「知力」の一夏君、果てなき宇宙(そら)を目指す   作:高橋ヒナタ

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エクスカリバー編でございます。
とりあえず今回と次回を予定。



第52話 イギリス編④

 

 

 

『──円卓の騎士王の剣は我らが頂いた!

かの剣を裏切りの魔剣としたくないのならば

我らの要求に応えよ──』

 

 

 

白昼堂々多くの民営放送をジャックして行われた

中東系テロ組織によるテロ予告。

 

織斑一夏と篠ノ之束を捕らえて我らに差し出せ。

さもなくば国を焼く、と。

エクスカリバーとアロンダイトが指すものが分からずとも

イギリスが危機に陥っていることは明白であった。

 

 

「…!イギリス政府と連絡を繋ぎなさい!」

 

「はっ!ただ今!!」

 

「ハロ!情報は収集しているか?!」

 

『収集中!収集中!』

 

真っ先に動き出したのは一夏とセシリア。

 

己が持つ情報網をフル活用して情報収集を進める。

セシリアは警護のために同行していた英国陸軍兵に

政府との連絡を取り次がせ、一夏は先程から鳴っていた

ハロとのやり取り用のスマホを開き。

 

 

「お嬢様!一夏様!車の用意が出来ました!」

 

「急ぎますわよ、ナンバー10へ!」

「頼む!ホラ束さんもマドカも早く!」

 

メイドが機転を利かせて用意したリムジンへ乗り込み

目指すは首相官邸のあるダウニング街10番地だ。

長年オルコット家専属ドライバーを務めてきた爺やも

気合いが入っているのか華麗なハンドル捌きを見せ

リムジンはオルコット家の駐車場を飛び出した。

 

無いとは思うが勝手にしょっぴかれても困るため

前日とは違って軍の車両は使わずに向かう。

 

 

 

「どうですか?そちらの方で分かった情報は?」

 

『ブランケット嬢が"聖剣"をご存知とのことです。

詳しい話はオルコット嬢がご到着なさってから

話したいとの事でしたので伺ってはおりませんが…』

 

「分かりましたわ。ただ今真っ直ぐそちらへ

向かっておりますので、緊急会談の準備を!」

 

『了解しました!』

 

 

「ハロ!テロ組織について何か分かったか?」

 

『情報表示!情報表示!』

 

「こいつはまた…随分と大所帯だな…!。

となれば亡国機業が1枚どころか2枚3枚噛んでるはずだ。

ハロ、これまでに起きた襲撃事件のデータも参考に

奴らの背後関係を洗い出しておいてくれ」

 

『了解!了解!』

 

こっちもキッチリ潰しとくんだった…

 

一夏達を乗せたリムジンは軍用車両や警察車両に

先導してもらいつつ、法定速度ギリギリの高速運転で

イギリスの街を駆け抜けていった。

 

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

 

──イギリス首相官邸。

 

 

「また会う事になってしまったな…Mr.オリムラ」

 

「こんな形で会いたくは無かったですけどね」

 

一夏達が首相官邸へ駆けつけた頃には既に

対テロ組織緊急対策本部が設立されており

つい先日会ったばかりの英国首相や、軍部の参謀総長など

錚々たる面子が一堂に会していた。

 

そしてそこには、セシリアが見知った顔──

 

「お嬢様!」

 

「チェルシー!」

 

オルコット家の使用人にしてセシリア専属のメイド

「チェルシー・ブランケット」の姿もあった。

何故彼女がここに居るのかだが、少し前に行われた

イギリスの内部調査にて亡国機業との繋がりを疑われ

一時的に政府の監視下に置かれていたからだ。

 

 

「早速で悪いけれど本題に入りますわよ。

チェルシー、「円卓の騎士王の剣」とは何?」

 

「…前当主様は何もお伝えしなかったのですね」

 

国の危機である以上再会を喜ぶ暇は無い。

セシリアの問いかけに対し、チェルシーは口を開く。

 

「あれは『オルコット家最後の剣』として作られた

軍事衛星…いいえ、IS内蔵の軍事衛星です…っ!?」

 

 

 

ビシリ、と、場の空気が凍てついた。

 

「「………」」

 

チェルシーが「IS内蔵の」と口にした瞬間

絶対零度の氷塊が2つ部屋の中に現れたかのような

凄まじい冷気が吹き荒れたのを、部屋にいた全員が

しっかりと感じ取った。

 

