「知力」の一夏君、果てなき宇宙(そら)を目指す   作:高橋ヒナタ

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シャルル&ラウラ転入回。

それと展開装甲について少し。
色々調べてみたんですけど良く分からなくて
とある「内部フレーム」から
設定を色々引っ張って来ています。
それ違うよ、ってなってもご容赦ください。

あ、意思の力を物理的力に転化するような
摩訶不思議パワーはありません。
"石ころ"を押し返す力もありません。
多分…ね。



第8話

 

 

 

「さて、箒の引っ越しも終わったし…」

 

 

箒の引っ越しが終わり、スッキリ片付いた自分の部屋で

一夏は普段使いしていた大型のパソコンを取り出す。

 

「持ってきてくれた千冬姉には感謝しないとな」

 

周辺機材を含めるとかなり場所を取る大型PCだったため

別に持ってこなくてもいい、と学生寮へ引っ越す時に

姉には言ったのだが、結局部屋へ運び込まれていたのだ。

 

一夏が束の秘密ラボで匿われていた時に束と2人で作った

空間投影式3Dディスプレイのプロジェクターを接続し

パソコンの電源を入れる。

 

 

「…雪片…弐型かぁ」

 

投影させた3Dホログラムをクルクルと回す一夏。

映し出されているのは白式に搭載する予定であった

特殊な機構を持つ近接戦闘用武装「雪片弐型」。

プロトタイプのテスト中に、これ1本で拡張領域の容量を

ほとんど食いつぶしてしまうという欠陥が判明したため

一夏の進言で開発が凍結された武装だ。

 

基礎設計を行った束曰く、白式と紅椿のアップデートに

用いる予定の新機構を突っ込んでみた試作品であり

ある機体の"特殊能力"の再現を試みた武装でもある

との事だったが如何せんデメリットが大きすぎる──

 

 

ピロリン♪

 

一夏が雪片弐型に目を通していると、モニターに一通の

通知が表示される。それはビデオ通話が起動した通知。

だが一夏はその様な操作などしていない。

つまり、外部からハッキングを受けた事を表していた。

 

(ハッキング?…あー、あの人か)

 

このパソコンには束と共に恐ろしく厳重なセキュリティを

施してある。これをハッキングして侵入出来る人物など

この世界には1人しか居なかった。

 

 

『やっほ~いっくん!束さんだよん♪』

 

「…クラス対抗戦ぶりですね」

 

このパソコンのセキュリティシステム構築を担当した人物

篠ノ之束御本人である。

 

 

 

「束さん、相談したいことって?」

 

今日こうして大型パソコンを引っ張り出した理由は

シャルルという転校生がこの部屋へ引っ越してくる前に

一度相談したいことがあると束から言われていたからだ。

 

『これを見るがいい、いっくん!』

 

束は一夏のパソコンを通して空間投影ディスプレイへ

ある物の設計図を映し出す。

 

「これは…なんだコレ!?」

 

そこへ映し出されたのは余りにも複雑過ぎる図面。

どうやらISへ搭載する新装備の様だが、持たせる機能が

多すぎるためか、一般人には何百年かけても理解不能な

複雑過ぎる図面となってしまっている。

所々書きかけの箇所がある辺り未完成らしい。

 

武装の換装を不要にした「即時万能対応機」(リアルタイム・マルチロール・アクトレス)を目指して

開発を進めていたとの事だが、突っ込みたい機能全てを

搭載しようとすると装備やシステムが大規模化してしまい

汎用性が大きく損なわれるという欠点があった。

さらに言えば、これ程までに超高機能の武装となると

白式を含む最新鋭第三世代機の拡張領域にすら

収まりきらない為何かしらの対策を打たねばならない。

 

『解決案、ぷりーず♪』

 

「俺にどうしろと…」

 

そう言いつつも一夏は解決のために頭をフル回転させる。

まず思いつくのは武装を拡張領域へ放り込む事を諦め

機体そのものへ直接搭載するという方法だが

機体サイズを大型化させずに武装とシステムを追加で

搭載しようとなるとまるでスペースが足りないのだ。

装備本体はともかく、制御機器を積む余裕が無い。

 

「積むスペースがあるとしたら…フレームか?」

 

『フレーム…ねぇ』

 

機体の駆動を担うフレームに武装制御システムとしての

機能を持たせる事が出来れば省スペース化には繋がる。

 

「フレームに電子機器としての機能を持たせれば…」

 

