「知力」の一夏君、果てなき宇宙(そら)を目指す   作:高橋ヒナタ

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プール回&縁日回です。

以外とあっさり纏まったので1つのパートに。
少し短くなってしまいましたが…。



第42話

 

 

 

『まさにヒーロー!謎の美少女2人が銀行強盗を制圧!』

 

シャルロットとラウラが己の与り知らぬところで

ヒーローにされた事件から一夜明けた翌日。

 

 

 

「──よし、皆集まったみたいだな」

 

一夏達は今年開業したばかりのウォーターワールドへ

セシリアから貰ったチケットを使って訪れていた。

なんでも、十二分な集客が見込めそうという理由で

このウォーターワールドを丸ごと買い取ったのだとか。

 

 

「こうして織斑君と遊びに行くのは初めてかな?」

 

「誘ってくれてありがとうね〜おりむー♪」

 

今日こうして集まったメンバーは一夏、箒、セシリア

鈴、シャルロット、ラウラ、簪、本音、マドカ

このいつもの専用機持ち9人に加えて本音の知り合いから

相川清香(あいかわきよか)鷹月静寐(たかつきしずね)谷本癒子(たにもとゆこ)、かなりんが参加し

総勢13人となっていた。

 

 

「んじゃ、行こうか。何か飲むか?奢るぞ」

 

「流石織斑君太っ腹~!…どこでそんなお金を?

 

「んー…今んとこ大半は株だな。儲かるぞ?」

 

「わぁーインテリ!ここに若社長がいるよ若社長が!」

 

「アイスクリーム、買われて行きますか?」

 

「ひえぇ50ポンド札(約10,000円)!?…ここは日本だよセシリア」

 

「あらっ!?1万円札はこっちでしたわね」

 

「いやいやいいって、5ポンド(千円札)でいいって」

 

13人はワイワイガヤガヤとまさに高校生といったノリで

会話を交わしながらウォーターワールドへと入場する。

ただ、話している内容がセレブセレブしているうえに

1人のイケメンが12人の美少女を引き連れているので

周囲からの視線──特に男達から向けられる視線には

それはもう様々な感情が入り交じっていたが。

 

 

「──流石に早いな一夏は」

 

「その水着も似合ってるぞ」

 

程なくして全員が着替えを終えて合流した。

 

一夏の目の前に並ぶのは、日々の鍛錬で整えられた肉体を

各々に合った水着で着飾った美少女たち。

たとえ専用機を持っていなくともそれは例外ではなく

例えばここに五反田弾を放り込んだりでもしたら

この光景を直視出来ずによそ見してプールに落ちまくり

そのうち鼻血を吹いて卒倒してしまうだろう。

 

ただし、彼でも平気そうな少女がひとり──

 

「のほほんさん、その"着ぐるみ"も水着なのか?」

 

「そうだよぉ?」

 

のほほんさんはいつでものほほんさんである。

 

 

 

「──では、男の子は女の子を後ろからギュ〜って

しててあげてくださいね〜」

 

まず目をつけたのは、こういうレジャー施設ではお馴染み

ウォータースライダー。ただし普通のスライダーではなく

「カップルや友人同士でぜひ!」と紹介されていた通り

ペアで滑れるスライダーだ。

 

「ほら織斑君!篠ノ之さんと滑ってきなよっ!」

 

「いっちばん似合うんだからほら!」

 

で、当然カップルにオススメと紹介されていれば

この2人へ一緒に滑るよう指名が入るわけで。

 

 

「準備はいいか?」

 

「あ…あぁ」

 

一夏と箒がスライダー入口に腰を下ろす。

 

そして──

 

「はい、行ってらっしゃ〜い♪」

 

「おおぉーーっ!」

「ひゃぁあぁ〜〜っ?!」

 

2人はスライダーのトンネルへと吸い込まれていった。

 

 

 

