なんの取り柄もない農村のある一家に生まれた末っ子、アレンは兄弟姉妹に愛されたり愛されなかったりと温度差の激しい待遇を受け育っていた。
 そんなある日、いつものように兄に見捨てられつつも恐るべき魔物から逃げ出した先で少女と出会う。

 それは村滅亡への始まりであり、アレンの冒険の始まりでもあった。

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農村の末っ子が危機を脱するために奔走するそうです

 

「はひっ、はひっ……!」

 

 

 森に一人の人間が走る音が響く。後ろからは少年の命を刈り取らんとする狼が1匹、2匹、3匹。正確な数は定かではないが少年を獲物として追いかけている。ただ、少年の逃げ足が存外にも早く、追いつけていない。

 

 それはこの少年がこの世界でも稀有な存在である"加護(スキル)"持ちであるためである。

 

 だが、それはいまだ本人の知るところにない事実であり、この少年の住んでいた村では一番足が速い程度の認識であった。そのため、羨ましがられることはあっても、何も特別扱いされることがなく育ってきたのである。

 

 

「だれ、だれか。たす、けて……!!」

 

 

 少年は狼から逃れつつも大声で助けを求めるが、森の返す静けさが無情で少年に絶望を告げる。 

 変わらず後ろからは狼の息遣いや草をかき分ける音が聞こえる。振り切れていない。

 

 だが、少年はいまだに表情を曇らせることもなく森を駆け抜けていく。それはこの森を抜けた先には小規模な街があるのを知っているからだ。そこまで逃げれば狼から諦めてくれるか、街の衛兵が何とかしてくれるはずだからだ。

 

 

「っ……! ぐぅっ!?」

 

 

 逃げることに精一杯だったせいか、気の根っこに気が付けずに転んでしまった。

 追われていてスピードもそれなりに出ていたために十数秒ほど転がった挙句に運悪く急斜面を転がり落ちていく。

 

 そして川へと強く叩きつけられる。

 

 いくら水とはいえ、強く叩きつけられては死ぬし、幸運でも強い痛みを伴う。

 だが、少年は悪運のほうが悪く、幸か不幸か黒くふわふわとした何かに勢いよくぶつかってしまった。

 

 

「いてて……、この感触は、まさか……?」

 

 

 ハッとした少年は慌てて距離をとるのだが、その黒いものは少年が離れた瞬間には森中にとどろくような声をあげて少年を追いはじめる。再び始まる生死をかけた逃走劇。

 少年は狼の時よりもスピードを落として余裕を作ってから追ってきている黒い生き物を確認する。

 

 

「ゲ……、あれってノワルビッグベアじゃないか!!」

 

 

 黒くて毛が長く、顔つきの悪い威圧感を放っている恐ろしいクマだ。

 

 そして、少年の頭に浮かぶのは村一番の漁師の言葉だ。

 曰く、黒くて異様にもふもふとした巨大な生き物には気をつけろ、と。

 その名前はノワルビックベア。見たことはないが、実力差は生存本能だけでも感じ取れる。どうあがいても勝てない、と。

 

 

「ひぇえっ。誰か、誰かぁ!?」

 

 

 少年は走るが後ろのクマも同じ速さで追いかけてきている。どうにも、逃げ切れそうにない。

 

 

「うぇっ! 崖ぇ!?」

 

 

 少年の走る道の先には幅の広い崖が見えてきている。だが、ここで止まれば確実にクマの餌食になることだろう。

 

 

「い、イチかバチか!」

 

 

 そう覚悟を決め、その崖を少年は飛び越える。

 全力で加速し、一思いに崖を飛ぶ。後ろにいたクマは自身に急ブレーキをかけて崖ぎりぎりで耐え忍ぶ。

 少年は逃げ切ったことにわずかに口角を上げる。

 

 ……のだが、足りない。あと少し、足りない。飛び越えれるだけの速さが、足りなかった。

 そのまま少年は向こう側の崖をつかむことができぬまま落下していく。

 

 どうにか落ちていく途中にある小さな木をつかむが、少年の勢いと重さに耐えきることができずに折れ、少年は落下を続ける。

 

 

「うわあああぁぁぁぁぁl!?!?」

 

 

 頭に加わる強い衝撃。

 

 そんな下りを経て少年は気を失ったのだ。

 

 十分時間が経ち、だんだんと意識が戻ってくる。

 

 少年は小さくうめき声を出しながら目を開く。

 