まるで猛吹雪のシベリアに半袖で放り出されたかのような

あるいは極寒の北極海に突き落とされたかのような

身体の芯から凍てつかせる"寒さ"が吹き荒れたのだ。

 

 

 

「…す、数年前、心臓病を患い死の淵を彷徨っていた

私の妹を、ISコアとの生体融合という未開拓の技術で

救ってくれたのが、オルコット家の前当主でもある

セシリアお嬢様のお父上でした」

 

話を進めないといつまでも場が動かないため

チェルシーは震えて仕方ない口を何とか動かして

謎のIS「エクスカリバー」の真実を語る。

 

「当時『エクスカリバー』とは、コア融合手術によって

ISと一体化した私の妹エクシアのことを指していました。

けれど手術に用いたコアが亡国機業より入手した

不正なものであった為に、エクシアは…軍に捕らわれて

瞬く間に…あ、IS埋め込み式軍事兵器の実験材料に…っ」

 

「──大丈夫か?…ふむ、私が話を引き継ごうか。

あの時は軍内部にも亡国機業の構成員が大勢…

それも将官クラスにまで紛れていましてね。

事態を把握した時には既に実験の承認まで行われていた」

 

プレッシャーに耐え兼ねチェルシーが倒れてしまった為

続きを知っている壮年の空軍参謀総長が話を引き継ぐ。

 

「私は衛星の運用権限だけは渡すまいと走りましたが

既に手遅れでした…。データもほとんどが改ざんされ

復旧することすら困難だったのです」

 

 

 

「……………」

 

「………いっくん、どうするの?」

 

説明を受けた"2人"は静かに思案する。

 

 

「…取り敢えずエクスカリバーのコアは没収させて貰う。

他にも色々あるが後はそっちの対応次第といった所だ。

イギリスには世話になってるからな」

 

「──だってさ」

 

少しだけ"吹雪"が弱まる。

 

まだ油断は出来ない状況だが、ひとまずイギリスは

ウサギ達を敵に回すことは回避したようだ。

 

 

「…残ってるデータは?」

 

「は。こちらに」

 

「幾つか端末を借りるぞ」

 

「は、はいっ!」

 

IS軍が保管していたデータの残骸を受け取り

複数台のラップトップやサーバーを用意させると

一夏は恐ろしいスピードで作業を始めた。

 

「束さん、少し手伝ってくれ。ハロもだ」

 

「あいよ〜」

『了解!了解!』

 

各国の国防総省すらも凄まじい勢いでハッキングされ

残骸と一致するデータが存在しないか精査される。

そして侵入の形跡は一切残さない。

今頃その国の国防総省の職員達は何事も無かったように

いつもの業務に邁進していることだろう。

 

イギリス国内は勿論、衛星の共同製造に携わったという

アメリカの企業や団体にも次々と調査が入る。

 

 

調査開始からわずか十数分──

 

「あった。コイツだ…」

 

複数の団体や組織を経由して辿り着いたのは

なんとイギリス国内にある実質名義だけの小さな企業。

 

「この会社は…!」

 

「ええと、10年ほど前に破産申請が出されています」

 

立ち行かなくなった小さな企業を丸ごと買い取って

隠れ蓑にでもしていたのだろう。周到に隠蔽を重ね

その存在を秘匿していたようだが、そんな稚拙な隠蔽

本気になったウサギ達を前に隠し通せるはずも無い。

会社のサーバーには無数の軍事兵器のデータが。

 

 

[IS埋め込み式超大型衛星兵器 エクスカリバー]

 

[制御OS:エクスカリバー(代用)]

 

[搭乗者:エクシア・カリバーン]

 

[武装:超大型収束レーザー砲]

 

そこには衛星兵器エクスカリバーのデータもあった。

埋め込まれたコアISとしてのエクスカリバーのデータは

抹消されていて残されてはいなかったが

必要最低限のデータは確保出来た。

 

「コイツは厄介だな…」

 

「一夏さんでも、ですか?」

 

データの確保こそしたが、その内容を見た一夏は

この上なく面倒くさそうな顔になる。

 

「…そうか、意地でも俺達に動いて貰いたい訳か。

俺達が動かなければロンドンが焼かれてイギリスが終わる

俺達が動けば…白騎士事件の再来ってか?」

 

「白騎士事件の…っ?!」

 

まず何よりの問題がエクスカリバーの居場所。

比較的近い位置にいるとはいえ「衛星」とあるように

相手がいるのは宇宙。国際宇宙ステーションよりも

更に倍以上高い高度1,500km付近を飛行している。

並のISではとてもではないが狙える距離では無い。

 

