「知力」の一夏君、果てなき宇宙(そら)を目指す   作:高橋ヒナタ

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お待たせしました。
65,000UA感謝です!

毎日毎日クソ暑くて気力も中々回復しないですね…
皆さんも熱中症や脱水症状にはお気をつけて。



第68話 五反田兄妹編①

 

 

 

──ラビッツ・ワークショップ。

 

 

その日そこで、密かに革命が起きようとしていた。

 

 

「ほいっ!借りてきたラファールど〜ん!」

 

「ラファール?…あぁ、リヴァイブじゃない方か」

 

IS駐機用ガレージに鎮座するは、相当に使い古された

第1世代ISが一角、初代ラファール。

デュノア社で解体予定のまま埃を被っていたところを

今日の実験のために急遽引っ張り出して貰ったものだ。

 

今から行われるのはそう、織斑一夏が製造に成功した

新たなISコアによるISの起動実験。

 

「メンテナンスはこの束さんがやっておいたから

いっくんは安心してISを動かしてね〜」

 

「そいつは安心だな。さすが束だ」

 

「えへへ〜褒められたら何でも出しちゃうぞぃ♪

何が欲しいんだい?いっくん」

 

「そうだな…束が欲しい」

 

「ほぇっ!?!?」

 

「さっさと始めんか馬鹿ども」

 

ビシッ!

ズビシッ!!

 

「「はーい…」」

 

 

最短で用意出来るという理由で選ばれた初代ラファールへ

一夏がコアをセットしていく。

 

「その子は何号コア?」

 

「弐号だ。現状1番安定してる」

 

セットするのは、作られたコアの中で最も完成度が高く

安定した状態にある弐号コア。零号コアは試作品であり

壱号コアは癖の強さが実験には向かないとして

3つの中で最も最後発の弐号が選ばれたのだ。

 

「──よし、コアが機体を受け入れた」

 

「やはり早いな。前に一度やっていたのもあるか」

 

「まぁな。これくらいは朝飯前だ」

 

いつぞやの決闘の直前にもやっていたように

さらっとコアの差し替えを終わらせる一夏。

 

 

「エネルギーバイパス正常稼働確認」

 

「量子化機構もちゃんと動いてるよ」

 

「駆動系へのエネルギー伝達確認」

 

「お、シールドと絶対防御も準備完了だって」

 

今のところは全て想定通りに進んでいく実験。

 

「じゃ、あとはいっくんが乗るだけだね」

 

 

そして──

 

 

ピピピピピピ………

 

[SKIN BARRIER:ACTIVE]

[THRUSTER SYSTEM:ACTIVE]

[P.I.C.SYSTEM:ACTIVE]

[FIRE CONTROL SYSTEM:WAITING…]

[HYPER SENSOR:ACTIVE]

 

[SHIELD ENERGY:800/800]

 

[CORE NETWORK:CONNECTED]

 

 

[-RAFALE-]

 

 

「おーーーっ!!!やったねいっくんっ!!!」

 

「あぁ」

 

新たなコアを載せたISは、無事に起動したのである。

 

「どう?動かせそう?」

 

「基本動作は問題なさそうだ」

 

機体マニピュレーターを握らせたり開かせたり

その場で軽くシャドーボクシングをさせてみたり

P.I.C.を起動させて数センチ浮かび上がってみたり。

極秘実験ゆえに外で飛ぶことは出来なかったが

最低限の動作確認には十分だろう。

 

 

 

「ひとまずはこんなもんだな」

 

一夏は機体をメンテナンスベッドへ預けISから降りた。

 

「次はどっちが乗る?」

 

ただ、起動実験のテスターが一夏だけというのは

データとしては不十分だろう。何せ一夏はイレギュラー

裏で想定外が起きていてもおかしくない。

そこで一夏は次なる実験として、千冬か束のどちらか

あるいはその両方に起動実験を行ってもらうことに。

 

「はいはいはーい!束さんが乗りまーす!!」

 

「あいよ。じゃほら、乗った乗った」

 

それに対し、束が真っ先に挙手。

束をテスターとして実験が再開される。

 

 

