「知力」の一夏君、果てなき宇宙(そら)を目指す   作:高橋ヒナタ

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大変長らくお待たせいたしました…
シャルロット×ラウラ回です。



8巻
第41話


 

 

 

相も変わらず茹だる様な暑さの続く8月末

あと数日でIS学園の夏休みも終わりを迎える頃合。

 

 

 

「…本当に制服と軍服しか持ってないんだね」

 

「特に必要無かったのでな」

 

カジュアルな装いのシャルロットと制服姿のラウラが

学園最寄りのモノレール駅を訪れていた。

 

2人が目指しているのは、すぐ近くのショッピングモール

レゾナンスだ。学園前駅から1つ隣の駅である

臨海公園駅で降りればすぐ目の前という

学園生にとっては最高の立地にあるので

多少割高な品揃えであっても学園内の購買よりも

こちらを選ぶ生徒は多く、シャルロットもその1人。

 

 

「ラウラは凄く可愛いんだからオシャレしないのは

この上なく勿体無い!僕の勘が絶対可愛くなるって

そう告げてるんだから!」

 

「お…おぉ…そうなのか?」

 

モノレールに乗り込んだ2人の今日の目的は洋服を──

夏休みもじきに終わり秋へ入っていくということで

一足早く秋服を手に入れる事である。

 

少し前に部屋割りの整理が付いたことで

ラウラとシャルロットが同室になった訳だが

そこで判明したのが、ラウラの衣類の少なさだった。

何せ学生服とその予備、黒兎隊専用軍服とその予備

そしていくつかの質素な肌着──と、女の子としては

あまりにも持っている服が少な過ぎる。

今日の買い物はその問題の解決が主な目的だ。

 

 

 

 

 

レゾナンスに着いた2人は、というよりはシャルロットが

ラウラを引っ張っていく形でアパレルショップを巡る。

 

 

「どう?何か良いのある?」

 

「むぅ…まるでわからん…」

 

中性的な貴公子にも見える金髪美少女シャルロットと

銀髪紅目なせいかどこか妖精らしさ漂うラウラが

揃って歩くと、ファンタジーの世界を切り取ってきた様な

幻想的な雰囲気に魅せられるのか、買い物客達の視線が

自然と2人の方へと向いていた。

 

その実態は"彼女(シャルロット)のウインドウショッピングに

長々と付き合わされる彼氏(ラウラ)"とでも言うべきか

ファンタジー感などカケラも無いようなモノなのだが

そこを気にする者は殆どいなかったらしい。

 

 

「──この子に合う服を何着か見繕ってもらえますか?」

 

「お任せ下さい!」

 

義姉(千冬)にでも似たのか私服にあまり頓着しないラウラに

シャルロットは少し手段を変える。

本人が選べないのならプロに選ばせるまで、と

比較的ファンシーなデザインの服を取り扱う店へ行き

見掛けた店員を捕まえて見繕ってもらう事に。

 

 

「こちらなどは如何でしょう?」

 

「う〜む…どうなのだろう」

 

「試着してみますか?」

 

「ほら、試着してみなよっ!」

 

ラウラは相変わらずどこか面倒くさそうな顔だが

シャルロットは店員と結託して彼女を試着室へ放り込む。

何せ彼女は着飾る事に無頓着であるにも関わらず

妖精のような美貌を誇っているのだ。金に糸目をつけずに

全力で着飾れば、街ゆく人々が皆思わず振り返るような

とてつもない美少女へ進化することだろう。

 

「………ど、どうだ?」

 

少しして試着室から顔を出したラウラ。

 

今彼女が着ているのは、髪と眼帯の色に合わせた

黒系の色を基調とするモノトーンカラーのドレス。

それも、袖の無い露出度がかなり高めのもの。

 

それを見たシャルロットは──

 

 

「……………イイ!!最っ高にイイ!!」

 

可愛いものに目がないのか手放しで大絶賛。

 

「あとはい、これ。どうせなら」

 

「靴…か?」

 

そして、ピンと来たのか突然どこかへすっ飛んでいき

服に似合うヒール付の靴を"買って"戻ってきた。

 

「わわっ…歩きにくいな…」

 

