エイシンフラッシュの娘。   作:ソースケ2021

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偉大な母親を持つウマ娘・アデリナが、自身の実力と母親の実績、その親子関係に葛藤しながらも競争生活を全うしようとするお話です。

※オリウマ娘注意です。

登場人物
フラッシュアデリナ

【挿絵表示】

誕生日:4月28日
体重:おおよそ理想
身長:159センチ
スリーサイズ:87・58・86


第4話

光陰矢のごとし、という言葉があるが、季節は矢どころか、光のように流れていった。

あっという間に冬が来てお正月が終わり、梅の花が咲く季節になった。

 

桃の節句が終わったかと思うと、すぐに桜が咲き始める。

桜の開花と同時に初々しい新入生たちがやってきて、同じ歳のエリートたちはやれ三冠路線だ、トリプルティアラだ、と光当たる道を歩み始めた。

 

そのエリート路線の皐月賞が終わると、新緑の季節がやってくる。

もうすぐレースの祭典、母が制覇した日本ダービーの日がやってくる。

あたしがここに入学してから、もう1年以上が経っていた。

 

……なのに未だ、あたしは1勝も挙げられないでいた。

 

 

「……3着か……」

 

今のレース、中山未勝利戦・ダート1800Mの結果が表示された掲示板を呆然と眺め、あたしは心ここにあらずな感じでポツリとつぶやいた。

 

あたしはデビューから一貫して芝の中距離を走ってきたのだけど、どうしても結果を出すことができないでいた。

そこでトレーナー(あたしの父でもある)と相談し、去年の冬からいろいろな条件のレースを試してみている。

 

短距離・マイル・長距離・ダート……。

 

だがどの条件のレースを走っても、思わしい成果が得られていない。

今日の3着は、直近のレースでは一番マシな結果だった。

 

呆然自失の体でなんとか控室に戻ると、トレーナーがスポーツドリンクを持って出迎えてくれた。

 

「アデリナ、おつかれ。よく頑張ったな」

「うん……」

 

差し出されたスポーツドリンクを受け取ることもせず、あたしはただただ頭を抱えて備え付けの椅子に座り込む。

 

本当は、怒り狂いたかった。

結果を出せないウマ娘に叱責もしないトレーナーに。

結果を出せない、情けない自分に。

 

今年に入ってすぐくらいまではそんな怒りも湧いてきていて、理不尽にも父親でもあるトレーナーにそれをぶつけたりもしていた。

 

でも最近は、そんな気力すら湧いてこない。

 

もう、疲れたんだ。

 

勝てないことに怒りを覚えることも。

 

誰かと、競走することにも。

 

……出走制限が近づく中で、レースを戦い続けることにも。

 

 

ウマ娘の引退には、2通りのパターンがある。

ひとつは自分の能力や怪我の具合に限界を覚え、自ら現役に幕を引くケース。

この場合、ほとんどのウマ娘は現実を受け入れ、それなりに納得してレース生活に別れを告げることが多い。

 

もうひとつは……5月後半期に行われるダービーまでに、一勝もできなかった場合。

なぜかというと、クラシック級の未勝利戦が番組に組み込まれているのがこの月の最終週、つまりダービーの日までだからだ。

中央でデビューし、メイクデビューや未勝利戦をこの日までに勝てなかったウマ娘は、もう出走できるレースがなくなってしまう。

このケースでは本人がどれだけ現役続行を望もうとも、中央で走り続けることはできない。

 

だって、出られるレースがないのだから。

 

では、そうなったウマ娘はどうなってしまうのか。

 

どうしても現役を続けたい場合は、出走制限のない地方のトレセン学校に転校する娘もいないわけじゃないんだけど……。

ほとんどの娘は自分の才能に見切りをつけて学園の理事会とURA宛に【引退届】を提出し、レースからは完全に身を引いて、あとは【普通の女の子】として学校生活を送ることになる。

でもそれが精神的に辛くて、レースとは無縁の中学校や高校に転校する娘もいるのが現実だ。

 

彼女たちはもう二度と、ウマ娘として栄光のターフやダートを駆け抜けることはない。

 

あたしはいやでも、その現実と向き合わなければならなかった。

 

「アデリナ」

 

父の声が、ずいぶん遠くから聞こえたような気がした。

 

