「知力」の一夏君、果てなき宇宙(そら)を目指す 作:高橋ヒナタ
それと展開装甲について少し。
色々調べてみたんですけど良く分からなくて
とある「内部フレーム」から
設定を色々引っ張って来ています。
それ違うよ、ってなってもご容赦ください。
あ、意思の力を物理的力に転化するような
摩訶不思議パワーはありません。
"石ころ"を押し返す力もありません。
多分…ね。
「さて、箒の引っ越しも終わったし…」
箒の引っ越しが終わり、スッキリ片付いた自分の部屋で
一夏は普段使いしていた大型のパソコンを取り出す。
「持ってきてくれた千冬姉には感謝しないとな」
周辺機材を含めるとかなり場所を取る大型PCだったため
別に持ってこなくてもいい、と学生寮へ引っ越す時に
姉には言ったのだが、結局部屋へ運び込まれていたのだ。
一夏が束の秘密ラボで匿われていた時に束と2人で作った
空間投影式3Dディスプレイのプロジェクターを接続し
パソコンの電源を入れる。
「…雪片…弐型かぁ」
投影させた3Dホログラムをクルクルと回す一夏。
映し出されているのは白式に搭載する予定であった
特殊な機構を持つ近接戦闘用武装「雪片弐型」。
プロトタイプのテスト中に、これ1本で拡張領域の容量を
ほとんど食いつぶしてしまうという欠陥が判明したため
一夏の進言で開発が凍結された武装だ。
基礎設計を行った束曰く、白式と紅椿のアップデートに
用いる予定の新機構を突っ込んでみた試作品であり
ある機体の"特殊能力"の再現を試みた武装でもある
との事だったが如何せんデメリットが大きすぎる──
ピロリン♪
一夏が雪片弐型に目を通していると、モニターに一通の
通知が表示される。それはビデオ通話が起動した通知。
だが一夏はその様な操作などしていない。
つまり、外部からハッキングを受けた事を表していた。
(ハッキング?…あー、あの人か)
このパソコンには束と共に恐ろしく厳重なセキュリティを
施してある。これをハッキングして侵入出来る人物など
この世界には1人しか居なかった。
『やっほ~いっくん!束さんだよん♪』
「…クラス対抗戦ぶりですね」
このパソコンのセキュリティシステム構築を担当した人物
篠ノ之束御本人である。
「束さん、相談したいことって?」
今日こうして大型パソコンを引っ張り出した理由は
シャルルという転校生がこの部屋へ引っ越してくる前に
一度相談したいことがあると束から言われていたからだ。
『これを見るがいい、いっくん!』
束は一夏のパソコンを通して空間投影ディスプレイへ
ある物の設計図を映し出す。
「これは…なんだコレ!?」
そこへ映し出されたのは余りにも複雑過ぎる図面。
どうやらISへ搭載する新装備の様だが、持たせる機能が
多すぎるためか、一般人には何百年かけても理解不能な
複雑過ぎる図面となってしまっている。
所々書きかけの箇所がある辺り未完成らしい。
武装の換装を不要にした
開発を進めていたとの事だが、突っ込みたい機能全てを
搭載しようとすると装備やシステムが大規模化してしまい
汎用性が大きく損なわれるという欠点があった。
さらに言えば、これ程までに超高機能の武装となると
白式を含む最新鋭第三世代機の拡張領域にすら
収まりきらない為何かしらの対策を打たねばならない。
『解決案、ぷりーず♪』
「俺にどうしろと…」
そう言いつつも一夏は解決のために頭をフル回転させる。
まず思いつくのは武装を拡張領域へ放り込む事を諦め
機体そのものへ直接搭載するという方法だが
機体サイズを大型化させずに武装とシステムを追加で
搭載しようとなるとまるでスペースが足りないのだ。
装備本体はともかく、制御機器を積む余裕が無い。
「積むスペースがあるとしたら…フレームか?」
『フレーム…ねぇ』
機体の駆動を担うフレームに武装制御システムとしての
機能を持たせる事が出来れば省スペース化には繋がる。
「フレームに電子機器としての機能を持たせれば…」
一夏は強度的な問題で現実的ではないだろうと思いつつ
