「知力」の一夏君、果てなき宇宙(そら)を目指す 作:高橋ヒナタ
完全なる独自解釈パート。
既に原作ルートを大きく外れている今の時点で
その辺気にしても意味無いとは思いますがね
実はある2人の出番が消えてしまうんですよ…。
無理やり出せなくはなさそうですが。
それと、お試しのちーちゃん視点導入。
──2月某日。
卒業シーズンが迫り、IS学園を含む多くの学校では
最上級生が受験や就職のため忙しくなる頃合。
「レゾナンスに新しく出来たスイーツショップさ!
誰か行った?!どんなだったか教えてよー」
「お〜、そのショップなら知ってるのだ〜。
あんこサンドが美味しかったのだ〜!」
「さっすがのほほんさん!私も行ってみよーっと!」
「うちの部活、先輩が大勢卒業で抜けちゃうのよ…。
でね、副部長ががっつり
「うわー…深刻だけどちょっと早とちりだね〜。
新入生、専用機持ちどれぐらいいるんだろう?」
「いやぁそんなにいないんじゃない?まーやんだって
今年が多くて大変だーって嘆いてたじゃん」
そんな頃合な訳だが、1年1組には特に影響は無かった。
いつも通り他愛のない世間話に花を咲かせている。
全学年全クラスの中でも特に模範的な1組の生徒たちは
殆ど遅刻や欠席をすることも無く、今日もこうして
授業の準備を済ませて先生達の到着を待っていた。
「おはよう諸君。全員揃っているな?」
「織斑先生おはようございまーす!」
「「おはようございまーす!」」
程なくして、織斑先生が山田先生を連れて顔を出す。
「む?織斑はどうした?」
「あれ?織斑くんは?」
「織斑くんどうしたんだろう?」
が、クラスの顔とも言うべき"彼"がいない。
「山田君、織斑から連絡は?」
「来ていませんね…」
「珍しいな」
白うさぎ宇宙開発CEOでもある彼は仕事が忙しく
会談やら会議やらどうしても外せない予定が入ったりで
欠席することは決して珍しいことではないのだが
今日のように無断でというのは滅多に無いことだった。
「篠ノ之。何か聞いているか?」
そこで織斑先生は彼に最も近い箒に問うた。
事情を知ってはいないか?と。
「作りたいものがあるとかで
ワークショップで何かしていて…」
「一昨日から?私も顔を出したがあれからずっとか?」
「はい」
そこで箒から返ってきた答えを聞いた織斑先生は──
「…山田君、少し外す。後を頼む」
「えっえっ?織斑先生?!」
焦ったような顔で教室を飛び出して行った。
┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄
「…余計な事をしでかしてくれるなよ…?」
一夏のヤツが一昨日朝からワークショップに籠って
何やら作業に没頭していると篠ノ之から聞かされた時
私は思わず教室を飛び出していた。
普段のアイツは無断で授業を欠席したりしない。
いっそ強かと言えるほど"点数"を取り逃さないヤツだ。
前にも増して仕事が忙しくなってきたとかで
最近欠席自体は増えていたが、テストでは結果を出すし
事前の欠席連絡も欠かしたことは無かった。
ヤツの脳天に出席簿を振り下ろす機会が無いな、なんて
自分でもそう思ってしまうくらいだ。
だからこそ。逆にこの無断欠席が不気味だった。
『次は白うさぎ本社前〜、白うさぎ本社前〜。終点です』
ようやく新鮮さが薄れ始めた本社前駅に降り立つ。
真耶が連絡を入れてくれているとは思うが
一応私の方からも職員室へ一報を入れておこうか。
「ようこそ白うさ──おや、織斑様。どんなご要件で?」
本社ビルへ入れば、いつもの受付嬢が立っていて
私を出迎えてくれる。彼女とはもう顔なじみだ。
仰々しい大企業のフロントと顔なじみというのは
何だか妙な気分だが、それは置いておいて。
「一夏は顔を出しているか?」
「CEOですか?少々お待ちを。」
篠ノ之は一夏がワークショップに籠っていると言ったが
入れ違いになるのは面倒なのでフロントで確認を取る。
「…一昨日急用が出来たと連絡が来ていたそうです。
恐らくですがご自宅にいらっしゃるのでは?」
「そうか。ありがとう」
「いえいえ」
が、やはりアイツは自宅から出ていないらしいな。
ポ-ン♪
ならば使うエレベーターは直通エレベーターの方だ。
共用エレベーターの方はあれはあれで絶景なのだがな。
前に一度気まぐれであっちを使ったことがあったが
エレベーター特有の圧迫感が無いのはもちろん
太平洋も一望出来て、まぁ、悪くはなかった。
(………アイツは何をしようとしている…?)
