「知力」の一夏君、果てなき宇宙(そら)を目指す   作:高橋ヒナタ

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親善試合パートでございます。

まどっちの新機体お披露目回でもある。



第50話 イギリス編②

 

 

 

「初めまして、Mr.オリムラ、Dr.シノノノ。

ようこそ、ケンブリッジ大学工学科へ」

 

「こちらこそ。今日は宜しくお願いします」

 

ロンドン市内で1泊した一夏達がやってきたのは

ケンブリッジ大学工学科の、8年ほど前に急遽新設された

IS部門を扱っているカレッジである。

 

曰く、一夏達をオックスフォードとどちらへ招待するかで

何やら壮絶な"バトル"が行われていたらしいが

BT兵器の整備環境や各種観測機器の充足度合い等もあって

ケンブリッジへ向かう事になったという訳だ。

 

 

 

「Mr.オリムラ。少しいいですか?」

 

「何か質問でも?」

 

「…Dr.シノノノがご機嫌斜めなようですが…

何かあったんですか?」

 

街で買ったお菓子をちびちびとつまみながら

マドカに手を引かれて後を着いてくるのが

あの世界を滅茶苦茶にした大天災とは思えないのか

校内を案内する役を請け負った教員が

一体何があったのかと一夏へ尋ねてくる。

 

「いや、アイツの事なら気にしなくていい。

ルイス・キャロルの出身校がオックスフォードだろ?

んで、見た目からしても分かるとは思うが

アイツは大のアリスファンだからな」

 

「あーーー。…アリスショップへも?」

 

「行きたがってた」

 

各国の首相や大統領などの前に姿を現す時も

自ら大勢の記者を集めて会見を開く時も

それこそ寝る時でさえあのドレス以外を着ようとしない

大のアリスファンなのだ。束は。

まぁ、普段からあの格好でいるのには他にも色々と

理由はあるのだろうがそれはそれとして。

 

つまり彼女は、ルイス・キャロルの出身校にして

校舎の随所にアリスに纏わるモノがあるという

オックスフォード大学──もといクライスト・チャーチへ

何がなんでも行きたかったのだ。で、それを一夏が

「チケット買ってやるから後でお忍びで行ってこい」と

オックスフォード行きを断ってしまったため

あのようにむすっとした顔をしているという訳である。

 

「なんというか…とても可愛らしいお方ですね」

 

「だろ。ギャップ萌えってヤツだな」

 

「ははっ………ですね」

 

あの子供らしい無邪気さが恐ろしい所でもあるのだが。

 

 

 

 

 

ご機嫌斜めな束も引き連れて一夏達向かうのは

カレッジ所有アリーナに併設された研究棟。

 

「計測の準備は整っております」

 

そこで一行を出迎えたのは大勢の研究者達と

無数のケーブルや機器を繋がれた状態で無人のまま佇む

IS…のようなもの──「BT兵器適性測定器」だ。

 

「…しかし、此処で計測する意味はあるのでしょうか?」

 

「オリムラCEOは福音事件後にご自身のBT兵器適性を

公表なされていたはずですが…」

 

「あぁしてるぞ。"一応"適性『B』ってな」

 

一夏は白式が一角獣の騎士へ形態以降した際に

篠ノ之束の元でBT兵器適性検査を受けており

適性が標準的なランクである「B」と判明している。

であれば何故再度適性検査を受けるのか?

 

「──セカンド・オピニオンってやつだな」

 

「なるほど…確かにイギリスはBT兵器の元祖ですものね」

 

言うまでもないだろう。実際の挙動と合わないからだ。

適性Bというのは「ある程度動かせる」といったレベルで

ビットの複数基同時操作や本体との同時攻撃などは

操作に慣れないと使用出来ない程度のモノなのである。

殺し合いの場でそう易々と使えるモノではない。

参考までにセシリアのBT兵器適性は「A」だ。

 

にも関わらず一夏の扱う「大型BTシールド」は

ティアーズと同等かそれ以上の性能を発揮している。

 

 

 

「では、測定を開始します」

 

一夏が測定器へ体を預け、集中力を高める。

 

ピピピピピピ………

 

「どうです?一夏さん」

 

「やっぱりしっくり来ないな…モヤっとする。

白式と比べて霧が掛かってるみたいな感じだ。

セシリアには無いのか?そういう感覚は」

 