裏を返せば並以上のIS──一夏達の持つ機体であれば

エクスカリバーを破壊出来ると亡国機業は見込んでいて

あの時の白騎士と同じようにISの兵器としての有用性を

一夏自身の手で再び世に示させたいのだろう。

 

「エクシアは…エクシアは助かるのでしょうか…?」

 

「俺としても下手にパイロットを死なせちまうと

面倒な奴らが首突っ込んで来るんでな、出来ることなら

助け出したい所だが…まだ出来るか分からん」

 

もう1つの問題点が有人機であること。

もし仮に搭乗者のエクシアを見殺しにした場合

亡国機業にとって都合の良い形へ切り抜かれた情報を

あちこちにリークされてしまう恐れがあった。

 

 

 

さてどうしたものか。

 

「お?お?いっくん、いいモノ見〜つけた♪」

 

そんな時、束が"攻略のカギ"を見つけた。

 

「ん…?…へぇ、流石は束さんだ」

 

「これは…エクスカリバーの設計データ?」

 

それは、先程のダミー企業を更に深く漁って見つけた

衛星兵器エクスカリバーの詳細な設計データ。

 

内容は概ねチェルシーが先程語った通りで

エクシアが埋め込まれているのは、ハイパーセンサーや

PICなどのIS特有の機能を流用するためのようだ。

しかし太陽光発電パネルの出力が足りないからか

シールドによって保護されているのはエクシアのみで

衛星自体は金属製の緩衝材で保護されている。

 

「これなら遣り様があるかもな」

 

「本当ですかっ?!」

 

「あぁ。ちと計算が大変だがな」

 

詳細を知った一夏は面倒くさそうな表情から一転

大逆転の一手を思いついた時の好戦的な笑みを浮かべた。

 

 

「──攻撃役はセシリア、君だ」

 

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

 

場所を少し変え、パーラメント・スクエア・ガーデン。

 

周囲をイギリス内閣府やウエストミンスター寺院

ビッグ・ベンなどに囲まれたイギリスの中心地。

本来ならばテムズ川対岸にあるウォータールー駅周辺と

併せて多くの観光客で賑わう地なのだが、今日のこの地は

ロンドン警視庁が中心となって住民の一時避難が進められ

IS技術者や軍関係者でごった返していることで

信じられないほど物々しい雰囲気が漂っている。

 

 

「──ジェネレータは第3世代機のものを優先して繋げ!

第2世代機はあっちだ。コンバータが置いてあるから

それにジェネレータを繋いでくれればいい!」

 

「あともう5台これと同じサーバーを用意できる?

よしよし…そそ、そのケーブルはその回線に繋いどいて。

捉敵支援システムは別の回線になるから気をつけてね」

 

広場の中心に座するティアーズの周囲に運び込まれるのは

大量の機器の山。大容量バッテリーに高性能コンバータ

超伝導ケーブルなどといった電力関係

大型サーバーや無線通信機器、光ファイバーケーブルや

LANケーブルなどといった情報関係──

とにかく大量の機械があちこちから運び込まれていた。

 

下手に白うさぎ本社から資材を飛ばすと動きを悟られ

テロ組織が早い段階で動き出す危険性があったため

今用意されているのは全てイギリス国内からかき集めた

民生品ばかりだ。

 

 

「──本気なのかね?エクスカリバーの砲身だけを

地球上から射抜くなどと…」

 

「えぇ。彼女なら決めてくれます」

 

そう、今一夏達がやろうとしているのは

ブルーティアーズによる超長距離スナイプである。

 

「スターダストシューターは2~3発撃ったら

壊れてしまうでしょうが…」

 

「そうか…にわかには信じがたいが君がそう言うのなら

間違いは無いのだろう。スターダストシューターくらい

イギリスを──いや、この世界を守る為ならいくらでも

壊してくれて構わんよ」

 

「ありがとうございます」

 

一夏はイギリス首相からのGOサインを受け取ると

スターダストシューターが見つめる先へ振り返り

作戦の始動を宣言する。

 

 

「オペレーション・ヤシマ発動!レーザー砲狙撃準備!」

 

天高く掲げられた扇を射抜く、屋島の戦いの始まりを。

 

 

 

 

 

「ブリリアント・クリアランスとの連動開始。

各システムの回線を接続。射撃用諸元の入力を開始」

 

