「知力」の一夏君、果てなき宇宙(そら)を目指す   作:高橋ヒナタ

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書き溜め分を連続投稿。
ちょっと短めですが。

長くても次回で学園祭編は終了させます。



第45話

 

 

 

IS学園に、ゴールデン・ドーンが襲いかかる。

 

 

「流石は元黒ウサギ隊ね。楽しめそうだわ」

 

「クッ…舐めるなッ!」

「隊長!援護します!」

 

両手の光球から様々な形で炎を放射する武装

「ソリッド・フレア」と、超高温で物質を溶断する

炎のムチ「プロミネンス」を駆使し

ラウラとクラリッサの連携を難なく捌く。

 

「チィッ…バリアが邪魔だ!」

 

加えて、ゴールデン・ドーンの周囲にはバリアー──

熱線で形作られたエネルギーフィールドがあり

ラウラの持っていたレーゲン用アサルトライフル

ドイツ軍がH&K社に発注し製造させた「HK416-SR」は

放った弾丸の尽くを溶かされてしまっていた。

 

かといって、近接武器で攻撃しようものなら

そのバリアに機体すらも焼かれてしまうため

迂闊に近付くことも出来ない。

 

 

 

「兄さん達を連れてこなくて良かった!…簪ぃッ!」

 

「山嵐全弾ロックオン完了!当たれぇッ!!」

 

ドドドドドドッ!!!

 

しかし、攻撃の手は休めない。

 

ラウラとクラリッサが距離を取った瞬間

凄まじい轟音を上げながら48発のミサイルが

一斉にゴールデンドーンへと襲いかかる。

 

 

「…あら…厄介ね」

 

「逃がさないッ!」

 

余裕そうな声色は崩れていないが、この量のミサイルには

ゴールデンドーンもある程度回避せざるを得なかった。

 

バリアとはいえエネルギーを消耗するのだ。

アサルトライフル程度であれば気にもならないだろうが

ミサイル48発が直撃するとそうもいかないらしい。

 

 

 

「………オータムはまだなの?…っ」

 

「休ませたりしないわよ、侵入者さん?」

 

ドォォォーーーンッ!!!

 

 

「お姉ちゃん!」

 

「おまたせ簪ちゃん」

 

そこに、諸々の指示を出し終えた楯無も合流する。

 

高熱を放つゴールデン・ドーンとは相性が悪いが

ロシア国家代表という戦力はそれだけで頼もしいものだ。

 

 

 

「…オータム。…オータム応答しなさい」

 

「無駄よ。彼女は私と一夏君で撃墜したわ」

 

「………なんてこと…!」

 

ゴールデン・ドーンが一瞬動揺する。

 

オータムが撃墜されるとは思っていなかったようだ。

 

 

「…それでも、貴女達を相手にして負けるつもりなんて

更々無いわよ?」

 

「あらそうっ?」

 

清き熱情のお返しとばかりに放たれた火炎放射を

楯無は間一髪で回避し、連携の輪へと加わる。

 

 

 

「いい加減諦めたらどうかなっ!」

 

「随分と強くなった気でいるのね、フランス代表候補生」

 

「強くなったんだから当たり前でしょっ!」

 

競技用リミッターが解除された状態の圧倒的スペックで

総勢11人からの攻撃を捌いていくゴールデン・ドーン。

 

シャルロット達もリミッターを解除したい所だが

迂闊にリミッターを解けば、IS委員会や各国政府から

様々な追求が飛んでくる事になるため許可は出来ない、と

先日の警備案作成時に一夏から禁止されていた。

 

 

 

少しづつ無くなっていく残弾。

 

被弾するたび大きく減少するシールドエネルギー。

 

なおも健在な敵機のエネルギーバリアー。

 

 

プログラム稼働ではなく人間が動かしているからだろうか

以前戦った銀の福音よりも遥かに厄介だった。

 

動きは単調ではないし、フェイントも織り交ぜてくる。

時には敢えて狙いを外し誘いを掛けてきたりもする。

対人戦での戦い方をゴールデン・ドーンは分かっていた。

 

 

 

───だが、シャルロット達に吉報が入る。

 

 

『準備完了ですわ!』

 

 

 

セシリアからの通信だ。

 

その直後。

 

 

 

バシューーーッ!!!