一夏は強度的な問題で現実的ではないだろうと思いつつ

思った事を口にしてみる。一般人にとっては夢物語でも

篠ノ之束なら実現可能である場合もある──

 

『…それだ!サンキューいっくん!』

 

 

 

篠ノ之束はビデオ通話の画面から一瞬でフェードアウト

自身が研究・開発の際に使うラボへとすっ飛んで行った。

 

『ナノマシンを鋳込むんだよいっくん!』

 

工具やら資材やらをあちこちから引っ張り出す音と共に

少々興奮気味の束の声だけが一夏へ伝わってくる。

 

「…フレームに?ナノマシン…そうか!」

 

一夏もすぐに答えにたどり着いた。

金属粒子サイズのナノマシンを大量にフレームに鋳込めば

フレームの強度をある程度維持したまま電子機器としての

機能を持たせることが可能となる。

後はコアとなるメインプロセッサを機体に搭載するだけで

下手なスーパーコンピュータよりも遥かに優れた

制御システムを構築することが出来る。

 

『これなら武装も──』

 

「エネルギーフィールドを展開すれば!」

 

ナノマシンはその名の通り凄まじく小型であるため

フレーム一つに相当な量を鋳込む事が出来る訳で

多種多様な機能に対応させる事も容易になる。

 

例えば、電子機器としての機能を搭載させれば

索敵の支援や味方間での情報共有高速化に加え

敵の利用する電子機器へのハッキングなども可能になる。

さらに、パイロットの思考がダイレクトに駆動系へ

送り込まれることで機体の追従性も高まることだろう。

 

それに対し、エネルギー発振器としての機能を持たせれば

エネルギーによるブレードやシールドの発生が可能に。

更にそのエネルギーを推進力として転化させれば

巡航速度や機動性を大きく引き上げる事にも繋がる。

 

つまり、この世に存在するISを全て過去の物に出来る

圧倒的なスペックと汎用性を得る事が出来るのだ。

 

 

『出来たっ!』

 

「それが…」

 

戻ってきた束が手にしていたのは金属製のT字型の試料。

一見すると何の機能も持たない金属パーツに見える。

 

『こっちがメインプロセッサ。急造品だけどね』

 

テーブルへコトンと置かれたのは、有り合わせの材料で

作ったためか少々不格好なメインプロセッサ。

メインプロセッサを起動させると、T字型の試料の表面に

電子回路の様な模様の輝きが浮かび上がる。

 

「ひょっとして光回路ですか?」

 

『そそ。でもフルパワーにするとね…』

 

束がメインプロセッサの古そうなダイヤルを回すと

試料は強烈な光を放ち始める。この光はナノマシンに

使われている光回路がフル稼働している影響とのこと。

これだけの光を放つとなると、これを兵器に搭載するのは

余りにもナンセンスだと言える。だが──

 

 

「…普段は装甲か何かで隠しちゃえばいいよな」

 

エネルギーフィールド発振器が起動していない状態や

情報処理系のシステムがフル稼働していない状態であれば

強い光を発する事は無く、逆にそれらがフル稼働すれば

発光というデメリットを打ち消して余りある程に驚異的な

高スペックを発揮出来る。

であれば、内部フレームの保護も兼ねて平常時の発光は

装甲で隠してしまえばいい。

 

『フルパワーの時は装甲が開く──とぉ!』

 

「放熱までバッチリだな!」

 

装甲を展開させればセンサー系の効果範囲も広がり

フル稼働時の放熱も外気による追加冷却が可能になる。

 

『名付けて『展開装甲』!…なーんてね』

 

マシンがフルパワーを出すと変形して光り出すだなんて

ロマンの塊だよね~、と束は嬉しそうな表情である。

頭のメカウサミミも嬉しそうにピコピコ動いている。

 

 

 

しかし、2人を悩ませる大きな問題が残ってしまう。

 

「燃費…どうにかなるんです?」

 

そう、この展開装甲と名付けられたシステムは燃費が悪く

フル稼働させた場合、白式や紅椿ら第三世代機であっても

僅か数分でエネルギーを食い尽くして機能停止に陥る。

 

『う〜ん…要検討、だね』

 

「白式と紅椿は俺が整備しときますよ」

 

展開装甲の省エネルギー化については、束が展開装甲側に

一夏が搭載予定の白式と紅椿に対策を行う事で決定した。

 

 

 

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「今日はなんと!転校生を二名、紹介します!」

 

「ええっ!?」

「どんな子だろう?」

 

