「知力」の一夏君、果てなき宇宙(そら)を目指す   作:高橋ヒナタ

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今回はレイくん&アキちゃんのお話。

専用キング、アップデートです。
どんな機体になるか…予想は簡単かな?



第48話

 

 

 

大盛況となった「新・クラス対抗戦」を終えた翌日。

 

 

 

~♪~♪~♪ ~♪~♪~♪

 

本社ビル社長室で仕事をしていた一夏のスマホに

普段滅多に流れない着信音(不思議の国のアリステーマ曲)で電話が掛かってきた。

 

 

『もすもすひねもすぅ〜いっくぅん♪束さんだぞっ♪』

 

いつもであればその時使っている端末に直接ビデオ通話を

ハッキングしてねじ込んでくる天災、篠ノ之束である。

曰く、ハッキングはゲームみたいで楽しいとのこと。

 

 

「…束さん。何か嫌な事でもありました?」

 

しかし、電話口の束の声はトーンがわずかに低い。

どうやらかなり不機嫌なようだった。

 

一夏は少し思考を切り替えて彼女との話を続ける。

 

 

『いやぁね、ほら前にあったでしょ?いっくんの会社へ

アレコレ文句付けてきてたやつ』

 

「ありましたね。ウチの本社と自宅のサーバーに対して

何度もハッキング仕掛けてきてたアレですよね?

逆ハックしてあっちのサーバー徹底的に破壊してやって

次やったらそっちの施設全部破壊してやるぞって

脅し掛けたはずなんですけど…」

 

『それがさ、いっくんの所(白うさぎ本社)がダメだって思ったのか

どうも束さんのラボの方に攻撃して来てるんだよね~。

しかもちーちゃんとこにも何度か電話が来てるみたい。

こっちは凡人に突破されるようなヤワな造りしてないから

別にいいんだけど…流石にちーちゃんトコは…ね』

 

一夏の顔色が変わった。瞳からハイライトが消える。

 

『あとついでに!レイくんのIS改良しておいたから

その試験運転だと思ってさ!』

 

「オーケー行ってくる。そうだな…2日で戻るよ。

ハロ、アキに連絡を繋いでくれ。秘匿回線でな。

ヴィーナス。輸送機を飛ばすぞ、準備しろ」

 

『ありがと〜いっくん♡』

『了解!了解!』

『かしこまりました一夏様』

 

それは、2人の天災を怒らせてしまった

哀れな者達が破滅するまでの短い物語である──

 

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

 

 

 

「今回の作戦はレイとアキでの2正面作戦になる」

 

目的地へと向かう輸送機の中で、一夏はレイとオータムへ

今回の作戦の概要を説明していた。

 

「本当なら施設ごと叩き潰したいところだが

生憎ターゲットとなる子会社の上層部が

モスクワの本社近くへ出払ってるらしくてな」

 

「なるほど。それをアタシが」

 

「で、施設を潰すのが──」

 

「俺の役目という訳か」

 

「そういうことだ」

 

ちなみにオータムのISは現在絶賛開発中であるため

ホワイトラビッツ・ファイバーズ社(白うさぎグループ傘下)の強化繊維で作られた

隠密作戦・潜入任務用のボディスーツを身に纏っている。

これはマグナム弾などもシャットアウト可能でなおかつ

着用者の動きをサポートする機能も持つスグレモノだ。

宇宙服の下に着込むアンダーウェアの試作品でもある。

 

元特殊部隊出身なだけあってスーツは良く似合っており

髪色も相まってブラック・ウィドウを彷彿とさせた。

名前的にはもっと近いの(「ナターシャ」)がいるのだが。

 

 

「アキが潜入するタイミングで周囲の監視カメラを

一時停止させておくが、見つかる前に引き上げたいんでな

作戦行動可能時間は最大でも20分とさせてもらう。

建物はターゲット連中が貸し切っているようだから

侵入に成功したら容赦なく…ぶちかましてやれ!」

 

「ハンッ!10分で全滅させて来てやるよ!」

 

「そいつは頼もしいね。んじゃ実際に10分切れたら

追加報酬を出そうか。帰還ポイントは指定した通りだ」

 

「んじゃあ、少し殺る気出すとすっかな…!」

 

 

 

そうこうしているうちに輸送機はロシア領空付近へ。

 

「レイ。発進ポイントが近い。準備してくれ」

 

「了解した」

 

モスクワではなく子会社本拠地へ向かうレイは

この辺りで本隊から離れることになる。

 

