「知力」の一夏君、果てなき宇宙(そら)を目指す   作:高橋ヒナタ

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最近またパズドラにハマった私です。
分岐ゼラと試練ミネルヴァが主力。

毎日暑くてしんどいったらありゃしない…
皆さんも熱中症・脱水症状にはお気をつけて。



第69話 五反田兄妹編②

 

 

 

「全員揃ってますね〜?それじゃあSHRを始めますよ〜」

 

 

2月末某日。

 

3月分の特別授業参加権を賭けた新クラス対抗戦と

三学期分の期末テストが終わり、3年を除いた学園全体に

どこか気の抜けた雰囲気が漂っていた。

 

特に1組は専用機持ち組のおかげでIS関連の実技授業が

他のクラスとは比較にならないくらい進んでいるため

余裕が出来ているのだ。ゆえに、今日ものんびりと

残っているコマを消費していくのだろうな、と

1組の生徒たちは思っていた。が──

 

 

「えぇとですね…今日はなんと、転校生を紹介します!

しかも二名ですっ!」

 

「「「えぇーっ!?」」」

「「「転校生?!」」」

 

こんな時期にまさかまさかの転校生。それも2人。

生徒たちは飛び上がるほど驚いた。

 

「この時期に転校生って…どんな子なんだろう?」

「少なくとも専用機持ちなのは確定だよきっと」

「じゃあ…海外の代表候補生とか?」

「もしかしたら国家代表だったり?」

「あるいは織斑くんが知り合い連れてきたりね!」

「マドっちみたいな?」

 

当然クラスはざわつき始める。

なにせここまで1年に転入して来たのは鈴を筆頭に

色の濃いメンツばかりなのだから当然だろう。

 

 

パシュ-ッ

 

「諸君おはよう。お前たち、入れ」

 

ざわつきが収まらない教室へ千冬が顔を出す。

転校生二名を連れて。

 

 

 

「失礼しまーす」

 

1人目は、赤い髪を紫色のバンダナで纏めた少女。

育ちの良さを感じさせるキリッとした姿勢ながらも

刺さる視線に物怖じしない気の強さも伺わせる少女だ。

 

そして、彼女に続いてもう1人転校生が入ってきて──

 

 

 

「お、おぉ…本当に女子しかいないんだな…」

 

 

 

「「「……………!!!」」」

 

 

世界から、一瞬音が消える。

 

入ってきたもう1人の転校生は、1人目の少女と同じように

赤い髪をバンダナ──こちらは黒色のそれで纏めているが

身につけている制服のボトムスはパンツタイプであり

背も高く体つきもしっかりとしている。

いつぞやの中性的な貴公子と違って疑いようも無く。

つまりはそう、"そういう事"であり。

 

 

 

「「「おっ、男だぁーーーっ!!!!」」」

 

 

直後、音響兵器が炸裂した。

 

 

 

 

 

 

 

「では、自己紹介をしろ」

 

手を叩く音ひとつで教室を静かにさせた千冬が

転校生2人に自己紹介を促す。

 

 

「五反田蘭です。皆さんよりひとつ年下ですが

訳あって先行入学することになりました。

1ヶ月弱の短い間ですが宜しくお願いします」

 

まず挨拶をしたのは、五反田蘭。

 

実は名門の私立女子校に通っていて、しかもそこで

生徒会長まで務めていたほどの人物であり

自己紹介は実にスラスラと進めていく。

隣に立つ注目の男子生徒の妹であることを打ち明け

注目を掻っ攫ってから話し始めるそのスキルは

生徒会長として活動する中で培われたものなのだろう。

 

最後に、一夏の嫁のひとりであることを示すために

一夏へディープキスをかますという爆弾を投下したが

とりあえず蘭の自己紹介のターンは終了する。

 

 

 

「………あー…えっと…」

 

で、続いては隣にいた男子生徒の番な訳だが。

 

 