 少年の目の前に飛び込んできたのは白髪の小さな少女と薄暗い洞窟だ。

 周りをちらちら見ても薄気味悪いロウソクくらいしか見えないし、好き好んで長居するような場所ではないのは確かだ。

 

 

「目覚めたか、少年」

「……だれです、か?」

 

 

 目覚め際についつい聞いてしまう。

 少女はふむふむと小さくつぶやきつつもこう問いかけてきた。

 

 

「其方の名は?」

 

 

 黒いワンピースを着た少女は少年に問いかける。

 暗闇の中だというのにそのクリっとした紅玉のような瞳は爛々と光っている。比喩ではなく。

 

 

「……光ってますよ?」

「む、この|魔眼≪め≫か。持病みたいなものだ気にするでない」

 

 

 妙な会話のかわし方に若干の不安をあおられながらも少年は自身の名を明かす。

 

 

「僕はアレンです」

 

 

 ……。

 

 …………。

 

 沈黙。

 

 

「ふむ。そういえば私の方が聞かれていたのだったな」

 

 

 少女はポンと手をたたいて少年に向き直る。

 少年アレンも流石に今更な気はしたがさして問題な気もしない。

 

 だが、少女法は違ったようで、

 

 

「こうも変な生活を続けておると会話の仕方もわからんくなるものだな」

 

 

 うーむ、うーむ、とうなりをあげながら反省せねばと続ける。

 

 うーむとずっとうなり続けているので、アレンはなんだか自分の事が忘れられているような感覚にとらわれる。

 

 

「えっと、じゃあ。君の名前は?」

 

 

 流石にこの状況を放置しておくのも気が引けるし、何よりお礼を言わなくてはと思いひとまず名前を聞く。

 

 

「わたし、……私? まあいいか。わたしは、そうだな。ユーナとでも呼ぶがよい」

「ユーナ……」

 

 

 アレンの脳裏にはふと一人の年の近い少女の姿が思い起こされる。

 姿形、しまいには話し方だって全く違う人物なのだが、同名なのだ。

 

 

「……よし、きまりだ」

 

 

 どうやら、ユーナはアレンの返事も聞かずに勝手に決めたようだ。

 まだ子供であるアレンにもこれが偽名であることぐらいわかってしまう。

 

 

「ええと、ユーナ、ちゃん?」

「おおう、ちゃん付けか。むず痒いな。もっと呼べい」

 

 

 なぜか呼ばれただけでもじもじとし始めるユーナ。

 押しに弱いアレンは仕方なくもう一度呼ぶことにする。

 

 

「ユーナちゃん。……これでいいかな?」

「んー。満足だ。お礼に村まで返してやろう」

 

 

 ユーナはなぜかお礼をしてくれるらしい。

 彼女はされる側だというのになんでだろう、と疑問に思ってしまう。

 

 

「んにゅ? 気にするな。気分だ気分」

「じゃあ助けたお礼は良いんですか?」

 

 

 アレンが提案を持ちかけると少女は思案顔になってふむ、と考えこむ。

 長くなっちゃうのだろうかと思った。だがその心配は杞憂に終わる。

 

 

「じゃあ、なにかあったら"お話"を聞かせてくれ」

 

 

 答えが早かったので意外そうな表情を浮かべるが、ユーナは気にも留めずに手から何かを生み出す。

 黒い玉のようなものがユーナの掌の上で瞬時に広がり、ゆっくりと何かに形どっていく。

 

 

「この首飾りをやろう。決して手放すでないぞ」

 

 

 アレンはこくこくと頷く。

 それをみてユーナは満足したようでうんうんと言う。

 

 

「この首飾りは何なんです?」

「"ともだち"とやらの証だ!」

 

 

 アレンは思わずぽかんと呆けてしまう。

 命を助けてもらったからには、もうちょっと難度の高いお願いをされるものかと身構えていたのだ。しかしその必要はなかったらしい。ちょっと安心した。

 

 

「ふふん、忘れるでないぞ。其方は一人ではない。このわたしがいる」

 

 

 アレンは不思議ととてもユーナの事を心強く感じると同時に、一方でもう少し自分がどれだけ弱い存在なのかを感じてしまった。

 この様な少女に助けられてしまう程度のものなのかと。

 

 アレンは心細くなり、貰った首飾りを両手の親指でいじる。

 形はいたってシンプルなロザリオで銀色の小さなアクセサリだ。

 