「…1人も逃すなよ。施設関係者は…全員だ」

 

「───いいのか?」

 

「あぁ。警告は、したんだ」

 

「…そうか」

 

 

会話が終わると、輸送機の後部ハッチが開いていき

簡素なIS発進用カタパルトが出来上がる。

 

レイは新しくなった自身のIS──灰色をベースカラーに

赤と青の差し色が施された愛機を身にまとい

電磁レールにその足を載せる。

 

 

「よーし。発進、いつでもいいぞ」

 

「…レイ・クロニクル、『レジェンド』発進する!」

 

 

天帝が後光を纏ったかのようなシルエットが

ロシアの暗い夜空へと羽ばたいていった。

 

 

 

 

 

「…さぁて、そろそろアタシの出番だな…!」

 

レイが飛び立ってからしばらく輸送機を飛ばし

モスクワ市街地上空へとたどり着いた一夏とオータム。

 

オータムは輸送機のウェポンラックから武器を取り出す。

メインウェポンは2丁のAPC-9だ。これを両腰に。

更にスーツのホルダーに幾つかサブウェポンを格納。

最後にそれらを隠すゆったりしたコートを羽織り

昇降ワイヤー付きの側面ドアのもとへ。

 

 

「…それでは、アキ・ニシガキの初陣の始まりだな。

コードネーム『リーパー』。戦果を期待しているよ」

 

「了解。『リーパー』、出るぞ!」

 

 

 

ゴゥーーーン……

 

反重力ローターで空中に静止し光学迷彩を発動した

輸送機の扉が開かれる。それはまるで、何も無い空間に

突然ドアが現れたかのようで。

 

オータムは昇降ワイヤーに足を掛け

静まり返った夜のモスクワへと降りていった。

 

 

 

「…よし。目的の建物はあれだな」

 

監視カメラがエラーを起こした瞬間に着地し

オータムはまるで元からそこに居たかのように

閑散とした夜の街へ溶け込んでいく。

 

こういう時は下手にコソコソ動くよりも

堂々としていた方が潜入はバレないものである。

その建物を出入りする人間を完璧に把握していなければ

さも「この建物の住人です」といった顔色をした人間に

疑り深く追求を掛けることなど無いだろう。

 

 

「やはり電子ではない、か…なら」

 

オータムはコートのポケットから小さな機械を取り出す。

これは物理ロックへの対策として一夏と束が作り出した

ナノマシンによってあらゆる形の鍵に適合する万能キー

いうなれば「さいごのカギ」だ。

 

「お邪魔するぜ…。うっ…酒臭ぇな」

 

さいごのカギで忍び込んだターゲットの居る建物は

大量のウオッカでも飲んでいるのかとにかく酒臭かった。

 

 

「ういぃ〜…誰だおまえ?」

 

「……悪いが死んでもらう」

 

ダンッ!

 

「な゙っ……」

 

男の脳天にグロック26を一発。

 

「さぁて…やるかッ!」

 

そして、APC-9を両手に持ち、構える。

上でバタバタと足音が響く。気付いたようだ。

 

 

「そこの貴様っ!何者だ!?」

「くそ〜お前ら!酒飲んでねぇで早く来いっ!」

 

「悪ィが旦那の依頼なんでな!くたばりなァッ!」

 

ダダダダダダッ!!!

ダダダダダダッ!!!

 

「ぐはっ!?」

「うぎゃあッ!!」

「チクショウッ!」

 

閉所戦闘に適したサブマシンガン2丁が火を噴く。

内側に着込んだスーツのお陰で片手持ちであっても

その射線がブレることは無く、出てきた男たちは

吸い込まれるように銃弾の餌食になる。

 

 

「いけねぇ…ちょっと昂りすぎたか」

 

男どもがゾロゾロ出てこなくなった辺りで

オータムは一度遮蔽物に隠れリロードを行う。

 

そして──

 

 

「そぉらプレゼントだ!受け取れッ!」

 

ドカァンッ!!

 

「「「ギャアッ!!」」」

 

隣室で待ち構えていた応援を手榴弾で一掃。

 

 

 

 

 

「………さぁ出てこい…代表は何処にいる…?」

 

屋敷が静まった辺りで改めてターゲットを探す。

先程片付けたのは標的のオマケや雇ったであろう護衛だ。

 

そうして少し探索すると、人の気配を見つける。

 

 

「──随分と趣味の悪ィ事してるなァ。えぇ?」

 

「なっ…ヒック!…何だ!貴様は!…ヒック!

