「知力」の一夏君、果てなき宇宙(そら)を目指す   作:高橋ヒナタ

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評価500pt突破ありがとうございます!!

その影響か、一瞬めちゃくちゃUA伸びまくって
かなり困惑してた私です。

今回は欧州組のお話──と見せかけて
クラリッサさんが大暴れする回だよ。
あの人の機体の武装名を見た時思ったんだ
ガンダムを知ってたらこうなるって。



第57話 ラウラ&クラリッサ編①

 

 

 

1月下旬のとある日。

 

その日、シャルロットやセシリアを初めとする欧州組は

IS学園を出席停止扱いで欠席しフランスへ来ていた。

 

 

「直接戻ってくるのは久しぶりだなぁ」

 

「アルベールさんは何度か来日してましたけれど」

 

「だから尚更かな。その時に用事聞いちゃうから」

 

別に全員揃ってインフルエンザに罹ったわけではない。

シャルロットとセシリアは自社の代表として

ラウラ達白うさぎ隊メンバー6人はその護衛として

歴とした仕事で学園を離れている。

 

 

「会談の時間は?」

 

「まだ余裕がありますわ」

 

今回彼女らがフランスを訪れた最も大きな理由は

第3回モンド・グロッソに合わせて開催される予定の

白うさぎ宇宙開発主催「モンド・ベローチェ」

第1回大会の調整のためのパリ市長との会談。

 

「ならば少し街を見て回っていかないか?」

 

「ラウラ、今回僕らは一応仕事で来てるんだよ」

 

「まぁ…確かにそうだな」

 

学園生であればもはやお馴染みとなりつつある

新クラス対抗戦の競技種目タイムアタック・レースや

スコアアタック・レースなどを大会として定着させ

積極的にスポーツ業界にISを浸透させようというのが

今回モンド・ベローチェを開催する理由である。

 

そして、その第1回大会の開催地として選ばれたのが

凱旋門やエッフェル塔、ノートルダム大聖堂など

特徴的な建造物が多く立ち並ぶパリ中心街なのだ。

 

 

 

「とはいえ、時間まで少し暇だもんね」

 

「でしたら…近くにあるラ・メゾン・ディザベルで

クロワッサンでも買っていきませんか?」

 

「クロワッサンか。いいな!」

 

8人は会談までの暇つぶしとして、パリ市庁舎にほど近い

ベーカリー「ラ・メゾン・ディザベル」へ向かう。

メトロ10号線モベール・ミュチュテリア駅前にある

このベーカリーは、クロワッサンコンクールで

何度も優勝を経験している有名店とのこと。

 

 

「見ろクラリッサ、鳩が凄い数だ!」

 

「彼らもクロワッサンの味の虜という事でしょうね」

 

有名店なだけあってかなりの賑わいを見せており

その味は街に住む鳩達にも知られているらしい。

買ってすぐ店先で食べる人のおこぼれにあずかる光景が

今まさに目の前でも。

 

「僕のオススメは勿論クロワッサンなんだけど

ここはどの商品も美味しいからね〜」

 

「では私はアップルパイを頼もうか」

 

「私はエクレアにいたしますわね」

 

人数分のクロワッサンと、各々が選んだ商品を購入し

早速店先で実食。

 

「う、美味いっ!」

 

「まさに鳩も虜になる味ですね!」

 

「これが1ユーロ弱とは思えませんわ…!」

 

「だよね。僕もお気に入りだよ」

 

店のあちこちにコンクール優勝のトロフィーなどが

まるで誇示するかのように置かれていた訳だが

そのトロフィーに偽り無し。

 

美味しそうなきつね色にこんがりと焼かれた

クロワッサン特有のサクサクした外側に対して

ちぎればビヨーンと伸びるほどモチモチの内側

程よいバターの香りもまた美味しさを引き立てる。

 

「モグモグ食べながら向かえばモグモグ丁度いい頃合だろう」

 

「食べながら喋るのはやめておきなよ?ラウラ」

 

