「知力」の一夏君、果てなき宇宙(そら)を目指す 作:高橋ヒナタ
ニコニコに続きここも障害が起きたみたいですね…
まぁウチは原稿とでも言うべき最終調整前のデータが
スマホのメモ帳にほぼ全て残っているので
仮にここが機能停止に陥ってしまったとしても
他のプラットフォームへの再投稿は可能です。
ただし調整し直しなので時間は掛かりますが…。
今回は学園祭準備編…と見せかけて
一夏くんの仕事場を少しばかり紹介します。
…前に入れ忘れたパートでもある。
──学園祭。
それは一年に一度学園全体が熱狂に包まれる
学園生活の中で最も盛り上がるイベントだ。
メイド喫茶やらお化け屋敷やら、色々な催し物を企画し
クラスメイト達、他のクラス、他の学年、地域住民達とも
交流を深め、地域の活性化すらも促す一大イベント。
よほどクラスで浮いていたり人間嫌いでもなければ
このイベントが嫌いだとは言わないだろう。
言っていても、なんだかんだ気分が浮つくものである。
「今年の学園祭は凄いことになりそうだわ」
「なんたってあの1年生だもんね〜」
「どうする?1組は絶対混むわよ?」
「時間を上手いことずらさなきゃだね」
そしてそう、このIS学園にも学園祭があるが
その規模は他の学校とは比べ物にもならない。
何せこの学園に在籍している生徒たちは皆揃って
各国の代表生徒のようなものなのだ。
FIFAワールドカップやWBC出場を目指すような
世界各国の選りすぐりの若手エースたちが
大勢集まって来ているようなものだ。
つまりIS学園で言うところの「地域住民」とは
とんでもないワールドワイド。
ただそのままだと来客で学園が埋まってしまうので
生徒たちに配られる招待状を持つ人に限定されているが
それでも来場者数はハンパでは無い。
夏休みが明け、そんな学園祭が開催されるとなった今
多くの生徒たちは楽しそうに準備に取り掛かっていたが
その裏で地獄を見ている組織があった。
「──こっちが2年、そっちが3年の企画書ですっ!」
「そこの机に纏めておいて!後で目通すから!」
そう、生徒会だ。
「ねぇ…今年料理出すクラス多くなぁい?!」
「今学園は空前の手料理ブームですからね」
「おりむーのお弁当おいしいもんね〜♪」
その形は様々ながらも、何かしらのサービスを提供し
報酬として代金を受け取る──つまりは商売をするので
色々と役所やらに報告しなければならない事がある。
中でも特に食品の提供に関しては食品衛生法やら
報告を欠かすと大変な事になってしまう箇所がある。
だというのに、某カップルから広まったと思しき
手料理ブームのせいでとにかく飲食店が多い。
本場イギリスで仕立てさせたメイド服を仕入れて
本格メイド喫茶をやるなんてクラスもあるほど。
まぁ
「会長、学園祭警備案の提出はまだかーって!」
「分かってるわよ!分かってるってば!」
しかも、学園全体がお祭りムードとなるがために
必然と緩んでしまう警備を引き締め直すのもまた
学園最強が率いる生徒会の役目のひとつでもあった。
「…虚ちゃん、織斑君が今何処にいるか分かる?」
「恐らくは"本社"の方にいると思いますよ。
商談があると言ってらしたので…」
「商談?…まぁともかく、一度向こうへ行ってくるわ」
「分かりました。残りはこちらで処理しておきますので。
───ところでお嬢様…平気なのですか?」
「今の私は仕事モードだから大丈夫よ!…多分」
天災が居座っているこの学園に手を出す馬鹿など
そうそう現れないとは思うが、馬鹿は来るのだ。
楯無は警備案草案を挟んたバインダーを手に
生徒会室を後にした。
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『次は白うさぎ本社前〜、白うさぎ本社前〜。終点です』
延伸された「臨海モノレールIS学園支線」に乗り
