「知力」の一夏君、果てなき宇宙(そら)を目指す   作:高橋ヒナタ

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お待たせいたしました
ラウラ&クラリッサ回、後半です。



第58話 ラウラ&クラリッサ編②

 

 

 

『それでは双方再出撃をお願いします』

 

『了解。織斑ラウラ、出る!』

 

『クラリッサ・ハルフォーフ、行きます!』

 

 

白うさぎ隊新機体稼働試験、仕切り直しての再開。

 

一度こってり絞られたからかクラリッサの表情も

普段の真面目な顔色に戻っていた。

 

 

 

両者のレールカノン、シュピーゲルブレードに

シャーフェス・メッサーの稼働は良好ということで

2人は先程見せていなかった武装を構える。

 

『この"穿千弐型・黒(うがちにがた・くろ)"が箒姉さんのモノと同じだとは

思わないことだな』

 

ナイトライダーの背面に接続されていたユニットが

箒の紅椿と同様単独の武器として取り外される。

それは、紅椿では穿千と呼ばれていた特殊戦術兵装。

カラーリングがナイトライダーに合わせられているほか

続々と確立される新技術をふんだんに詰め込んだ

最新式へのアップグレードが施されている。

 

 

『それは私の"ツヴァイク"にも言える事ですよ隊長』

 

一方のクラリッサは、両手の指の間に左右4本ずつの計8本

かつてのツヴァイクが纏っていた紅い棘のような

クナイのようにも見えるナイフを握っていた。

機体の名を冠するその武装"シャーフェス・ツヴァイク"は

パッと見ではただの紅いクナイにしか見えないが

こちらもまた無数の新技術が導入されている。

 

 

 

『それでは稼働試験、再開!』

 

 

管制室から、再びゴングが鳴らされた。

 

 

『貰いましたッ!!』

 

先手を取ったのはクラリッサだ。

 

素早く片方の腕を振り抜き、クナイを4本投擲する。

一般的な防御用ブレードよりも小さいそのクナイなら

攻撃行動自体に移る速さは当然最速になると言えよう。

しかし、その"先手を取った"という言葉の意味は

そんな生易しいモノではなく──

 

 

ビュンッ!!!

 

『がっ!?』

 

あのラウラが、防御すら取れずに直撃を貰うほどだった。

 

「何?!何が起きたの?!」

 

「私も見逃してしまいましたわ…」

 

管制室から見ていたシャルロットもセシリアも

あまりの早業にその正体を見抜くことは出来なかった。

 

 

『続けていきます!はッ!!』

 

ビュンッ!!!

 

『くッ!!そういう事かッ!』

 

ガギィンッ!!

 

続けて残った4本の投擲。

 

ラウラは穿千をソードフォームへと素早く切り替え

自分に当たる軌道のクナイのみを的確に弾いて見せたが

その当たった音が、異様なまでに重たかった。

まるで大剣で殴りつけているかのような音が響く。

 

その結果が、あのクナイの正体を導く。

あれを超高速で打ち出しているのは、A.I.C.だ。

クナイの刃に強力な慣性を付与しているのだ。

 

 

『しかし使い切っては投げられ──』

 

正体を見切ったラウラが斬り込もうとし。

 

 

『面白いッ!!』

 

ビュンッ!!!

 

『さすがは隊長!』

 

クラリッサが手をかざした方向から飛んできたクナイを

紙一重で回避して見せた。

 

「一夏さんも随分と面白い武装を作りますわね…!」

 

「ナイフの先に誘導装置か何かが入ってるんだろうね」

 

シャルロットが睨んだとおり、そのツヴァイクの刃には

A.I.C.と連動した再誘導システムが組み込まれており

その効果範囲内に"枝"が転がってさえいれば

実質残弾無限の投擲攻撃が繰り返せるという訳だ。

 

 

『更にいきますよ!せいッ!』

 

手をかざした瞬間吸い込まれるように手元へ戻っていく

8本のクナイ。次の瞬間には再びそれが襲いかかる。

 

『だがそう簡単に好き勝手はさせんぞ!』

 