(視線がすげぇ…。緊張するなこれは…)

 

その男子生徒こと五反田弾は、思わずたじろいだ。

悪友と妹も含め文字通り全員から向けられる、視線。

これから始まる自己紹介に期待する視線が大半で

その中に"何故彼がここに?"という視線がいくつか。

あとは"面白い自己紹介期待してるぜ"という

ぶっ飛ばしてやりたい生暖かい視線がひとつと

"お兄に面白い自己紹介なんか無理でしょ"という

泣きたくなるような冷たい視線がひとつ。

 

 

「えーっと、五反田弾です」

 

まず弾は自分の名前を名乗る。

蘭が口にしていたがこれは必須だろう。

 

……………(続きは?もっと聞かせてよ!)

……………(趣味はなんだろう?)

……………(好きな人とかいるのかな?)

 

期待の眼差しが更に強くなった。

 

この時の弾にとって不運だったのは、転入時期の問題で

"ハードル"が天高く跳ね上げられていたことだろう。

大企業の社長や国家代表操縦者に匹敵するような

とんでもない大物だと期待されていたことだろう。

ただの男子高校生な弾にとって、それは些か重かった。

 

「趣味は…楽器、ベースだな」

 

「「「おぉ…!」」」

 

「えっとあと、実家が定食屋だ」

 

「「「おぉー…!!」」」

 

ひとまず当たり障りのない事柄から語っていく。

が、やはり「で?他には?」という視線は止まらない。

仕方ない事ではあるのだが、期待されているのだ。

 

 

 

「──以上!」

 

 

弾は、ギブアップした。

 

がたたっ、とずっこける音がいくつか。

 

 

 

「…点数をつけるとするなら30点といった所だな」

 

「いやいや千冬さん、流石に──」

 

パコ-ンッ!!

 

「織斑先生と呼べと言っただろう」

 

「…ハイ」

 

 

 

 

 

 

「……大丈夫か?」

 

ぐでーっと机に倒れ伏す弾に一夏が声をかける。

 

1人目の時ほど牽制合戦にならなかった分なのか

主にクラスメイト達からの質問攻めに遭っており

IS関連の教科書の目を背けたくなる分厚さもあって

オーバーヒートを起こしていた。

 

「悪かった。謝るよ。これはヘヴンじゃねぇ、ヘルだ」

 

「分かってくれて何よりだ。…で、大丈夫なのか?」

 

「大丈夫に見えるか?」

 

特に、IS関連は覚えなければならない事が多すぎる。

千冬に「1ヶ月で覚えろ」と言われて渡された教科書は

六法全書かよと言いたくなるような分厚さであり

その時弾は思わず天を仰いだくらいだ。

千冬としては「それくらいの気概を持って臨め」と

そういう意図で言ったのだろうが、どちらにせよだろう。

 

「お〜、お疲れだねぇ」

 

「えっと…そちらは?」

 

「布仏本音なのだ〜。お近づきの印にこれをあげようー」

 

「お、おう。ありがとな。………何だこの味?!」

 

「サワークリーム&ペッパーだよー。変わってるでしょ」

 

とそこへ、じゃがりこのサワークリーム&ペッパーを手に

本音登場。何も考えずに2本ほど受け取って食べた弾は

思いもよらぬ一風変わった味に呆けが覚める。

 

 

「おりむーが作ってくれたアドオン、大活躍だよ〜。

助かってるのだ〜」

 

「そう言ってくれると作った甲斐があるってもんだ。

とはいえ、次期会計はちゃんと探しとけよ?」

 

「は〜い」

 

ただ、本音の要件自体は一夏の方にあったようで

会計補助のエクセル用自作アドオンのお礼として

一夏にも同じようにじゃがりこをどうぞと差し出した。

そして、弾と同じように"変わった味だ"と感想を述べた。

 

 

「…ん?そういえば"布仏"って──」

 

目の前で一連のやり取りが終わり頭が回り出した弾は

あることに気がつく。

 

