「知力」の一夏君、果てなき宇宙(そら)を目指す   作:高橋ヒナタ

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お久しぶりです。
モンストとパズドラでガチャ爆死した私です。

エヴァ完結させて燃え尽きてましたが
モチベーションが少しだけ戻ってきたので
少しずつ執筆再開していこうかな、と。
ISの原作小説(電子版)を手に入れましたが
この小説は当初の想定のままで行きます。



第54話 大晦日

 

 

 

──今日は12月31日。またの名を大晦日。

 

日本在住の生徒たちの多くが帰省していく中

一夏もまたお忍びながらもIS学園を離れていた。

 

 

「実家の方は今も雪子叔母さんが?」

 

「あぁ。お前が来るのを楽しみにしてたぞ」

 

「そ、そうか…」

 

一夏はあんな場所の家でも実家に住んでいる形なので

別に大晦日に実家に帰る必要など無い訳だが

箒の叔母から「ぜひ来てくれ」と呼ばれたのである。

叔母篠ノ之雪子曰く、どうせ結婚して家族になるんだから

今から篠ノ之家に帰省に来ても問題ないわ、との事。

 

「ラウラとマドカは?」

 

「昨日千冬姉が連れてったよ」

 

「はしゃぎ過ぎてないと良いが…」

 

「無理だろうな」

 

「…千冬さんは元日は?」

 

「『真耶とのジャンケンで負けた』だってさ」

 

 

 

モノレールと私鉄、バスを乗り継いで40分ほどすれば

2人が生まれ育った街にある篠ノ之神社に到着する。

 

この地域一帯に伝わる土地神を信仰する神社であり

江戸時代から受け継がれてきた名刀が奉納されている

いわく付きの場所でもあるというこの神社が

篠ノ之姉妹の育った地であり、一夏と千冬が剣を学んだ

篠ノ之道場のあった地でもある。

 

「何度来ても懐かしいな」

 

「ここに来るのは夏祭り以来か」

 

2人にとっては、深い思い出の地なのである。

 

 

 

「──あら、帰ってたのね」

 

「雪子叔母さん!」

 

2人が静まり返ってしまった篠ノ之道場の姿を眺めながら

感慨に耽っていると、背後から声が掛かった。

篠ノ之雪子さんだ。それと…

 

「「兄さんっ!!」」

 

「マドカ!ラウラ!」

 

一夏の可愛い妹達。

 

「お?その着物…」

 

「雪子さんに買って貰ったのだ!」

 

ラウラは紫色の着物を、マドカは青紫色の着物を

それぞれ着ている。曰く、明日ここ篠ノ之神社でも

ささやかながら行われる初詣に参加するべく

買おうとしていたものとのこと。

 

特に某副隊長の影響で日本への憧れが強いラウラは

くるくると回るように着物姿を兄へ披露する。

慣れない草履でくるくる回ったからか見事にすっ転び

尻もちを着く羽目になっていたが…。

 

 

「──一夏」

 

唐突に、そんな光景を傍らで見ていた箒が口を開く。

 

「久々に、ここでひと試合しないか?」

 

その手に2本の竹刀を持って。

 

 

「"今日は俺が勝つ"。」

 

「ふふっ…懐かしい事を言う」

 

一夏は軽くおどけた様子でその誘いに乗った。

 

まだ一夏も箒もこの街に住んでいたあの頃。

最初は箒の方が剣の腕も良く圧倒的に強かった。

一夏は何度も「今日は俺が勝つ」と意気込みながら

勝負を挑んできては返り討ちに遭っていた。

そして「明日は俺が勝つ」と叫ぶのがお決まりだった。

 

「その"明日"が来たのはあっという間だったな」

 

しかし一夏は凄まじい勢いで腕前を上げていき

小学4年生へ進学する頃にはその立場は逆転

今度は箒が一夏の後を必死で追うようになっていった。

 

「「では尋常に…」」

 

そんな過去に思いを馳せているからか

2人はそうするのが当たり前のような自然な動作で

己の身の一部を動かすかのように竹刀を構える。

 

 

 

「…ゴクリッ」

 

誰かの唾を飲む音が響いたその刹那──

 

 

「「参る!!」」

 

 

バシィッ!!

