──この姉妹、実は似た者同士なのかもしれない

そう感じた整備部員達なのであった。

 

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

 

 

 

同日夜。白うさぎ宇宙開発本社、社長室にて。

 

 

 

「んー…イギリスから?」

 

「あぁ。年末にセシリアが定期報告で帰国するから

そのついでに親善試合をしないか、だとさ」

 

 

忙しなく動き回るH.A.L.O.達に囲まれながら

天才が2人データ端末を手に雑談していた。

一夏が手にしているのはイギリス政府から送られて来た

白式とティアーズ、ゼフィルスによる親善試合の企画書。

 

 

「…これがその?データはティアーズだけでいいんだ…。

ゼフィルスのデータをくれって言うと思ったのに」

 

「俺達が改修したティアーズだけでお釣りが出たさ。

少し前にも一度帰国してたけど、あっちの技術者達は

大盛り上がりだったらしい」

 

どうやら、二次移行した白式にもBT兵器が発現したと聞き

技術者達がブルーティアーズとの模擬戦を望んでいるので

どうか受けてやってくれないか、との事。

試合場所や日程なども可能な限り要望通り手配し

稼働データ採取もティアーズのみで構わないという

一般的な視点で言えばかなり破格の条件であった。

 

「マドカの戸籍も用意したし連れていくか」

 

「ん、じゃあそこが初お披露目かなぁ」

 

サイレント・ゼフィルスはマドカの専用機として

大規模改修を施したとはいえ元はイギリスの機体なので

データを採りたいと言われても断る気は無かったのだが

特に言及はされなかった。

 

 

 

「──それに、"ここ"と事を構えるのを嫌がる国は

かなり増えてきているみたいだからな」

 

ロイター通信、AP通信、ニューヨーク・タイムズをはじめ

様々な言語のマスメディアからの報道も並べる。

一夏のマルチリンガルぶりにも驚く所だが

注目すべきは各種メディアが報じている内容だ。

 

[エアバス社がEU圏向けの新型戦闘機開発へ着手

共同開発も示唆 タイフーンの後継機となるか]

 

[アレーニア・アエルマッキ社がIS産業から撤退を表明

「航空宇宙産業へ力を入れていきたい」とコメント]

 

[白うさぎ隊とのコラボスポーツウェアの売れ行き好調

アディダス社の株価も上昇傾向へ]

 

世界は少しづつではあるが変化の兆しを見せていた。

その変化に否定的な者が居る事も事実ではあったが

欧州諸国を中心にそれを受け入れる事を良しとする者も

多く居るのもまた事実であった。

 

 

 

「ふぅん…そろそろ動くべきかな?」

 

「…そうだな、内部資金もだいぶ潤沢になってきたし

国際社会への印象操作も概ね成功しつつある。

あとは…デュノアと連携しつつ順次、ってとこだ」

 

「いやぁ〜こういう時いっくんが居てくれて助かるよ!

私じゃ世論とか全然わっかんないもん…!」

 

 

隣のデスクへ並べた無数の書類を一瞥した一夏は

自分達の"計画"を、次の段階へ進めることを決意する。

 

 

 





ダメージレベルってもしかして、Aが最大…?
なんとなくF辺りまでの6段階くらいあって
Aが無傷、Fで修復不可能、と想定してたんですが
改めて原作読み直すと逆な気がしてきた…。

追記:修正情報
各話のダメージレベルに修正を加えました
Fでダメージ無し、Aで全損、という形で
逆にしました。

学園最強、2連敗。
再戦した場合は妹になら結構な確率で勝てます。
一夏君は…勝率は約3~4割くらいになるかな。
ほとんど書き終わってから気付いたけど
パッケージ「麗しきクリースナヤ」装備させて
「沈む床」まで出しても良かったかも…。
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