「とりあえず、学園に戻ろう。……昼食はどうする?」

 

レース後の昼食。

普段学園の食堂で食べているあたしにとって、数少ない外食の機会だ。

それが厳しいレースを戦ったあとの、楽しみだった。

でも、今日は……。

 

「いらない。お腹空いてない……」

 

負けていじけて、そう言っているわけではない。

ここ2ヶ月ほど、レースのあった日から数日間、ほとんど食事が喉を通らないという状態が続いている。

ウマ娘もアスリートだから、こんな状態が続くことがいいことであるはずがない。

でも、無理に食事を取ろうとしても、全部もどしてしまう。

 

医師にも見てもらったが、どうやら精神的なものらしく、胃薬と軽い精神安定剤を処方されただけで、それ以上は対処のしようがないそうだ。

それらの薬も、全く効いている感じがしない。

 

「……そうか。なら、帰ったらおかゆを作るよ。それを食べて今日はゆっくり休んでくれ」

 

おかゆはこの地獄のような食欲不振のあいだ、なんとか口にできる食事だ。

あたしはだまってうなずくと、ゾンビのような動きで帰る準備を始めた。

 

 

帰りの電車の中。

いつもなら今日のレースを振り返ったり、次のレースについて話し合ったりするのだが、今日に限ってはふたりとも無言だった。

 

……お母さんには、今のあたしの状況を伝えていない。

お父さんはもちろん定期的にお母さんとやりとりしているけど、『絶対にあたしの今の状態を言わないで』と固く口止めしてある。

お母さんには心配かけたくない、という娘らしい感情ももちろんあったけど、自分が弱っている今の状況をあの母にだけは知られたくない、という気持ちのほうが強かった。

 

ふたりとも無言のまま、電車はトレセン学園の最寄り駅に到着する。

駅から学園までの帰り道も、あたしたちは言葉をかわさなかった。

学園につくと、父の使っているトレーナー室に直行する。

 

ともあれ、おかゆを胃の中に流し込むためだ。

 

おかゆくらい学食のおばさんに言えばもちろん作ってくれるんだけど、こんな状態の自分をたくさんの生徒たちに見られるのは、耐えられなかった。

 

本来トレーナー室は火気厳禁であり、IHであってもコンロの持ち込みはダメだそうだが……お父さんはあたしのために、ルールを破ってくれている。

 

なんとか食欲が戻ってくるまでのあいだ、あたしは食事のたびにここに通うわけである。

 

……ほんと、ダメだなあたし。

普段あれだけお父さんに生意気な口を叩いているくせに、結局完全に甘えてしまってる。

 

「できたよ。熱いから気をつけてな」

 

あたしは礼も言わずにおかゆの入った少し大き目の茶碗をお父さんから受け取ると、スプーンでそれをすくってなんとか口に運んだ。

 

吐き気はするが、戻してしまうほどじゃない。

 

味はしない。

 

しっかり塩味をつけてくれているはずなんだけど、舌はただただ、おかゆを熱い物体と認識しているだけ。

レース直後のおかゆはいつもこうだ。

まるでその無味無臭のおかゆから、『お前もなんの味もしない、つまらないウマ娘だ』と責められているような気分になる。

あたしはとうとう耐えきれず、ボロボロと涙をおかゆの中に落としてしまった。

涙で塩味が増したはずのおかゆは、それでも無味無臭のままだった。

 

お父さんはそんなあたしを、黙って見守ってくれていた。

 

 

「ただいま……」

 

夕食もおかゆを喉の奥に押し込み、点滴代わりの甘酒を飲んで自室に帰ってきたのは、寮の門限直前の時間だった。

ルームメイトでもあり、親友でもあるスプラッシュスターちゃんには弱りきったあたしの姿をできるだけ見せたくなかったので、最近のレース後は門限ギリギリまでトレーナー室で時間を潰してから部屋に戻るようにしていた。

 

「あ、おかえり。アデリナちゃん。……レース、おつかれさま」

 

椅子をぎぃ、と言わせながら、同室のスプラッシュスターちゃんがなんとも言えない微笑で出迎えてくれる。

きっと彼女は、あたしの今日のレース結果を知っているのだろう。

 

「ありがと。……スターちゃんはまた勉強?」

 

