「知力」の一夏君、果てなき宇宙(そら)を目指す 作:高橋ヒナタ
ゴーレム君の扱いも難儀しました。
イグニッションブーストについて詳しい仕様が
イマイチよく分かってないです…
あれ何なんですかね?特にダブル。
──クラス対抗戦当日。
『間もなくクラス対抗戦開幕となります!観客の方は─』
新入生にとっては入学後初となる新年度最初の学校行事で
クラス代表同士がぶつかり合う目玉イベントの1つだ。
学園は朝から凄まじい熱気に包まれていた。
「例の男の子が試合するアリーナは?」
「ダメだった~…もう満員だって!」
今年はイレギュラーである織斑一夏が出場するがために
例年以上の盛り上がりを見せており、彼が試合する予定の
アリーナが開場直後に満員となる程だった。
「ぐぬぬ…生で見たかった…」
ちなみに今回の試合の映像は学園の教師が撮影をしており
それが後日希望者に順次配布される事となっている。
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「一夏、手加減なんて一切してやんないからね!」
鈴の専用機、甲龍が一夏の目の前に立つ。
赤と黒をベースカラーとするスマートなフォルムと
スパイクが付いた球のような武器「龍砲」が特徴的だ。
「当たり前だ。手加減なんてするなよ?」
一夏も白式にアサルトライフルと雪片改を構えさせる。
『それでは…試合開始っ!』
「いくわよッ!」
試合開始のアナウンスが流れると同時に鈴が飛び出す。
分割された状態の双天牙月を両手に持ち、一夏の方へと
全速力で飛び出したのだ。
「俺は素直に受けてやる気は無いぜっ!」
「逃がすわけないでしょ!」
言葉こそ熱くなっている2人だが戦闘の内容は至って冷静
一夏のばら撒く弾に鈴は当たらないし、鈴の斬撃も一夏は
ひとつひとつ対処する。
「ふん、相変わらずやるじゃない!でもね──」
一夏と鍔迫り合いを始めた鈴がニヤリと笑う。
ドンッ!ドォンッ!!!
「うおっ!?あっぶねぇっ!」
甲龍の両肩に浮いていたユニットの黒い外装が開き
砲口のような部位が輝いたかと思ったその瞬間
不可視の衝撃に一夏の姿勢が大きく崩される。
「龍砲…やるな鈴」
空間に圧力を掛けて空気の砲身を作り、強烈な衝撃波を
砲弾として放つ不可視の砲台──それが龍砲である。
「…本命まで避けといて良く言うわね」
一介のパイロットでは避けようも無い不可視の砲撃。
ここまでの模擬戦で一夏には何度も見せていたとはいえ
これをしれっと避けた彼の反応速度に鈴は内心舌を巻く。
『やはり分かりやすいな、彼女は』
機体のハイパーセンサーを通して鈴を見ていたマドカが
鈴のことを直情的だと評する。奥の手を…龍砲を決めると
言わんばかりにニヤリと笑ったのもその一つだろう。
『ま、それが鈴のいいところでもあるんだけどな』
『それもそうか』
再び放たれた龍砲をヒラリと躱した一夏。
鈴はそれを悟られないようにしているつもりなのだろうが
幼なじみである一夏には表情などでバレバレであった。
「あぁもう!そろそろ本気で決着付けてやるわ!」
ヒラヒラ回避する一夏に業を煮やした鈴は双天牙月を
強く握りしめ、全力で叩きのめすと宣言する。
「受けて立つ!」
対する一夏も、本気の光が宿った鈴の目を見て気合いを
入れ直すと雪片改のみを構える。
そして両者共に相手へと切り込もうとしたその瞬間──
ピーッ!ピーッ!ピーッ!
[!WARNING!]
[!UNKNOWN APPROACHING!]