白うさぎ宇宙開発の本社ビルへと向かう。
時間帯が時間帯なだけに乗客は殆ど乗っていないが
車窓を流れていく景色はまるで研究機関か軍事基地か──
ポルシェのエクスペリエンスセンターにも似た
スマートで近未来的なデザインのビルが幾つも並ぶ。
「…制服、着替えてくれば良かったかしら」
駅を出て周囲を見渡してみれば、目につく車は
殆どが名の通った数千万前後はする高級車ばかり。
時折聞こえてくる会話は基本的に全て英語で
洋画の世界に飛び込んでしまったのではと思うほど。
スーツとサングラスでビシッと決めて降り立てば
世界有数の実業家にでもなった気分になれそうだ。
[白うさぎ宇宙開発 本社ビル]
駅から歩いて数十秒。そのビルはあった。
「へぇ〜…ここに織斑君が、ね」
星型のマークにウサギの横顔のシルエットを重ね
その周囲をロケットが周回するさまを描いた
白うさぎ宇宙開発のロゴマークがでかでかと飾られている
他のビルよりも2回りほど大きな本社ビルが。
エントランスに足を踏み入れて顔を少し上へ向ければ
煌々と輝く
8つの球の周囲を豆粒のような
太陽系を高い精度で再現した美しい模型が目に入る。
案内板曰く、世界一精密な太陽系の模型とのこと。
楯無は受付の女性に声を掛け──
「更識楯無様ですね?CEOよりお通しするようにと
仰せつかっております。CEOはただいま会談中ですので
一度プレミアム・ラウンジの方へご案内致しますね」
る前に流れるようにビル内へと案内された。
「……その…CEOというのは誰なの?」
「楯無様もご存知でしょう。織斑一夏様ですよ」
「えっ?彼社長やってるの?」
「はい。現在一夏様はIS学園に在籍中ですので
暫定的な役職ですが、いずれ正式に就任なさる予定です」
太平洋を一望出来る綺麗なシースルーエレベーターで
ビルを登っていく。新技術をふんだんに使っているのか
並のエレベーターより素早くそれでいて安定している。
操作パネルには1階から36階まで表示されていて
目的地となるプレミアム・ラウンジは35階にあるようだ。
で、36階に来賓用特別応接室や会談用ホール、社長室だ。
ただし、このエレベーターが直通していないだけで
この本社ビルは全部で40階まであるとのこと。
37階にはラビッツ・ワークショップなる施設があり
38階から40階が新織斑宅(建設中)となっているらしい。
「こちらがプレミアム・ラウンジになります」
「あら素敵♪」
案内されたラウンジはかなり広めで、高級バーのような
クラシカルで大人な雰囲気が漂うものだった。
バーカウンターには専属のバーテンがおり
高級ドリンクやカクテルなどを割安で売っているから
必要に応じて注文してくれて構わないとの事。
「こんな雰囲気だとカクテルが飲みたくなるわね…」
楯無はまだお酒を飲める年齢ではないので
ダージリンティーを一杯だけ注文する。
ちなみに彼女が現在国籍を置いているロシアでも
飲酒可能年齢は21歳からなのでズルは不可能だ。
(………織斑一夏君…私が思っていた以上の大物ね)
ダージリンティーを堪能しつつ、織斑一夏への評価を
更に1段階引き上げる楯無。
入学からまだ半年も経っていないというのに
これほどの規模の研究機関を立ち上げた手腕は
まさに洋画の天才実業家でも見ているかのようだ。
(君は…世界をどう変えるつもりなの…?)
トーマス・エジソン、アルフレッド・ノーベル
ライト兄弟、スティーブ・ジョブズ──
革新的技術を世界へもたらした天才というのは
過去に何人も現れているが、次の世代の天才として
篠ノ之束だけではなく彼も該当するというのだろうか。
該当するというのなら、彼はこの世界をどう変えるのか。
ISという、ある意味で核兵器よりも遥かに危険な代物が
多くの国に広まってしまったこの不安定な世界を
いったいどのような方向へ──?
