「知力」の一夏君、果てなき宇宙(そら)を目指す   作:高橋ヒナタ

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少し短くなってしまいましたが
キリがいい所で区切りをば。


追記:60,000UAありがとうございます!
投稿してすぐ到達したのでここに。
どれだけ時間掛けてでも完走するつもりですので
どうか今後も本作を宜しくお願いいたします。



第62話 シャトル打ち上げ編④

 

 

 

「それは本当なのですか!?」

 

「えぇ。警戒中のパトロール艦が探知したそうです」

 

 

 

"大西洋上を不明勢力が航行している"

 

 

 

それを軍部経由でセシリアが知ったのは

シャトル打ち上げから少し経っての事だった。

 

「正確な場所は分かっていますの?」

 

「一応は機密情報ですが、こちらに。」

 

セシリアはそのデータに目を通す。

 

太陽光発電システム稼働へ向けた大事業という事で

欧州諸国は世界情勢の動向などを監視していたのだが

イギリス海軍による大西洋上の哨戒もその1つであった。

白うさぎグループが展開するインターネット監視とは

別のアプローチで行われたその世界情勢監視作業は

偶然にも上手く噛み合い、スエズ運河から西進して

大西洋上へと展開する国籍不明艦を捕捉したのだ。

しかもその不明勢力は複数のISを所有していて

既にそれを上空へ向けて発進させたのだという。

 

彼らの目的は恐らく輸送シャトルへの追撃。

白うさぎのシャトルが太平洋上空で待ち伏せに遭い

今まさに保有戦力で以て応戦中であるという報は

各国のメディアによって緊急報道されている。

であるなら、その予想進路上に展開されたその部隊は

敵襲を受け損傷したシャトルに追撃を加える気だろう。

 

 

「これは………しかし…っ!」

 

セシリアは一通り内容を読み、顔を顰めた。

 

遅かったのだ。何もかも。

本当にそのIS部隊が日本から打ち上げられたシャトルを

狙っているのだとしても、イギリスに出来ることは無い。

あの銀の福音を超える機動力があれば可能かもしれないが

イギリスにそのような超高機動機は存在しないのだ。

 

 

 

 

 

(例えウイングストライカーでも追いつけない…!

あぁ…私は無力ですわ…っ!一夏さんの危機を前に

こうして無事を祈ることしか出来ないなんて!)

 

何となく確信はある。一夏は必ず生き延びる、と。

しかし、あの場には彼が大切に想っている婚約者(箒&束)

同じくらい大切に想っている義妹(ラウラ)がいる。

彼女たちは果たして無事で済むのか?

もしその中から誰か1人でも喪ってしまったら?

彼は心に深い傷を負ってしまうだろう。

自分がそうだったように。

 

そう考えた時、セシリアは胸が張り裂けそうだった。

そして祈った。彼らの無事を。耳に付けた"相棒"に。

己の無力さを嘆きながら。

 

 

 

(一夏さん──)

 

 

 

そのままセシリアは、短い眠りに落ちた。

 

 

 

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

 

 

 

(…お嬢様)

 

 

 

どこからか、声が聞こえる。

 

 

 

(お嬢様)

 

 

 

年齢を感じさせる、優し気な声だ。

 

 

 

(力が、必要ですかな?)

 

 

(っ!!)

 

 

セシリアは飛び起きた。

 

盟友の危機に自分は一体何を、と。

そう自分を恥じようとして気付いた。

とても不思議な空間に居ることに。

 

 

(ここ…は…?)

 

澄み切った青空と、鏡のように張った水面。

ぽた、ぽた、と水滴が落ちる音が規則正しく響く。

 

 

((わたくし)めの力が必要ですかな?セシリアお嬢様)

 

(あな…た…は)

 

 

そしてそんな世界で、人と出会った。

 

幼い頃から自分の世話をしてくれた爺やによく似た人物。

 

 

(ブルー・ティアーズ、ですの?)