トンネル有り、急コーナー有りの高速スライダー。

吊り橋効果でも期待しているのだろうか、スリルは満点。

 

「おぉっ!うおぉっ?!いい、スライダーだなっ!」

 

一夏はジェットコースターやフリーフォールなどの

スリル強めのアトラクションに耐性がある方だったが

彼氏のハグで動揺した箒にソレは良く効いた。

 

「いいい一夏っ!離すなよっ!?」

 

「おわっ?!箒っ…ちょっ!」

 

その結果か、2人は滑っている途中でバランスを崩す。

しっかりと彼女を抱きしめ直そうとした一夏だったが

その腕は吸い込まれるかのようにして…箒の豊かな胸へ。

 

「あっ…!?ど、どこを触っているっ!」

 

「待て箒っ!不可抗力だぁっ!」

 

 

ザバーーーッ!!!

 

「………この変態め〜っ///」

 

「いや違うって!不可抗力だって!」

 

しばらく箒のご機嫌は直らなかった。

 

 

 

 

 

その後もいくつかのプールやスライダーを巡り

暫しの休憩時間に。

 

「………一夏と箒の事見てると砂糖吐きそうだよ僕」

 

「…そうですわね。無糖ストレートで大正解でしたわ」

 

屋台で買ったジャンクフードやアイスクリーム

ソフトドリンクを堪能する少女たち。

で、その噂のおアツいセレブボーイはというと

自販機でドリンクを購入していた。

 

 

「なんか…急に安っぽくなったね」

 

買ってきたのは特別ラベルのスポーツドリンク。

お値段少々高めとはいえ250円。

 

「いや、これは俺が飲むやつじゃない」

 

一夏はそのボトルを軽く持ち直すと──

 

 

「…俺からの奢りだ!」

 

近くの屋台の影からこちらを覗いていた少女へ

スポーツドリンクをポイッと放り投げた。

彼女ならば左手のみでもキャッチ出来るだろう、と。

 

 

 

「ひょえっ?!わ、わ、わっ!」

 

だがその少女は、一夏の予想とは裏腹にひどく驚く。

そしてペットボトルを受け止めようと一歩前へ出て。

 

ごちんっ!

 

「い゙っ…たぁ〜!」

 

ボトルが額に直撃した。

 

 

 

「…なぁ簪。そいつ本当にお前の姉か?」

 

「間違いない。…間違いないんだけど…複雑な気分」

 

不貞腐れたまま額を痛そうに抑える水色髪の少女

もとい生徒会長更識楯無。

曰く、上手いこと今日の分のチケットが取れたから

妹に会いに行こうとしたのだけれどいざ会おうとすると

緊張してしまって、とのこと。

 

 

「……の割には随分際どいの着てんだな」

 

「!!!」

 

楯無の肩がビクリと跳ねた。

 

「いやぁー…ネットでお買い物してたらね、見つけたの。

…で、簪ちゃんの評価も…聞いておこうかな、って…ね」

 

彼女が着ている水着は前の水着エプロンの時と比べても

かなり際どい。一歩前へ踏み出せば「過激」の域へ

足を踏み入れかねないようなオトナな水着。

とはいえ楯無は大人にも負けない抜群のスタイルを持ち

グラビア雑誌の表紙を飾っても不思議では無い。

が、顔を真っ赤にしてしどろもどろになる今の彼女では

無理に背伸びして自爆した感じが拭えていない。

 

 

(………俺に見せたかった、ってとこか)

 

時折チラリとこちらを見てくる楯無の姿に

一夏は少し"イタズラ"をしたくなってきた。

 

なぁ箒…少し揶揄ってきてもいいか?