 

「キャアッ!?」

 

どこからともなく、超高出力のビームが飛来したのだ。

 

ビームに直撃したゴールデン・ドーンは

体勢を大きく崩し、バリアーを貫通したビーム粒子で

シールドエネルギーにもダメージが入る。

 

「一体どこから…っ!?」

 

バシューーーッ!!!

 

続いて2射目が飛んでくる。

 

これを辛うじて回避したゴールデン・ドーン。

 

 

「なっ…なんて所から!」

 

発射地点はなんと学園の外、人工島の外であった。

 

ハイパーセンサーの望遠機能で限界まで拡大しても

海側に並び立つ高層ビルの屋上で狙撃用大型ライフル

「スターダスト・シューター」を構えるセシリアの姿が

ようやく確認出来る程の、凄まじい距離だ。

 

しかも、彼女はカウンタースナイプ対策として

巨大な青いシールド「ブルー・ランパート(青い城壁)」で

完全防備しているので、ゴールデン・ドーンがここから

ソリッドフレアで反撃しても彼女には届かない。

 

 

バシューーーッ!!!

 

バシューーーッ!!!

 

バシューーーッ!!!

 

「こっ、これは…っ!」

 

それどころか、この距離でも届く超高威力の射撃を

バカスカ撃ってくる。

 

バシューーーッ!!!

 

バシューーーッ!!!

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

これ程高威力ビームの連射など出来ないハズ。

しかし実際にそれは飛んできている。

これが狙撃用パッケージ「ロックオン・ストラトス」を

装備したブルー・ティアーズの力だ。

 

「仕方ないわね…覚えておきなさい!

次会った時はオータムの仇、取ってあげるわ!」

 

流石のゴールデン・ドーンもこれには不利を悟ったのか

機体を翻して離脱していった。

 

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

 

 

 

──学園地下。

 

 

「…戦闘は終わったそうだ」

 

「そうかい」

 

大きな問題を起こした生徒を一時的に収容しておく

懲罰房とでも言うべき部屋へ一夏がやって来る。

部屋にいるのはオータムだ。

 

襲撃者が撃退された事に特に反応は示さない。

 

 

「──口は割らねぇからな」

 

「無理に口を割らせるつもりなんて無いさ。

ただ、報告に来ただけだ」

 

「………」

 

むすっとした顔を崩さずに一夏を見つめる。

 

 

 

「………テメェは…」

 

「ん?」

 

そして、口を開く。

 

「…テメェは何をするんだ?そのチカラで。」

 

個人的に気になったことを尋ねるために。

 

こうも簡単に囚われの身へ堕としてくれた男が

女ばかりが力を持つ世界で何を成すのか。

人の命をも容易く奪えるその力で。

 

 

「…俺は責任を取るだけだ」

 

「責任…?」

 

一夏はパイプ椅子に腰を下ろし、語り始める。

 

「白騎士事件。知ってるだろ?」

 

「…当たり前だっつーの」

 

──白騎士事件。それは、ISの持つ圧倒的な能力を

世界に初めて知らしめた、誰もが知る大事件。

 

日本を射程圏内とする世界各国の軍事基地が

一斉にハッキングされ、合計2341発のミサイルが

日本へ向けて発射された。

そしてそこに現れたのが「白騎士」だ。

白騎士は当時研究段階だった荷電粒子砲などを用いて

ミサイルを全て破壊してみせたのだ。

しかも、未知の存在に対してスクランブルした

各国の最新鋭戦闘機さえも、操縦者の命を奪わずに

全て撃墜したのである。

 

これにより、ISは「兵器」と見なされるようになった。

 

 

「俺はそれを止められる立場にあったんだ」

 

「………」

 

当時ISの制作に少なからず携わっていた一夏は

ISの発表を遅らせ、事件の発生を防ぐ事も出来た。

しかしその時一夏はそれをしなかった。

その結果、ISは歪んだ形で世間に認識され

世界をガラリと変えてしまった。

 

 

「ISは戦争には使えないものだ、って

宇宙開発やスポーツに使うものだ、って

世界に再認識させるのが俺の果たすべき責任だ。

…とんでもないイバラの道になるんだろうけど

ISをこの世へ送り出した者の1人として…な」

 

一夏は、そう自身に課せられた責任を語った。

 

それを聞いたオータムは──

 

「アッハッハッハ!面白いヤツだなテメェは!」

 

一転していい笑顔で笑った。

 

 

「てっきり『世界平和!』なんて言うのかと思ったら!」

 

頭が良かったとしても考えはガキなんじゃないのかと

そう思っていたら、自分の知っている男どもの中で

一番大人な考えをしていたんだから笑いもするだろう。

 