「…失礼致します、楯無様。一夏様がお呼びです」
そんな考え事をしていると、ラウンジの扉が開き
案内役の女性職員が再び顔を出す。
どうやら一夏の会談が終わったようだ。
[36F]
ポーン♪
エレベーターで階を一つ上がり、会談用ホールへ向かう。
「どうぞお入り下さい」
パシューーッ
何処かの国のお偉いさんらしき人が何人か出てきた
会談用第1ホールと書かれた部屋へと入る。
扉の開き方まで近未来的だったがもう驚きはしない。
「来ると思ってたよ。学園祭の警備についてだろ?」
「…え、えぇ」
そこにいたのは、まるで別人の様に高級スーツを着こなす
白うさぎ宇宙開発現最高経営責任者織斑一夏。
と──
「僕たちも話に参加させてもらうよ」
「きっとお役に立つと思いますわ」
織斑一夏と同じようにそれぞれ自国のスーツに身を包んだ
セシリアとシャルロットの姿があった。
彼女たちの胸元にはそれぞれオルコット・グループ代表と
ラパン・デュノア社IS部門特別アドバイザーである証が。
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[Rabbits Workshop]
一瞬機能停止に陥った楯無を再起動させた一夏は
セシリア、シャルロットと共に、個人用研究室でもある
ラビッツ・ワークショップへと上がってきた。
「──なるほど。原案としては十分良く出来てる。
こっちは俺たちの方で調査してた分の報告書だ」
「ありがと。やっぱり亡国機業に動きがあるのね…。
部屋中央に設けられたラウンドテーブルに腰を下ろし
3Dホログラムプロジェクターに亡国機業の動向や
学園祭の警備案を投影し4人で討論を行う。
ちなみにこのワークショップにある端末は全て
外部ネットワークに接続されていない独立稼働か
非常に強固なファイアウォールを展開しているかなので
この討論内容や警備案が盗まれる心配はまず無い。
加えて37階より上は電気系統を含めた多くのシステムが
36階より下から独立しているので、ここは世界中でも特に
盗聴・盗撮やハッキングの類から遠い場所とも言える。
なお、1位は「束さんのラボ」だ。
「最適なビルは…これですのね。了解ですわ。
私の目の届かない箇所に関しては任せましたわよ?」
「あぁ。観測システムとのリンクコードは教えた通りだ。
そうだ、"アレ"の慣らし運転は終わってるよな?」
「勿論ですわ。私に慢心はありませんわよ」
「篠ノ之さんと紅椿は既に篠ノ之博士に頼んであるから
僕たちは学園生の避難を優先して動くつもりだよ」
「生徒会メンバーにも連携について伝えておくわ。
必要だったら意見交換会の場も用意させるわよ?」
「ありがとうございます」
クラス対抗戦では
学年別トーナメントではVTシステムが。
臨海学校では銀の福音が。
これでもかという程今年の1年生の学校行事が
イレギュラーによって滅茶苦茶にされているのだ。
万全を期しておくことは必須だろう。
「──よし、コレはこんな所で良いだろう」
「そうね。凄く助かったわ!」
そんなこんなで1時間ほどの会議を終え
学園祭警備案はおおよそ完成する。
「じゃH.A.L.O.、そいつを生徒会のデータベースに
送っておいてくれ」
『了解!了解!』
完成した案は唯一外部ネットと接続している端末から
サポートOSであるH.A.L.O.を介して学園へ送ったので
楯無がここへ来た目的は達成された。
で、一つ用事を済ませた楯無は徐に立ち上がり
ワークショップ内に展示された発明品を眺め始める。
「…へぇ〜…色々あるのね」
日用品や家電、新素材で出来た合金インゴットなどなど
技術者の端くれであれば確実に興味をそそられる
実に面白い展示スペースなのだから仕方ない。
自身もIS技術者である楯無にとってこのスペースは
いくら見ていても飽きが来ないのだろう。
なお、帰還が遅れれば遅れるほど
仕事が山積みにされていく事に彼女は気付いていないが。
「ねぇ織斑君、会議中もずっと気になってたんだけど
あの大きな箱は何なの?」
ワークショップを眺めて回っていた楯無が指差したのは
展示スペースの一角に埋め込むように置かれていた
一般的な冷蔵庫より少し大きめな箱のような筐体。
その筐体から青白い光のラインがまるでエネルギーを
部屋全体へ供給するかのように流れている辺りからして
発電機か何かのようにも見えるソレだ。
「あ、僕もそれは気になるかな」
「私達もこの場所には初めて入りましたものね」