8人は、クロワッサンの美味しさに舌鼓を打ちつつ

ノートルダム大聖堂前を抜けて市庁舎へ向かうのだった。

 

 

 

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会談は特に問題なく終わり、翌日。

 

一同はラパン・デュノア社の本社へやって来ていた。

目的は、新たに完成したISのテスト稼働である。

 

 

「準備は出来てるよ。今アリーナに空きが無いから

ラウラとクラリッサさんで同時にやらなきゃだけどね」

 

「構わんさ。では、クラリッサ。行こうか」

 

「はっ。隊長の胸、借りさせて頂きます!」

 

ラウラ達が白うさぎ宇宙開発所属となって以降

メンバー全員分の専用機開発が進められていた訳で。

つい先日、やっとラウラとクラリッサの専用機が──

実際に開発が難航していたのは専らクラリッサ専用機だが

ともかく2人の専用機が形になったのだ。

 

ギラギラとした好戦的な視線を交わした2人は

アリーナ内へ繋がるそれぞれのピットへ歩いていく。

 

 

「シャルロットさんはあのお二人の専用機について

一夏さんから何か伺っていますか?」

 

「いいや、聞いてないよ。ただ…」

 

「ただ?」

 

「一夏が授業に顔出さない日が結構増えたでしょ?」

 

「確かにそうですわね。お仕事もあるでしょうし…」

 

「いや、それがね。僕聞いちゃったんだよ。

一夏が『クラリッサのヤツめ』って言ってたのを」

 

「それは………ご愁傷さまですわね」

 

残るシャルロットとセシリア、白うさぎ隊隊員4人は

観客席…はここの試験用アリーナには無いので

管制室の方へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

「こちら管制室、稼働試験の準備が整いました。

御二方は出撃をお願いします」

 

程なくして計測機器の準備が完了し、テストが始まる。

 

『了解。織斑ラウラ、出る!』

 

最初にアリーナへ姿を表したのはラウラだ。

 

 

「あの機体…まさか!?」

 

「紅椿によく似ていますわね…!」

 

 

"ナイトライダー(黒椿)スタークレーゲン(「強い雨」)"

 

 

ニュージーランド産のダークレッドの椿の名を冠した

その機体は、篠ノ之箒の専用機たるIS紅椿の意匠を

色濃く受け継いだ姿をしていた。

 

航空機の翼を背負ったような形状のバックパックや

全体的に鋭利なそのシルエットは、正しく紅椿のもの。

一方で、機体右側面にレールカノンを展開している点や

ワイヤーブレード射出機と思われる武装を計4基

肩とサイドスカートに2基ずつ装備している点などは

シュヴァルツェア・レーゲンの特徴であり。

 

それは、彼女が正式に織斑の家系に連なる者であると

篠ノ之束から認められた証なのだろう。

 

 

 

『クラリッサ・ハルフォーフ、行きます!』

 

 

続けてクラリッサもアリーナ内へと姿を現す。

 

彼女の専用機シュヴァルツェア・ツヴァイクは

重厚なシルエットだったレーゲンとは対照的に

鋭い棘のような、枝のようなパーツを身にまとった

非常に鋭利でスマートなシルエットの機体だった。

 

「だいぶ変わったよね、あの人の機体」

 

「そうですわね。以前見かけた時とは大分…」

 

しかし今はどうだろうか。

カラーリングこそ黒と紅を中心としたもののままだが

その鋭利さはすっかり鳴りを潜めてしまっている。

スタークレーゲン同様レールカノンを装備している点や

腕部にブレードを備えている点など、特徴はあるのだが

かつてのような"色の濃さ"は衰えていた。

 

 

"ヴァイサーハーゼ(白うさぎ)シャーフェスツヴァイク(「鋭い枝」)"

 

 

だが冠する名が意味するのは「鋭利な枝」。

 

果たしてどこが鋭利になったのか。

それはこれから分かる事である。

 

 

 

『稼働試験開始まで、5、4、3──』

 

カウントダウン開始と共に両者が武装を構える。

 

まずは基本的な武器からということで、2人が構えるのは

ヴァイサー・ハーゼの基本武装となるレールカノンだ。

"個人の特性や作戦内容に応じた柔軟な運用"を目指した

そのレールカノンは、ラウラとクラリッサに合わせて

細かいカスタマイズが施されており、ラウラの方が

やや大口径で対遠距離性能が高められているのに対し

クラリッサの方は高い機動力を潰さないように

取り回しに優れたカスタマイズとなっている。

 

 

『──2、1、0!試験開始!』

 

『『当てるッ!!』』

 

ドォンッ!!