普段の彼女ならばまず履かないであろうタイプの靴に

ふらふらと悪戦苦闘する姿もとても可愛い。

軍人としての彼女の裏側に隠れていたラウラの"素"は

外界に殆ど触れてこなかったためにかなり幼いのだ。

その高校生らしからぬ素振りと見た目が融合した結果

凄まじい可愛さがもたらされているのである。

 

 

 

「──まだ買うのか?十分に買ったと思うんだが…」

 

「良いの良いの、僕と同じでラウラも代表候補生なんだし

お金は結構な額貰ってて持て余してるんでしょ?」

 

「まぁ…それはそうだな」

 

その後も2人の買い物は続く。

シャルロットは実家のデュノア社が業績絶好調

ラウラは所属する白うさぎ宇宙開発の羽振りがよく

お金はある程度使わないと余り気味になるのだ。

 

ラウラとしても、過去のしがらみからは解放されたし

出来なかった事を色々やってみたいという思いがあった。

 

「その服は布仏本音に──何っ?私が着るのか!?」

 

「あれ?こっちの白猫の方が良かった?

あ、やっぱり猫じゃなくてうさぎの方が良いかな?」

 

「そうでは無くてだな…!」

 

買い物の途中でラウラが「可愛いものがいい」と口にし

シャルロットの庇護欲が爆発、今流行りのコーデを軸に

アウターからブラ&ショーツに至るまで──

否、ネグリジェやら着ぐるみパジャマやら

ラウラに似合うモノを片っ端から買い漁っていく。

もちろんシャルロットが自分で使うものも買っているが

彼女の財布から出ていく金の行き先の6割強が

ラウラの所持品となるアイテムである。

 

 

 

 

 

「いやぁ〜買った買った」

 

「少し小腹が空いたな」

 

そんなこんなで買い物を続けた2人が次に立ち寄ったのは

レゾナンスのすぐ近くにある少しお高い有名なカフェ

あのセシリアも絶賛する「@cruise(アットクルーズ)」だ。

 

何やら少し前に期間限定の新メニューが出たとのことで

IS学園でも話題になっていた。店のメニューの中で

最も高い2,500円という凄まじいお値段に相応しい

高級フルーツをふんだんに使った超贅沢品なんだとか。

 

 

「美味しそうだな…!これが…その?」

 

「うん。流石は2,500円するだけはあるね」

 

それが今、2人の目の前に。

 

幾層にも重なったクリームやシリアル、フルーツソース

山盛りになったみずみずしいカットフルーツ

煌びやかに飾り付けられたてっぺんのアイスクリーム

どれをとっても食欲をそそられる。

 

「「いただきま~す♪」」

 

ひと口口にすれば──

 

 

「「美味しい〜っ♪」」

 

クリームやソースの甘さとフルーツのみずみずしさが

丁度いい具合にミックスされ、思わず顔がほころぶような

至高の味わいをもたらすのだ。

 

何せ、日々の労働の疲れすら吹き飛ばす大人の贅沢品。

こういった嗜好品とは縁の無かったラウラはもちろん

デュノア社次期CEO最有力候補シャルロットだって

その美味しさには笑みがこぼれた。

 

 

 

2人がパフェを食べ始めて少しした頃。

 

ヴーーーッ…ヴーーーッ…

 

「む?電話か」

 

ラウラのカバンに入っていた電話が鳴った。

マナーモードなので音は出ていないが。

 

[愛しの兄さん]

 

発信者情報には織斑一夏の名が。

 

「兄さんからだ。少し席をはずすぞ」

 

「…そうだね。わかった」

 

ここ数日用事が無ければ白うさぎ宇宙開発本社に

篭もりっきりの一夏がわざわざ連絡を取ったという事は

少なくとも重要な案件なのだろうと察したラウラは

携帯をカバンから取り出し、他の客の邪魔にならないよう

人気の少ないお手洗いの方へと歩いていった。

 

 

 

「──どうだった?」

 

少ししてラウラが通話を終え戻ってくる。

 

「…近くで何やら銀行強盗があったそうだ。

2人なら心配無いとは思うが気をつけろ、との事だ。」

 