山田先生の言葉に1組の生徒達がザワつく。

転校生といえば学校生活の中でも大きなイベントであり

それが2人も来るとなれば期待はより大きくなる。

 

「では、どうぞ~」

 

 

パシューっと音を立てて教室の扉が開き、織斑先生の後に

続いて2人の生徒が入ってきた。

 

「ねぇ…あの金髪の子ってさ」

 

「フランス人だってさ…カッコイイ」

 

美しい金髪を後ろで束ねたフランス人の"美少年"

フランス代表候補生の「シャルル・デュノア」と

ストレートの長い銀髪に黒の眼帯をした少女

ドイツ代表候補生の「ラウラ・ボーデヴィッヒ」だ。

 

「シャルル・デュノアです。皆さん宜しくお願いします」

 

「2人目の男の子!」

「まさに貴公子って感じ!」

 

生徒達の視線のほとんどがシャルルへ向けられている。

それもそのハズ、一夏とはまた違った雰囲気のイケメン

貴公子と呼ぶに相応しい容姿の金髪の美少年である。

弱冠15歳の少女達が見とれるのも無理は無いだろう。

 

 

 

シャルルがクラス中の視線を集めていた一方で

あまり注目されていないラウラは自己紹介もしないまま

一夏の目の前まで歩いていく。

 

「お前が織斑一夏か?」

 

「あぁ。宜しくな」

 

一夏は握手のために手をラウラへ差し出す──

 

 

「…はッ!」

 

ラウラは突然懐からナイフのような物を取り出して

一夏へと突き刺しに掛かったのだ。深い紅色の瞳には

殺気に近いモノが宿っていた。

 

「何しやがるっ!」

 

「ぐぁっ…!?」

 

ナイフという殺傷用の道具が視界に入った一夏は

一瞬で戦闘のスイッチが入り、ラウラの手を掴んで捻り

あっという間に彼女の抵抗を封じてしまった。

 

千冬も指導に関わったという本職の軍人を相手に

一切引けを取らない流れるような身体捌きであった。

 

 

「「………!」」

 

 

お互い歯を食いしばったままバチバチと視線を交える。

一夏はこのままナイフを落とさせるべく拘束を強め

ラウラも拘束から脱するべく力を緩めずに隙を伺う。

 

「…やるな。織斑一夏」

 

しかし、先に攻撃を仕掛けたハズのラウラが力を抜いた。

手にしていたナイフをアッサリと手放し、硬質ゴムの音が

ナイフの落下点から響いた。

ラウラが持っていたのはそう、ラバーナイフ。

一夏を傷付ける気など元から一切無かったのである。

ラウラから敵意の類いが抜けていたのを確認した一夏は

彼女の腕の拘束を解いた。

 

「…すまない、お前の実力を確かめたかったのだ。

軍属故にあまり人付き合いは得意で無くてな」

 

一夏の拘束から解放されたラウラは先程の行動の理由を

ひとつひとつ説明し始めた。

ドイツで自分を指導し強くしてくれたのが織斑千冬であり

第2回モンド・グロッソ優勝を成し遂げた彼女が「強い」と

評する弟──織斑一夏がいったいどれ程の実力者なのか

自らの目で確かめたかったからだ、と。

 

「改めて宜しくな、ラウラ」

 

「こちらこそ宜しく頼む。織斑一夏」

 

一夏とラウラはガッチリと固い握手を交わした。

 

 

 

「では、HRは終わりだ」

 

丁度HRも終わり、授業の準備に取り掛かる1組の生徒達。

次の授業は第2グラウンドでのIS模擬戦闘であるため

女子生徒は教室でIS用スーツへの着替えを行うのだ。

 

「さて…急ぐか」

 

一夏とシャルルはアリーナの更衣室を使うことになるため

これからアリーナへと急ぐ必要がある。

 

「織斑、デュノアの面倒を見てやれ」

 

「はい。シャルル!さっさと行くぞ!」

 

同じ男子という事でシャルルの案内を頼まれた一夏は

面倒事の予感を感じていた事もあり、シャルルの手を掴み

空いているアリーナ更衣室へと駆け出す。

 

「ひゃっ!?お、織斑君!?」

 

「厄介な事になるから急ぐぞ!」

 

一夏はシャルルの転入に対して学園の女子生徒がどんな

反応をするか"過去の例(実体験)"もありハッキリと分かっていた。

だからこそこうして手を掴んで駆け出したのだが──

 

(凄い動揺だな…照れた箒に良く似てる)

 