 

2人の竹刀が乾いた音と共に交差した。

 

 

「「………!!」」

 

防具を身に付けずに始めたために力は篭っていないが

その剣筋自体は全くと言っていいほど衰えていない。

 

両者共に篠ノ之道場に代々伝わる篠ノ之流剣術を

道場主である箒の父篠ノ之柳韻(りゅういん)より受け継いでいるが

2人の扱う剣術はほんのわずかに違いがあった。

 

(やはり篠ノ之流剣術を完璧に修めているだけはある…!)

 

(この隙の無さ…これが一夏の剣術…っ!)

 

数多ある剣術の中でも特に戦に勝つことに長け

特に修める事が難しいとも謳われた篠ノ之流剣術を

十全に使いこなすまでに至った箒に対し

その剣術を己の中の死地での経験と合わせて昇華させ

言わば"戦に負けぬ為の剣"としたのが一夏。

 

「……ふふっ」

 

「なんだ?」

 

「いやなに、こうしていると何だか楽しくてな」

 

「そうだな。心が通っているのが分かる」

 

「…っ」

 

「隙有りだぞ?」

 

「ぐっ…ずるいぞ一夏

 

その2人が打ち合えば、それはまさしく剣の舞。

一夏のからかいに箒が少し顔を赤くするが

それでも身に染み付いた剣さばきは鈍ることも無く。

 

 

「「……っ!!」」

 

バシィンッ!!!

 

幾度目かの鍔迫り合い。2人の視線が交差する。

引き技へ持ち込む隙を伺おうと。

 

 

 

そして───

 

 

 

「「曲者ッ!!!」」

 

 

 

2人揃って道場の天井裏目掛けて竹刀を放り投げた。

 

 

 

「アバーッ!!」

 

どこか滑稽な悲鳴が聞こえてきたかと思ったら

天井裏から、兎を模した和風の面を身につけ

フリルまみれのくノ一衣装らしきものをまとった

今は紙一重を超えてバカ側に居るらしい"天災"が

実にコミカルな姿勢で落っこちてきた。

何故か手に大正時代まで遡ったようなカメラを抱えて。

 

 

「………束さん、何やってるんすか?」

 

「いっくんと箒ちゃんの普段見れないあ〜んなシーンや

こ〜んなシーンが撮れるかなーって…!

いっくんが仕掛けたカメラ全部潰しちゃったからさ!

あれ結構仕込むの大変なんだよ?ホテルに侵入して

こっそりダクトの中から壁に小さな穴開けて──」

 

「「……………」」

 

 

一夏と箒は思った。これは"制裁"が必要だ、と。

特に箒は思った。妹相手とはいえ限度がある、と。

 

自分達の事となると暴走しがちなのは知っている。

何せ身長や体重はもちろんスリーサイズでさえ

ミリ単位で変化を記録されている位だから

こんな事に一々目くじら立てていたら身が持たない。

しかし、かといって怒らない訳にもいかないのだ。

 

 

「──だからこうして2人の愛の秘密を探るべく

くノ一束さん参上!って訳だよニンニン!」

 

「「……………」」

 

箒は落ちてきた竹刀を拾い、ゆらりと構えを取る。

 

「ってあれ?箒ちゃん凄い顔してるよ?

その竹刀をどうする気なのかな〜?…ねぇ待って?

箒ちゃん?いっくんもさ?ちょっと待って!?

確かに束さんはそこらの凡人共より遥かに頑丈だけど!

怖い怖い怖い!箒ちゃん目が怖いよ待って!!」

 

冷ややかな視線を向けられてようやく目が覚めたらしいが

もはや手遅れ──

 

 

「問答無用ーーーッ!!!」

 

ドッゴォンッ!!!

 

「グワーーーッ!!!」

 

不届き者は成敗されたのだった。

 

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

 

 

 

『え?いやこれAだって!絶対Aだって!』

『ウッソだぁ〜!味からしてBだろ!』

『アッ…終わった…不正解じゃんこっち』

 

『さぁ生まれ変わったサーモンラダーが立ちはだかる!』

『次はそり立つ壁!残り19秒!早くも右手が掛かった!!』

『7年振りの1stステージクリア〜〜〜!!』

 

頭にどデカいタンコブを作ったウサギを一旦簀巻きにし

ぶち抜いてしまった天井の応急処置と残骸の掃除を済ませ

少しすれば早くも夜の帳が降りて夕飯時。

年末年始の特番を耳に挟みつつ年越しそばをすする。

 