あえてその結果には触れず、あたしはスターちゃんの机の上に視線を向けた。

そこにはスマホとシャーペンと消しゴム、それになかなかレベルの高い参考書と問題集が置かれていた。

 

最近スターちゃんは、熱心に学校の勉強に取り組んでいる。

時には消灯時間を過ぎても、スマホの明かりで問題集を解いていたりするぐらいだ。

それでいて、朝5時からの自主練はきちんと毎日続けている。

本当に、すごい娘だと思う。

 

「うん……まあ、私も学校の勉強くらいは頑張らないとね」

 

不安をオブラートで包んだかのような口調で、スターちゃんはそんなことをいう。

自分が『なぜ』勉強を頑張っているか、その理由までは言おうとしなかった。

……彼女もあたしと同じでいまだ未勝利クラスを抜け出せず、次のレースが引退レースになるかもしれないという身だったから。

 

「……ねぇ、スターちゃん。もし、未勝利を抜け出せなかったらどうしようと思ってる?」

 

あたしたちは同室で、同じ未勝利の身でありながら、この手の話題はあえて避けてきた。

今まではまだ出走制限までに時間的余裕があったし、お互い苦しい立場なのがわかっているから、わざわざ重苦しい話をしようとしなかったわけだ。

 

でも、もう事ここに至れば、お互いそういう相談をしておくのも悪くないだろう。

あたしの友人の中で、そんな気まずい話ができるのは親友のスターちゃんだけ、という身勝手な理由もあった。

 

「う~ん。中央で勝てなかったら、もっと自分のレベルに合った地方のトレセン学校に転校する娘もいるらしいけど、私はもうレースはいいかなって。かと言って私ぐらいの競走成績でこの学園に通い続けるのも申し訳ないし……多分、地元に戻って学力的に入れそうな高校に転校することになると思う」

 

あたしが勝手に始めた不愉快な話にも関わらず、スターちゃんは率直に自分の思うところを言ってくれる。

 

入学前、お母さんが【一生付き合える友人に出会うこともできるでしょう】と言っていたのは、どうやら本当のことらしい。

 

もちろん、スターちゃんが嫌でなければの話だけど。

 

「そっか。あたしは……」

 

少々勉強ができるつもりの頭を引っ掻き回して、未勝利戦で勝てなかった時の人生プランを考えてみる。

彼女が言いにくいことを言ってくれたのに、あたしがそれを言わないのはあまりにアンフェアだ。

 

…………。

 

あれ?

 

「あたしは……」

 

トレセン学園生活が未勝利で終わった時、どうするつもりだったのだろう。

スターちゃんと同じように、どこぞの普通科の高校に転校するつもりだったのだろうか。

入学前に家族と話していたように、地方のトレセン学校に転校しようとしていたのか。

それともそのまま素知らぬ顔をして、高校卒業の歳まで学園に居座るつもりだったのだろうか。

 

「あたしは……」

 

そこから、言葉が出てこない。

あたしの脳はまるでその現実を拒否するかのように、そこから先の言葉を出させようとはしなかった。

 

しばらく、重苦しい沈黙が続く。

 

「……アデリナちゃん」

 

沈黙を破ったのは、スターちゃんの方だった。

 

「ちょっと、今からお出かけしようか」

「え、今から!?」

「そう、今から」

 

スターちゃんはいきなり、真顔でとんでもないことを言いだした。

当然、寮の門限の時間はもう過ぎてしまっている。

 

「さすがにこの時間からは……」

 

あたしもルールを破るのは嫌いではないほうだが、この大事な時期に問題を起こしたくない、というのが本音だった。

 

「まあまあ、たまにはいいじゃない」

 

そう言ってスターちゃんはパジャマ代わりジャージからあっという間に私服に着替え、薄手のカーディガンを羽織ってしまった。

なし崩し的に、あたしもなぜかお気に入りの私服に着替えてしまっている。

 

「でも、どうやって寮から抜け出すの?消灯後ならともかく、この時間ならまだあちこちに人いるでしょ」

「それなんだけどね。私、たまにリビングで消灯時間近くまでおしゃべりしていることがあるでしょう?その時気づいたんだけど、今ぐらいの時間、寮の勝手口の近くには誰もいないことが多いの。裏門まで守衛さんに見つからなければ、外に出るのは簡単だと思う」