 

そこに居たのは、猛烈な酒の匂いと加齢臭を漂わせる

如何にも酒飲みが如く出っ張った腹のターゲットと

ボロボロの布切れだけ身につけ両手を手錠で縛られた

恐らくはそれなりの身分と思われる若い女。

 

女の方は別に死んではいないようだが目が虚ろで

明らかに健康状態が悪そうな有様だ。

オータムには分かった。クスリを打たれている、と。

 

 

(コイツを弄んでやがった…と)

 

オータムは凍てつくような視線を向けながら

腰を抜かしてか酒に酔ってか動けない男に近寄り──

 

 

「どこからがいい?足か?腕か?それとも…ココか?」

 

ダァンッ!!

 

「ーーーーーッ?!?!?!」

 

先程までボロボロの女を嬲っていたであろうその股間に

一切の情け容赦無く9mmパラベラム弾をぶち込んだ。

声にもならない悲鳴を上げる男。

しかし、彼が"ソレ"を失ったことを悩む必要は

二度と女を抱けなくなったことを悩む必要は、無い。

 

「わざわざロシア語で警告したのにそれを無視するたぁ…

ウサギを甘く見た自分の愚かさを悔いるんだな…!」

 

「…ひ…ひいッ!!!」

 

ダァンッ!ダァンッ!!

 

──脳天に風穴が空くことになるのだから。

 

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

 

オータムが"ゴミ"を片付けていた頃。

 

 

 

「目標視認。これより作戦行動に入る」

 

そのゴミ共が犯罪の隠れ蓑にしていた施設には

「伝説」の名に恥じない力を持つ者が

天帝からの裁きを与えるためやって来ていた。

 

 

「『レジェンド・シルエット』のシステムを使用する!」

 

"王"が近衛兵に攻撃を命じる。

 

すると王が纏っていた鎧から近衛兵士長が2人

近衛兵が8人飛び立ち、王に逆らう者共を処刑していく。

 

「…博士の敵なら、誰であろうと俺の敵だ!」

 

彼らは幼い王を拾ってくれた育ての父母とも言える人々(一夏と束)

あろうことか繰り返し刃を向けようとした愚か者だ。

慈悲深き忠告にも耳を貸さず再び刃を向けたのだから

この「キング・アーサー(レイ専用キング改修型)」を前に生きる権利など無い。

 

アーサーは伝説の翼を身にまとい空を翔ける。

 

「沈めッ!」

 

降り注ぐ光の雨を前に為す術なく倒れていく

良からぬ事に手を染めていた者たち。

 

怒れる王が通り抜けた地には何も残らないのだ。

 

 

 

『その『シルエット』の調子は良いみたいだな』

 

「そちらは終わったのか」

 

『あぁ。アキが10分で片付けてくれたよ』

 

レイの元へ輸送機の一夏から通信が入る。

今回3人が此処へやって来た理由はあくまでも新機体の

稼働テスト。

 

キング・アーサーが装備する特殊装備換装システム──

拠点外での装備の換装や追加、バッテリー充電や

シールドエネルギー補充などをスムーズに行うための

「シルエット・システム」のテストだ。

ちなみにこのシルエット・システム、アイデアの元は

言うまでもないがインパルスガンダムである。

ウサギさんは最近ロボットアニメにドハマり中らしい。

 

 

「第2世代型BT兵器『ロイヤル・ガードⅡ』稼働テスト

全チェック終了。次のシルエットを頼む」

 

『了解!…さすがに"分身"までは再現出来なかったが

完璧に仕上げておいたとさ!』

 

戦況へ目を戻すと、ISが出てきた事を認識したのか

蜘蛛の子を散らすように従業員たちが逃げ出していた。

 

今回のオーダーは「関係者の全滅」。

レジェンド・シルエットは広域殲滅能力に長けていても

散り散りに逃げる目標を正確に潰すのには向かない。

ではどうするか。

 

 

ガチャンッ!

 

「シルエット換装完了。全システムスオールグリーン。

レイ・クロニクル、『デスティニー』出るぞ!」

 

簡単だ。もっと速く追いかけて全員潰せばいい。

 

 

 

「E.O.S.で我らに敵うものか!」

 

「ぐわあぁぁっ!?」

 

「逃がしはしない…!」

 

「あがッ?!」

 

光圧推進システムのテスト機でもある「デスティニー」は

原作と全く変わらない美しい光の翼を広げ

逃げようとする敵を無慈悲に切り捨てていく。

その様はまるで悪魔の如し。

 

ご丁寧に用意された大型対艦刀──もとい

「専用大型複合ブレード『アロンダイト』」で

施設にあった超廉価版ISとでも言うべきパワードスーツ

エクステンデッド(E.)オペレーション(O.)シーカー(S.)

