「知力」の一夏君、果てなき宇宙(そら)を目指す   作:高橋ヒナタ

51 / 72

イギリスへ。

まどっちの新IS初お披露目とか
ファンネル合戦とか色々やります。



第49話 イギリス編①

 

 

 

──成田空港。

 

それは、羽田空港と並ぶ日本最大級の国際空港である。

 

そしてその成田空港に今日、珍しい航空機が訪れていた。

イギリス随一の資産家貴族が経営する企業グループ

オルコットグループが所有するプライベートジェットだ。

数ヶ月前に代表が購入を決定した最新鋭機で

航空機マニアが今最も注目している機体でもある。

 

で、そんなプライベートジェットがなぜ日本へ

やって来ているのかと言えば──

 

 

「さぁ一夏さん、我が国イギリスへ招待いたしますわ」

 

「あぁ、頼むよ」

 

イギリス代表候補生として定期報告を行うために

帰国するついでに親善試合をしよう、との招待状に

応える時が来たのだ。

 

今回イギリスへ向かうメンバーは6人。

セシリア、一夏、マドカ、束の4人に加えて

その護衛として白うさぎ隊隊員が2名同行する。

 

 

 

「では、ヒースロー空港までお願い致します」

 

「畏まりましたお嬢様」

 

セシリアが専属パイロットへ行き先を指示し

プライベートジェットがゆっくりと動き出す。

 

目的地はロンドン、ヒースロー空港。

およそ半日ほどのフライトだ。

 

 

キィィー…………ン

 

 

美しい青色のジェット機が空へと飛び立っていった。

 

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

 

「お食事とお飲み物は如何なさいますか?」

 

「色々取り揃えてるんだな…どれどれ──」

 

ジェットが成田を発ってからは、機内サービスで

各々リラックスタイムと洒落込む。

 

一夏は高級茶葉使用のレモンティーを片手に

組みかけの設計図のあれこれをいじり

セシリアもまたレモンティーを堪能しながら

一夏が作っているものを分からないなりに観察中。

束はロボットアニメを鑑賞しながら出てくる技術を

実際に作り出せないものかと試行錯誤。

マドカと白うさぎ隊メンバーは窓に張り付いて

外を流れる景色を眺めている。

 

 

 

「ねぇいっくん、コレ作れると思う?」

 

「いやーGNドライヴはキツイんじゃないか…?

位相欠陥(トポロジカル・ディフェクト)はまだ見つかってないんだろ?

相転移は木星なら起こせるとしてもキツイと思うな」

 

「そういういっくんのアーク・リアクターだって

エネルギー保存の法則に喧嘩売ってるよね?

水素が消えないってどういうことだよ」

 

「そうか?パラジウムを上手いこと合金化すれば

及第点くらいなら行けると思うんだがな…。

理論は一応完成してるんだよホラ、この合金だ」

 

「私のも位相欠陥の見つけ方はもう確立させたから

あとは何とか発見して回収するだけなんだよね〜。

問題は存在予想位置が最短でも冥王星軌道の外ってコト」

 

「「う〜〜〜ん………」」

 

 

科学者組は相も変わらず難しい話をしている。

 

「マドカさん、何を言っているか分かりますか?」

 

「いいや。さっぱり分からん」

 

ナントカとナントカをなんちゃら反応させるだの

どれそれが崩壊してホニャララ粒子を生成するだの

その程度しか聞き取れない専門用語のオンパレード。

 

セシリアにもマドカにもサッパリ理解できない。

超難しい名門大学の講義を聞いている気分だ。

それでいて彼らにとっては気分転換だというのだから

天才というものは不思議な生き物である。

 

 

 

 

 

そんな奇妙な空の旅を続けること数時間。

 

「織斑さん。少し聞きたいことがありまして…」

 

「ええと…副操縦士さんか」

 

コクピットから副操縦士が出てきた。

 

曰く、レーダーに映った妙な反応について

カスタムを施した本人としてアドバイスが欲しいと

そういうことらしい。

 

 

「妙な反応ってのはどれだ?」

 

「これです。航路が被った旅客機かと思ったんですが

反応がやけに弱くて。速度は同じぐらいなんで

ミサイルとかそういうのでは無いでしょうし…。

でも、先程からずっと当機の後を追っているんです」

 

このプライベートジェットには、セシリアの依頼で

一部機器の交換などといったカスタムを施しており

常識の範囲内とはいえ高精度なレーダーも装備している。

 

