万能キャラは最強なので全ステータス平等に振りたいと思います 作:錆びた氷
「へぇー、ログイン設定のためだけの空間なのに凝ってるし、これは『NewWorld Online』への期待も自然と高まるってものだよね」
青白いバーチャル空間で、誰か聞かれるわけでもない独り言を呟きながら彼──奥瀬 連理は「配信者:暁月 スイレン」としてのアバターで立っていた。
投稿用の動画撮影や、難易度高めのゲーム実況中はリスナーからの反応を見られないこともある。退屈させないよう何か話し続けることが多く、若干癖になりつつあるのだった。
昨日の配信後は大手通販サイトで『NewWorld Online』をポチり、最初に手を付けたのは攻略サイトや掲示板。まだサービス開始から間もないからかトップ勢との差も少なく、かつスキルや装備も自由自在なため選択の幅も広い、というのが初見の印象。
そして通販も発達したこの時代様様でもうソフトが届いたためさっそくログインし、できる限りのキャラクタークリエイトを済ませたところだった。
その姿は、多少長めに遊ばせ残りは後ろで括った浅葱色の長髪と、ラピスラズリの青を埋め込んだような眼が特徴の好青年。
その手足を慣らすために頻りに動かしながら、その他の設定も決定していく。
「ええと次は……プレイヤーネームか。それはもう決まってるし」
彼の手は迷いなく「スイレン」と文字列を打ち込む。
普段からゲームでのニックネームは統一する派のスイレンにとって、配信でも個人でのゲームでも使用するのはこの名前だった。
「……武器かー。正直どれでもいいんだよね、てかこのゲーム選んだ武器で初期HPとMPが変動するみたいだし……あ、選ばずに進めたりしないかな?」
思いついたように、試しに事前に観ていたゲームのプレイ動画を思い出しながら手をかざすと、ステータス選択のためのウィンドウが出現する。
見回すと周囲で初期武器が旋回したまま、ステータスを振っていなくても『OK』のボタンは光っていた。
「これ、初期武器とかステータス選択しないままでも行けるぽいね、ラッキー。一応ステータスは予定通り振っときますかね?」
ピピピピ、とゲームらしい軽快な音と共に数値が割り振られる。
全ての項目を14ずつ押して、指が止まる。
「完了、っと。さて、ゲームすたーと!」
そして『OK』のボタンを押しスイレンのアバターが光に包まれた。
☆ミ
初期リスポーン地点、第一の町の活気あふれる広場にスイレンが舞い降りた。
いかにもなファンタジーな世界が目に飛び込んできてまばたき一つ惚けるが、すぐに気を取り直すスイレン。
軽く地面をつつき、一歩踏み出したりジャンプをしたり、軽く動作確認をする。安全を確認して、勢いをつけ側転からのバク転。新人プレイヤーを見守り声をかけなかったプレイヤー達からも拍手が送られ、スイレンも片手をあげて応えてから森に続く門へと足を運ぶ。
その途中で、ほう、と感嘆の息を漏らした。
「さすが人気のVRゲーム、割とリアルに近い形で収まってるみたいだね。反応とかも想像以上だし、この分だとAGIが低くても割と動けそうかな」
手をかざして、ウィンドウが開く。
スイレン
Lv1
HP 220/220
MP 220/220
【STR 14】
【VIT 14】
【AGI 14】
【DEX 14】
【INT 14】
残りステータスポイント 2
装備
頭 【空欄】
体 【空欄】
右手 【空欄】
左手 【空欄】
足 【空欄】
靴 【空欄】
装飾品 【空欄】
【空欄】
【空欄】
スキル
なし
「スキルはなし、装備も見事なまでにすっからかん。まあ先ずは所持金を集めるところから始めないとね」
最初から所持していたのはたったの3000G。近くの森で狩りをする消耗品程度なら問題はないが、オーダーメイドの武器を依頼したりスキルを大量に購入したり、その他やりこみ要素のアイテムを買うには到底叶わない額。
街付近では他の初心者も思い思いに戦闘を行っていて、邪魔しないよう更に森の奥へと進んでいく。そこそこやり込んでいるであろうプレイヤーが心配そうに見つめていたが、会釈だけを返し足早に駆けていった。
門からしばらく離れてみれば強力なモンスターともエンカウントするだろう、などという淡い期待も込めて森を彷徨うスイレン。
鳥のさえずりや風で葉がこすれる環境音の中で、目の前の草むらがガサッと音を立てて揺れる。
バックステップで距離を取り拳を構えていると、飛び出してきたのはカットりんごにでも似た兎であった。
「初エンカは兎……兎? うん、まあいいか。対戦よろしくお願いします!てね」
スキルと装備制のファンタジーゲームで、スキルなし装備なしで戦闘に行く主人公くん
一週間後には次回投稿したいとか言って、一ヶ月以上ブッチしたやつがいるってよ
私の文体は基本三人称の、偶に一人称が入ってしまう形になると思います……地の文ムズイ
まだ一話しか投稿していなかったのにお気に入りしてくれた方々に感謝です