 まあ、この程度であれば兄達も気にしないだろう。むしろ最近は行商人が来てもっといいアクセサリを見せ回っていたからダサいと貶されるまでありそうだ。

 

 

「なんだか不安を抱えているな?」

「全然ないよ。それより、ありがとう」

 

 

 ユーナは不服そうに唇をとがらせていたが、アレンがお礼を言ったのでまんざらではなさそうな顔をしている。時間が経つとだんだんとがっていた唇もにへら、とふにゃらけた顔になるから不思議である。

 村の方のユーナとかとか、女の子の事はよくわからない。

 

 

「よし。大、満足だ」

 

 

 ふんすと鼻を鳴らしてユーナは手元から黒い塊を出して僕の伸長ぐらいの楕円を作る。

 

 

「ここを通ると其方の村だ。長くは持たせられぬからさっさと行くがいい」

 

 

 アレンは少女にせかされるがままに黒い楕円へと飛び込んだ。

 

 飛び込んだはいいのだが、一分ぐらい浮遊感が続く。

 浮遊感が突然なくなり重力がアレンの意識に絡みつく。

 ついにその変な感じに耐えきれなくなったアレンは意識が薄くなっていく。

 

 そんな中でもう二度とこんなことは体験したくないなぁとも思った。

 

 

 ……のも束の間だった。

 

 

「とーちゃん、アレンが戻ってるよぉ!」

 

 

 耳をつんざくような上の兄の叫び声。

 あれあれと思って周囲を見渡すと自分の部屋。

 それも自分のベッドの上。

 

 そうとは言っても雇われ農家なので、自室を持たず家族の部屋だ。

 

 

「アレンッ! キノコはどうだった!」

「野豚にくわれてた」

 

 

 見たままの事を上の兄に伝えると兄は頭を抱えてアレンにずんずんと歩み寄ってくる。

 体格も背も違う。迫力がすごくて思わずのけぞるが何分ベッドが小さいのでそこまでのけぞれない。

 

 

「……俺のキノコの事はナイショな。そしてお前のキノコ寄越せ」

 

 

 ぎろりと上の兄がアレンをにらみつける。

 迫力が段違いなので当然アレンはこくこくと頼みを承諾する。

 

 

「うんうん、ケンメーだ」

「あ、グレンにいちゃんなにやってるんー?」

 

 

 下の姉の声が聞こえた。

 好奇心旺盛であらゆることに首を突っ込むためアレンとしてはちょっと苦手だ。

 

 まあ他の家族と比べても一番マシなのだが。

 

 

「そーいえばキノコ、アレンの分を横どったらキレるぞってお父さん言ってたよ」

「ひぎっ!?」

 

 

 まあ一番アレンにマシな対応をしてくれる人物でもある。

 

 

「と、とーちゃんっ! ああああ~~!」

「なっさけないのー。ねーアレン」

「そ、そうだね」

 

 

 一番話しやすくていちばんやさしい。まあ欠点もあるのだがこの際、気にしないことにした。

 

 

「あー。アレンにねお父さんが今日の事は気にするなって。何のことだろ?」

 

 

 一瞬、アレンの肩がびくっとした。

 やはり父は何を考えて何を知っているのかがわからない。

 

 

「わかった」

 

 

 アレンは明確な意図の掴めない言伝に若干戸惑いを覚えた。

 こういう時の父は決まって寝て忘れろ。とかいう。

 なのでもう寝てもいいという合図だったりもする。

 

 

「ん、アレン寝るの?」

「うん」

「おやすみー」

 

 

 アレンは一方的に言葉を残して去っていく下の姉におやすみなさいと心の中で返事をしつつ眠りにつくのであった。おやすみなさい。

 

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 ザクザクと土を抉り、アレンは一心不乱に鍬を振る。下の兄に開墾を手伝えと言われたので仕方なく鍬をえっせほっせと振っている。正直に言えば腕の筋肉が付くので、兄たちのように強くなれるまたとないチャンスだ。

 アレンにこのような雑用を見逃さない手は無かった。

 

 いつもと変わらない日々。

 まるでこの前に死にかけたのが嘘であるかのようだ。

 

 アレンは無意識にあの日からずっと首につけたロザリオのような首飾りに手を伸ばしていた。

 金属のような手触りなのだが不思議と温かみを感じる。まるでそこに誰かが息づいていると例えるとができるほどに。

 

 

「おーい、アレン。そんなダゼーもん触ってねえで鍬動かせ。鍬!」

 