ドォンッ!!

 

試験開始と同時に、レールカノンの発射音が響く。

双方ドイツ最強の特殊部隊に所属していただけあって

その発射タイミングはほぼ同時。

武装特性の都合でクラリッサのレールカノンが

コンマ数秒早く射撃したが、トリガーを引いたのは

2人とも全く同じタイミングであった。

 

ドォンッ!!

 

『腕は鈍っていないようだな!』

 

ドォンッ!!

 

『勿論です!隊長こそ腕が上がってますね!!』

 

引き撃ちするレーゲンを機動力で勝るツヴァイクが追う。

ドイツ時代繰り返し模擬戦を行ってきただけあって

その動きは実に滑らかなもので。

 

そんな中、レールカノン稼働良好と見たクラリッサが

武装を切り替えて攻勢に転じる。

 

 

『──さぁ!私とのファイト、受けてもらうぞ!!』

 

『ファイト…だと?』

 

『見よ!密かに修行を重ねた我がゲルマン忍法をッ!!』

 

『ゲ、ゲルマン忍法!?まさかっ!!』

 

言ってしまえばただ単に折りたたみ式ブレードで

相手へ斬りかかるだけなのだが、クラリッサの動きは

今まで──シュヴァルツェ・ハーゼ時代にすら

見せたことのない奇抜な動きをしていた。

まるで、自分は忍者だと言わんばかりの。

 

『フフハハハッ!そらそらどうしたァ!』

 

『くっ…お前っ!笑わせてくるんじゃないっ!!』

 

放たれるレールカノンをひらりひらりと避けながら

どこかズレた気迫を纏って迫ってくるクラリッサに

ラウラはひどく困惑した。

 

『わっ、私は負けんぞシュバルツーーっ!!』

 

『そうだ!その意気よッ!!!』

 

「──ねぇセシリア。あれ本当にクラリッサさん?」

 

「………のハズですわ。…恐らく。……きっと。

 

彼女が何をモチーフに機体を改造させたのかは分かる。

機動武闘伝Gガンダムに登場するモビルファイター

ガンダムシュピーゲルだ。実際、専用機の支給に当たって

一夏から"ある程度のリクエストは受け付ける"と

言われてはいたが、まさかここまでするとは。

 

あまりの豹変ぶりに管制室の面々も困惑一色だ。

あれはクラリッサに似た別人なのでは?と。

 

 

『行けッ!シャーフェス・メッサー!!』

 

『ワイヤーブレードか!しかし我には通用せんぞッ!!』

 

鬼気迫る勢いのクラリッサに、ラウラも新武装を切った。

そう、シュヴァルツェア・レーゲンも装備していた

ワイヤーブレードの改良版に当たる武装だ。

鋭いナイフという名が示す通り、ワイヤーの先端部には

ナイフ型の小型プラズマカッターが取り付けられており

以前よりも更に深く敵機を切り裂く刃となっている。

 

とはいえ、ワイヤーブレードはドイツ時代より馴染みの

シュヴァルツェア・レーゲンの代名詞のような武装。

クラリッサも易々と軌道を読み切って回避してくる。

 

『どうかなッ!!』

 

ギュインッ!!

 

『何ッ!?』

 

「ワイヤーの軌道が曲がった!」

 

「布仏さんのビットと似た武装、という事でしょうか?