そのレーダーが捉えていたのは、やけに微弱な反応。

反応強度から逆算するなら鳥かマイクロミサイルか──

少なくともこのジェット機と同じ速度を出すには

民間機では不可能に近いサイズの飛翔体なのだ。

 

「航空無線での確認はしたか?」

 

「はい。結果は該当機無し、と」

 

「そうか…少しシステムを借りるぞ」

 

「お願いします」

 

一夏はポケットから通信用端末を取り出して

レーダーのコネクタに接続する。

 

「ハロ。聞こえるか?」

 

『アクセス完了!アクセス完了!』

 

呼び出されたのはそう、電子戦の強い味方ハロだ。

 

「無線を傍受して周辺の航空情報を確認しろ。

民間機より軍用機の方が優先だ。レーダー情報と照合して

ボギーの正体を割り出すんだ」

 

『了解!了解!』

 

「──Mr.織斑、ボギーといったか?」

 

やり取りの中で軍事用語である「ボギー(未確認機)」が出た事に

先程まで操縦に集中していた機長が反応する。

彼は今でこそこのプライベートジェットの専属機長だが

若い頃はイギリス空軍に従事していた経歴がある。

エースパイロットとしての意識に切り替わったのだろう。

 

「えぇ。ボギーの国籍や機種などは一切不明ですが

反応からして恐らくステルス機の類かと」

 

「…それならば別で網を張っているかもしれんな。

ハロ君といったか、そちらを考慮してみてくれ」

 

『算出開始!算出開始!』

 

機長の話を聞いたハロが再び演算を開始する。

航空情報や追跡して来ているボギーの進路などから

襲撃者が待機している可能性が高いポイントを割り出し

割り出されたポイント周辺にサーチを掛ける為だ。

 

ハロが機体の広域レーダーを使用し───

 

 

 

フィ〜ッ!!フィ〜ッ!!

 

『後方注意!後方注意!』

 

 

「ッ!回避運動ッ!!」

 

「ぅぬ゙うぅッ!」

 

 

ドガシャァンッ!!

 

 

 

 

 

「──ぶ、無事かね?Mr.織斑」

 

「何とか…ッ。ハロ!機体の様子は!」

 

『左翼損傷!左翼損傷!』

 

 

ミサイルの爆発が機体を襲ったのである。

 

機長が瞬時に機体を旋回させた事で直撃の回避には

なんとか成功したが、今の爆発で左翼が損傷

機体のバランスが少し不安定になる。

 

 

「どうするのだMr.織斑!」

 

「襲撃者を撃退します!」

 

「…っ!何をすればいい!?」

 

一夏はハロ用のアクセス端末を回収すると

客室の方へと戻っていく。

 

「機内の減圧を頼む!」

 

「!!」

 

作戦はある。戦うのだ。

 

 

 

 

 

「一夏っ!」

 

「どうなさるのですか?!」

 

客室へ戻ってきた一夏をマドカとセシリアが出迎える。

機内が減圧されて冬の寒気が流れ込んでいるため

束以外の全員が酸素マスクと防寒具を装備している。

束はいつもの姿(うさみみアリス)だが、まぁ問題は無いのだろう。

 

不安げな表情を浮かべるセシリア達を横目に見ながら

後部ドアの前へと向かい──

 

 

「こっそりISの使用許可を貰っておいて良かった。

無かったら俺たちは終わってたぞ」

 

そう呟くと、ドアを開けて機外へと飛び出していった。

 

 

 

「兄さんの機転に…乾杯…?」

 

「ふざけている場合じゃありませんわよ!

私達は許可を取っていないのですからっ!!」

 

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

 

(随分ノリのいい妹になったもんだ)

 

 

 

白式を身にまとい機体の外へ飛び出した一夏は

ミサイルの爆風を浴びた左翼がまだ保つ事を確認すると

すぐに後方へと振り向く。

 

 

[Flying Object:F-22]

 

後方に居たのは、高い電波・赤外線ステルス性を持つ

「ラプター」の愛称が有名なF-22だった。

 

ISのハイパーセンサーや一夏自作の超高性能レーダーなら

まだ探知出来たのだろうが、常識の範囲内に収まる

プライベートジェットのレーダーでF-22を捉えるのは

至難の業だ。映ってくれたのも幸運と言える。

 

 

「──引き際が良いな!」

 

だがF-22はISには勝てない事を重々承知しているのか

白式の存在を視認するやいなや離脱していった。

 

つまりそれがどういう事か。

 

 

 

[!UNKNOWN APPROACHING!]