 

「……ん?…程々にしとけよ」

 

箒に許可を貰い、楯無へ近寄る。

 

 

「──俺は素敵だと思うぜ。彼女持ちじゃ無けりゃあ…」

 

「…な、なけりゃあ?」

 

そして、彼女の耳元で囁いた。

 

「今すぐ持ち帰って抱いてやりたいくらいだ」

 

 

 

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

 

尊みで頭がショートし故障してしまった楯無を

彼女を探しに来ていた布仏虚へ預けた一夏たちは

プールや遊園地に併設されていた縁日エリアへ。

のほほんさん達に捕まってイジられていた山田先生や

山田先生と2人で休暇を満喫していた千冬も連れて。

 

「ほうほう…確かに布仏の言った通り良い揉み心地だ」

 

「でしょぉ〜!まーやんの胸は癒しなんだよぉ」

 

「ひゃっ!?や、やめてくださいよぉ織斑先生〜っ!

布仏さんも…煽っちゃ…っ!」

 

もう日もだいぶ傾き、空は橙色に染まってきた頃合

縁日を巡るには丁度いいというもの。

 

 

 

「セシリア。アンタあれ挑戦してみたら?」

 

真っ先に飛び出していった鈴が戻ってきて

セシリアを連れ、ある店目掛けて再び駆け出す。

 

「射的ですか」

 

「そ。得意分野でしょ」

 

それはそう、縁日でお馴染みの店のひとつ、射的。

普通の縁日の射的はヤのつく稼業の人が出している店だと

景品が落ちないよう細工がされている、なんて噂もあるが

ここはオルコットグループ経営の縁日だ。

そういった店は無い。

 

「よォ嬢ちゃん達。やっていくかい?」

 

が、厳つい顔のおっちゃん店主はいる。

 

「まずはアタシがやるわ!」

 

一回300円、弾丸は全部で5発。

 

バンッ!バンッ!バンッ!

 

鈴がまず狙ったのは小さめのぬいぐるみ。

一発目で棚の端へ大きく転がし、二発目を外すも

ダメ押しの三発目でぬいぐるみをゲットした。

 

「おっ、やるねぇ」

 

「どんなもんよっ!」

 

普通なら何回か挑戦して獲るんだが中々やるな、と

店主のおっちゃんも感心顔である。

 

バンッ!バンッ!

 

「うーっ…だめかぁー!」

 

しかし次に狙った少し大きめの可愛いポーチは

残りの弾丸で落とし切ることは出来なかった。

思わず唸り声を上げる鈴。

 

 

「そっちのお嬢様はやるのかい?」

 

隣で鈴のプレーを見ていたセシリアへも

おっちゃんが声を掛ける。遊んでいかないか?と。

 

それに対しセシリアは───

 

「5発で5個。落として見せますわ」

 

挑戦状を叩きつけた。

 

「ハハハッ!面白いことを言うお嬢様だな!いいだろう。

もし達成出来たら…そうだな、挑戦料タダだ!」

 

店主のおっちゃんも受けて立つといわんばかりに

豪快な笑いを見せる。まぁ店主のおっちゃんがやる事は

セシリアの挑戦を見守る事ぐらいなのだが。

 

 

 

「………行きます」

 

スッ…と。流れるような自然な動作で銃を構える。

 

そして一発目。

 

バンッ!

 

 

ぽすっ

 

「ほぉ!」

 

まず1つ。先程鈴が落とし損ねたポーチ。

勿論景品の位置は元に戻して貰ったうえで、だ。

 

 

続いて二発目。

 

バンッ!

 

 

ぼとっ

 

「やるねぇ…!」

 

2つ目は鈴が獲ったぬいぐるみの仲間のペンギン。

 

 

バンッ!

 

ゴトンッ

 

「…おい、嬢ちゃん…まさか」

 

3つ目、プラスチック製の可愛らしいタンブラー。

 

 

バンッ!

 

カコーンッ

 

「…こ、これは…!」

 

4つ目、ルービックキューブ。

 

 

「…これで最後ですわね」

 

最後にセシリアが狙ったのは、招き猫の人形。

特に大きな景品だからと例外的に落とすのではなく

倒した時点で獲得扱いになる強敵だ。

 

「セシリア、あのネコちゃんを頼むぞっ!」

 

いつの間にか傍にいたラウラからの依頼であった。

 

 

「任せなさい」

 

バンッ!