「そういうのは…無いと思いますわ。

私は人よりもかなり理論派ですけれども…。」

 

「そうか…」

 

 

ピーッ

 

[被験者:イチカ・オリムラ BT兵器適性:B]

 

「やはり、か…」

 

「何故でしょう…?」

 

何度か細かい設定を変えて適性検査を繰り返してみたが

結果は以前の測定時とほとんど変わらず。

ケンブリッジ大の学生らの協力も加えて再調査を行うも

皆匙を投げるしか無かった。

 

あらゆる測定器は正常に作動していたのだ。

 

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

 

──カレッジ所有アリーナ。

 

『それではお2人とも、発進どうぞ!』

 

BT兵器適性検査や技術交換会などを終え

いよいよ親善試合の時間となる。

 

アリーナには一夏達の技術力をその目で見ようと

イギリス中から凄まじい倍率の競走を勝ち抜いた

技術者達が大勢詰めかけていた。

ブルー・ティアーズ以外のデータは開示されないとはいえ

見るだけでも得られるモノというのはある。

サイレント・ゼフィルスは大改修が施されたというが

原型機のデータと比較すれば改善箇所が見えてくる。

この親善試合というのはそれだけ重要な機会なのだ。

 

 

 

「ブルー・ティアーズ、行きますわ!」

 

「織斑一夏、一角獣の騎士、行きますっ!」

 

まずは第1試合、セシリア対一夏。

 

学園入学直後に行われた試合からおよそ8ヶ月。

2人がどれだけ成長したかが、今分かる。

 

 

 

「さぁ一夏様。私と一曲踊ってくださいますか?」

 

「えぇ、セシリアお嬢様。喜んで踊らせて頂きましょう」

 

一夏がセシリアの差し出された手を取る。

その気品溢れる振る舞いは正しく貴族に相応しい姿

まるでこれから2人が円舞曲を踊るかのような

そんな雰囲気がアリーナを──否、ダンスホールを包む。

 

 

『それでは…試合開始っ!!!』

 

「「ッ!!」」

 

バシュウッ!!

 

曲が流れ始めると共に、手を取り合っていた2人は

1歩後ろへ下がったかと思えば各々の従者達を呼び出し

華麗に踊り始めた。

 

 

バシュウッ!!バシュウッ!!

 

バシュウッ!!バシュウッ!!

 

4つのブルーティアーズ、2つのシールドビット

スターライトmk.3、折りたたみ式ビーム砲。

 

8本の光条が雨のように互いへ降り注ぐ中で

2人はひらりひらりと舞うように踊る。

より広い角度で場を見渡せる技術を持つ者同士

そう易々とダンスの主導権は渡さない。

 

 

「この8ヶ月…私は大きく成長出来たと思っていましたが

一夏さんを前にすると霞んでしまいますわね…!」

 

「いいや、セシリアは間違いなく成長したさ。

俺にここまで食らいつけてるのが何よりの証拠だ!」

 

「けれど一夏さんには"更に上"があるでしょう?!

私はまだその領域には──」

 

「その領域に踏み入る必要は無いさ。そういうのは本来

15~6歳の子供に背負わせるようなモノじゃないんだ」

 

そこに、驕り高ぶっていた頃の英国少女の面影は

何一つ無かった。幾度もの戦いをくぐり抜けてきた

遥か東の地の白き騎士と息を合わせて踊る姿は

麗しき貴族令嬢そのものであった。

 

互いの従者達もまだ互いの傍を離れる事なく

仕える主の命に従い、その踊りを更に引き立てる。

 

 

「あぁ…やはり私の理想とも言うべき御方ですわね…!

力ある者の責務というモノを解っていらっしゃるっ!」

 

「では、その期待に応えなければなりませんな!!」

 

やがて2人の円舞は曲がフィナーレに近づくかのように

激しく、情熱的に。従者達が1人、2人と役目を終えれば

最後は主役の2人が観客の視線を一身に浴びる。

 

 

 

そして、曲がフィナーレを迎え──

 

『ブルー・ティアーズ、シールドエネルギーエンプティ!