しかしラウラも黙って見ている訳では無い。

穿千から組み込まれていたガトリング砲を取り外すと

投擲直後のクラリッサ目掛けてソレをぶっ放す。

 

『本体が無防備なことはお見通しですか!』

 

クナイの投擲直後や回収する瞬間などはどうしても

本体が無防備になってしまう。並のパイロットであれば

その隙を突く事は困難だろうが、今戦っているのは

クラリッサの戦い方を完璧に知り尽くした部隊の隊長。

易々と連続攻撃を許すわけは無いのだ。

 

 

 

 

 

──徐々にヒートアップしていく模擬戦。

 

両者が切り札たる"ソレ"を切ったのは、ほぼ同時だった。

 

 

『本気で行くぞ!』

『こちらこそ!』

 

キュイィィ……ッ…!!

 

静かな、それでいて力強く美しい励起音と共に

両者の機体から淡い輝きが溢れ出す。

ナイトライダーからは金色にも似た山吹色の光が

シャーフェスツヴァイクからは力強い深紅色の光が。

 

その光は、フレームに鋳込まれたナノマシンの光回路が

フル稼働を開始した証にして、第4世代機の象徴。

 

「展開…装甲…!」

 

展開装甲、その内部に仕込まれたフレームが発する光だ。

 

 

『『墜とすッ!!』』

 

直後、アリーナ内で2つの"黒"が激突した。

 

 

ややラウラ有利か、あるいはほぼ拮抗か──。

そんな状況で推移していたその戦況は

展開装甲の起動によって少しずつ、だが確実に

覆しようのない"差"によって傾き始める。

 

『その隙貰ったッ!!』

 

『がっ…やりますね隊長…!』

 

左右から超高速で飛来する再投擲されたクナイを

ビットの包囲網から抜け出す時と同じ要領を使って

最低限だけ機体を翻させて回避。

そこから流れるようにシャーフェス・メッサーを発射。

ツヴァイクに浅いながらも灼けた痕が走る。

このように、両者共にハイレベルな戦闘を続けながらも

僅差でラウラに軍配が上がる攻防が続いていた。

 

実は現時点で、2人の実力差に大きな違いは無い。

ここまでの戦況が示す通りラウラがやや上ではあるが

それでも大きな隔たりというものは無かった。

では何故、そこに"差"が生じるのか。

 

 

「クラリッサさんの機体、装甲は開かないんだね」

 

「あの光…正しく第4世代機の象徴なのでしょうが…」

 

「つまり、準第4世代ってとこかな?」

 

「仮の定義とはいえそうなるでしょうね」

 

ラウラの機体は、展開装甲のフル稼働開始と共に

白式や紅椿が何度か見せているように装甲がスライドし

遠くからでも見えるほどに輝きを放つ。

しかし、一方でクラリッサの機体の展開装甲は

装甲の隙間から光を覗かせるのみであった。

 

それは、展開装甲の内部に仕込まれるフレーム

適応型骨格(アダプティブフレーム)と仮命名されているフレームの

採用量にあった。白式や紅椿はほぼ全身が該当し

紅椿をベース機とする新型レーゲンも同様。

それに対してツヴァイクはメインフレームの一部や

各種システムとのインターフェース部などに

限って採用され、一定の性能と量産性や整備性を

ヴァイサーハーゼシリーズ全体で高めている。

ガンダムで例えるなら、ツヴァイクがνガンダム

レーゲンがユニコーンガンダムといった所か。

 

 

『──甘いッ!!』

 

『シュピーゲルブレードが…ッ!』

 

IS用G36Kによる牽制と共にクラリッサが切り込むが

対格闘機戦の経験に長けるラウラはこれを見切り

ブレードの腹へ蹴りを叩き込んでこれをへし折った。

 

脚部に組み込まれた展開装甲から発振されるエネルギーが

その蹴りの威力を格段に跳ね上げていたのだ。

旧レーゲンのプラズマ手刀より着想を得たその武装は

ISの特性上武装を失った時の最終手段に過ぎなかった

徒手空拳──もとい織斑千冬仕込みの軍隊式格闘術を

あらゆる状況から飛び出す凶器に変えたのである。

 

『まだですッ!』

 

『生憎だが当分隊長の座を譲る気は無いッ!』

 

クラリッサは残った反対側のブレードと"ツヴァイク"で

蹴りの隙を狩りにかかるが、多少なりともある実力差が

展開装甲起動による機体スペックアップで開いてしまえば

流石に形勢をひっくり返す力は無く──。

 

 

 

『クラリッサ機、シールドエネルギーレッドゾーン(20%以下)突入!