「俺は無理だと思ってるさ。世界平和なんて。

平和になると困る(生きていけない)ヤツが目の前にいるんだからな。

まぁ…降りかかる火の粉を払うぐらいはするが」

 

「──こいつぁ…大したタマだ…!」

 

そして、続くその発言で、清々しい顔になった。

自分達(戦争屋)を頭ごなしに否定する事もしないとは、と。

 

 

 

オータムは少し目を閉じて思案する。

 

「………最後に良い男に出会えた。好きに処分しな」

 

自分は亡国機業のエージェントだ。

彼とその周囲には散々嫌がらせや攻撃をしてきた。

自身が無関係なものが含まれていたとしても。

 

そして自分は今、任務に失敗して彼らの手に落ちた。

ならばエージェントとして行く道は一つ。

オータムはそう覚悟を決め、彼に背を向けて座った。

彼に撃たれるなら良いもんだ。そう思って。

 

 

 

 

 

(……………………スコール…)

 

 

 

 

 

 

 

「──それで良いのか?」

 

一夏から声が掛かる。

 

「………なんだよ。アタシは傭兵だぜ?」

 

「…そうか。なら、好きにさせてもらう」

 

 

一夏がゆっくりとオータムへ歩み寄っていく。

 

 

 

ピーッ……ガチャッ…

 

 

「!?」

 

手が急に軽くなる。

 

目を開けてみれば、先程までその手を縛っていた

強固な手錠が床に転がっていた。

 

 

 

「アンタは傭兵なんだろ?ならほら、生涯契約だ。

その心残りが晴れて傭兵辞めるまで雇ってやるよ」

 

「…テメェ何故それを………っ!?」

 

覚悟を揺るがされて一瞬苛立ったオータムだが

一夏が目の前に提示したタブレットを見て

そんな苛立ちが吹き飛ぶほど驚いた。

 

「良いのか…こ、こんな額…?!」

 

契約内容として提示された年俸は50万ドル(約6000万円)超。

しかも、任務を達成すれば内容に応じて追加報酬だ。

消費した弾薬などの分は差し引かれることになるが

それでも信じられない額が提示されていた。

遊んで暮らせる…とまでは行かないが

生活に不自由することは一切ないだろう。

 

更に、白うさぎ宇宙開発最高経営責任者の専属として

公的な戸籍も、場合によっては専用機すら用意されるため

亡国機業と違って裏でコソコソ動く必要も無い。

 

あまりにも魅力的な契約内容だった。

 

「どうだ?受けるか?」

 

最初の数年間は監視がつくとの事だが

その程度は慣れているので気にするほどでも無い。

 

 

「………いいぜ。受けてやるよ」

 

オータムは一夏の手を取った。

 

「契約成立だな」

 

のちに政財界と裏社会を震え上がらせることになる

"黒い死神"が誕生した瞬間である。

 

 

 

 

 

「…改めて見てもテメェやっぱ良い男だな。

男嫌いのアタシにまでそう思わせるなんてさ。

なぁ、1回でいいからアタシの事抱いてくれよ」

 

「ん?愛人ぐらいいるかと思ったんだが──」

 

「いや、アイツは…多分良いって言うさ」

 

「そうなのか?………なら篠ノ之箒に聞いてくれ。

あいつが良いって言ったら抱いてやるよ」

 

「なんだ、断らねぇのか」

 

「…察してくれ。色々と訳ありなんだ。命懸けてるとな」

 

「なるほど、昂って仕方ねぇのか。アタシにも分かるさ。

いいねぇ…尚更気に入ったぜ、「旦那」」

 

「なんだよ旦那って」

 

「いいだろ。それとも「大将」って呼ぼうか?」

 

「なら旦那でいい」

 

「改めて宜しくな。旦那」

 

「こちらこそよろしく」

 

最高の相棒になりそうなだと思ったオータムであった。

 

 

 





オータムさんと一夏君が手を組みました。
裏社会にも通ずる良い右腕として、ね。

こういう一夏君は賛否分かれるかなぁ…
でも、彼も万能じゃないんでね
このままじゃ箒ちゃんが「壊れちゃう」。
あのキラ君だって戦争に巻き込まれて
フレイのこと拒めなかったんですから…。

次回はまだ書き始めてないんで不明ですが
一連の騒動にひと区切りをつけて
オリジナルの「2期」へ入っていこうかと。
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