 

最後の一発が放たれる。

 

その弾丸は緻密に計算された軌道を寸分の狂いも無く飛び

力が最も適切に伝わる位置へと吸い込まれていく。

 

 

パコーンッ!

 

招き猫はぐらりと大きく傾き───

 

ゴロンッ…

 

 

 

「ガハハハッ!参った!おっちゃんの完敗だぁ…っ!

…イイモン見せてもらったぜぇ!」

 

伝説誕生の瞬間を目にした店主のおっちゃんは

晴れやかな気分で笑い、そしてセシリアを称えた。

お嬢ちゃんこそ伝説のスナイパーだ、と。

 

[最高記録 5発中5発命中 景品5個獲得

挑戦者名 セシリア・オルコット]

 

そして、記録を記す看板を追加したのだった。

 

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

 

 

友人たちが縁日を楽しんでいた頃、一夏は。箒は。

 

「………良い…景色だな」

 

「そうだな」

 

パークのはずれにあるベンチで休憩をとっていた。

 

 

「俺は…守れてるかな」

 

「あぁ。こうして…お前や姉さんの傍にいられる」

 

嫌なことや、やらなければいけないこと、

時には外に広がる世界すらも忘れ、非日常を楽しむ。

いつからか一夏はそんな光景が好きになっていた。

 

胸元で鈍く輝く焼け焦げたアヤメの首飾りは

手の届く範囲の小さな平和を守ると誓った証だ。

けれどその信念は一夏にとって呪いでもあった。

強すぎる信念と脳裏に焼き付いた悲劇が己の首をも

絞めつつあったのだ。

 

 

「少し…胸を借りたい」

 

「……………仕方ないやつめ」

 

だからこうして時折彼女に甘え傷を癒している。

柔らかく温かいぬくもりが一夏の心をほぐしていく。

 

「………箒」

 

「んっ…」

 

愛する人と抱きしめ合い、唇を重ねる。

触れ合った手から伝わるぬくもりが

舌を絡ませるたびにほとばしる衝動が

一夏の心に活力を注ぐ。

 

「…今日は…もう少し」

 

「一番は箒しかいないさ。それは変わらない。

これまで…は…ちょっと分からないけど…これからは。」

 

「ふふ…昔は唐変木で朴念仁だったものな」

 

「…俺ってそんなに酷かったか?」

 

「あぁ最低だった。後ろから斬りたいくらいにな」

 

「マジか。…今は?」

 

「………聞く必要なんてないだろう」

 

「そうだな」

 

他愛ない話で笑い合うのも良い心の保養になる。

それが出来るのもまた、平和の証なのだから。

もう一度抱き合い、深く、濃厚なキスを交わす。

静かに、けれどじっくり情熱的に。

 

何やら視線を感じるがこの程度些事にもならない。

何せ2人は、世界に再び革命を起こそうとする男と

そんな男について行くと覚悟を決めた女なのだから。

 

 

 

 

 

「──全く…寮長を兼ねていると複雑な気分になるな。

イチャイチャするのは結構だが羽目を外しすぎるなよ?」

 

「「………す、すみません」」

 

自分たちの姉で担当教諭となると話が別かもしれないが。

 

 

 





最近アイアンマンにハマっているせいか
私の中での一夏くんのcv.がトニーになりつつある…

あ、相川さん達はサンデーGX版だとセリフはあっても
キャラクターの詳細はほとんど描かれていないので
本作でもサブキャラ程度に留まるかと。
ところで、かなりんのフルネーム知ってる方います?

セシリアのお料理回は既に消化したので
次回から学園祭編に入ろうと思います!

…早く大活躍する楯無ちゃんを描きたい…っ!
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