試合終了条件を満たしました。試合終了です』

 

指定された終了条件に到達し、ラウラの勝利となった。

 

『今回こそ勝つつもりだったのですが…流石は隊長です』

 

『今日は機体性能に助けられた部分もあるがな』

 

因みに、この試合の終了条件は相手のSEが20%を切る事。

テスト稼働で本体損傷という本末転倒を防ぐためだ。

学園での試合通りシールドチャージ量1,000でスタートし

両者の残りSEはクラリッサが192、ラウラが409だった。

 

 

 

 

 

『さて、使い切っていない武装は残っていないか?

この後はステーション完成まで余裕は無いからな』

 

と、ここでラウラが改めて確認を取った。

これは2人の新機体の稼働テストだ。

このあとも白うさぎ隊には色々と予定が詰まっており

特にラウラとクラリッサはしばらく別行動になるため

ここで全てのテストを終えておく必要があるからだ。

 

尤も、あくまでダブルチェック的な確認で

ラウラとしてはここで"有る"と返ってくることは

想定していなかった。…していなかったのだが…。

 

 

『…その…すみません、一応一つあります』

 

『そうか、それは結k──何っ?!あるぅ?!?!

 

まさかの返答。

 

ドイツ時代からずっと模範的軍人で通っていた彼女が

まさかまさかのテスト稼働忘れ。

 

『早く言わんか!』

 

『…しかし…真面目にやれと仰られたものですから…』

 

『…なるほど…"さっきのアレ(シュツルム・ウント・ドランク)"と同類…と?』

 

『はい…まぁ…』

 

ラウラは思わず頭を抱えた。

彼女のその評価には"日本とラウラが絡まない場合"と

前置きが付けられる訳だが、今がまさにその時らしい。

つまり。先程のシュツルム・ウント・ドランクを超える

トンデモ武装が飛び出す可能性もあるのだ。

 

『………分かった。さっさと終わらせるぞ』

 

『了解です!』

 

とはいえ、確認忘れがあると分かった以上は

それもキッチリ稼働チェックをしておかなければ。

そう考えたラウラは、拡張領域からシールドを取り出し

展開装甲のプログラムを防御寄りに切り替えたうえで

自分を相手にさっさとテストしてしまえと促した。

 

 

 

──促してしまった。

 

 

 

 

 

『では、行きます!!』

 

 

クラリッサの纏う気迫が変わる。

それと同時に、ツヴァイクのカスタムウイングが

まさしく翼を広げるように大きく展開され。

右側のマニピュレーターが拳状の装備で覆われ。

 

 

 

『俺のこの手が真っ赤に燃えるぅッ!』

 

『…えっ?おまっ!?ええっ!?!?』

 

その台詞を聞いた瞬間、ラウラの思考は停止した。

 

"ソレ"を現実のモノとしてしまったクラリッサの熱意と

兄の技術力に、驚きや感心や呆れなどが入り交じり。

自らの目で"ソレ"を目に出来る事に喜びと感動を覚え。

そして、これから"ソレ"を自らが食らう事に気付き。

 

 

『勝利を掴めと轟き叫ぶぅッ!!』

 

マニピュレーターを覆ったマニピュレーター型武装へ

それそのものが赤熱化するほどエネルギーが注入され。

大きく広げられた翼からエネルギーが溢れ始め。

 

そして、クラリッサが駆ける。

 

 

 

『ばぁぁぁくねつッ!!』

 

黄金色の手のひらがラウラへ迫り。

 

 

『よっ、よせッ──』

 

『ゴッドォッ!フィンガァァァーーーッ!!』

 

シールド越しでも分かる凄まじいエネルギーを

その肌で体感した直後、地面へと叩きつけられ。

かと思えば、その勢いのまま地面を引きずられ。

 

 

『ヒィーーートォッ!!エンドォッ!!!』

 

 

『ぐわぁぁぁ〜〜〜ッ!?!?』

 

 

ドォォォ---ンッ!!!