勝者、Mr.オリムラーーーっ!!!』

 

最後にその主導権を握っていたのは、一夏だった。

 

 

「如何でしたか?お嬢様。私と踊る円舞曲は」

 

「とても…とても素晴らしいひと時でしたわ」

 

またもや彼にエスコートされてしまったセシリアだったが

その表情はとても清々しいものであった。

踊り疲れて手を離してしまったあの時と違って

最後まで彼の手を取ったまま踊る事が出来たのだから。

 

 

 

 

 

それから約数十分後。

 

『それではお2人とも、発進どうぞ!』

 

続く第2試合。

 

対戦カードの片割れはセシリア。

機体の補修や推進剤の補充などを終え一足先に

アリーナ内へと姿を現している。

 

 

「織斑マドカ、出るっ!」

 

そのセシリアと相対するのはそう、織斑マドカだ。

彼女が纏うのはブルー・ティアーズの姉妹機である

サイレント・ゼフィルスを改修したという機体。

両者共にBT兵器適性はじき「S」に到達するのではという

高い次元を行くエースパイロットであり

イギリスの技術者達が今最も注目している試合である。

 

『『『おぉっ…!!』』』

 

アリーナ内へ姿を現した彼女が纏っていたのは

シュヴァリエ・ノワール(黒騎士)」と名付けられた機体だ。

 

蝶を思わせる青紫色のカスタムウイングはそのままに

妖しげな黒い鎧を纏い2本の大剣を手にした姿は

妖精のような雰囲気を残していたゼフィルスから一転

異界より現れし魔剣士のような威圧感を放っていた。

 

 

「…その輝きは…!」

 

「そうだ。この黒騎士も第4世代機だ」

 

全身の装甲の隙間を一瞬駆け抜けた光が示すように

このシュヴァリエ・ノワールも白式や紅椿と同じく

第3世代機から第4世代機へと改良された機体である。

 

 

 

『それでは…試合開始っ!!!』

 

「さぁお行きなさい私のビット達!」

「食い破れ、"ファング"ッ!!」

 

試合開始のゴングと共に、両者は己の得意武器を射出

1vs1だった戦場が一気に7vs7へと変化する。

 

「ビットに近接攻撃を行わせるとは…やりますわね!」

 

「このファングはそう簡単には捉えられんぞ!」

 

ノワールのウイングから射出された6基のビット──

「ブルー・ファング」はセシリアのビットとは異なり

射撃機能は全てオミットされている。

その代わりに、エネルギーブレード発振器が形作る

鋭い光の刃が獰猛な獣の如く敵機を食い荒らすのだ。

 

しかも、ビットのサイズがティアーズよりも小さく

素早く動き回るため攻撃がとにかく当てづらい。

 

 

「流石はセシリア…捉えてくるか!」

 

「私とて"姉妹機"の使い手ですもの!」

 

その一方でファングは敵機に接近する必要があるため

セシリアは自身のビットをも囮に使うなどして

動き回るファングを射角に捉える。

 

 

「ならば私も全力を出さねば無作法というものっ!!」

 

キュイィィィ………!!

 

「来ましたわね!展開装甲!!」

 

ノワールの展開装甲の発光色は紫色。

 

ビット制御用の情報処理システムを軸としつつ

攻撃面、機動力にも割り振った攻撃重視型だ。

紅椿ほど鋭く尖っている訳では無いものの

マドカの好戦的な戦闘スタイルに良く合致している。

 

そこからというもの、マドカによる一方的な試合に──

 

 

 

とはならなかった。

 

「むぅぅやっぱり兄さんにもっと鍛えて貰わねば…っ」

 

「私にも意地というものがありますのよ」

 

何せセシリアは学園入学直後に一夏の強さに感銘を受け

ひっそりと彼の背中を追い続けてきたのだ。

大きな力を持つ者として、誰かの上に立つ者として

同い年のIS乗りとして。憧れないわけが無い。

 

マドカが振るう2本のバスターソードや

雪片に似た意匠の西洋剣「スノウフレーク」には

ウイングストライカー受領以降に1本追加し2本になった

防御用ブレード「インターセプター」を合わせていく。

先程の一夏対セシリアのカードと違って

実力が拮抗しているだけあって激しい試合となる。

 

 

「これでも元特殊部隊なんだがな!」

 

「そうでなかったら既に撃ち落としていますわよ…!」

 

だが、若干。若干ながらセシリアが押されている。

 

対応に慣れてきたとはいえ近接戦闘が苦手なことや

ソードビットの挙動への適応が遅れたこと

何よりも第4世代機が持つずば抜けた機体性能が

セシリアを苦戦させている要因だった。

 