この件に束が絡んでいるとすれば、篠ノ之は言うだろう。
それに、一昨日私が顔を出した時にヤツは居なかった。
となればまだ厄介度としてはマシなのだろうが…。
束ともくっ付いてから──正直嘘だと思いたい──
一夏のヤツが束に似てきているような気がするのだ。
具体的に言えば、やる事がいちいち大袈裟だったり。
束は周りのことを気にせずにあれこれやらかすから
私も遠慮なくアイアンクローをぶち込んでやれるんだが
一夏はちゃんと私を含めた周囲のことを気にかけるから
そうポンポンとシメる訳にもいかない。
この前なんかも純米大吟醸を買ってきたかと思ったら
板わさと冷奴、あとは白身魚の刺身まで用意して
マッサージと合わせて疲れを吹き飛ばしてくれたしな。
疲れ切った金曜の夜にあれは反則だろう!?
あぁ…思い出すだけで大吟醸のフルーティーな味わいと
マッサージの心地良さが──おっといかん、脱線したな。
ポ-ン♪
[37階]
抜けた気を入れ直しているうちにエレベーターは
目的だった37階に到着していた。
[Rabbits Workshop]
この無骨さとスマートさを合わせた様なSFチックな内装は
何度見ても自宅にいるとは思えんな。
「一夏!一夏いるか?!」
ともかく、一夏を探さなければ。
欠席連絡を忘れるほど熱中しているのであれば
恐らくまだワークショップにいるはずだ。
そうして妙に散乱したワークショップ内を進み──
「あれっ?!千冬姉?何でここに?」
「何をしているんだ…お前は………」
巨大な…何と言えばいいか…金属製のパイプが
ワークショップの壁をぶち抜いて敷かれる中で
目の下に深いクマを作った一夏が作業を続けていた。
砕けたコンクリートの粉を全身に被ったまま
傍らのデスクには…コーヒーか。恐らくはブラック。
全く…当分の愚弟呼ばわりは残当といったところだな。
「なぁV.E.N.U.S.。俺、何時間寝てないっけ?」
『現在起床から48時間19分38秒です』
「そんなにか?休憩はしたはずなんだけどな…」
眠気など無いと言わんばかりのギラついた目の一夏。
…この状況を解決するとしたら、首に手刀でも撃ち込んで
ベッドへ強制連行してやれば済む話なんだろうだが
せめて何を作っているのかは聞いておくべきだろう。
その為にわざわざ山田君に授業を押し付けて──
尤も、1組はIS関連の授業が進みすぎているせいで
多少のんびり授業を進めても問題は無いのだが
ともかく彼女に任せてきたのだからな。
「一夏。その手に持っているのは…何だ?」
まずは、アイツが手に持つシリンダー型ケースに入った
金属の塊と思しき物体の正体を尋ねた。
「これか?ユニバーシウムだよ。知らない?」
ユニバーシウム?何だそれは…?