"IS接近"の警報がけたたましく鳴り響いた。
「何っ!?」
「識別コード該当無し…所属不明機か!」
センサーが捉えたISを検索に掛けるが、機体の所属を示す
識別コードがすべて「unknown」になっていたのだ。
向こうの攻撃を確認していないため所属不明としているが
正式な手続きを一切踏まずに学園内へ侵入した時点で
"敵機体"といっても差し支えはない。
2人は自身のISが指し示した「所属不明機の居場所」──
遥か上空へと視線を向ける。
真っ青な空から一機のISが四肢を大きく広げた姿勢で
一夏達の居るアリーナを目掛けて降下してきていた。
「…黒い…っ!?」
上空から降下してきたのは不気味な黒いIS。
やけに生物的なボディ部分と機械的な外装・武装部分が
アンバランスで酷く不気味な機体だ。
「…フルスキン!?」
一夏が所属不明機の構造に驚きの声を漏らす。
露出しない機体構造を指す。
シールドエネルギーの仕様上不用意な装甲の増設は
機動力や燃費が大幅に低下する欠点に繋がるため
実用化には至っておらず、今現在登録されている機体に
フルスキンの機体など存在していないのである。
『エネルギー反応を確認!撃ってくるぞ!』
「マドカ!ヤツを敵機認定!応戦するぞ!」
今も降下してきている所属不明機は右腕を下へ向け
一瞬のエネルギーチャージの後ビームを撃ってきた。
バシュゥーーッ!!
「アリーナのシールドが!?」
ブルーティアーズのスターライトmark.3を超える出力の
強烈なビームがアリーナ観客席を保護するシールドに直撃
いとも簡単にシールドが破られてしまった。
アリーナが展開するシールドの強度は恐ろしく硬く
専用機クラスの強力な武装が直撃してもビクともしない
最高レベルのものが使われている。
それを破ることが出来るとなれば、あのビームの出力は
直撃すれば間違いなく一撃必殺だろう。
『……………』
開けられた穴からアリーナへ"敵機"が降り立った。
無言の間が逆にプレッシャーを強くする。
[!WARNING LOOKED!]
「…!避けろ鈴ッ!」
無言のまま掲げられた左腕の砲口が鈴を捕捉していた。
一夏の叫びに反応し鈴はすぐさま機体を横っ飛びさせる。
「っ!?……龍砲が!」
間一髪回避した鈴だったが龍砲を片方失ってしまう。
『高エネルギー反応!続けて来るぞ!』
「デタラメな出力だなっ!」
両腕だけではなく両肩の砲口からもビームを放つ敵機。
先程と同レベルの強力なビームを連発していれば
あっという間に武装のエネルギーが尽きてしまうが
相当強力なジェネレータでも搭載しているのだろうか
目の前の敵機からはそれが見受けられないのだ。
『織斑君!凰さん!早くアリーナから脱出を!』
「今はダメだ!ヤツが暴れ出す!」
管制室の山田先生から退避を促す通信が飛んでくるが
一夏はこれを拒否。カタパルトが閉鎖されているため
撤退したくても出来ないというのが現状である。
白式と甲龍の火力を以てすればシャッターを破壊し
離脱することも不可能では無いのかもしれないが
仮にそうして上手いこと撤退に成功したとしても
少なくとも観客の避難が済むまでは使えない選択だ。
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「一夏さんは観客の安全を考えていますわね…」
「何とか退避させることができれば…!」
箒とセシリアはこの試合を管制室で織斑先生たちと共に
観戦していたが、突然の乱入者にどう対処すべきか
2人で色々と思案していた。
未確認機の乱入と同時にアリーナがハッキングされ
全ての出入口シャッターがロックされると共に
保護シールドのレベルが最高の4に設定されてしまい
一夏と鈴の退避はおろか、観客席の生徒を避難させる事も
教師達の部隊を突入させる事も不可能になっていたのだ。
「私の紅椿ならアリーナのシャッターは壊せる筈だ」
しきりに観客席を気にする一夏の戦い方を見た箒が
せめて生徒達の避難だけでもと、観客席へと繋がる
シャッターの破壊を提案する。
高機動である点以外変わった特徴の無い紅椿でも
箒の剣の腕前があればシャッターの破壊は容易い。
しかし、そこへ一夏本人から待ったが掛かった。
『ゲート前に人が密集してる!今切れば巻き込まれる!』
乱入者が振りかざす凶器を前にした生徒たちの多くが
パニックに陥り、その脅威からいち早く逃げ出したくて
ゲート前へと殺到していたのだ。
今ゲートを破壊すれば斬撃の余波やシャッターの破片で
死傷者が大量に出てしまう危険性があった。
「くっ…どうすれば……」
「外から干渉する方法…放送くらいでしょうか」
アリーナ内への放送は繋がっているようだが
放送が繋がっていても何かが出来るという訳でもない。
「黙って見守るしか無いだろうさ」
ハッキングの対処にもまだ時間が掛かるとのことであり
万策尽きた管制室の面々は事の成り行きを──
一夏と鈴の奮闘を見守ることにした。
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「クソっ!また避けられたッ!」
一夏はUNKNOWNを全力で相手していたが、UNKNOWNには
厄介な点が一つあった。
「ちゃんと狙いなさいよ!」
「俺じゃダメみたいだ!避けられる!」
一夏の方が遥かに脅威的だと見ているのか、一夏の攻撃は
尋常ではないスラスター出力で回避しようとするのだ。
それも、操縦者がいるなら死んでいても不思議ではない程
えげつない急加速急旋回で、である。
(コイツは多分無人機だ…!なら遠慮は要らないな!)