思った事を口にしてみる。一般人にとっては夢物語でも
篠ノ之束なら実現可能である場合もある──
『…それだ!サンキューいっくん!』
篠ノ之束はビデオ通話の画面から一瞬でフェードアウト
自身が研究・開発の際に使うラボへとすっ飛んで行った。
『ナノマシンを鋳込むんだよいっくん!』
工具やら資材やらをあちこちから引っ張り出す音と共に
少々興奮気味の束の声だけが一夏へ伝わってくる。
「…フレームに?ナノマシン…そうか!」
一夏もすぐに答えにたどり着いた。
金属粒子サイズのナノマシンを大量にフレームに鋳込めば
フレームの強度をある程度維持したまま電子機器としての
機能を持たせることが可能となる。
後はコアとなるメインプロセッサを機体に搭載するだけで
下手なスーパーコンピュータよりも遥かに優れた
制御システムを構築することが出来る。
『これなら武装も──』
「エネルギーフィールドを展開すれば!」
ナノマシンはその名の通り凄まじく小型であるため
フレーム一つに相当な量を鋳込む事が出来る訳で
多種多様な機能に対応させる事も容易になる。
例えば、電子機器としての機能を搭載させれば
索敵の支援や味方間での情報共有高速化に加え
敵の利用する電子機器へのハッキングなども可能になる。
さらに、パイロットの思考がダイレクトに駆動系へ
送り込まれることで機体の追従性も高まることだろう。
それに対し、エネルギー発振器としての機能を持たせれば
エネルギーによるブレードやシールドの発生が可能に。
更にそのエネルギーを推進力として転化させれば
巡航速度や機動性を大きく引き上げる事にも繋がる。
つまり、この世に存在するISを全て過去の物に出来る
圧倒的なスペックと汎用性を得る事が出来るのだ。
『出来たっ!』
「それが…」
戻ってきた束が手にしていたのは金属製のT字型の試料。
一見すると何の機能も持たない金属パーツに見える。
『こっちがメインプロセッサ。急造品だけどね』
テーブルへコトンと置かれたのは、有り合わせの材料で
作ったためか少々不格好なメインプロセッサ。
メインプロセッサを起動させると、T字型の試料の表面に
電子回路の様な模様の輝きが浮かび上がる。
「ひょっとして光回路ですか?」
『そそ。でもフルパワーにするとね…』
束がメインプロセッサの古そうなダイヤルを回すと
試料は強烈な光を放ち始める。この光はナノマシンに
使われている光回路がフル稼働している影響とのこと。
これだけの光を放つとなると、これを兵器に搭載するのは
余りにもナンセンスだと言える。だが──
「…普段は装甲か何かで隠しちゃえばいいよな」
エネルギーフィールド発振器が起動していない状態や
情報処理系のシステムがフル稼働していない状態であれば
強い光を発する事は無く、逆にそれらがフル稼働すれば
発光というデメリットを打ち消して余りある程に驚異的な
高スペックを発揮出来る。
であれば、内部フレームの保護も兼ねて平常時の発光は
装甲で隠してしまえばいい。
『フルパワーの時は装甲が開く──とぉ!』
「放熱までバッチリだな!」
装甲を展開させればセンサー系の効果範囲も広がり
フル稼働時の放熱も外気による追加冷却が可能になる。
『名付けて『展開装甲』!…なーんてね』
マシンがフルパワーを出すと変形して光り出すだなんて
ロマンの塊だよね~、と束は嬉しそうな表情である。
頭のメカウサミミも嬉しそうにピコピコ動いている。
しかし、2人を悩ませる大きな問題が残ってしまう。
「燃費…どうにかなるんです?」
そう、この展開装甲と名付けられたシステムは燃費が悪く
フル稼働させた場合、白式や紅椿ら第三世代機であっても
僅か数分でエネルギーを食い尽くして機能停止に陥る。
『う〜ん…要検討、だね』
「白式と紅椿は俺が整備しときますよ」
展開装甲の省エネルギー化については、束が展開装甲側に
一夏が搭載予定の白式と紅椿に対策を行う事で決定した。