「よいしょっ!」

 

屈んでいない状態の機体へひょいっと飛び乗る束。

 

学園では駐機させる時は次回搭乗しやすくするために

機体を屈ませた状態で降りるよう教えられるが

今この場に集まっている3人にはそんな気遣いなど不要。

まだ常人の範疇に留まっている一夏でさえ

現役軍人に匹敵するスペックなのだから当然だろう。

 

──それはともかく。

 

 

「それじゃあ、いっきま〜すっ!!!」

 

束は意気揚々と起動プロセスをスタートさせた。

 

 

 

……………

 

 

……………

 

 

……………

 

 

「あれ?」

 

が、ラファールは起動しなかった。

 

 

「いっくん…!ど、どうなってるの?!」

 

「ちょ、ちょっと待っててくれ。今調べる」

 

束は勿論、一夏も千冬も起動するとばかり思っていたため

場が少し騒然となる。いくら本人作のコアでなくとも

束はISの基礎理論を構築した生みの親だ。

 

「──ダメだ。ブートローダもOSも正常に動いてるから

原因はもっと深いところにあるらしい」

 

「機器の故障などではないということか?」

 

しかし、一夏の調査では"機体側に問題は無し"とのこと。

 

 

「束、代われ。私が乗ってみよう」

 

「よしっ!ちーちゃん頼んだ!」

 

ならば搭乗者の方に問題があるのか?ということになり

今度は搭乗者を束から千冬へ交代する。

 

 

 

[OPERATION SYSTEM:START UP…]

 

「ふむ…問題なく起動するな」

 

「あっるぇーっ?」

 

こちらもまた起動しないのでは、と疑われたものの

千冬は難なくラファールの起動に成功した。

 

 

 

 

 

 

 

「──で、私達が呼ばれた…と」

 

「そんな気はしていたがまさかコアを作ってしまうとは…

ところで姉さんはいつまでいじけてるんですか?」

 

「うぅ…娘に嫌われるのってこんな気分なんだねぇ……」

 

そこで一夏は更なる実験サンプルの採取として

稽古中だった箒と学生寮で寛いでいたマドカを招集。

再度起動実験に移る。

 

 

「…ダメだ、私では起動できないらしい」

 

結果、箒では起動する気配すら無く。

 

「む?私はいけるのか」

 

一方でマドカは何故か問題なく起動に成功。

 

「………まさか?」

 

IS適性最高ランクである「S」を叩き出している両者が

全く異なる結果を出したのを見た一夏は、頭の中で

"ある仮説"を立てる。その仮説とは───

 

 

 

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

 

 

 

2月も大きな騒動無く進み、最後の週末。

 

 

ガラガラガラ…

 

 

「らっしゃい!」

 

「ご無沙汰してます、厳さん」

 

「一夏のボウズか!久しぶりだな!」

 

一夏は久しぶりに五反田食堂を訪れていた。

弾の祖父にしてこの五反田食堂の店主「五反田厳(ごたんだげん)」が

どデカい中華鍋を片手で振るいながら出迎える。

 

「日替わり定食特盛りで」

 

「おうよ!お前さん、食うようになったなぁ?」

 

「体づくりには食うのが一番ですからね」

 

「いい事だ!若いモンは元気が一番だからな!」

 

一夏はメニューを手に取る──までもなく注文を入れる。

頼むのは日替わり定食。ある意味では"当店のおすすめ"。

並、大、特の3種類あるボリュームは特を選ぶ。

なにせ一夏は日課として2分間の腕立て伏せに腹筋

2マイル(約3.2km)のランニングを欠かさず行ったうえで

白うさぎCEOやIS学園生としての活動を両立しているので

消費カロリーは並の男子高校生とは比較にならない。

これくらい食べなければやっていけないのだ。

 

ガツガツガツガツ…

 

ムシャムシャムシャムシャ…

 

「そういやボウズ。うちのガキどもが呼んどったぞ」

 

「………ングッ…ふぅ。弾と蘭が?」

 

ふと厳から声を掛けられて一夏は箸を止める。

食事中のマナーに関しては誰よりも口うるさい厳が

このタイミングで伝えるとは何事だろうか、と。

 