有線式の簡易B.T.兵装といった所ですわね」

 

しかしシャーフェスメッサーの本領はここから。

カッター部からスラスターを吹かして軌道を変えたのだ。

 

機体を翻して懐へ入り込もうとしたクラリッサを

4本のプラズマカッターが背後から襲う。

以前なら有り得ない位置から聞こえたスラスター音に

間一髪で反応したクラリッサは素早く上昇に転じ

背後からの奇襲を回避したが、攻撃のチャンスは

見事に潰されてしまった。

 

 

『有線ビットとは…さすがは隊長ですね』

 

『正気に戻っ──』

 

『だがッ!!』

 

『!?』

 

だが。ここで折れるクラリッサではない。

 

『その程度でこの私を止めようとは笑止!

とくと味わうがいい!我がゲルマン忍法奥義をッ!!』

 

『お前まさかっ!?』

 

『そのまさかよッ!!』

 

ギュイィィィ---ンッ!!!

 

両腕のブレードを前方に構えたかと思ったら

突如その場で回転を始め、そのまま突っ込んだのだ。

 

『シュツルム・ウント・ドランクッ!!!』

 

そう、シュピーゲルの奥義をISで再現したのである。

 

通常の航空兵器ではブラックアウトしてしまうような

強烈なGが掛かる軌道でも搭乗者の意識を保つ保護機能に

首を回さずとも360°全方位が見えるハイパーセンサー。

高速回転を継続させる全身の姿勢制御スラスター。

ISが持つ様々な機能をフル活用しての荒業であった。

 

 

『ワイヤーブレードッ!!』

 

『フハハハッ!甘いぞッ!』

 

高速回転が加わったことで、攻撃を尽く弾き返しながら

攻撃判定の塊となって相手へ──ラウラへと迫る。

 

『このままシュピーゲルブレードの錆にしてくれるわ!』

 

『くっ…!』

 

この高速回転する殺人独楽に切り刻まれれば最後

シールドエネルギーさえ容易く削りきってしまうだろう。

 

 

 

しかし忘れてはいないだろうか。

 

レーゲンが持っていた、近接型殺しの"アレ"を──

 

 

 

 

 

『いい加減真面目にやらんかァーッ!!!』

 

『がっ!?』

 

 

 

その小柄な体格からは想像もつかない怒号が響いた直後。

クラリッサはビタリとその場に縫い付けられていた。

 

 

『え、A.I.C.…!迂闊でした…』

 

『確かにこの場は我々の新型専用機の試験を行う場だ。

しかし。相手の特徴を考察することを忘れるほどに

ふざけても良いとは、一言も言っていないぞ?』

 

アクティブ・イナーシャル・キャンセラー。

ISの根幹となる機能のひとつ"P.I.C."を応用した

ドイツIS軍開発の特殊機能。

これの効果を受けた機体は基本的にあらゆる動作を

一切行うことが出来なくなってしまうというシロモノ。

クラリッサの先代専用機にもこの機能の応用品が

搭載されていたほど黒うさぎ隊では馴染みのモノだ。

 

つまり。間違いなく継承されているであろうA.I.C.を

完全に忘れてしまうほどクラリッサは浮かれていたのだ。

 

 

 

『少し頭を冷やせこの大馬鹿者ォッ!!!!!』

 

『ぐわぁぁぁっ!?!?』

 

 

 

レールカノン1門、シャーフェス・メッサー4本

IS用HK-416と付属のグレネードランチャー2丁による

鉄拳制裁が、クラリッサへ叩き込まれたのだった。

 

 

 





ツヴァイクのスパイクナックルの名前が
「嵐のように(シュツルム・ドランケ)」。
これだけで分かりますよね。
クラリッサがGガン知ったら絶対やる。
ちょっとはっちゃけさせ過ぎた気もしますが
ラウラに教えた日本知識が色々アレなんで…
ネタキャラ扱いは残当かなと。


次回でこの続きをやったら欧州組は一区切り。
レーゲンもツヴァイクもまだ武装残ってるんで
その辺について書いていく事になるかな。
新機体の詳細についても次回で。
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