 

(左様でございます。私こそが、ティアーズの分身。

貴女方が"コア人格"と呼ぶ存在)

 

一夏や簪からそれとなく話を聞いていたセシリアは

すぐに彼の正体に気が付いた。彼こそがティアーズの

コア人格と言うべき人物なのだと。

 

 

 

(織斑一夏様がこう仰っておられましたな。

剣を振るうには心が必要である、と。

…徒に力を振るうだけであればそれは暴力と同じ

しかし想いがあれども力がなければ何も成し得ない。

素晴らしい言葉だと私めは感じました)

 

 

彼が静かに語る言葉を、セシリアは確りと心に刻む。

 

そして、彼が言葉を一度区切れば、セシリアの前に

1機のISが姿を現す。

 

その名を示す深い青に、気高さを表すような金の差し色。

どこまでも羽ばたいていけそうな8枚の青い翼。

2丁のライフルを両手に、2丁のレールガンを両腰に携え

左腕には流線型の洗練されたシールド。

もちろん、その名の由来であるビットも健在。

正当な進化を遂げたブルー・ティアーズが、そこに居た。

 

 

(これを…私に?)

 

 

(今のお嬢様には必要な力かと思いましてな)

 

 

 

セシリアは、決意を新たにソレを手に取った──

 

 

 

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

 

 

 

「!!」

 

「セシリアお嬢様!平気ですか?!」

 

 

先程まで会話をしていた、軍部の人間の声が聞こえた。

 

 

 

パァァ…ッ!!!

 

 

「お、お嬢様っ…それは!」

 

戻ってこれたと判断した瞬間、セシリアは動いた。

 

まもなく窮地に直面するであろう彼らを救うために。

二次移行した愛機ブルー・ティアーズを、否

「B.T.シャインスコール」を身に纏う。

 

 

「国籍不明艦および所属不明ISは私が対処致しますわ!」

 

凛とした声でそう告げ、整備ピットから出る。

 

突如として纏う雰囲気が変わったセシリアに

周囲の人々は驚くが、すぐに己の仕事を実行する。

今のセシリアにはあったのだ。人を動かすに足りうる

カリスマ性と意志の強さが。

 

 

『事前に公開されていた打ち上げ予定ルートから

現在のシャトルの大まかな位置を特定しました。

所属不明機の情報についても同様に共有してあります』

 

『IS委員会に緊急発進の許可を取り付けておきました。

競技用リミッター解除についても打診しておりますので

許可が降り次第連絡させて頂きます』

 

「ありがとうございます。協力に感謝しますわ」

 

そして、あっという間に発進準備が整う。

 

 

 

(流石はお嬢様、慕われておりますなぁ)

 

(貴方のお陰でまた強くなれましたわ。"セバスチャン")

 

 

キュィィィ…ン!!!

 

シャインスコールが翼を広げ、ビットが一段せり出す。

内側から覗く金色のフレームからは光が溢れ出し

その青い翼を美しい光纏いし翼へと変えていく。

溢れる光は、当然ただの光ではない。

フレームに組み込まれた機器によって偏向された

高エネルギーが形作る、莫大な推進力を秘めた翼だ。

そこに計10基のビットの推進力が加わることで

ブルー・ティアーズの頃とは比較にならないほどの

凄まじい最高速度を手にしている。

 

 

 

「想いだけでも…力だけでも…!」

 

 

バシュゥゥゥッ!!!