「んむっ…んぐっ…"すする"のは慣れないものだな」

 

「日本特有の食べ方だもんな」

 

ドイツ出身のラウラと最近日本に来たばかりのマドカは

麺をすする食べ方に慣れないのか、真似をしようとして

悪戦苦闘中だ。

 

 

「そういえば柳韻さんは?」

 

「元気にしているそうよ。年賀状も来ると思うわ」

 

「久しぶりに麻雀したいもんだな」

 

「おーやろうよやろうよ!いっくん!勝負だ!」

 

夕飯が終われば、一夏の発言に束が乗り麻雀が始まる。

 

以前は柳韻さんを中心に集まった親戚から参加者を募り

一夏や雪子さん、束を含むメンバーでやった事もあったが

ここ数年実現することは無かった。

ゆえに一夏もどこかやけに嬉しそうな顔になる。

 

 

「──お、俺が親だな。…自滅の5か…」

 

「久しぶりだからちょっと緊張するわね」

 

「………ふーん…ほーん…」

 

牌を積む時にカッコつけようとしたラウラが

他の山もぶち壊す勢いで牌をぶち撒ける事件が起きたが

ともかくとして山から4つずつ牌を拾っていく。

 

「ふむ…幸先がいい引きじゃないか」

馬鹿者っ!口に出すと悟られるぞ!

す、すまない…

 

「………んじゃま、順当に(ペー)からかな」

 

ワイワイガヤガヤしている箒チームを横目に見つつ

一夏が字牌からと"北"を投げて試合が始まる。

 

「…いっくんは順当にメンタンピン?」

 

「束さんは…何か企んでそうだな?」

 

真剣そのものと言った目つきで睨み合う一夏と束。

 

「う〜ん…こっちかしらね」

 

「待て待て待て!それを捨てたら!」

「しかし箒姉さん、こっちを引くことが出来れば…!」

四筒(スーピン)は危ないのでは…あっ!」

 

相変わらずな箒たちといつも通りな雪子さん。

 

どこかチグハグなメンツながらも試合は進んでいく。

 

「ふふん♪リーチだよ」

 

「残念束さん、それ通らねぇんだ」

 

「ほえっ!?だ、ダマテン…っ!」

 

 

「おぉ!本当に出来たぞラウラ…!ツモだ!」

 

「待て…箒お前…マジか」

 

「国士無双…っ?!」

 

 

久々の麻雀なだけにかなりの盛り上がりを見せる中

雪子さんが新しい話題を切り出した。

 

「そういえば一夏君はお嫁さんどうするの?」

 

一夏の結婚相手についてだ。

 

「4月から重婚出来るようになるけれど…」

 

一夏は既に箒以外にもアキと関係を持っているとはいえ

大規模なハーレムを作る気などは更々無かったのだが

どれだけ調べても一向に"2人目"が見つからない今

唯一の男性IS操縦者がたった1人の女性と結ばれる事を

世間は許さなかったのである。

 

"男性操縦者婚姻特例法"

 

翌年4月に適応されるその国際法は男性IS操縦者に

もとい織斑一夏にトラブルが起きる事を防ぐため

所在国に関わらず重婚を許可する、というもの。

 

この裏には、ISを操縦出来る遺伝子を持つ男の子を

より多く産んで貰いたいという思惑なども

多分に含まれているのだろうが、それはともかく。

翌年4月以降一夏は重婚出来るようになるのだ。

 

 

で、話題を振られた一夏はというと。

 

「あー…その件か。そいつポン」

 

何かを思い出すような顔をして、苦笑いを浮かべた。

 

「何だ、何かあったのか?…む、また西(シャー)…!」

 

「既に来てるんだよ。無数に」

 

一夏が思い出したのは、その特例法が施行される旨を

国際連合事務総長が口にした直後のこと。

まだ正式に確定した訳でもないというのに

自分の元へ、姉の元へ、学園の元へ、来るわ来るわ

縁談の申し込みの山が。書簡で、メールで、電話で。

 

資産家の娘だからどうだの、一族随一の美人だのどうだの

口々にアピールポイントを並べ立ててはいたものの

大抵はコネを作りたいか自陣へ引き込みたいかのどちらか

加えて相手の女性も男を下に見ている事が大半だった。

 