 

裏門にはもちろんカギが掛かっているだろうが……そんなものはよじ登って飛び越してしまえばいいだけの話だ。

 

あたしたちは未勝利と言っても一応ウマ娘であるから、それくらいのことは朝飯前である。

 

……ダメだな。ちょっと自虐的になってる。

 

こういう精神状態の時は変にアクティブなことはせず、さっさと寝てしまうのが一番いいと思うのだけど……今夜は、そんな気にもならなかった。

 

「OK。じゃあ行こうか。夜のお散歩に」

 

あたしの返事に、スターちゃんは最近見せてくれてなかった、明るい笑顔を向けてくれたのだった。

 

学園から抜け出すのは、拍子抜けするほどカンタンだった。

スターちゃんが言ったとおり寮の勝手口には誰もいなかったし、寮から裏門にたどり着くまで、守衛さんに見つかることもなかった。

 

そもそも、トレセン学園はそれほど厳重に警備されているわけじゃない。

トレセン学園が結構へんぴな土地に建てられていて、見慣れない人間がやって来たらすぐわかる、ということもあるけど……。

大金が置いてあるわけでもない、腕力や脚力で普通の人間を遥かに上回っているウマ娘だらけのトレセン学園にわざわざ強盗に入ろうなんてバカは、強盗に入るほどのバカでも考えないだろう。

 

そんな楽園からルールを破って抜け出したあたしたちは、それ以上の大バカなのかもしれなかった。

 

学園からの脱出に成功したあたしたちは、とりあえず最寄り駅から電車に乗った。

どこに行くかなんて決めていない。

最初にホームに入ってきた電車に乗り込んで、あたしたちは空いていた座席に二人並んで腰掛ける。

 

あたしたちは、終始無言だった。

 

トレセン学園はさっき言ったように都内のくせに結構な田舎にあるので、乗ってすぐは空席もあったけど、ひと駅止まるごとにたくさんの人が車内になだれ込んでくる。

 

仕事帰りの会社員。

塾帰りの子供。

町内会の催しの帰りだろうか、グループになったお年寄り。

部活帰りなのだろう。

制服姿の、あたしたちと同じ歳くらいの高校生たち。

 

彼らの笑顔が、疲れきったサラリーマンの顔さえも、あたしにはひどく眩しく見えた。

 

疲れた顔を拝見すれば分かるように、もちろんあの人たちもみんながみんな、順風満帆な社会生活を送っているわけじゃないだろう。

でも、彼らは社会から必要とされて、社会の第一線で頑張っている。

 

会社で大変な思いをして働いている彼らと、才能がなくてもうすぐレースの世界から叩き出されようとしているあたしと、一体どっちが幸せなんだろうな……とやくたいもないことを考えたりしてしまった。

 

ひょっとしたら、隣りに座っているスターちゃんも同じようなことを考えていたのかもしれない。

彼女は何も見えないよう、目をつぶって眠っているふりをしていたから。

 

 

スターちゃんが『ここで降りよう』といって降車した駅は、あたしが初めて降りる場所だった。

 

知ってる場所なのかと尋ねたところ、「適当に乗ったんだから、適当に降りるのも悪くないでしょう?」という返事が戻ってくる。

 

まあ確かに、それはそれで悪くないのかもしれない。

それでも初めての場所はさすがに不安なので、スマホでマップを起動させる。

どうやらここは、学園から10駅ほど離れたところにあるベッドタウンらしかった。

地図アプリで周辺情報を見てみたところ、あたりにあるのは居酒屋とラーメン屋とパチンコ屋ばかりという、典型的な住宅街の駅前という感じで、あたしたちが気楽に立ち寄れそうなところはコンビニくらいしかないようだった。

でも、同じようにスマホで地図を見ていたスターちゃんの見解は違ったらしい。

 

「ねぇ、近くに小高い丘があるみたい。ちょっと登ってみない?」

 

中山のきつい坂を登ったあとにまた坂か……とも思ったけど、わざわざ反対するほどの理由でもない。

あたしがいいよ、と返事すると彼女は「じゃあ、いこうか」と改札に向かって歩き始めた。

 

 