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「今日はなんと!転校生を二名、紹介します!」
「ええっ!?」
「どんな子だろう?」
山田先生の言葉に1組の生徒達がザワつく。
転校生といえば学校生活の中でも大きなイベントであり
それが2人も来るとなれば期待はより大きくなる。
「では、どうぞ~」
パシューっと音を立てて教室の扉が開き、織斑先生の後に
続いて2人の生徒が入ってきた。
「ねぇ…あの金髪の子ってさ」
「フランス人だってさ…カッコイイ」
美しい金髪を後ろで束ねたフランス人の"美少年"
フランス代表候補生の「シャルル・デュノア」と
ストレートの長い銀髪に黒の眼帯をした少女
ドイツ代表候補生の「ラウラ・ボーデヴィッヒ」だ。
「シャルル・デュノアです。皆さん宜しくお願いします」
「2人目の男の子!」
「まさに貴公子って感じ!」
生徒達の視線のほとんどがシャルルへ向けられている。
それもそのハズ、一夏とはまた違った雰囲気のイケメン
貴公子と呼ぶに相応しい容姿の金髪の美少年である。
弱冠15歳の少女達が見とれるのも無理は無いだろう。
シャルルがクラス中の視線を集めていた一方で
あまり注目されていないラウラは自己紹介もしないまま
一夏の目の前まで歩いていく。
「お前が織斑一夏か?」
「あぁ。宜しくな」
一夏は握手のために手をラウラへ差し出す──
「…はッ!」
ラウラは突然懐からナイフのような物を取り出して
一夏へと突き刺しに掛かったのだ。深い紅色の瞳には
殺気に近いモノが宿っていた。
「何しやがるっ!」
「ぐぁっ…!?」
ナイフという殺傷用の道具が視界に入った一夏は
一瞬で戦闘のスイッチが入り、ラウラの手を掴んで捻り
あっという間に彼女の抵抗を封じてしまった。
千冬も指導に関わったという本職の軍人を相手に
一切引けを取らない流れるような身体捌きであった。
「「………!」」
お互い歯を食いしばったままバチバチと視線を交える。
一夏はこのままナイフを落とさせるべく拘束を強め
ラウラも拘束から脱するべく力を緩めずに隙を伺う。
「…やるな。織斑一夏」
しかし、先に攻撃を仕掛けたハズのラウラが力を抜いた。
手にしていたナイフをアッサリと手放し、硬質ゴムの音が
ナイフの落下点から響いた。
ラウラが持っていたのはそう、ラバーナイフ。
一夏を傷付ける気など元から一切無かったのである。
ラウラから敵意の類いが抜けていたのを確認した一夏は
彼女の腕の拘束を解いた。
「…すまない、お前の実力を確かめたかったのだ。
軍属故にあまり人付き合いは得意で無くてな」
一夏の拘束から解放されたラウラは先程の行動の理由を
ひとつひとつ説明し始めた。
ドイツで自分を指導し強くしてくれたのが織斑千冬であり
第2回モンド・グロッソ優勝を成し遂げた彼女が「強い」と
評する弟──織斑一夏がいったいどれ程の実力者なのか
自らの目で確かめたかったからだ、と。
「改めて宜しくな、ラウラ」
「こちらこそ宜しく頼む。織斑一夏」
一夏とラウラはガッチリと固い握手を交わした。
「では、HRは終わりだ」
丁度HRも終わり、授業の準備に取り掛かる1組の生徒達。
次の授業は第2グラウンドでのIS模擬戦闘であるため
女子生徒は教室でIS用スーツへの着替えを行うのだ。
「さて…急ぐか」
一夏とシャルルはアリーナの更衣室を使うことになるため
これからアリーナへと急ぐ必要がある。
「織斑、デュノアの面倒を見てやれ」
「はい。シャルル!さっさと行くぞ!」
同じ男子という事でシャルルの案内を頼まれた一夏は
面倒事の予感を感じていた事もあり、シャルルの手を掴み
空いているアリーナ更衣室へと駆け出す。
「ひゃっ!?お、織斑君!?」
「厄介な事になるから急ぐぞ!」
一夏はシャルルの転入に対して学園の女子生徒がどんな
反応をするか"
だからこそこうして手を掴んで駆け出したのだが──
(凄い動揺だな…照れた箒に良く似てる)
走りながらもチラリとシャルルの表情を伺ってみれば