あまり科学や
そのユニバーシウムとやらは聞いたことが無いな。
ケースの中のソレは一夏がケースを動かすたびに
うっすらと7色に煌めいて見える。
「ステーション建設のついでに月へ調査へ行ったんだが
そこでいくつかサンプルを回収出来たんだ」
待て、月?何度か宇宙へ行っているのは知っているが
月だと?半世紀前なら人類史に残るような偉業を
こうもさらっと言ってのけるのか…この弟は。
驚きで言葉が紡げずにいれば、弟は更に話を続ける。
「こいつは"宇宙にしか存在しない"と言われる金属でな。
色々と面白い特性があるんだが…一番特徴的なのは
特定の有機物──生物の細胞と分子レベルで融合させると
継続的なエネルギー生成や独自ネットワークの構築
慣性に干渉する力場の形成なんかが起こるって所だ」
………相変わらずこいつの話は分かりにくい。
エネルギーの生成と?ネットワークの構築?
慣性に干渉する───?
……………
……………
……………
猛烈にこいつの頭に出席簿を叩き込みたくなってきたな。
おっと、出席簿をここまで持ってきてしまっていたか。
…尚更コレをアイツの頭に叩き込みたくなってくる。
「まぁつまりだ」
何だかアイツの頭に機械製のウサミミが乗っているような
幻覚が見えてきたんだが、どうしてくれようか。
「これを使えばISコアが作れる」
バコォンッ!!
「いーーってぇっ!?!?」
とりあえず1発ぶち込んでやった。
こいつまで束のようになられては困る。
「いってぇ…脳が左右に割れそうだ」
「これからは左右で別の事が考えられるぞ。良かったな」
「そうか!流石千冬姉!…いやそうはならねぇよ」
ただまぁ、出席簿1発で落ち着くだけマシか。
これが束の場合、パイルドライバーをぶち込んだとしても
1ミリも大人しくならんどころか余計に興奮して
愛のハグだとか何だとか宣いながらこっちへ──
やめよう。ゲンナリしてくる。
「…で、実際に作れたのか?ISコアは」
この仰々しい設備もコア製造のためのものなのだろうが
一夏はまだコアらしきものは持っていない。
「それが…加速器の調整が上手くいかなくてな…」
「加速器?」
曰くこの金属製の筒がその加速器とやららしい。
これを使ってその金属を加工する、と。
しかし先程から一夏は何かを探して彷徨うばかり。
何がしたいんだお前は…?
「………それだ」
「?」
急に一夏がこちらを見る。それだ、とは?
「その出席簿だ…!悪い、少し借りる」
「おっ、おい!」
一夏は私から出席簿を奪っていったかと思えば
それを加速器の下──若干傾きが付いていた箇所へと
差し込んだ。高いんだぞ、その特注の出席簿…。
『加速器始動!加速器始動!』
「よしH.A.L.O.、オペレートは頼むぞ」
何が起きているのかは何一つ分からないが
ユニバーシウムとやらの加工が始まるらしい。
加速器の中を駆け巡っていた強力な光がプリズムに当たり
一夏がそのプリズムを傾けていくと、それに従って
光も角度を変えていく。それをあの台座にはめこまれた
ユニバーシウムの結晶体へ当てる訳か。
キィィィ-----ン…!!
その光は真っ直ぐ結晶へと吸い込まれ
美しく7色に煌めくクリスタルへと姿を変えていた。
「出来た…!コア・クリスタルだ…!!」
「コアクリスタル?」
「これがISコアの要になるんだ」
私は束のコア製造を見ていた訳ではなかったから
ISコアをどうやって作るのかは知らなかったが
こうやって作っていたのだな…。
「あぁ、コアクリスタルには触らないでくれよ?
超高エネルギーの結晶体でもあるから、迂闊に触ると
手のひらがまるごと消えてなくなるからな」
「き、消え──っ?!」
危うく手が消し飛ぶところだった。
なんて危険なシロモノを作るんだこいつは…!