スターちゃんは小高い『丘』なんていったけど、実際登り始めると思いのほか標高が高く、結局ちょっとした山登りを体験するハメになった。

 

この丘はもともとハイキングコースらしく、道はわりかし整備されていて、歩きにくいというほどでもない。

でもあたしにはほとんど山登りの経験などなく、しかも光源がときおり思い出したかのように設置してある頼りない街灯だけとあって、足元がかなりおぼつかない。

 

対照的にスターちゃんはどうやら登山に慣れているらしく、ふだんとなんら変わらない歩調で山道を踏みしめている。

 

「アデリナちゃん、大丈夫?」

「うん、大丈夫。今日のレース結構激しかったから、思ったより疲れていたのかも」

 

山歩きに慣れてないことを悟られたくなくて思わずそんなこと言ってしまったが、これではスターちゃんに気を使わせてしまうじゃないか、とすぐさま後悔した。

 

「ごめんね、付き合わせちゃって……。私もその辺考えて提案すればよかった。じゃあもう戻ろっか?」

「いや、こちらこそごめん。実は脚はそんなに疲れてないんだけど、その……山道って歩き慣れてなくて」

「そっか。アデリナちゃん、ドイツ生まれの東京育ちだもんね」

 

彼女はそう言って朗らかに笑うと、あたしの手を取って歩き始める。

初めて握った彼女の手は、思ったより大きくて、暖かかった。

 

「私の地元って山間部にあってね。冬は雪で閉じ込められて、けっこう大変な地域なんだ。でも、春になると山桜が咲き乱れて、すっごくきれいなの。あの景色、アデリナちゃんにも見せてあげたいな」

 

スターちゃんが地元のことを自分から話すのは、初めて聞いた気がする。

もう1年以上一緒にいることもあってそういう話題も出たことがあったけど、そんな時彼女はいつも『何もない田舎町に住んでたよ』とだけ言って、それ以上は話そうとしなかった。

 

「ずっと前に言ったかもしれないけど、私って親族で初めてのウマ娘だったから……すっごく期待されてね。うちは貧乏ってほどでもないけど、それほどお金に余裕のある家ってわけでもなかった。でも、どうしても将来、私をトレセン学園にやりたいと思った親戚たちがお金を出し合って、ウマ娘レース科がある、ふもとの小中一貫教育の学校に行かせてくれたんだ」

 

こんなことを話してくれるのも、初めてだった。

あたしは1年以上スターちゃんと生活をともにしながら、彼女のことを何も知らなかった。

あたしはただただ、スターちゃんの話を傾聴する。

 

「でも、ああいうきちんとした英才教育の学校に行くと、嫌でも自分のレベルを思い知らされちゃうでしょ。小学2年になるころには、私ははっきり落ちこぼれになっていた。その学校も全寮制だったから、模擬レースで負けたときなんかは、もう逃げ出して帰りたい!って思ったこともあった。だけど、出発の日私の手を握って、『辛いこともあるだろうけど、頑張るんだよ』って言って送り出してくれたおばあちゃんの顔を思い出すと、それもできなくってね」

 

そのおばあちゃんも、中学3年の夏休みに亡くなっちゃったんだけどね……と、彼女は悲しげに目を伏せる。

 

色々と思うところはあるけど、あたしの近くにはいつも家族がいてくれた。

幼い頃、模擬レースに負けて泣いて帰ってきた時は、『勝った相手はあなたよりもっと努力をしていたのです。あなたも頑張ればきっと、次は勝つことができますよ』といって抱きしめてくれるお母さんがいた。

 

でも、スターちゃんは小さい頃から、たったひとりで戦い抜いてきたのだ。

 

「トレセン学園受験時は担任の先生にも『合格は正直、厳しいと思うぞ。地方の受験も視野に入れたらどうだ?』って言われてたけどね。応援してくれた親戚たちの手前、そういうわけにもいかなかった。なんとか合格して進学が決まった時は、その親族総出で祝賀会までしてくれて。乾杯の掛け声、何だったと思う?『未来のG1ウマ娘に、乾杯!』だよ?ギリギリ合格のウマ娘に期待しすぎでしょって、心のなかで笑っちゃった」

 