3人が示した疑問に一夏は答えを口にする──
「あぁ、核融合発電機さ」
「なるほど〜核融合発電ね!」
「確かに発電機のように見えますわね」
「ワークショップの電源って事かぁ」
「「「…核融合っ?!」」」
あまりにもサラッと語った一夏に、3人は思わず
筐体を二度見しながら驚きの声を上げた。
「……あー…説明が要るか?」
「「「要る(要りますわ)っ!」」」
そして、食い気味に飛んできた解説の要望に
一夏はプロジェクターも交えて解説を始める。
「こいつの仕組みをザッと解説しようか。こいつは──」
通常であれば核融合反応とは、恒星の中などといった
凄まじい超高温の環境下でなければ発生しない。
しかし、重力による加圧で圧力を大幅に高めたうえで
水素ガスと特殊な合金──水素を大量に蓄える性質を持つ
水素吸蔵合金と呼ばれる合金を反応させることで
理論上は1000℃以下でも核融合反応が起こるというのだ。
その反応は「低温核融合反応」と名付けられている。
目の前にあるこの箱は、その低温核融合反応を起こして
発電をしている核融合発電機なのである。
「重力を…発生させる…?」
「なんと言うか…未知の領域ね」
しかしただ核融合を起こしただけでは炉の運転に必要な
莫大な電力を賄う事が難しいため発電には使えない。
そこで用いるのが、核融合の過程で発生するプラズマから
直接エネルギーを取り出して電力へと変換する
特殊なコンバーター。これを挟むことで電力の収支が
大幅なプラスに傾くのだ。
「──で、その出力はいくつなの?」
「平均で50万kWってところだ。理論値は70万だけどな」
「ご、50万…!?」
出力50万kW。これがどれ程大きなものなのかは
数字を見ただけでは分かりにくいだろう。
例を出すならば原子力発電。近年稼働し始めたばかりの
最新式原子力発電所でも大体150万kW前後だ。
つまり、この冷蔵庫ほどの大きさしかない発電機で
下手すれば街一つの電力が賄えてしまう。
「も…勿論篠ノ之博士と一緒に作ったんだよね?」
「いや、一部部品に束さんの技術を使ってはいるけど
基本的に基礎設計から組み立てまで俺と
その分中途半端なスペックになっちまったけどな」
「どこが中途半端なのさっ?!」
一夏曰く平均100万kWが目標だったそうだ。
水素吸蔵合金もパラジウムが理想とのことだが
価格が高騰していたため代用品を使っているらしい。
ただ、これを中途半端かと世界中の科学者に問えば
ほぼ間違いなく全員が「否!」と返すことだろう。
ピリリリッ♪ピリリリッ♪
「あら、私に電話?」
一通り解説を終えた辺りで楯無のスマホが鳴る。
[虚ちゃん]
「…………………」
楯無の顔からサーッと血の気が引いていく。
ワークショップの展示品をのんびり眺めていたせいで
帰りが遅くなってしまっている事に気付いたようだ。
「お、織斑君…っ!」
助けを求めるような視線を一夏へ向ける。
「……………」
一夏は暫し考え込んだが──
「………仕方ないな…同伴くらいはしてやるよ」
「ありがと〜!もう織斑君には足向けて寝れないわ…!」
予定変更の連絡を各所へ入れてから、楯無とセシリア
シャルロットの3人を連れて学園へと戻るのだった。
(俺が絡むと途端にキョドったりポンコツになる辺りが
箒に似てて意外と可愛いんだよなぁ…コイツ)
そして、学園祭が始まる──。
「Human-like Advanced Learning
Operation Support System」
略して「H.A.L.O. Support System」。
訳するならば
「人間的な高度な学習をする演算補助システム」。
J.A.R.V.I.S.に近い立ち位置のシステムです。
ちょっと訂正:このOSを積んだハロは一夏君が持つ
元プロトタイプのやつのみです。
他のハロ達に積まれているOSは
「High-tech-equipment Automate Logistics
Operation System」。略して「H.A.L.O.System」
訳して「ハイテク機器を自動化する物流用のOS」。
紛らわしくてすまない。
着実に一夏くんがトニーになりつつある…
本社ビルのイメージ元はスタークタワーだし
周辺ビルのデザイン参考元はアベンジャーズ基地
核融合発電機のイメージ元はアークリアクター…。
流石にちょっと露骨過ぎた感があるんで
少し控えようかなとは思っとります。
次回こそ学園祭突入です!