 

「まぁ来るよな」

 

後詰、もとい本命(IS)が出てくるという訳だ。

 

 

 

『使用許可を取り付けていたの?根回しのいい奴…!』

 

「悪いが…正々堂々なんて期待するなよ?」

 

これでもあれこれ理由付けて渋られたんだがな、と

軽くボヤいた直後に白式が覚醒する。

 

相手は所属不明の未確認機。顔認証にでも掛ければ

どこの所属でどこの機体を使っているのかまで

あっという間に暴いてやれるのだろうが

民間機の襲撃というテロ同然の行為をしている時点で

それはもはや未確認機ではなく「敵機」だ。

操縦者はもはや選手ではなく「戦士」だ。

 

 

「墜ちてもらうッ!!」

 

一夏の動きが、変わった。

 

IS学園では殆ど見せていなかった、殺しの技へ。

シールドエネルギーを0にする戦いではなく

敵の戦闘能力を奪い、場合によっては命すらも奪う

死神のように冷たく鋭い戦い方へと。

 

 

『何よ…!聞いてた話と違うじゃない!』

 

「死にたくなければ…離脱しろっ!」

 

『なッ…生意気なヤツ!』

 

離脱しないならば殺す、と。そう宣言したにも関わらず

操縦者の女は一夏の発言が癪に障ったのか激怒し

容赦なく武装をぶっぱなしてくる。

 

「そうか、分かった」

 

斬ッ!!

 

『ぐぅっ?!』

 

時速900km台で飛行するジェット機と並走しながらの

高速域戦闘でも殆どブレることのない鋭い一閃が

敵機の脇腹に傷を入れた。

 

バシューッ!バシューッ!!

 

「こんな嬲るような真似はしたくなかったが──」

 

『こんのォッ!!!』

 

バシューッ!バシューッ!!

 

バシューッ!バシューッ!!

 

死角という死角を突きビームが連続して差し込まれる。

ここぞという場面で的確にシールドビットが突撃し

女が攻勢に出る隙を与えない。

 

リミッターを解除してシールドエネルギーが増えた事が

逆に一方的に嬲られ続ける要因を作っていた。

攻撃を許せばプライベートジェットを守り切れない以上

余裕が無くなるまで攻め立てるしかないのだ。

 

 

「──暗殺者としては二流以下だな」

 

『墜ちなさい!!墜ちなさいッ!!!』

 

捌いてきた暗殺者は覚えているだけで数十人。

暗部の長(更識家現当主)すらも舌を巻く実力者。

 

そんな彼に、一介の暗殺者が勝てるはずも無い。

 

 

「終わりだ──」

 

『ッ!?』

 

光り輝く剣が女の心臓を真っ直ぐ貫いていた。

 

二連加速(ダブル・イグニッション)からの零落白夜。一撃必殺だ。

 

 

 

 

 

 

 

『──Mr.織斑、聞こえるか!私だ!』

 

「何だ?」

 

襲撃者を難なく退けた一夏だったが、敵ISのコアを

回収し終えた辺りでジェットに異変が起きた。

 

『左翼がもう保たない!』

 

「何っ!?」

 

『このままでは左翼が折れてしまう!』

 

爆発を受け損傷していた左翼は炎上の熱も相まって

強い揚力を受け止めるだけの強度を失っていた。

まだイギリスまで2~3時間ほど距離があるため

このままでは損傷と負荷で翼が折れてしまう。

 

 

 

「……………『白式』!聞こえてるか!」

 

『勿論聞こえているぞ』

 

IS装着時はハロを直接呼び出すことは出来ない。

その代わりとして呼び出したるは白式のコア人格。

かつて「マドカ」と呼ばれていた彼女もまた

優秀な人工知能なのだから。

 

「ヒースロー空港までコイツを支えて飛ぶのに必要な

スラスターの出力と飛行ルートを出してくれ!

爆発のリスクも考慮して左エンジンを止めるから

それも考慮してな!演算に時間が掛かるなら

ワークショップのサーバーへアクセスして

ハロにも手伝って貰え!アクセス権は付与してある!」

 

『任せておけ!』

 

一夏が思いついたのは、左翼と左エンジンの代わりを

ISに行わせるというとんでもない案だった。

 

 

「機長さん!今から左翼をぶった斬るぞ!!」

 

『いつでも構わん!やれッ!』

 

「うおぉぉぉッ!!」

 

斬ッ!!!

