「知力」の一夏君、果てなき宇宙(そら)を目指す 作:高橋ヒナタ
いよいよ学園祭編でございます。
今回と次回、そして次々回辺りまでを
学園祭編とするかと。
「こちらへどうぞ。お嬢様」
「おっ、織斑君の執事姿!コレやっばい!」
「ほわぁぁカッコよすぎて浄化されるぅ!」
学園祭当日。案の定というか、1年1組の廊下の前には
これでもかという程の長蛇の列が出来ていた。
「ご注文は何になさいますか?」
「まずはチェキ!!えっとそれとそれとぉ──」
運良く一夏の接客を受けられるとなった少女たちは
揃いも揃って大興奮。一緒に記念撮影出来るチェキは
やってきた子たちほぼ全員が注文する超人気商品と化す。
1年1組メイド喫茶は、専用機持ちがキャストとして入る
午前の部限定で特別チェキがメニューに並ぶのだが
専用機持ちキャストのうち誰がどの時間帯に店にいるかは
完全に非公開になっている。つまり、運が良くないと
一夏とチェキを撮ることは出来ないという訳だ。
尤も、専用機持ちキャストはその分野こそ異なるものの
全員が誇れる何かを持つ有名人ばかりなのだが。
「肩の力抜いて〜、撮りますよー」
「ひゃ、ひゃいっ!」
パシャッ!パシャッ!
仕事モードの生徒会長の精神すら大きく揺るがした
一夏のスーツ姿。少女たちはもう骨抜きである。
「──こ、こういうのを頼むのは少々恥ずかしいが…
折角織斑君がいるのだ、ちぇきとかいうのを頼もうかの」
「承りました、ご主人様」
学園生の親族であろう大人たちもまた、度合いこそ違えど
やや緊張した面持ちでチェキを注文していく。
14歳でプロ入りを果たした藤井聡太棋士のような
若くして世界に名を轟かせた有名人なのだ。一夏は。
そんなレベルの有名人と記念撮影が出来るとあらば
40、50を過ぎた大人でも内心ドキドキするだろう。
「あら、一夏がいるなんてラッキーね」
「!?…ご注文は何になさいますか?」
そんな中、隣のクラスからお客様がやってきた。鈴だ。
2組では彼女を中心に中華喫茶をやっているとの事で
今の彼女の装いは大胆な朱色のチャイナドレス。
背中が大きく開いていて、スリットも深めのもの。
「ん〜…何にしようかしら」
(…この「執事にご褒美セット」って何よ…?)
鈴はグランドメニューを受け取って軽く目を通す。
一瞬「執事にご褒美セット」とかいう意味のわからない
謎メニューに目が留まったが、一夏の事は箒に任せたしと
それをスルーして他のものを探していく。
「じゃあ「織斑一夏厳選スペシャルパフェ」にするわ!
…びっくりするぐらいお値段高いけど」
「承りました、お嬢様」
「………お、お嬢様…ねぇ………ちょっとヤバかったわ」
鈴が頼んだのは、「当店オススメ!」と記されていて
購入すると一夏直筆のサインをその場で書いてもらえる
とても豪華なパフェ。曰く、織斑一夏がプロデュースし
世界各国から選び抜かれた材料を仕入れて作った
名前通り超スペシャルなパフェとのこと。
ただしその分、アットクルーズの
学生が手を出すには少々高すぎるお値段だったが。
「じゃ、サインはここにお願いするわ」
「かしこまりました」
パフェを食べ終わった後は、スーパーカブの鍵を取り出し
お気に入りのキーホルダーにサインを書いてもらう。
一夏と知り合いである以上書いてもらおうと思えば
いくらでもサインを書いてもらえるのだろうが
こういった場で書いてもらったサインと考えれば
特別感があっていいものである。
「えへへ…コレ、大事にするわね!」
「ご利用ありがとうございました」
「──織斑君はそろそろ休憩入ってもらって」
「鷹月さん。了解だ、後を頼むよ」
鈴の接客を終えた所で休憩に入る時間となり
一夏は執事服から制服に着替えて教室を後にした。
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──学園内庭園の一角。
「………社長やるのとはまた違った大変さだった…」
一夏はベンチに腰掛けて休憩を取る。
学園生やその親御さん方を含む来賓の人達は
接客に対して文句を言ったり騒ぎを起こす事は無いので
コンビニや都内スーパー店員のような苦労は無かったが
"慣れない事"ではあるので疲れるのだ。
「でも、いいもんだ」
校庭を会場に出し物をしているクラスを眺めながら
良い笑顔を浮かべる一夏。
「少し、宜しいですか?」
そこへ1人の女性がやって来る。
「貴女は?」