 

 下の兄が遠くから怒鳴る。

 そんなキンキンと怒らなくても十分にキンキンとしているので怒鳴る必要もないのにと思いつつ再び鍬を振る。

 

 まあ流石にアレンに頼みごとをしたといっても何もしないわけがなく、辺りの小さな木やら邪魔になりそうなものを取っ払っている。

 ただまあ土魔法が便利なんだなということはよくわかるが、いかんせん独学なので直ぐに疲れて動きが止まる。確かにテキトーな魔法は疲れるから仕方のないことだと感じた。

 

 しばらく何の変化もなく鍬を振り続けていると遠くから何かの雄たけびが聞こえる。

 

 

「んひゃ!」

 

 

 下の兄が突然びっくりして僕の伸長くらいは飛び上がったので、下の兄の見ている場所を見るとおっきいグレーとボアが5匹もこっちに迫ってきているではないか!

 

 

「あ、あああ、アレン! お前がオトリになれ!」

 

 

 逃げようとしたアレンを土魔法で足止めして自分だけ逃げだす下の兄。

 

 厄介ごとをアレンに押し付けるのはいつもの事だ。とはいえこんな風にアレンの機動力まで奪うのはやりすぎな気がしたが、アレンは仕方ないなとため息を吐いた。

 アレンは鍬で器用に足の周囲の土を軽くたたくと酵素kはいともたやすく解ける。

 そろそろ新しいのを覚えてみてはどうかと提案したくなるくらいに何度もかけられたことのある魔法なので対処は簡単なのだ。

 当然ながら新しい魔法など厄介なだけなのでそんなこと話したりはしないが。

 

 

「……この前もだったな」

 

 

 アレンの脳裏にふと思い浮かぶのは数日前のこと。この首にかけてあるロザリオもどきをくれた少女と出会った日の事が思い起こされる。

 あの日は上の兄の頼みと中くらいの兄の頼みで山へと向かっていた。だが、ついてきていた慣れない中くらいの兄が疲れたと泣きべそをかいたことでオオカミがやってきたのだ。

 当然、押し付けられたのだが。

 

 まあ、何だろう。アレンにとってはいつもの事だ。

 

 

「逃げろ!!」

 

 

 勿論。

 アレンに戦闘力など無い。

 できることは逃げるだけだ。

 

 ボアは基本直進するだけの魔物。

 押し付けられて逃げ足が鍛えられたアレンを捉えられることなど出来ない。

 当たりそうなところでアレンは避ける。避ける。ただまあ、綱渡りなどアレンはずっと続けているつもりもなくグレートボアをある場所にまで誘い込んでいた。

 

 そう。あの崖だ。この前アレンが落下した場所ではあるが、グレートボアに有効な武器を持たないアレンには丁度いい|罠《ぶき〉になる。

 使い方など言わずもがなで、ただ単に突進を利用して落とす。あわよくばこの崖に恐れをなして逃げ去っていくことを期待しているのだ。

 

 

「んぐ!」

 

 

 すれすれの避けを続けるアレン。グレーとボアは崖から落ちることなくかつ崖を恐れることなく突進を継続中だ。どうやら想定外だったようだ。

 

 流石にこのままだと推し負けることを理解したアレンだったが極限状態の曲芸を続ける。

 勿論とある機会をうかがっている。

 

 グレートボアの突進。崖に近づく前にカーブする。ダメだ。

 グレートボアの突進。崖にいかない。ダメ。

 突進。崖にはいかない。無理。

 

 とまあこんな感じで敵の情報を分析しつつ攻撃をひらりとかわしていく。

 

 

 継続するうちにグレートボアたちにも疲労の色が若干見え隠れし始めている。

 そりゃあもちろんアレンも披露しているが気合と根性でそれを補っている。したくないのはどの人間だって抱える気持ちなのでしかたがない。

 

 と、ここでグレートボアが曲がることを捨て速度を上げて迫ってきている。

 方向は崖の方に向いている。

 

 そんな隙を逃すアレンでもなかった。この時をずっと待っていたのだ。

 

 

 アレンは小さく跳びあがるとひざを曲げて両足をグレートボアの頭にのせてとりつき、崖のぎりぎりで両足を思いっきり伸ばす。

 ボアの突進を利用した大ジャンプ。まあ、余裕がなくては考えつかないような珍妙な策だが、これを実行しようとするのは正気ではないだろう。

 