 

 

2人の激闘はおよそ1時間にも及んだ。

 

 

「これで…決めるッ!」

 

「そうは…させませんわ!」

 

両者とも息を切らしながらも最後の一撃を構える。

 

マドカは2本のバスターソードを連結機構で合体させて

巨大なバスターブレードへと変化させ。

セシリアはスターライトmk.3と残っているビット

レーザービット3基とミサイルビット1基を全て構え。

 

 

「はぁッ!!」

 

マドカが瞬時加速で駆け出す。

 

「外さないッ!!」

 

セシリアの射撃武器がマドカをロックオンする。

 

バシューーーッ!!!

 

突っ込んでくるマドカへ向けて一斉射。

これで勝負が決まったと思われた。

 

しかし───

 

 

「ビットッ!!!」

 

「っ!!!」

 

カキィンッ!!

 

 

マドカの目の前に躍り出た残り4基のファングが

協力して巨大なエネルギーフィールドを生成したのだ。

かつて「エネルギーアンブレラ」と呼ばれた

ビットが持つ防御用兵装、搭乗者が不要だと言って

オミットされるハズであったソレは

形を変えながらも引き継がれ彼女を守ったのである。

 

「私の勝ちだッ!」

 

 

 

『ブルー・ティアーズ、シールドエネルギーエンプティ!

勝者、Ms.マドカーーーッ!』

 

真っ直ぐ振り下ろされたバスターブレードは

ブルーティアーズに残っていたシールドエネルギーを

残らず掻っ攫っていった。

 

 

 

 

 

「大丈夫か?」

 

「…ふふっ、兄妹ですわね」

 

「??」

 

兄の面影を感じる仕草で手を差し伸べるマドカ。

試合中の鋭い目付きから一転、穏やかな表情だ。

 

「マドカさん…貴女はその力で何をなさるのですか?」

 

セシリアはその仕草を懐かしみながら

マドカに一つ問いかける。未だ次世代の技術のままの

第4世代機という力で何を成すのか、と。

 

 

「……兄さんの夢を応援したい、といったところか」

 

マドカはその問いにゆっくりと答え始める。

 

「少なくとも、ISなど戦争に使うべきではないのだ…。

亡国機業に居た頃『子供が戦場に出るな』という愚痴を

何回聞いたことだか。あの時は不思議に思ったものだが

子供が戦場に出なければならないようなモノに頼る世界は

変えなければならない、と。私はそう思っている」

 

「………」

 

知っての通り、基本的にISは女性にしか乗れない。

だが女性であれば全員が等しく扱えるかと言われれば

それは否だった。IS適性という言葉が存在するように

乗りこなせる女性とそうでない女性がいる。

 

数が極わずかに限られているISという強大な抑止力に

高い適性を持つ女性を優先して乗せようとするのは

もはや必然と言えた。まだ20歳にもなっていない

幼い少女達だろうとお構い無しに、だ。

そうでもしなければ国や組織を守れないからだ。

マドカはそんな無慈悲な世界をいくつも見てきた。

 

「とても立派な志ですわね」

 

「そうか?」

 

だからこそ、ISと戦争を切り離すという兄の考えにも

強い賛同を示したのだろう。

 

 

 

「これは一夏さんにもお伝えした事ではありますが…

私は貴女達の力になりますわ。必ず…!」

 

「そうか。ありがとう」

 

 

 





まどっちの新機体のアイデア元は
ソードビットがダブルオークアンタ
バスターソードがダブルオーザンライザー。
デザインとしては原作黒騎士よりも
少し肌の露出控えめな感じ。
展開装甲の発光色は黄色だとゼフィルスには
似合わなさそうだと感じたので
白式→ユニコーン→対となる黒い方がバンシィ
→バンシィ搭乗者→マリーダさん→クシャトリヤ
→クシャトリヤのサイコフレームは紫色
といった形で紫色としました。

次回はセシリアの実家で誕生日パーティー
という予定でいるのですが
筆者が絶賛エネルギー切れ中なので
投稿はだいぶ遅くなるかと。

追記:修正情報
シュヴァリエ・ノワールの大剣を
「2対」から「2本」へ修正しました。
2対だったら4本になってしまうのに
なぜこれに気付かなかったのか…
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