「私こういう者でして──」
レディーススーツを着た茶髪の女性は、IS装備開発企業
「みつるぎ」の渉外担当「
このような場で声を掛けるのは良くないと分かっているが
どうしても聞いてもらいたい話があって、と言いつつ。
「──それは他所には聞かれない方が良い話ですよね?」
「えぇ…そうですね。抜け駆けの様なものですから」
続けて話を切り出そうとした女性をすぐに制して
人気のない場所で話をする事を一夏は提案する。
白うさぎやそのグループ企業と親密になりたい企業は
世界にごまんといる。そんな中他の企業を出し抜いて
ここへ来ているのだから内容を聞かれる訳にはいかない。
ましてや、窓口を介さない直接会談での内容など。
「俺がいい場所知ってます」
一夏はそう言って校舎の裏手へと入っていった。
「なるほど…ここなら聞かれないで済みそうですね」
「でしょう?景色もいい」
やってきたのは、建物の裏でかつ海に面したエリア。
消波ブロックにぶつかる波の音が声を掻き消し
気分もリラックスさせてくれる。
「──貴方には我が社の装備を試して貰いたいのです」
「採用に足るものであればぜひ発注を、と?」
「はい。その様に解釈して貰って結構です」
巻紙はみつるぎ社の製品カタログを一夏へ手渡し
社内で運用する量産ISの武装としてどうか、と
商談を持ち掛けてきた。
「……………」
各種武装を初め推進器系に至るまで、様々なパーツを
様々な規格に合わせて取り揃えたみつるぎのカタログに
一つ一つ目を通していく。
「…量産機に使う装備としては悪くはない」
「でしたら…」
一夏は巻紙にカタログを返却し──
「だが」
チャキッ!
「ッ!!」
「"戦場の匂い"は消してくるべきだったな」
グロック26の照準を彼女へと向けた。
「…何をなさるおつもりです?」
「今更つまらない演技はやめたらどうだ?
ホラ、銃に手が伸びてるぞ」
「チィッ!」
自分の手が無意識のうちに銃を入れたポケットに
伸びてしまっていた事に気付いた巻紙は
忌々し気に舌打ちする。
一夏が握るグロックの照準先は脳天。
狙いはピタリと定まっており外れる気配は無い。
そんな状況に対し巻紙は。
「…しかし良いのか?ご自慢のISを展開しなくても。
ソイツを撃つより早くISを展開出来るってのは
アンタも良く知ってるだろ?」
ISを持っているぞ、と暗に告げた。
ベテランの操縦者であればISを完全展開するまで
1秒すらも掛からない。つまり、引き金が引かれる前に
ISを展開し銃弾を防ぐ事が可能な訳だ。
グロック26程度の威力なら、脳天に直撃したところで
シールドエネルギーの減りも微々たるもの。
ビジネスパーソンらしい丁寧な口調もどこへやら。
自身が侵入者である事を隠す気は無くなったらしい。
「そうだな」
だが一夏は動揺すらしない。ISの展開すらも。
「テメェ…このオータム様を舐めてんのか?あァ?」
馬鹿にされたと感じた巻紙、もといいつぞや会った
オータムと名乗った女は額に青筋を浮かべ
待機形態にしている自身のISへ意識を向けるが──
「アンタは既に詰んでるんだよ」
ザバーッ!!
「…まさかッ?!」
突如後ろから聞こえてきた不自然な水の音と
"嫌な湿気"に、オータムがバッと振り返る。
「ジャジャジャジャーン!初めまして〜侵入者さん♪」
そこには、ミステリアス・レイディを纏った更識楯無が
とても嬉しそうな良い笑顔で立っていた。
アクア・ナノマシンはそう──全てオータムの周囲に。
オータムが妙な動きを見せれば、その瞬間「ドカン」だ。
ナノマシンを全てつぎ込んだ
マトモに喰らえばたとえ競技用リミッターが無くとも
爆発で様々な機能に支障をきたし動けなくなる。
しかも楯無は"
そう、既にオータムは殆ど詰んでいたのだ。
「これ便利ね!なんだっけ、簡易ステルスユニット?」
「上手く動いてくれたみたいだな。助かったよ」
「ホント、修理が間に合って良かったわ」
楯無が捕縛したオータムからISを取り上げる。
アラクネ。アメリカ合衆国から強奪された
第2世代型ISだ。コアナンバーの偽装もされておらず
本物のアラクネである事が確認出来た。
「こいつへの対応は俺の方でやっておくから
避難の準備と、必要ならシャルロット達に連絡して
"後続"への対策に当たってくれ」
「後続?第二波があると?」
「俺ならそうする。多分かなり派手に来るぞ。
騒ぎに乗じれば色々出来るからな」
「分かったわ。それじゃあ、また後でねっ!