「変わった苗字でしょぉ?」

 

「あ、いやそうじゃなくってだな」

 

それは、本音の苗字について。

 

本音が言ったように、布に仏と書いて"のほとけ"と読む

この苗字はとても珍しい苗字なのだが、そちらではなく。

 

 

「布仏虚さん、って…もしかして?」

 

「おぉ〜、布仏虚は私のお姉ちゃんなのだ〜」

 

「妹がいるって聞いてたけど、本音さんがそうなのか!」

 

「それじゃあお姉ちゃんが言ってた彼氏って…」

 

「多分俺のことだ」

 

そう、五反田弾念願の彼女とは本音の姉だったのである。

 

 

 

──その瞬間だった。

 

 

「「「えぇぇぇーーーっ!?!?」」」

 

「「「彼女持ちぃぃぃっ?!?!」」」

 

音響兵器、再び炸裂せり。

 

「あぁ!神は死んだ!!」

「そうやってまた!私をぬか喜びさせるっ!!」

「甘酸っぱい学園生活どこ?ここ?」

 

早々に幼なじみとくっついた高嶺の花な1人目

2人目と思っていたら2人目じゃなかった2人目。

二度の敗北を経てようやくやって来た真の2人目が

まさかの"既に彼女持ちである"という事実に

恋に飢える乙女たちは崩れ落ちたのだ。

 

「えっえっ?俺こいつらに何かしたか?」

 

「う〜ん…"期待を裏切った"かなぁ?」

 

理不尽な怨嗟の眼差しを向けられ弾はたじろいだ。

 

 

「──そうだ!あの特例法だよ!」

 

不意に、それでも恋愛を諦めきれない生徒が口を開く。

 

「五反田君がIS操縦者になるなら、重婚が出来る!」

 

「「「!!!」」」

 

その瞬間、怨嗟の眼差しは獲物を狙う眼差しへと変わり。

 

「弾。重婚する気なら虚さんとよ〜く話し合っとけよ」

 

「……IS学園ってこんな恐ろしい場所だったんだな」

 

どうやら弾は理不尽から好かれる運命にあるらしい。

 

 

 

 

 

「──ではこれより一限目の授業を始める」

 

そんなやり取りをしていれば休み時間は終わりを告げ

今日の授業が始まる。

 

「本来ならば二限目まで自習の予定だったが…」

 

当初の予定では、今日のコマ割りは一限目と二限目が

IS関連の実技の授業。しかしそのコマで習う内容は

とっくのとうに専用機持ち組が教えてしまっているので

やることが無い。

 

今まで通りにいくなら自習という形となるのだが

千冬はここでひとつ面白い内容を提示した。

 

「お前たちだけでコイツ()に実技を叩き込んでみろ。

教わった内容を、今度はお前たちが教えるんだ」

 

それは、まだISのことを殆ど知らない五反田兄に

生徒たちだけで今までの授業内容を叩き込むというもの。

何から教えるか。どう教えるか。それも全て自分たちで

一から考えて実行するというものであった。

千冬と真耶は基本見ているのみで一切手を貸さず

専用機持ち組が主導することも禁じられた状態で。

 

その根底にあるのは、"物事とは自分が覚えるだけでは

まだ半人前で、人に教えられてこそ一人前"という理論。

弾のISに関する理解度を1組の平均値まで引き上げた時

彼女たちは真に授業を理解したと言えるのだ。

 

「おぉ!面白そうだね!」

「誰かメモ帳持ってる?内容まとめたいな」

「五反田兄妹もほら、ちょっと来て!」

 

新たな授業形態にさっそく乗り気になる生徒たち。

弾と、ついでに弾のことをよく知るであろう蘭も呼び

授業内容を組み立てていく。

 

「誰かさ、訓練機借りてない?借りてるなら──」

「あ、俺こいつ(専用機)以外動かせないから…」

「うっそォ専用機!?それを早く言ってよぉ!!」

 