ごめん、なんか一人でしゃべっちゃってるね、と照れ笑いを浮かべるスターちゃんに、あたしは愛想笑いしながら「そんなことないよ」ぐらいしか、言ってあげられなかった。

どうして、こんな大事なときにいつもはよく回る舌が回らないかな……。

でも、対戦相手だけでなく幼い頃から孤独とも戦ってきた彼女に、あたしが一体何を言えたというのだろう。

 

そんな朴念仁を信頼して、スターちゃんが大切な過去の話をしてくれたことを、あたしはとても嬉しく思った。

 

そんな話をしているうちに、鬱蒼とした木々ばかりの景色が少しずつ開けてくる。

どうやら山頂が近いらしい。

それを感じたあたしたちは心持ち歩くスピードを上げて、ゴールを目指して歩き続けた。

 

『うわぁ……』

 

山頂についたあたしたち二人は、そこからの景色に思わず感嘆の声をもらしてしまった。

桜の季節も終わっているし、時間も時間なので景色には大して期待していなかったのだけど……山頂から見る夜の街は大小さまざまな明かりに彩られていて、不思議な幻想感を魅せてくれていた。

 

「きれいだね」

「うん」

「これだけきれいな景色、見たの久しぶりかも……」

 

そう言ってスターちゃんは、夜の街の明かりたちに見とれている。

あたしも景色が綺麗だ、と感じたのは久しぶりだった。

 

というより、何かを見て心動かされる、感動するということが久しぶりだった。

 

特にここ2ヶ月ほどはレースのことで頭の中が一杯で、感動したり、楽しんだりした記憶がまったくといっていいほどなかったんだ。

 

「アデリナちゃん」

「なに?」

「この明かり一つ一つに、きっとそこにいる人達の生活があるんだよね」

 

今まで街の明かりを見てそんなことを考えたこともなかったが、言われてみればその通りだ。

ここから見えるマンションの一室の明かりのもとにも、笑い、泣き、いろいろな不安にさいなまれながらも、たくましく生活している人がいるはずである。

 

「こんなこと言うと甘いって怒られそうだけど……これだけの人が明かりのもとで生きているんなら、私達が仮にレースから引退することになっても、人生なんとかなるんじゃないかな……。負けて引退することになっても、そこで人生終わりってわけじゃない」

 

レースを戦うウマ娘としては、スターちゃんはきっと甘いことを言っているのだろう。

だが、世知辛いこの世を生きる一人の人間として、誰が彼女のことを責められるだろう?

 

「そうだね。負けたって、死ぬわけじゃない」

 

もちろんあたしたちは、1回1回のレースを必死の思いで戦い抜く。

ウマ娘は文字通り人生を懸けて、毎回レースに臨んでいる。

だけど、たとえそこから望まぬ退場を強いられて、もう戦えなくなったとしても、ウマ娘の人生はそこで終わりというわけではないのだ。

それはそれできっと、一つの人生なのだろう。

 

そういうことなら、未来の自分がその【一つの人生として】過去を振り返った時、後悔しないよう最後までやりぬいてみよう。

 

最後まで全身全霊で、レースに臨んでみよう。

 

こうして言葉にしてみると、なんだか戦う勇気が湧いてきた気がする。

 

あたしは、あたしたちはまだ、戦える。

 

「帰ろっか、スターちゃん。せめて最後まで、戦い抜くために」

 

あたしはちょっとカッコつけすぎたかな、と思ったけど、スターちゃんはそんなあたしを笑いもせず、真摯にこくりとうなずいてくれたのだった。

 

 

あたしとスターちゃんの脱走劇はもちろんその夜のうちに寮長や寮母さん、それに先生方やトレーナーにもバレ、もう一生分怒られたんじゃないか、というぐらいあちこちで怒られまくった。

 

なんと理事長室にも呼び出されて、直々に理事長からお説教を食らい、反省文を書かされることになってしまった。

 

スターちゃんは『ごめんなさい。私があんなこと言い出さなければ……』と憔悴しきった面持ちで謝ってくれたが、それに反対もせずノリノリでついていったあたしも間違いないなく同罪である。

だからあたしは、『まぁあたしも楽しんじゃったし、お互い様だよ。確かに無断外出は褒められたことじゃなかったけど、これはあたしたちにとって必要なことだったと思う。こっちこそ気を使わせてごめんね。……ありがとう』と彼女に謝罪とお礼を言った。