「なんでも"来たら大至急伝えろ"らしい。

蘭のヤツがワシに正面から頼んできたモンだからな

中々の大事と見える。弾は…知らん」

 

「…それは大事ですね。その蘭は?」

 

「今は部屋にいるだろうが急がんと降りてくるぞ。

ほれ、さっさと食っちまえ」

 

声を掛けてきた理由を聞いた一夏は再び箸を手に取り

残りを腹に掻き込み始めた。

 

 

 

──が、少し遅かったようで。

 

「いっ、一夏さん!?」

 

看板娘としてエプロンを身につけた蘭が姿を現した。

 

「一夏さん!ちょっと話が──」

 

「蘭!!ボウズは食っとる途中だろうが!!!」

 

 

カコォ-ンッ!!!

 

「い゙ーーーっ…たぁ〜っ!!!」

 

そして、厳の投げたお玉で静かにさせられた。

 

厳は食事中のマナーに関しては誰より口うるさいのだ。

それは、孫娘であってもお構い無しなのである。

 

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

 

「こっ、ここが私の部屋ですっ!散らかってますけど…

 

昼食を食べ終えた一夏は場所を蘭の部屋に移す。

"蘭に連れ込まれた"の方が正しいのだがそれはともかく。

 

 

「……………」

 

「あー、緊張してるのか?」

 

「えっ!?えっと…まぁ…はい

 

話があると言われて部屋まで呼び出されはしたものの

いざ2人っきりになると蘭は途端に慌て始めた。

もしこの場面が漫画になるなら、蘭の目には確実に

グルグル模様が入れられていることだろう。

 

ただ一夏には、蘭が何を言わんとしているのかは

何となく察しがついていた。4年前なら違っただろうが

ここまで露骨ならそう読み違えることなどない。

 

 

 

だからこそ一夏は、こう言った。

 

「本当に俺で良いのか?」

 

「!?」

 

蘭は、沸騰しそうな頭が急激に冷えていく感覚を覚えた。

一瞬前とは全く異なる、冷えきった冷徹な声。

本当に同一人物なのかと疑いたくなるような声。

そして、はぐらかすことなど許さないと言わんばかりに

自分のことをジッと見つめる視線。

 

「それって…どういう…?」

 

「俺を好きになってくれる。それは凄く嬉しい事だ。

他に女がいると分かっていてもそう言ってくれるのなら

ぜひその手を取ってやりたいが…」

 

「!!」

 

真意を完全に見抜かれていた事に蘭は動揺する。

一夏と共にいられる可能性が残されていると知って

一夏に複数の女性を同時に愛する甲斐性があると知って

意を決してアタックするつもりだったのだ。蘭は。

たとえ一番にはなれなくとも、彼の隣に立てるのなら

目一杯愛してもらいたい。そう思って。

 

「──事はそう簡単なものじゃない」

 

彼女の動揺が少し収まったのを見て、一夏は続ける。

 

 

 

「俺は、人を殺したことがある」

 

 

「えっ?」

 

 

 

蘭は思わず言葉を失った。

 

あの優しそうな一夏さんが?と。

 

 

「生きていく為に。小さな平穏を守り続ける為に。

きっと俺はこれからも殺しを続けることになるだろう。

そういう星の元に生まれついちまったからな」

 

「……………」

 

「俺のそばにいるのなら、いつか必ず必要になる。

生きる為に。守る為に。誰かの命を奪う"覚悟"が。」

 

「……………!」

 

その問いは、避けられぬ問いであった。

今もなお様々な思惑のために命を、身柄を、ISを、技術を

様々なものを狙われ続けている彼と添い遂げるには

決して避けては通れぬ問いであった。

覚悟も無しに彼の隣に立つことなど許されないのだ。

 

 

「それはえっと…ホウキさん、も…?」

 

「あぁ。まだまだ不完全だがな」

 

「………そう…ですか…」

 

 

 

蘭は、己の心に問う。

 

自分は本当に彼と共に人生を歩みたいのか?

殺し殺される事を覚悟してまで付き合うべきなのか?