距離にしてギリギリ1kmあるかどうか。

そんな程度の距離にある銀行に強盗が押し入り

現金およそ数千万円を盗み逃走したという。

SNSを監視させていたH.A.L.O.が発見したのだとか。

 

強盗犯の逃走手段までは分からなかったが距離は近いし

面倒事に巻き込まれないよう警戒だけしておけ、と

そういう趣旨の連絡だった。

 

「まぁ、ここが巻き込まれる事はあるまい」

 

「今頃は車で市外かな?」

 

とはいえ、何らかの逃走手段で逃げ出したのなら

多額の現金を抱えたまま現場付近をうろついたりせず

郊外の足が付かないアジトなりへ逃げ込むだろう、と

2人は再びパフェへ手をつける。

 

 

 

しかし。

 

「外が騒がしくなってきたね」

 

「………いや、まさかな」

 

専用機持ちというのはトラブルを呼び込む存在らしい。

 

「…チッ…一応セーフティを外せるようにしておけ」

 

「……そうだね」

 

パトカーのサイレンの音が少しづつ近付いてくる。

店の前を走る大通りの方角に沿って、確実に。

それと同時に発砲音と人々の悲鳴もまたこちらへ。

 

警察に追われていた強盗犯たちは逃げ場所として───

 

 

 

バァンッ!!

 

「全員動くんじゃねぇッ!」

 

よりにもよって2人のいる@cruiseを選んだ。

 

 

 

「「「キャーーーッ!」」」

 

ダァンッ!ダァンッ!!

 

「おら騒ぐんじゃねぇ!静かにしやがれッ!」

 

強盗犯は目出し帽を被った男が3人。

アサルトライフル持ちが1人、ハンドガン持ちが2人。

彼らのうち2人は札束を溢れるほど詰め込んだカバンを

残る1人はマガジン等も入っているであろうカバンを

それぞれ抱えている。

 

 

『君たちは既に包囲されている!大人しく──』

 

ダダダダッ!ダダダダッ!

 

「車を用意しろ!人質の解放はそれからだ!」

 

「発信機なんか付けやがったら命は保証しねぇぞ!」

 

男2人が外に待ち構えている警官隊へ銃弾をばら撒き

逃走用の車を要求し始めた。

 

「おら邪魔だ!そっちの隅へ集まれ!

アンタはこっちだ。俺たちに飲み物を用意しろ」

 

そして、残る1人が店内にいた客達に銃を突きつけ

邪魔にならないよう店の隅へと集まらせる。

それと同時に店員を1人捕まえドリンクを提供させる。

 

「早く用意しろって言ってんだよオラッ!」

 

「はっ、はい!少々おまちくださいぃ!」

 

 

 

で、シャルロットとラウラが何をしていたかと言うと…

 

 

「ケッ…渋りやがって──何だ貴sごあッ?!

 

バキィッ!!

 

「スキあり!…だよ」

 

中々条件を呑まない警察に対してイラついた男が

不用心に振り向いた所へ、店の植木鉢の影から飛び出した

シャルロットの回し蹴りがクリーンヒット。

側頭部を蹴り抜かれた男は一撃でダウンさせられる。

 

「おいどうした!…っぐほぁッ?!

 

ドゴォッ!!

 

「ふん…随分と節穴な目だな」

 

聞こえてきた仲間の叫び声に驚いたもう1人の男にも

突如飛び出してきたラウラの膝蹴りがダイレクトヒット。

男は蹴られた腹を押さえたまま動けなくなる。

 

2人は一切武器を使わせずに強盗犯を制圧してみせた。

 

 

「目標1制圧完了」

 

「同じく目標2制圧だ」

 

2人は騒ぎに乗じて気配を消し、男たちを制圧するために

ひっそりと動いていたのだ。

 

 

 

「なっ…!?このガキっ!」

 

ドリンクを用意させた店員を解放したその瞬間に

仲間2人を瞬く間に制圧された強盗犯の残り1人は

当然のように逆上し襲いかかろうとするが──

 

 

「シャルロット…ここは任せろ」

 

ラウラが静かに左目の眼帯を外す。

 

その下に隠されていたのは、黄金色に"輝く"瞳。

 

 

「これをっ!」

 

シャルロットが蹴り飛ばした拳銃が綺麗に手に収まり

ラウラが駆け出した。

 

 

「死ねぇッ!!」

 

ダァンッ!