 ただ、失敗など微塵も考えていなかったようで、まっすぐに崖の向こう側へと向かっていく。

 グレートボアが全力の突進を繰り出してくれたおかげもあり上半身だけどうにか反対側の崖に取り付くことに成功した。

 なかなかスリリングだ。二度としたくないなと思いつつもアレンはぎこちないへっぴり腰で走り出す。

 

 幻聴か、はたまた本当に聞こえたのかは知らないが、落ちてきてもよかったのだぞと聞こえた気がしたがこれは確実に気のせいだろう。

 グレートボアは追撃に入るような真似はみせなかったが他のあモノに続けて襲われる可能性もあるので警戒を解くことなんてできやしない。

 アレンとしては今来た崖の反対へ戻らないと村には帰ることができないので冷たい汗がたらたらと背中へとした経っている。おかげさまでシャツはびしょびしょのずぶぬれだ。

 

 

 崖に落ちたらあの子が助けてくれるのかもしれないけどそんな不確定な怖いこと試す気にもなれなかったので、止しておくことにした。アレンの首飾りがカンカンに熱いのは気のせいなのだ。

 

 

 そんなことを崖の下を見てつぶやいているものだから突然の衝撃に耐えられず唐突に落下してしまう。助けがないと死ぬなこれは。アレンはそう確信しつつも頭部への強い衝撃で意識を失った。

 

 と、思えば件の洞窟だ。

 

 アレンの目の前にはニコニコとしている少女ユーナがいる。

 白髪が暗闇の中でとっても映えていてはっきりと見えるほどに光っている。

 比喩抜きで。

 

 

「今度は目に続いて髪の毛が光ってますよ」

 

 

 ちなみに前と同じく目も赤く光っていてコワかった。

 

 

「ふむふむ、これも持病のようなものだ。気にするな」

「気にするなって方が無理だよ。人間じゃ普通見ないものだから」

「そうだな。なら気にするな!」

「え、あ、うん?」

 

 

 アレンはなぜか言いくるめられた。押しに弱くてぐいぐいいけない性格も関係しているが深くは語るまい。

 

 

「さて、アレン。一つ忠告だ。近いうち其方の村は滅びる」

「滅びる??」

 

 

 唐突に未来を語ってきたユーナに流石のアレンも戸惑いを隠せない。

 兄姉にいろいろなことを押し付けられてきたといっても流石に未来までは押し付けられたことはない。どうしていいかもわからず困ったものである。

 

 

「なに、過程は様々だ。飢饉や災害、戦争。何処にでも火種は転がっておる。それを排除せねば其方の村は高確率で滅びる」

 

 

 唐突に自分の住む場所が滅びると宣言されて誰が信用すると言うのだろうか。

 

 

「ちなみに其方は村の誰かに殺されそうにもなっておったな。まあ、誰なのかまでは視えぬが」

 

 

 アレンとしてはうーん、胡散臭いで片付く言葉だ。僕の村は温厚な人たちでいっぱいだし。みんながみんな、根は優しいいい人たちなのだ。

 ただ、この少女が嘘を吐く利益も見当たらない。嘘を吐けばこっちが振り返ってくれると思って言っている可能性もなきにしろあらずだが、そんなことをするような人間ではなさそうだ。いやまあ本当に人間なのかも怪しいところなのだがこの際どうでもいい。

 

 まあ信じるに値する、という評価だ。正直なところ、助けてもらっているのはこちらの方なのでこの予言らしき何かを完全否定するのも悪い。

 調べてみる価値はあるだろうとアレンの直感が告げる。

 

 

「……完全には信じきれないよ。でも、わかった。友達の話を最初から全部嘘だと決めつけるのもというのもおかしな話だもんね」

 

 

 アレンは自分に言い聞かせるように言う。

 

 

「む、なんだかちょっと悲しくなるんだけど。その捉え方は」

 

 

 抗議の声が聞こえたがアレンはあまり気にしせずに続ける。

 

 

「ユーナちゃんはどうしてそんなことが分かるの?」

 

 

 アレンの尤もな疑問にユーナはやはりそこに行き着くか、と微妙そうに眉を顰める。

 うーむ、と少しの間うなるとポツリとなにかを漏らす。

 

 

「……? なに?」

「……やっぱり秘密だ」

 

 

 彼女は説得力に自信が無いらしく俯いて黙り込んでしまった。

 アレンとしては真実が知りたいだけだったのだが。




つづかない

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