 

「……………」

 

並の人間が簡単に答えが出せるような問いではない。

だが、五反田蘭とは。一度決めた事をそう簡単に曲げない

芯の通った人物であり。

 

 

 

「決めました…!」

 

蘭は、一夏の鋭い瞳を真っ直ぐ見つめ返し、告げた。

 

 

 

「一夏さん。好きです!付き合ってください!!」

 

 

その問いを通してより深まった、彼への恋を。

 

 

「勿論だ。これからも宜しく。蘭」

 

「はいっ!!」

 

そして一夏がその告白を二つ返事で受け入れる。

実らないと思われていた恋が、今ここに実ったのである。

 

 

 

「あ、一夏さん。少し待ってて貰っていいですか?」

 

「ん?何だ?構わないが…」

 

 

ガチャッ…

 

 

 

 

 

「盗み聞きなんて最ッ低!!お兄なんか大っ嫌い!!!」

 

「待てっ!それは誤かっ…ぬわーーっっ!!

 

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

 

 

 

「頼むっ!俺にバイトを紹介してくれっ!!」

 

妹による理不尽(偶然聞いてしまった)な折檻のダメージから復活した弾の

開口一番のセリフがこれである。

 

 

「は?バイト?」

 

「3月がピンチなんだよ!頼む!」

 

「いやお前いくつかバイト掛け持ちしてただろ…

何があったんだ?」

 

あまりにも華麗な土下座と共に放たれたものだから

流石の一夏も困惑。ひとまず事情を問うた。

 

 

 

「いや、さ。この前プレステの最新機種が出ただろ?」

 

「おう。じゃまたな」

 

「待て待て待て待てっ!最後まで聞けって!!」

 

「すまん、悪かった。続けてくれ」

 

ジョークのような入りに一夏が退室しようとするが

どうやら真剣な話らしく、弾は全力で止める。

 

「彼女出来たってのは話したろ?お前に先越されたのが

すっっっげぇ癪に障ったからさ」

 

「……………で?」

 

「その子、今年卒業なんだよ。だからさ、金貯めて

卒業祝いでも贈ろうかなって思った訳」

 

「なるほど。読めたぞ」

 

「倍率えげつないのはお前も知ってるだろ?だからさ

どうせ当たらないだろうな…って」

 

令和初頭頃に問題となって以降厳しさを増し続ける

ゲームハードの転売対策。過去の失敗を教訓に

満を持して発売したプレイステーションの最新機種も

当然のように厳格な抽選販売形式となっており

今回も著名人の当落発表で大喜利大会となるくらいには

当選確率が低かった。

 

ゆえに弾は"どうせ当たることなんてないだろう"と

そう応募だけした事すらも完全に忘れ去っていたのだ。

 

 

「プレゼント用意するって約束した後だったよ。

当選メールが届いたのは。」

 

「で、どっちも諦め切れずに俺を頼った…と」

 

「まぁそんなとこだな」

 

 

 

一夏も、分からない訳では無かった。

ラウラとマドカに強請られて応募はしているのだ。

2人の分含め全て外れているので尚更。

 

「無いのか?お前んとこで、さ!」

 

「悪いが…バイトは紹介してやれない…」

 

「………そうか」

 

一夏の職場は世界最先端の宇宙開発事業団。

男子高校生に紹介出来るバイトなどあるはずもなかった。

 

 

「──が」

 

「お?」

 

「手が無い訳ではない」

 

「おぉ!」

 

しかし、バイトは無いが稼ぎ口はあった。

 

 

藁にもすがるような期待の眼差しを向ける弾へ

一夏はこう言った──

 

 

 

「弾。2人目になってみる気はないか?」

 

 

 

 

 





このルート通る弾君は他にいないと思う。
少なくとも私は知らない。
蘭ちゃんが一夏くんとくっつくのは、ハーレムモノ
特にR18だとたまに見かけたりはしましたが…。

元のプロットには無かった完全な思いつきなので
弾君蘭ちゃんをどこまでストーリーに組み込めるかは
今後の私の思いつき次第ですがね。


次回「転入」。
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