「了解しましたわ。専用OSの正常稼働を確認」

 

「1番から8番までのエネルギーサプライヤ接続。

出力は第3世代機エネルギー許容量の最大値をキープ」

 

「サプライヤ接続、増設コンデンサ作動を確認」

 

イギリス中から集ったISが厳戒態勢で見守る中

数多の機器に繋がれ空を見上げるブルー・ティアースへ

莫大な電力がIS用エネルギーへと変換され流し込まれる。

 

各地から急遽取り寄せた幾つものIS用ジェネレータや

民間用発電機から出力調整用のコンバータを通し

ティアーズの特徴とも言えた翼を取り外して増設された

急造大型コンデンサへと。

 

 

「地球自転および重力の誤差修正を開始」

「観測衛星がエクスカリバーを補足しました」

「全サーバーのデータリンク確立完了」

 

「…よし。最終調整はこちらで引き受ける。

さて束さん…ここからが大仕事だぞ」

 

「望むところだよいっくん。任せといて♪」

 

狙撃用エネルギーが着々と充電されていく傍らで

無数のラップトップを前に一夏と束が気合いを入れる。

 

2人がこれから行うのは、エクスカリバーの軌道計算。

砂粒が可愛く見える狙撃ポイントの割り出しもそうだが

最も困難なのは強い衝撃を受けたエクスカリバーが

軌道を逸脱しないタイミングを見極めることだ。

 

 

「スペースデブリおよび小惑星の軌道を入力」

 

「慣性と重力の情報も入力して…計算開始っと」

 

エクスカリバーの全備質量が非常に重たいために

本体が持つPICでは姿勢を制御するのが精一杯。

レーザー砲破壊の衝撃で公転に減速を掛けてしまうと

地球の重力に引かれて落下を始めてしまう。

逆に公転に加速を掛けてしまうと衛星が軌道を逸脱し

他の人工衛星を巻き込んだ大事故を起こしかねない。

 

 

 

「第1、第2コンデンサ充電率120%!」

 

「第5次最終接続!」

 

「全エネルギーをスターダスト・シューターへ」

 

「了解ですわ。全エネルギーサプライヤ解放

レーザー発振用大型触媒を投入、励起準備完了」

 

ライフルの方もほぼ全ての準備が整う。

 

 

 

「どうだセシリア。いけそうか?」

 

「勿論ですわ…!」

 

静かに空を見つめ精神を研ぎ澄ませるセシリア。

 

"アレ"は、父が自分のために遺してくれた大切なモノ──

しかしそれが敵の手に落ちこちらへ弓引くというのなら

オルコット家当主の名を継いだ者としてあの魔剣を

必ずや撃ち落とさなければならない。

 

昨日見た夢で父は自分の事を「最高の娘だ」と

認めてくれたのだ。父も認めたその力を今見せずして

一体いつ見せるというのか。

 

 

「射撃タイミングまであと60だ。準備してくれ」

 

「はい!」

 

ガチャリ、とトリガーとフォアグリップへ手を添える。

 

センサーをリンクさせれば、視界は星空へと変わった。

 

 

「発射まであと30」

 

その場にいる全員が無言で事態の行く末を見守る。

 

 

「あと10、9、8──」

 

ついに始まるカウントダウン。

 

光で射抜くか、光で焼かれるか。

ロンドンの運命が今、決まる。

 

 

 

 

 

「──3、2、1、発射!!!」

 

「狙い撃ちますわッ!!!」

 

バシュィィィーーーンッッッ!!!

 

その刹那、空の彼方へ一条の光が駆け抜ける。

 

ライフルを一気に赤熱させた超高エネルギーの輝きは

何者にも邪魔されること無く真っ直ぐに進み

そして青い空に吸い込まれるように消えていった。

 

結果は───

 

 

 

 

 

 

 

「レーザー砲のみの破壊を確認!!!」

 

「「「やったーーーっ!!!」」」

「「「おぉぉーーーっ!!!」」」

 

(エクシア)を傷付けること無く、その刃を砕いたのだった。

イギリスの平穏は、守られたのだ。

 

 

 





エクスカリバーをどう破壊させるかは
だいぶ悩みました。
原作だと一夏君達が宇宙へ出たらしいですけど
今回イギリスに来てるのが6人だけなので
出撃メンバーにかなり困ってしまって。
思いつきでちょっちヤシマ作戦に寄せてみました。

エクシアちゃんをどうするのかとか
事件の後始末とかその辺は次回へ。
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