 

一夏は雪片零でボロボロになった主翼の一部を

綺麗に切除すると、翼の切断面に機体を押し当て

スラスターをフルスロットルまで吹かす。

翼が欠けたことで一瞬大きくぐらついたものの

バランスが崩れてしまう事は無かった。

 

『一夏!今のプログラム構成だとまだ出力が足りんぞ!』

 

「何っ?!ならこの場でプログラムを書き換えるッ!

一瞬"左エンジン"の出力が落ちる!合わせてくれ!」

 

『信じるぞMr.織斑!!』

 

「武装システムを全てクリア、センサーも最低限でいい!

各スラスターとパワーアシストの出力上限値を再設定!

これで行けるな?!スラスター再点火ッ!!!」

 

キュイィィィーーーーーンッ!!!

 

次々と上がる問題点を猛スピードで処理し

とうとう白式のスラスターが真のフルスロットルへ。

 

あとは、無事ヒースロー空港へ辿り着く事を祈るだけだ。

 

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

 

 

 

──約2時間後、ヒースロー空港。

 

 

 

「オルコット・グループ代表、白うさぎ宇宙開発CEOを

乗せたプライベートジェットがもう間もなく

ここヒースロー空港へ緊急着陸するものと思われます!」

 

ドイツの報道機関が捉えた映像が発端となって

イギリスのオルコット・グループ代表らを乗せた

プライベートジェットが事故に遭った事が広まり

当初の目的地となっていたここヒースロー空港に

多くのマスメディアが詰めかけていた。

もちろん、多くの野次馬や航空機マニアたちも。

 

それとは別で、テロ攻撃のリスクを考慮してか

EU各国のIS部隊が警備として招集され

消防車や警察車両も大勢駆け付けている。

更にはイギリス首相や国防省職員らまで。

 

果たしてプライベートジェットは無事に帰還するのか。

気温約9℃という凍てつく冬の寒さの中、大勢の人々が

固唾を呑んで彼らの到着を待つ。

 

 

 

それからおよそ30分後────

 

 

 

キィィィーーー…………ン

 

 

 

「…マジか…本当にあの翼で飛んできやがった…!!!」

 

「見ろ!左翼の下!ISが飛行機を支えてるぞ!!」

 

「あれはオリムラCEOの機体だ!!すげぇ事しやがる…!」

 

ヒースロー空港へ、それは現れた。

翼が折れてもなお飛び続ける"巨鳥"の勇姿が。

 

誰もが見蕩れ、歓声を上げる。

 

 

「フラップを開いたぞ!オリムラCEOも動いた!!」

 

「逆噴射したわ!本当に無事着陸するなんて…!!」

 

着陸姿勢を取り減速が始まると、機体を支えていた

織斑一夏が駆る白いISも位置取りと姿勢を変え

一気にブレーキが掛かる。

 

そしてすぐにランディングギアが地に触れ

右エンジンが逆噴射を始める。

織斑一夏もそれに合わせるようにして

機体のスラスター出力を丁寧に調整し

あっという間に飛行機は滑走路の上に停止した。

 

「「「やったなーーーっ!!!」」」

 

「「「うおぉぉぉーーーっ!!!」」」

 

彼らは、無事ロンドンへ降り立ったのである。

 

 

 

 

 

「イギリスへようこそ、Mr.オリムラ!」

 

「直々の歓迎どうもありがとうございます、首相」

 

実にドラマチックな入国を果たした来賓を

イギリス首相自らが出迎えた。

2人はその場で固い握手を交わす。

 

焚かれるフラッシュへ笑顔で手を振る2人。

明日のイギリスの新聞は2人のツーショットが

一面を盛大に飾ることだろう。

 

 

「とんだトラブルで君たちもだいぶ疲れただろう。

迎えを手配しておいたから良ければ使ってくれ」

 

「ご配慮頂きありがとうございます」

 

一夏達はイギリス国防省護衛のもと

今日の宿泊地へと向かったのだった。

 

 

 

 

 

短く濃いイギリス来訪はまだ始まったばかりである。

 

 

 





なんか…左翼左翼って書いてると
思想強めな感じがしてくる…
単純に左側の翼ってだけなんだけどな…。

一夏くん、イギリスへ。

なお亡国機業はいっくんとかたばちゃんを潰そうと
イキイキしてるので、迂闊に渡航予定を公開すると
こうなっちゃう訳です。
ただし墜せるとは言っていない。

次回はまどっちの新機体初公開と
3人でのファンネル合戦とかを描く予定です。
予定変更の可能性は…多分低い。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。