「なら二限目使って基本動作はやっちゃおうよ!」

「習うより慣れろね。安全確保は織斑君達に頼んで──」

「織斑先生〜アリーナって空いてますかー?」

「グラウンドなら使えるぞ」

 

そしてあれよあれよという間に内容が決まっていき

一同は校庭へと向かうこととなった。

 

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

 

「それが五反田君の専用機?」

 

「にしては何だか見覚えが…」

 

グラウンド中央で弾が専用機を展開する。

 

ダークグレーとワインレッド(パーソナルカラー)に彩られたその機体だが

どこか既視感のある見た目。具体的に言うならば

全体的なシルエットや各部のディテールが

ある機体によく似ているのだ。

 

「あ!分かった!ラファールだよ!それのカスタム!」

 

「確かに!デュノアさんのにも似てる!」

 

そう、ラファール・リヴァイブに。

 

「前に一夏が使ってたヤツらしい。本当の専用機は

まだ作ってる最中だ、って」

 

理由は、専用機が鋭意制作中であるという点がひとつ。

あとは弾がIS初心者だからという点がひとつだ。

ラファールは学園の訓練機にも採用されているように

初心者でも癖がなく扱いやすいのだから。

 

そこで、コアを外してから使い道が無く放置されていた

一夏専用のラファール・リヴァイブ・カスタムを

弾専用に調整して手配したという訳だ。

 

 

 

「確かイメージすりゃあいいんだったよな」

 

「そうそう!けっこうセンスあるよ!」

 

で、早速基本動作の練習に入った訳だが

意外にも弾はそれほど苦戦なく操縦して見せている。

 

何故今まで一切ISに触れたことが無かった彼が

ここまで綺麗に乗りこなせているのか?

その答えは、彼の妹である蘭の口から明かされた。

 

「ヴァーサススカイをバカみたいにやってましたから

きっとそれじゃないですか?」

 

「バカみたいにって…お前なぁ」

 

インフィニット・ストラトス/ヴァーサス・スカイ。

各種大会に出場したISのデータを元に作られた

2vs2の対戦ゲームで、ISでの対戦を可能な限り再現した

ココ最近で特に売れ行きの良い人気ゲームだ。

各選手が多用していたマニューバも再現されており

弾はそれらをイメージ元としているのだろう。

 

 

「──弾。ヴァーサススカイ2は?」

 

「は?買うに決まってんだろ!てかもう予約したし」

 

「彼女より先にゲームかぁ?酷いヤツだなお前は」

 

「いや違ぇって!ちゃんと考えて買ってるって!」

 

「「「……………」」」

 

ただし、あくまでもイメージ元。見よう見まね。

気を抜いていたり調子に乗っていたりすると──

 

 

 

「弾君、減速!減速!!地面に激突しちゃうよ!」

 

「やっべここから減速ってどうやるんだ?!」

 

 

 

ドッゴォンッ!!!

 

 

 

こうなってしまうのである。

 

 

「…大丈夫?」

 

「いてて…流石にゲームみたいにはいかねぇか」

 

「五反田君なら1ヶ月あればきっと覚えられるよ!」

「私たちが手とり足とり教えてあげるからさ!」

 

「それはありがた──いや…遠慮シテオキマス」

 

「えぇ?なんで?」

 

「虚さんにバレたら死ねる。寒気がした」

 

「おー、これは強敵だねー」

 

弾は地獄の日々が迫り来るのを感じているようだが

そこまで気に病む必要など無いだろう。

何せ彼のクラスメイト達は皆優秀なのだから。

 

恋人との仲がどうなるかは…分からないが。

 

 

 





原作にある流れを他キャラでなぞる。
実は過去にも使った手法。

弾くんの専用機についてはまた別パートで。


追記:修正情報
授業内容決める部分に少し修正入れました
弾くん学園の訓練機は動かせないんで…
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