彼女である箒が照れ隠しする時のものに似たような
可愛らしい動揺の仕方をしているのである。
この時点で一夏はシャルルの正体に確信を得ていた。
「いた!例の転入生よ!」
「織斑君も一緒だわ!」
アリーナへ猛ダッシュする男2人の進路はゾロゾロ現れた
大勢の女子生徒によって突如塞がれてしまった。
「人気者は辛いな…全く」
「??」
HRと次の授業の間の時間は決して長くはない筈なのに
それもお構い無しで、噂の2人目がどんな子なのか
一目見ようと駆け付けてきたのである。
「突破するぞ、はぐれるなよ?」
「ええっ!?こ、これを?」
野次馬に絡まれたことが原因で姉にドヤされる気は
一夏には一切無かった。この集団の隙間を縫って突破し
アリーナへ急ぐぞ、とシャルルへ伝える。
それを伝えた瞬間には一夏は既に駆け出していた。
「わっ!?織斑君が逃げる!」
「待ちなさーい!」
確かに野次馬は多いが、満員電車ほどギチギチではない。
一夏はその人と人との隙間をヒョイヒョイとすり抜ける。
姉からの出席簿アタックを避ける為に鍛えあげた
その足捌きにとって、この程度の集団を突破する事など
大した事でも無いのだ。
「ちょっ…織斑君!待ってよー!」
シャルルも一夏がすり抜けていった混乱に乗じる形で
人混みへと飛び込んでいった。
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「ぜぇ…ぜぇ…酷い目にあった」
アリーナに向かう道中何度も女子生徒に足止めされ
それを必死になってすり抜けてきたシャルルは
息も絶え絶えであった。
「昼は今の…3倍だからな。覚悟はしといた方がいいぜ」
「さ、3倍!?」
まさか今までの苦戦が序の口だったとは思わなかった
シャルルは、この後自分を待ち受ける苦難を知らされ
空いた口が塞がらなくなった。
「っと、挨拶がまだだったな。俺は一夏、織斑一夏だ」
「あ…えっと、シャルルだよ。宜しくね」
握手を求められて混乱から立ち直ったシャルル。
しかし、時計を見ればこんな悠長な事をしている場合では
無かった。授業開始が迫っているのだ。
「着替え、急ごう。千冬姉にドヤされたく無いしな」
一夏は勢いよく上着とシャツを脱ぎ捨て上裸になる。
「わっ、わあっ!?」
「俺向こう回るよ、苦手だったか…悪いな」
突然顔を真っ赤にし一夏から視線を外したシャルル。
同性だとしても人前で着替えるのが苦手なタイプなのかと
気を使って一夏はロッカーを挟んだ反対側へ移動した。
(これは…確定じゃないか?)
一夏は着替えながらも軽く思考を巡らせる。
普段から鍛えているため細身ながら筋肉質な身体だが
同性であれば特に何か気にする様な事も無いだろう。
精々軽く視線を逸らす程度だ。
だが、シャルルが先程見せたあの反応の仕方は
最近まともに上裸姿を直視した唯一の同年代女子──
箒が見せた反応とそっくりだった。
(声の質も男にしちゃあ…な)
更に、先程から何度もシャルルの声を聞いていたが
とても綺麗な透き通った声で、声変わりが遅いにしても
どこか違和感が残るのだ。
「着替え終わったよ」
「んじゃ、さっさとグラウンド行くぞ」
ISスーツに着替えた2人は第2グラウンドへ急いだ。
("男の象徴"が無い?…決まりだな)
普通わざわざ無いように見せかける事をしない"ソレ"が
ISスーツの様なピッチリした衣服を着た場合少なからず
強調されることになる下半身のある部分の膨らみが
彼には見当たらなかった事を受け、一夏は早い段階で
シャルルの正体を暴く事を決意する。
はい、展開装甲の参考元は機動戦士ガンダムの
サイコフレーム、もといユニコーンガンダムです。
RX-0を知ってるとね…展開装甲ってキーワードで
真っ先に浮かぶのはRX-0なんです…
中の人繋がりってことで許して…。
ちーちゃんが第2回モンドグロッソを優勝した
経緯については次回以降、どこかで書きます。
追記:更新情報
本文の一部へ書き加えを行いました。