 

まず弾丸が一発。ラウラは僅かに右へ避ける。

 

ダァンッ!ダァンッ!

 

続いて2発。これを瞬時に軽く伏せて回避。

 

「………この程度か」

 

「コイツっ!?」

 

ダァンッ!

 

伏せた所を狙った一発。その場でバク宙し弾を飛び越え。

 

ダァンッ!ダァンッ!

 

続く2発を走り出しながら左にステップし回避。

 

 

「…ッ!」

 

「来るなァッ!!」

 

ダァンッ!ダァンダァンッ!

 

猛スピードで回り込む小さな黒ウサギに弾は当たらず。

 

 

 

「終わりだな?」

 

「ぐ、てめぇ何者だっ?!」

 

少女らしからぬ万力のような力で手をひねり上げられ

男は銃の照準を定められなくなった。

 

ここまで僅か十数秒。

 

そして、黒ウサギが獰猛な笑みを浮かべ──

 

 

「…そぉらっ!!」

 

ぬおぉ〜っ?!

 

男が宙を舞った。

 

 

 

ビターンッ!と痛そうな音を立てて地面へ叩き付けられ

男は背中への激痛でしばらく起き上がれなくなる。

 

 

「──爆弾まで用意しているとはな…」

 

「それよりも車を先に用意するべきだったね」

 

最後の一人が服の裏に抱えていた爆弾も

ラウラとシャルロットが起爆装置を射抜いて無力化。

強盗犯たちは全員あっさりと鎮圧されたのだった。

 

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

 

 

 

「…これくらい静かな方が良い」

 

「そうだね…今日は騒がしすぎた」

 

これ以上面倒事に巻き込まれるのはごめんだ、と

2人は少し離れた臨海公園へとやってきた。

 

 

「ねぇラウラ、クレープ買っていこうよ」

 

シャルロットが見つけたのは1台のキッチンカー。

 

「確か学園生が噂をしていたな」

 

「ミックスベリーだっけ」

 

好きな人とミックスベリー味を食べると恋が叶う──

そんな噂がまことしやかに囁かれるクレープ屋だ。

けれどミックスベリーはいつも売り切れなのだという。

 

「あれ…そもそも無い…?」

 

「バナナ…いちご…ブルーベリー…そうだな」

 

そんな中で2人が…というより何かを思いついたラウラが

頼んだのはイチゴ味とブルーベリー味。

 

「そっか、ストロ"ベリー"とブルー"ベリー"で──」

 

「ミックスベリーだ」

 

そう、それぞれストロベリーとブルーベリーを買い

食べさせ合いっこすればミックスベリーになる訳だ。

何とも砂糖を吐きそうなほど甘々な噂話である。

 

 

 

「…ここのクレープも美味しいね」

 

「そうだな。流石は日本のスイーツだ」

 

疲れた心にクレープの甘さが染み渡る。

 

 

「そういえば、さ」

 

クレープを3分の1ほど食べ進めた辺りで

シャルロットがラウラへ話を振った。

 

「ミックスベリー、一緒に食べたい人とかいるの?」

 

「これをか…」

 

女の子の大好きな恋バナを。

シャルロットも男装していたとはいえ立派な女の子

そういう話は気になるものなのである。

 

「兄さんだ」

 

「あいやそうじゃなくって」

 

「ん〜…」

 

身内以外でそういう人が居るのかと問われたラウラは──

 

 

 

「………ん。」

 

 

 

すぐ隣にいた人へクレープを差し出した。

少しだけ、逸らした顔を紅くして。

 

 

シャルロットにはその…色々と助けられているからな。

………シャルロット?」

 

「……………ほんっと、可愛いんだから」

 

 

 

 

 





シャル×ラウ。

ラウラさんのバトルシーン、イメージ的には
バイオ5や映画バイオのウェスカーみたいに
スレスレで回避していくような感じです。
スロー映像になってるようなアレ。
流石にあのグラサンほど神速じゃないですが
それくらいスタイリッシュな。

次回以降はプール回、夏祭り回、+‪α
からの学園祭編という形になるかなぁと。
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