無人機でなければ有り得ない機動を見せたUNKNOWNに対し
一夏はさらに攻撃を鋭くさせていく。
頭や首、胸部など、搭乗者にとって致命的となるが故に
シールドエネルギーの消耗が増加してしまう部位を──
腕部ビーム砲やカスタムウイングなど、敵機にとって
破損すれば戦闘能力を大きく削がれる事になる部位を。
急所となる部位を容赦なく狙い、閃光弾や煙幕弾などの
ありとあらゆる搦手をも使ってUNKNOWNを攻撃した。
「コイツっ…まだ避けるかっ!?」
だが、それでもUNKNOWNは食らいついて見せた。
それを見た一夏はついに未完の大技を切る覚悟を決める。
「マドカ…俺に力を貸してくれ!」
『………いいだろう!お前に「
そんな一夏の覚悟に呼応した白式が更なる進化を遂げ
手に握られていた雪片が光を纏った輝く剣へ変化した。
インターフェースに「単一仕様能力:零落白夜」との
表示が出ると残りのシールドエネルギーが減少を始める。
これはシールドエネルギーを代償にして放つ必殺剣──
織斑千冬がかつて使っていたものと同様のものだ。
「…決めるッ!」
一夏は白式のスラスターをチャージしてから吹かす。
何度も使っている
加速を保ったまま再チャージし追加で瞬時加速を発動。
『
それは織斑千冬が相手の懐へ潜り込む時に多用していた
莫大な加速力を得る絶技。これを土壇場で完成させ
一夏は零落白夜をUNKNOWNへと叩き込む。
「うおぉぉぉーーーッ!!!」
「………!!」
「…あれを躱したっていうの!?」
『仕留め切れていないぞ!』
──直撃はさせられなかった。
渾身の一撃が直撃に至らなかったのだ。
腕を片方切り落とす事に成功していたが致命傷には至らず
UNKNOWNは未だに戦闘能力を有している。
対する白式のシールドエネルギーは既に半分以下だ。
「…まだだ!」
しかしそれで折れる一夏ではない。UNKNOWNも満身創痍
スラスターは不調のようで時折黒煙を吐いており
関節部はショートしたように電気が走っている。
これならあとは二連加速を決めるだけである。
「………今度は外さない…!」
スラスターにエネルギーをチャージ。チャージを解放して
瞬時加速を発動。加速中に再度エネルギーをチャージ。
加速と姿勢を維持したまま、それを解き放つ──
『決めろッ!一夏ぁっ!』
「これでぇッ!!!」
「………」
UNKNOWNの胸部に零落白夜が真っ直ぐ突き刺さった。
まさに一撃必殺──UNKNOWNは沈黙したのだった。
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「コアを一刀両断か…流石一夏だな」
生徒たちの避難誘導を終えた箒がアリーナへ降りてきた。
UNKNOWNはコアを真っ二つにされており、切られた腕以外
目立った損傷も無かった。
「誰が作ったのでしょうね?この機体…」
セシリアはスターライトでUNKNOWNの残骸をツンツンと
つっつきながらそう呟く。
(十中八九、束さんだろうなぁ…)
こんな無人機を作れる人物などこの世に1人しか居ない。
投入したのが束とは限らないが、作ったのは束だ。
『ジジッ…ジジジッ』
「何か言ったか?セシリア」
「いいえ。何も…」
妙な音を耳にした気がした一夏がそう尋ねる。
ハッキングの影響が残っていたのだろうか
それをノイズとして片付けようとした時だった。
『…シール……ネルギーエ…プティを…認』
「まさか!?」
合成音声が明らかにUNKNOWNから流れている。
一歩下がって機体に武装を構えさせた4人。
『機密…報保護の…め』
機体が動き出すことは無さそうだったが一切気は抜かず
何か行動を起こした瞬間攻撃を打ち込むべく構える。
しかし、UNKNOWNが発した次の言葉は4人に凄まじい衝撃と
背筋への寒気を走らせることとなる──
『──自爆シークエンスを起動します』
「「「!?」」」
「伏せろッ!」
ドォォォォーンッ!!!