いや…だからこそISは強力なのだろう。
その後一夏はあれこれとクリスタルに機械を取り付け
あっという間にISコアを作り上げてしまった。
「なぁ千冬姉」
あぁ一夏…お前の言おうとしている事が分かるぞ。
「このコアの事、黙っててくれねぇか?」
まぁそう言うだろうな。もし仮にバレようものなら
束以上の危険人物として国際指名手配待ったなしだ。
この件はIS学園の教師として報告すべきなのだろうが…
「そうだな…
「零響?精米歩合0%のあれか。1本40万するんですが…」
「なら束と同じ場所に軟禁されてみるか?ん?」
「ご希望の本数は?」
「…ひとまず
「うげっ…かしこまりましたお姉様」
「お姉様はよせ」
私は何も見ていない。あぁ何も見ていないとも。
この前飲んだ純米大吟醸が中々に美味しかったから
つい一夏に追加でお高い純米大吟醸を頼んでしまったが
決して口止め料という訳では無いとも。
飲む時は一夏にまた一品作らせるか。
あぁ楽しみだ。
┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄
「いーっく〜〜〜ん!!!」
「そうはさせん」
「ぐえっ!?!?」
最終的に、一夏はコアを3つほど作り上げた。
そして、丁度3つ目のコアを作り終えた辺りで
どこからともなく現れたウサギが突っ込んできた。
学園にあるラボでコアの製造を見ていたのだろう。
その祝福と言わんばかりの笑顔で一夏に飛び込もうとし
見事千冬のアイアンクローで空中キャッチされた。
「まず、おめでとうだねいっくん」
「お…おう。ありがとな」
「まさか本当にコアを完成させちゃうなんてね。
これでいっくんも"天災"を名乗れあばばばばっ」
「一夏をお前と同類にするな駄兎」
「ちーちゃんひどいっ!…待って!頭割れちゃう!」
千冬にアイアンクローで頭を締め付けられ
ミシミシと嫌な音をその頭から鳴らしながら
器用にも一夏に賞賛の言葉を送った束。
酷い光景だが、実にいつも通りの光景である。
「よっ…と。ちーちゃんのパワーは相変わらずだねぇ。
束さんじゃなかったら頭が木っ端微塵になってたぜぃ!
まるでゴリラに握られたトマトみたいに──」
「あ゙?」
アイアンクローから解放されてすぐ、ケロッとした顔で
また千冬を揶揄いに行く束。痛がる素振りはしていたが
恐らくは演技なのだろう。まるで懲りていなかった。
「しかし…このコアはどうする気だ?封印するのか?」
「順当に行けばそうなるが…なんか勿体ないな。
表に出すのは論外だとしても封印は…なぁ」
「起動テストくらいしようよ〜。いっくん作のコアだよ?
ちーちゃんも見てみたくない?いっくんの作品をさ」
「…それはまぁ…一理ある」
「でしょ?!じゃ、テストはここのガレージでやろっか!
色々準備する必要があるから、ほんじゃばいびー!」
その日、世界の中心人物たるその3人が交わした会話が
やがてある男の夢を叶える切っ掛けとなるのだが
それはまた別のお話───。
ルクーゼンブルグ編、キャンセル。
原案作成時はまだ原作小説も持っておらず
ISコアの原材料なども調べていませんでした。
ゆえに、代用品の設定を書き上げたんです。
主にヴィブラニウムを参考にね。
まさかあんな名前の鉱石が材料になっていて
それがあんな外伝ストーリーまで生み出すだなんて
分かるわけ無いでしょうよ。
ユニバーシウムの加工法はアイアンマン2の
バッドアシウムのものを拝借しました。
もしこの作品を面白い、今後に期待、と
思って頂けましたら、どうか感想や高評価をば。
あと、ここすきもあると嬉しいな。
ここ最近感想や評価が全然変動しなくて
ちょっと飽きが来てしまっとるので…