…ええ私よ、校内に侵入者を確認したわ。
生徒と来賓の方々をシェルターへ。それから──」
散布したアクア・ナノマシンを回収し終えると
楯無はスマホ片手に校舎の方へと走っていった。
「悪いが俺と来てもらうぞ」
「………大したモンだな」
「
「アタシが知ったことかよ」
愛機にしていたアラクネは取り上げられ
手には如何にもハイテクな電子ロック式の手錠。
服に隠していた銃を含む暗器の類も回収され
ご丁寧に自決防止用ナノマシンまで打たれた。
万策尽きたオータムは一夏に賞賛の声を掛ける。
裏の世界に向いてるな、と皮肉気味に。
「…テメェは動かないのか?後続が来るぞ?」
「いいや、後の対処はあいつらに任せる。
その為に色々手回ししてあるからな」
「おぉ怖いねぇ。どんな手回しなのやら」
上空を"後続"が放った火炎放射が駆け抜けていったが
一夏の顔色は全く揺らぐことは無かった。
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「──よし、皆集まったね。僕たちの最優先事項は
学園生や来賓の方々を安全に避難させることだよ。
布仏さんは学園中央から戦況を見張って。
簪さんはミサイルを使って崩壊する建物の破片の破壊を。
ラウラは白うさぎ隊を指揮をしつつ避難の援護を。
鈴はセシリアとの連絡を頼むよ!」
コアネットワーク経由で連絡を受け取ったシャルロットが
すぐさま専用機持ちを集め防衛の準備を進めていく。
「それじゃあ行ってくるよぉ〜」
本音が天眼を起動し学園の中央へと向かう。
これで学園内のほぼ全域がセンサー範囲内となり
ありとあらゆる戦況を全員が確認出来るようになる。
「山嵐起動!…ヒーローになる時よ、バディ」
『あぁ!共に人々を守るぞヒーローッ!!!』
ガシャン!とミサイルコンテナが一斉に開くと同時に
バイザーが簪の目元を覆う。そして、バディと共に
人々を守るヒーローとなるべく駆け出した。
「白うさぎ隊、準備はいいな?!」
『『『『『Yes ma'am!!!』』』』』
ラウラが号令を掛けると、どこからともなく
白うさぎ隊隊員5名が駆けつける。
専用機「シュヴァルツェア・ツヴァイク」を纏った
副隊長クラリッサ・ハルフォーフを先頭に
調整中ながらも白うさぎ隊専用機として用意された
「ヴァイサー・ハーゼmk.1」を装着した隊員4人が続き
避難する生徒や来賓を護衛するよう動き出す。
「セシリア!聞こえてる!?」
『勿論ですわ!準備完了まで──』
遊撃枠として衝撃砲を起動し駆け出した鈴は、通信越しに
なぜか今ここには居ないセシリアとの連携準備を始める。
「あら、随分と手厚い歓迎ね。嬉しいわ」
そして、ついに後続の敵機が目の前に現れる。
威圧的と取るか悪趣味と取るか──全身を金色に染め、
煌々と輝く炎を纏い、巨大な尾のような部位を持つIS
「ゴールデン・ドーン」だ。
フルフェイスヘルメットに覆われ素顔は見えないが
声色からして熟練の戦士である事が窺える。
この戦力を前にして単騎で乗り込んできた辺りにもまた
彼女の練度の高さが窺えた。
「何人か足りないようだけれど……」
一夏、箒、セシリア、そして恐らくは裏切ったであろう
マドカがこの場には居ないことを認識した女は
ゴールデンドーンの武装をアクティブにする。
「手加減なんて期待しないで頂戴ね」
そして、激戦が始まった。
学園祭、それっぽく書けたかな?
午後の部はそう「灰被姫」。
ただし既におじゃんになりそうな模様。
たてなっちゃんとの連携でオータムさんタイーホ。
なお、実は蒼流旋がまだ修理中。