「知り合いとかでも無きゃ基本お断りだな」

 

そんな事もあって、今は縁談の類の申し込みは

一切受け付けないとあらゆる媒体で宣言している。

 

 

 

──と、ここで再び雪子さんが口を開く。

 

 

 

「それなら、束ちゃんはどうかしら?」

 

 

 

「ぶふぅーーーっ!?!?」

 

突然の爆弾発言に束が緑茶を盛大に吹いた。

 

 

 

「………まぁ…分かるけどさ」

 

ゲホッゲホッ…ゴメンいっくん」

 

緑茶まみれにされた対面(トイメン)の一夏と、涙目で咳込む束が

爆弾を放り込んだ雪子さんへ視線を向ける。

 

「だってほら、束ちゃん人見知り激しいでしょ?

昔からお部屋は散らかしっぱなしだって聞いてたし…

ちゃんとしたご飯も食べてないんじゃない?

箒ちゃんから聞いたわよ、全然外に出ないーって」

 

「えぇそうですよ雪子叔母さん、本人は隠してますけど

このドレスの下…特にお腹なんかぷにっぷにですから」

 

「ゔっ…ぷ、ぷにぷにじゃ無いもん…!

 

「少し前に姉さんのラボに立ち寄りましたけど

助手の女の子(クロエ)が沢山の掃除道具抱えて駆け回ってて…。

部屋の汚さは千冬さんとどっこいどっこいですね」

 

「ぐふっ…!ち、ちーちゃんと…どっこい…っ?!

 

「…一夏君なら料理も掃除も得意じゃない?

難しい話にも着いていけるでしょうし…。

素敵な旦那さんだと思うんだけれど」

 

「………」

 

唐突に浴びせられた妹からの痛恨の一撃2連打に

束は雷に打たれたようなショックを受けつつも

提案した叔母とその提案先一夏を交互に見る。

 

 

 

「……………」

 

 

 

「……………!?!?」

 

 

 

「………〜〜〜!!!」

 

 

 

そして、無言のまま目を回して倒れてしまった。

 

一体何を考えていたのかは、束のみぞ知る──

 

 

 

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

 

 

 

かぽーん…

 

 

 

「はぁ〜…風呂はいいな」

 

「あぁ、生き返る」

 

 

篠ノ之家の風呂は歴史ある神社を管理しているだけあって

こぢんまりしていながらも趣のある高級な木風呂。

お湯の温もりと木の香りが心身の疲れを癒してくれる。

 

 

 

「…一夏は来年の抱負はあるのか?」

 

「まぁな」

 

一夏と箒は、諸々の疲れを癒しながら語り合う。

 

 

「まずは太陽光発電システムの完成だな」

 

「あのステーションが完成するのか」

 

「一月中には最後の資材を打ち上げる予定だ」

 

今後の展望へ目を向ければ、視線は自ずと上──

天井のその向こうに広がっている宇宙(そら)へ。

 

「デュノア社の方で開発させてる"アレ"を発表したら

本格的に宇宙に拠点を移そうと思ってる」

 

「宇宙へ?」

 

「あぁ。宇宙ステーションか…或いは月か。

…俺たちで実例を見せて世界をあるべき姿へ戻すんだ。

果てない宇宙を目指すのは…俺の夢でもあるからな」

 

目指すべき先を見据え、一夏はそう語った。

 

 

 

 

 

「──箒?」

 

箒がふと、一夏の手を取った。

そしてその手を、自身の胸元へ持っていく。

 

「…今日は…私の事だけ見ていて欲しい」

 

「………あぁ」

 

今日二人は離れの寝室を使うことになっている。

雪子さんの配慮かあるいは──。

ともかく、今日明日くらいは全てを忘れよう、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(………一夏…お前は何を焦っている…?)

 

 

けれど箒は、結局忘れる事は出来なかった。

夢を語った彼に一瞬感じた言いようのない不安は。

 

 

 





SEEDFREEDOM見ました。
いっくん箒ちゃんは必ず幸せにしますから!
真のロマンティクスさせますから!

曇らせパートがあった方が盛り上がるのは
十分分かってるんですけど、どうしても
そういうのが苦手で…。
一流小説家への道は厳しいなァ…。
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