 

高く掲げられて、ラウラは爆発に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

この騒動より数週間後、織斑宅にあるラウラの部屋に

プラモデルやアニメBluRayディスク、漫画雑誌

高級デザート詰め合わせなどがまとめて届いたらしい。

差出人の名は伏せられていたが、その名前は──

 

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

 

 

 

「それでは、私は本国で用事がありますので。これで」

 

「あぁ。先に戻っているぞ」

 

ガール・デュ・ノール、あるいはパリ北駅。

 

ここでセシリアはラウラ達と分かれメトロを降りる。

シャルロットは後継機開発のためデュノア本社に残り

セシリアは護衛役のクラリッサと共にイギリスへ

ラウラは日本へ戻りステーション建設のため宇宙へ。

白うさぎ隊メンバーもシャルロットの護衛に2名

ラウラと共に帰国するのが2名と、欧州組8名はこのあと

しばらく各々分かれての行動となる。

 

 

「お待ちしておりました、セシリアお嬢様」

 

「お出迎えご苦労様ですわ。チェルシー」

 

セシリアは合流したチェルシーとクラリッサと共に

ユーロスターで一路イギリス、ロンドンへ。

最速達ではない便だが、ほぼ2時間ちょうどの旅だ。

 

 

 

 

 

[──エネルギー産業に革命か?!各国に衝撃走る!

白うさぎ宇宙開発、太陽光発電衛星完成へ。

発電量は200万kw(原発2基分)に達する見込みか。]

 

最高速度360km/h超えの新型ユーロスターに揺られながら

セシリアはパリ北駅で買った経済新聞に目を向ける。

 

(一夏さん…貴方は世界に喧嘩を売る気なのですね)

 

そこに書かれているのは、一夏が成そうとしている事業と

それに対する各業界からの賛否両論の嵐。

セシリアには分かっている。あの太陽光発電システムは

発電量といい電力変換効率といい、日本とアメリカが

それぞれ一機ずつ打ち上げている既存の発電衛星とは

比較にならないほどの超ハイスペックであり

各国各企業の既得権益をこれでもかと踏みにじる

とんでもない大事業だと。

 

しかし、そうしてお互いに足を引っ張りあっていては

いつまで経っても新天地へ足を踏み出すことは叶わない。

実際に月はアルテミス協定こそ制定されたものの

協定加盟国は60ヶ国を突破して以降思いのほか伸びず

水面下では熾烈な睨み合いが続いている。

先陣を切って茨の道を進む勇者が必要なのだ。

 

 

 

「お嬢様は…。これからどうなさるのですか?」

 

「決まっていますわ。宇宙へと羽ばたく。それがきっと

今の世界には必要な事なのです」

 

その問いかけに、セシリアは確固たる意志を以て答えた。

 

この子(ティアーズ)もそれを望んでいるはずだ、と。

 

「きっと、この先事態は更に激変していくはずですわ。

この子達にも苦労をかけてしまうかも知れない…。

けれど…成さなければならないのです。

それは力ある者の義務だと思っていますから」

 

「セシリアお嬢様…とても立派になられましたね」

 

「貴女にそう言って貰えると嬉しいですわ」

 

自分よりいつも1枚上手と思っていたメイドからの

手放しでの賞賛に、少し照れくさくなって

セシリアは視線を新聞から窓の外の景色へ移した。

 

 

 

 

 

その時、彼女の左耳に付けられたイヤリングは。

静かに仄かな蒼い光を湛えていた──。

 

 

 





ラウラ&クラリッサ回でした。
ちょっとふざけ過ぎたかな?

サイコフレーム、もとい展開装甲の発光色は
ラウラ→バンシィ(金)
クラリッサ→Gフェネクス(赤)
を参考にしております。
Gフェネクスの機体色は銀な気もしますが…
まぁ、黒ということで。

次回は日本へ戻って一夏君周りを。
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