 

セシリアは、ソレを扱う事への心構えを口にすると

地面を強く蹴って飛び立つのだった。

 

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

 

 

 

「ISが2、4、6…9。と、戦闘機が16か…。

わざわざこんな高高度までよくやる!」

 

大西洋上空、高度約70,000フィート。

一般に成層圏と呼ばれる領域へ、戦いの場は移っていた。

 

これほどの高度ともなると大気密度が極めて薄くなり

通常の航空機どころか軍用戦闘機でさえ飛ぶことは困難。

1976年に米国のSR-71ブラックバードが記録した

最高飛行高度約85,000フィートという数値は

今もなお破られていない、ある意味では通常の航空機の

ひとつの限界到達点とも言うべき領域。

 

 

「これ以上速度は落とせないからな。最高速度が足りない

ネーナとファルケ、本音は待機だ。俺たちで対処する」

 

「「了解」」

「はーい」

 

「簪。ビームに備えて戦闘艦橋へ移行しておけ」

 

「分かった。艦橋、戦闘モードへ移行。シャッター展開

外部観測をモニター式へ移行」

 

一夏の指示が飛び、シャトルが本格的な戦闘に備える。

艦橋のガラスを覆うように耐熱耐ビームシャッターが降り

モニターが外の景色を映すようになる。

 

 

 

「1人で8機やる計算になるが…行けるか?箒、ラウラ」

 

「あぁ!」

「いつでも!」

 

補給を終えた一夏達が再び空中へと飛び立った。

 

 

 

 

 

[!WARNING!]

[!LOOKED!]

 

「クッ…数が多いなっ!」

 

[!WARNING!]

[!LOOKED!]

 

「まずい、ラウラッ!」

 

「行かせんっ!!」

 

しかし、シャトルの耐久を考えると悠長な真似は出来ず

防衛戦力であったネーナ、ファルケ、本音の離脱は

確実に3人の肩に重しとしてのしかかってくる。

先程からずっとロックオン警報は鳴りっぱなしだ。

 

敵対勢力の機体は、なりふり構わず改造したようで

背中に増設ブースターを複数背負っていたり

脚部がブースター内蔵の完全空戦仕様になっていたりと

シャトルに十分追随出来る機動力を確保していた。

もちろんこの様な改造は機体に過剰な負担を掛け

数回の出撃で機能不全に陥ってしまうものだが

そんな手を使ってでも一夏達を墜としたいのだろう。

 

[SHUTTLE DURABILITY:49.8%]

[!!CAUTION!!]

[!!DURABILITY DOWN!!]

 

『織斑君!シャトルの耐久が…っ!!』

 

耐久値も少しずつ危険域に突入する。

飛び交う流れ弾が着実にダメージを蓄積させていた。

 

 

 

[!WARNING!]

 

[!LOOKED!]

 

「──いっくんっ!!!

 

そんな中、束が突然大声を上げる。

 

視線の先には、フリーになった一瞬の隙を突き

大口径のビームキャノンをチャージする敵機の姿が。

 

あれを撃たせてはならない、と。

 

「クソォッ!!!」

 

「姉さんッ!!」

 

 

 

 

 

万事休す。そんな時だった──

 

 

 

バシュゥゥゥッ!!!

 

「何だッ?!」

 

下から1本の光条が飛来し、発射直前のビームキャノンを

寸分違わず撃ち抜いたのだ。

 

思わず一夏も箒もラウラも、相対する敵IS操縦者達も

簪も束も、その光が飛んできた方向へと視線を向ける。

 

 

[IS:B.T.SHINE SQUALL]

[PILOT:CECILIA ALCOTT]

 

「セシリアっ!?」

 

「なぜここに?!」

 

思わぬ人物の登場に場が騒然となる。

 

セシリアは今オルコットグループの諸業務やらで

イギリスにおり、別働隊での参戦予定も無かったはずだ。

特に現地(パリ北駅)で分かれる際に見送ってもらったラウラは

その驚きが強いようだった。

 

しかしそんな場の驚きを他所に、セシリアが動く。

 

 

「ティアーズッ!!」

 

バシュバシュバシュバシュッ!!!

 

8枚4対の翼にマウントされていたビットが一斉に放たれ

敵陣の真っ只中へと飛び込んだ。

 

 

「何なの?!あの機体は!」

 

「新型!?なんて速さっ!」

 

紅椿にも負けず劣らずの速さで飛び出したセシリアは

射掛けられる攻撃を左手のシールドで防ぐと

周囲から飛び込んで来る敵機をビットで牽制しつつ

近接戦闘用のプラズマブレードを抜刀。

 

斬!斬ッ!!