UNKNOWNは残る力を振り絞り証拠隠滅を図ったのだった。
「ぐあッ!!…箒…無事…か…!」
3人を庇ってアリーナの壁へ叩きつけられた一夏は気絶
駆けつけた教師に緊急搬送されていった。
残った3人も爆発で少なくない負傷を追ってしまっており
一夏に続けて医務室へと運ばれていった。
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「………ぐっ…俺は…」
「一夏!?無事か!…良かった…本当にっ!」
一夏の視界に入ってきたのは泣きじゃくる箒の顔。
目元がかなり真っ赤になっているあたり相当長い時間
泣いていたのだろう。一夏の胸がチクリと痛んだ。
「アンタが死んだら…箒はどうするのよ…全く」
「一夏さん…勇敢すぎるのは良くないですわよ」
そして、安堵の表情を浮かべている鈴とセシリア。
口では無茶をした一夏を軽く咎める発言をしているが
2人の心境は表情がハッキリと語っていた。
「一夏…生きてるよな?夢じゃない…よな?」
「あぁ。俺は無事だよ。心配掛けてすまなかった」
彼女に無事だと伝えるため箒の頬へと手を添える。
頬へと伝わってくる愛する人の温もりが、箒に落ち着きを
取り戻させていく。
「………今日はしばらく"こう"だ。離さないからな」
──箒はこのあと織斑先生に学生寮へ連行されるまで
ずっと一夏の胸に顔を埋めたままだったとか。
箒が泣き止んだのを見て、入口に立っていた女性が
病室へと入ってきた。
「…ごめんねいっくん…私の想定が甘かった」
「束…さん!?」
機械で出来たウサミミを着け、ファンシーなドレスを
身にまとった女性。世界が血眼になって追い求める
一夏の病室へ顔を出したのだ。
これには一夏も上半身が跳ね上がるほど驚いた。
「何故ここへ?」
「ラブラブないっくんと箒ちゃんを見に、なんてね」
(ら…ラブラブだなんてっ、わ私はまだっ!)
束は空間投影ディスプレイを広げ、今回の事件に関する
調査結果を映し出した。"ラブラブ"という単語を聞いた
箒は顔を真っ赤にして悶えていたが。
「主犯は
いっくんの暗殺依頼が入ったみたいでね」
ここ数日の無人機の位置がディスプレイに表示される。
しばらく動いていなかった無人機が突如移動を始め
亡国機業のある部隊の行動経路へピタリと重なる。
束が廃棄予定という事で適当に保管していた無人機を
亡国機業が強奪した所へ、依頼主──恐らくは女権団から
一夏の暗殺依頼が舞い込んだのだろう。
そこで無人機の攻撃ターゲットに一夏を設定したうえで
証拠隠滅用の自爆システムを搭載してIS学園へと機体を
送り込んだ、というのが今回の事の顛末だった。
「依頼主まで追えなかったのはちょっとムカつく」
周到に偽装を重ねた上での依頼だったらしく、同居人にも
徹底的に追わせているが未だ依頼主を特定出来ていないと
束は不機嫌な感情を隠すことなく告げる。
「私もそのうち学園へ来るから。んじゃ、ばいび~!」
シリアスな表情から一転いつもの無邪気そうな表情へ
戻ると、いつの間にか校庭に突き刺さっていたお手製の
ニンジンロケットに乗り込み束は帰っていたのだった。
「…こりゃ荒れそうだな…色々と」
「えぇ何よあれ…あれが…ロケット?」
「とんでもないお方ですね、篠ノ之博士は」
(ラブラブ…一夏と…不純なコトを…あわわわっ)
大波乱が確定した事にため息をつく3人と、未だ頭の中が
"一夏とラブラブ"で一杯の箒だった。
箒ちゃんが原作より理性的だったので
一夏君には自力で白夜を決めてもらいました。
そしてたばちゃん登場。波乱は後ほど。
ここの白夜は雪片の特殊能力ではなく
単一仕様能力です。故に他が積める。
紅椿は現状絢爛舞踏無し、展開装甲無しの
単なるハイスペック機です。
【設定・元ネタ解説】
「黒い…っ!?」「…フルスキン!?」
ガンダムUCより。空から降ってきたバンシィを見た
リディとバナージが「黒い!?」「ユニコーン…?」と
発したシーンより。
上空から降りてきた黒いunknownという共通点から
バンシィが思い浮かんだので。
追記:更新情報
本文の一部に書き加えを行いました。