赤子の手をひねるより容易く両断する。

ビームの粒子を循環させて作り出される輝く刀身は

ブレードの重量と合わせてあらゆるものを切り裂くのだ。

 

 

 

「──状況終了」

 

『了解。待ってろ、今ハッチを開ける』

 

あっという間に全ての施設関係者を始末し終える。

 

そこに広がっていたのは、己の行いの向かう先すら

考える事の出来ない愚か者"だったもの"が転がる

壮絶な光景であった。

 

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

 

──作戦終了後。輸送機内にて。

 

 

「ケホッ…助けて頂いて…ありがとうございます」

 

「…礼ならコイツ(アキ)に言えよ」

「なんだ、助けると決めたのはお前だろ」

 

オータムが現地から連れ出した女性が目を覚ました。

 

この輸送機には戦地まで来て身嗜みに拘るような奴は

1人も乗っていないので髪の毛などはまだボサボサだが

オータム用のスーツの予備とコートを着せて

麻薬成分除去用の解毒剤も飲ませ、カロリーメイトなどの

栄養豊富な携行食も食べさせたので

彼女はひとまず助かったと言っていいだろう。

 

で、そうなると気になるのが彼女の素性だ。

まさかただの街娘ではあるまい。

 

「私は…売られたんです、母に。」

 

「あのクソ社長へか」

 

女性は少しづつ語り始める。己の過去を。

 

「…私が幼い頃、構成員をロシアに送り込むとかどうとか

そう…父と母が話していたので…両親のどちらかが

どこかの特殊部隊か何かだったんだと…おもいます。

最初は…軍のIS部隊に入れようとしたらしいんですけど

私のIS適性が……低かったので…」

 

恐らく特殊部隊というのは亡国機業のことだろう。

勢力拡大の一環として、いうなれば政略結婚を

軍部の人間とさせるつもりだったと。

 

しかし彼女にIS適性が無かったせいで予定の変更を

余儀なくされ、送り込みやすいというよりは

使えない娘を処分するのに適した先を探した結果

程よくロシア政府とも繋がりがあって

なおかつ女であれば言い値で買ってくれそうな

あのクソ野郎を選んだということなのだろう。

戸籍上ではあの社長の秘書兼愛人という事になっている。

 

このように、ISへの適性が低いというだけで

男と同格かそれ以下という烙印を押す習慣は存在し

理不尽に烙印を押され地位を剥奪された女性たちを

女に恵まれなかった男たちが金で買う──

そんなサイクルが既に出来上がり始めているのだ。

この女尊男卑社会の裏側で。

 

 

一夏は、少し深呼吸をしてから口を開く。

 

「…ハロ。楯無に通信を繋げ」

 

『──あら織斑君。何かあったのかしら』

 

「ロシアへの根回しを頼みたい」

 

『何をする気?』

 

「経済圏を裏から支配してロシア政府の動向を

逐一確認出来るようにしたい。…あとはそうだな

末端とはいえ石油会社をブチ壊しちまったから

"表"へ余計な影響が出ないように、ってとこだな」

 

 

悪巧みを思いついた時のような、不気味な黒い笑みが

その顔には浮かべられていた。

 

 

 

「…よし、これで今からは君があの会社の社長だ。

テロリストの襲撃に遭い壊滅しかけた小さな会社を

亡き社長の愛人が跡を継いで立て直す──いい話だろ?

こっちでも色々アシストするから、頼むよ」

 

「は、はい………しゃ、社長っ?!私が?!」

 

 

 

ロシアがウサギたちの手に堕ちるのは

時間の問題なのかもしれない…。

 

 

 





一夏と束さんの悪ノリの成果
「レジェンド」と「デスティニー」初お披露目。
機体名が「キング・アーサー」で
シルエットに応じて呼び名が変わります。

アキちゃんが救出した女性は
現時点では今回限りのモブキャラちゃん。
一夏くんの地盤固めの一助として
そして女尊男卑社会の裏側を描くモデルとして。
たぶん女性権利団体はこういうIS適性の低い女性を
サポートするような事はしてないと思いますね…。
事件に乗じて男を貶す事はしてそうですけど。

次回は…そうだなぁ…アストレアのお話しか
一気に年末まで飛んでイギリスへ、か。
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