 

目の前に迫っていた敵機の武装を一瞬で切り刻む。

 

「ッ!ブルー・ティアーズッ!?」

 

続けて、混乱の最中でも銃撃を繰り返す敵機へ突撃し

すれ違いざまに相手が持っていたライフルへ一閃。

 

 

「…近付くのよ!そうすれば奴はビットを撃てない!」

 

「イギリスの候補生は近接戦闘に難があったはずよ!」

 

その機体がブルーティアーズの後継機であると気付いた

敵機は一斉に利き手に近接戦闘用武装を構えて突撃

セシリアが苦手とするレンジで戦おうとする。

 

確かにそれはセシリアに対して有効な戦法だ。

彼女は近接武器を呼び出すのに音声認証(初心者用の手段)が必要なほど

近距離戦闘を苦手としており、代表候補生以上の腕なら

一方的に仕留めることも出来るだろう。

しかし。それはあくまでも学園入学直後の話。

あらゆる面に於いて成長したセシリアにとっては

対近接格闘機の特訓など嫌という程積み重ねており。

 

つまり──

 

 

「甘いですわッ!!」

 

バシュウゥッ!!

 

「こっ、これはッ!?」

 

「うわぁぁっ!?!?」

 

ビームビット8基が一斉に光を放った。

 

ビットを使えば自爆しかねない距離をものともせず

寸分の狂いも無く敵機を撃ち抜いてみせたのだ。

2機の両腕の武装4つとカスタムウイングを2箇所ずつ

全てを見抜いているかのような狙撃だった。

 

撃ち抜かれた敵機はスラスター出力が大きく低下し

戦場の移動に着いて行けなくなり脱落していく。

 

 

 

「さぁ行きますわよ。セバスチャン」

 

(かしこまりました、お嬢様)

 

[単一仕様能力:輝かしき円舞曲(ブリリアント・ワルツ)]

 

ティアーズの単一仕様能力が起動する。

 

情報処理システムとFCSが連動、フル稼働を始め

打鉄参式にも似たマルチロックオンが発動。

ビームライフル2丁、両腰の折り畳み式レールガン2門

ビームビット8基、ミサイルビット2基に加え

左腕のB.T.シールド突撃を含めた計15ロック。

そして、ロックオンが完了するのに1秒も掛からず。

 

バシュゥゥゥッ!!!

 

「す、スラスター大破っ!追跡不能ですッ!」

 

「アルファ隊、ブラボー隊も追跡不能!」

 

ティアーズの攻撃はIS6機と戦闘機9機を正確に捕らえ

その殆どの戦闘能力を奪っていった。

 

 

 

「一夏さん!」

 

「やるぞ!箒、ラウラ!!」

 

「「あぁ!!」」

 

敵方の戦力を大幅に削いだ一夏達は、一転攻勢に出る。

 

セシリアのマルチロックオンに合わせた一斉射撃。

しつこく抵抗を続ける敵機もこれに一掃され

シャトルはついに危険域を脱したのである。

 

 

 

あとは、シャトルを完全に宇宙へ上げるだけだ。

 

 

 

 

 





セシリア、覚醒。
第二形態の元ネタは当然ストフリ。
おまけにライフリ要素(シールドビット)もちょっと。
前半パートはフリーダム初出撃を
後半パートはストフリ初出撃を
それぞれ参考にして書いてみました。

B.T.は当然「BlueTears」の略。
読みとしては「ビーティー」。
単一仕様能力は言わば「ロックオン能力の強化」。
シールドを含む全射撃武装のロックオンの連動
あとはロックオンの速度と精度の大幅向上。
早い話が、基本的にワンオフ発動のセッシーは
射撃を一切外しません。


次回、多分シャトル打ち上げ編ラスト。
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