走りながらもチラリとシャルルの表情を伺ってみれば

彼女である箒が照れ隠しする時のものに似たような

可愛らしい動揺の仕方をしているのである。

この時点で一夏はシャルルの正体に確信を得ていた。

 

 

 

「いた!例の転入生よ!」

「織斑君も一緒だわ!」

 

アリーナへ猛ダッシュする男2人の進路はゾロゾロ現れた

大勢の女子生徒によって突如塞がれてしまった。

 

「人気者は辛いな…全く」

「??」

 

HRと次の授業の間の時間は決して長くはない筈なのに

それもお構い無しで、噂の2人目がどんな子なのか

一目見ようと駆け付けてきたのである。

 

「突破するぞ、はぐれるなよ?」

 

「ええっ!?こ、これを?」

 

野次馬に絡まれたことが原因で姉にドヤされる気は

一夏には一切無かった。この集団の隙間を縫って突破し

アリーナへ急ぐぞ、とシャルルへ伝える。

それを伝えた瞬間には一夏は既に駆け出していた。

 

「わっ!?織斑君が逃げる!」

「待ちなさーい!」

 

確かに野次馬は多いが、満員電車ほどギチギチではない。

一夏はその人と人との隙間をヒョイヒョイとすり抜ける。

姉からの出席簿アタックを避ける為に鍛えあげた

その足捌きにとって、この程度の集団を突破する事など

大した事でも無いのだ。

 

「ちょっ…織斑君!待ってよー!」

 

シャルルも一夏がすり抜けていった混乱に乗じる形で

人混みへと飛び込んでいった。

 

 

 

╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌

 

 

 

「ぜぇ…ぜぇ…酷い目にあった」

 

アリーナに向かう道中何度も女子生徒に足止めされ

それを必死になってすり抜けてきたシャルルは

息も絶え絶えであった。

 

「昼は今の…3倍だからな。覚悟はしといた方がいいぜ」

 

「さ、3倍!?」

 

まさか今までの苦戦が序の口だったとは思わなかった

シャルルは、この後自分を待ち受ける苦難を知らされ

空いた口が塞がらなくなった。

 

 

「っと、挨拶がまだだったな。俺は一夏、織斑一夏だ」

 

「あ…えっと、シャルルだよ。宜しくね」

 

握手を求められて混乱から立ち直ったシャルル。

しかし、時計を見ればこんな悠長な事をしている場合では

無かった。授業開始が迫っているのだ。

 

「着替え、急ごう。千冬姉にドヤされたく無いしな」

 

一夏は勢いよく上着とシャツを脱ぎ捨て上裸になる。

 

「わっ、わあっ!?」

 

「俺向こう回るよ、苦手だったか…悪いな」

 

突然顔を真っ赤にし一夏から視線を外したシャルル。

同性だとしても人前で着替えるのが苦手なタイプなのかと

気を使って一夏はロッカーを挟んだ反対側へ移動した。

 

 

 

(これは…確定じゃないか?)

 

一夏は着替えながらも軽く思考を巡らせる。

 

普段から鍛えているため細身ながら筋肉質な身体だが

同性であれば特に何か気にする様な事も無いだろう。

精々軽く視線を逸らす程度だ。

 

だが、シャルルが先程見せたあの反応の仕方は

最近まともに上裸姿を直視した唯一の同年代女子──

箒が見せた反応とそっくりだった。

 

 

(声の質も男にしちゃあ…な)

 

更に、先程から何度もシャルルの声を聞いていたが

とても綺麗な透き通った声で、声変わりが遅いにしても

どこか違和感が残るのだ。

 

 

 

「着替え終わったよ」

 

「んじゃ、さっさとグラウンド行くぞ」

 

ISスーツに着替えた2人は第2グラウンドへ急いだ。

 

 

 

 

 

("男の象徴"が無い?…決まりだな)

 

普通わざわざ無いように見せかける事をしない"ソレ"が

ISスーツの様なピッチリした衣服を着た場合少なからず

強調されることになる下半身のある部分の膨らみが

彼には見当たらなかった事を受け、一夏は早い段階で

シャルルの正体を暴く事を決意する。

 

 

 




はい、展開装甲の参考元は機動戦士ガンダムの
サイコフレーム、もといユニコーンガンダムです。
RX-0を知ってるとね…展開装甲ってキーワードで
真っ先に浮かぶのはRX-0なんです…
中の人繋がりってことで許して…。

ちーちゃんが第2回モンドグロッソを優勝した
経緯については次回以降、どこかで書きます。

追記:更新情報
本文の一部へ書き加えを行いました。
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