 

大人たちには理解されないかもしれないけど、昨夜の出来事のおかげで、あたしは本当に心を救われたんだ。

 

いやーでも、人って怒られ過ぎると変に客観的になって、『なんかすげー怒られてんな』ぐらいしか感じなくなるんだね。

それでも父親から平手打ちを食らったのには驚いた。

あの普段優しい父親から手を挙げられたのは、初めてだったから。

もう二度とこのようなことはすまい、とあたしは心の底から誓ったのだった。

 

 

ただ、あの脱走劇の翌日からのトレーニング内容が劇的によくなったのは事実だ。

 

まるで鉛が詰まったかのように重く感じていた脚が軽く捌け、実際にタイムも以前とは比べ物にならないぐらい良くなっている。

あれほど落ち込んでいた食欲も、普段どおりに戻ってきた。

 

「よし、アデリナ!今日のトレーニングはここまで!」

 

タイムを取ってくれていた父親兼トレーナーが、向こう側で手を振って声を上げている。

それを聞いたあたしは小走りにトレーナーのもとまで帰ってきて、ストップウォッチを覗き込んだ。

 

「おお~、自己記録更新してる!」

「うむ、この分なら次のレースは勝てるかもしれないな」

 

トレーナーからはっきり『勝てる』と聞いたのは、これが初めてかもしれない。

 

「トレーナー室に戻ってミーティングだ。次のレースの作戦を立てよう」

「……そうだね」

 

次のレース。

……あたしの、最後になるかもしれないレース。

そうならないために、トレーニングも作戦立案もすべて最善を尽くしたい。

仮に本当に最後になってしまったとしても、せめて後悔だけは残さないように。

 

トレーナー閣下に『あの無断外出が良い気分転換になってタイムが良くなった、なんて思わないように。あ、ちなみにお母さんには何も言ってないからな』などと、先日の脱走劇についてのイヤミを言われているうちに(うちのオヤジは男のくせにこういうところしつこいんだ。悪かったよ)、トレーナー室についたあたしたちは、早速次走についての話し合いを始めた。

 

「よし。まずは改めて、現状と君の能力の認識共有からだ。アデリナ。今までのレースを見返してみた限り、君には多分、広々としたレース場が向いているように思う」

 

あたしの成績はたしかに13戦して未勝利という誇れたものではないのだけれども、掲示板には8回乗っていて、勝機がまったくなかったわけじゃない。

その敗戦の中には、いい内容のレースもあったわけである。

トレーナーは、それらのレースを分析して言ってくれているのだろう。

 

「そうだね。あたしも小回りの意識が必要なレース場より、ゆったりと回れるコースのほうが少し走りやすいように感じているよ」

 

小回りがきかない脚というわけでもないのだけれど、どちらかといえば大きく回れるレース場のほうが得意だ。

これはあたしの脚質も関係していると思う。

……ちなみにあたしの脚質は、母譲りの【差し】である。

 

「それから、バ場適性のことだ。ダートを走り始めてから確実に着順が良くなっている。おそらく君は芝も走れないわけじゃないけど、ダートのほうが向いている脚なのだろう」

 

トレーナーの言葉に、あたしは黙ってうなずいた。

もういまさら蒸し返す気もないけど、地方のトレセン学校に行きたいと言ったのは別にお母さんに反抗したいだけではなかったんだ。

トレセン学園への進路を選んだのは、結局自分だしね。

 

「最後に距離について。これについては君には幅広くこなせる器用さがあるみたいだね」

「うん。ある程度の距離幅はこなせると自分でも思ってる」

 

さすがに3600Mとかの超長距離はスタミナが持たないだろうけど、芝なら1400Mから2600M、ダートなら1200Mから2400Mぐらいまでなら、自分のペースで戦える自信がある。

 

いやー、そもそも母譲りのこのおっぱいで長距離は無理でしょ。

譲ってもらったのは、脚質だけではなかったりする。

 

ほら、過去の偉大なステイヤー達を見てみなさいよ。

ライスシャワーさん、メジロマックイーンさん、テイエムオペラオーさん、マンハッタンカフェさん、etcetc……。

皆さんスレンダーな体型をしていらっしゃるでしょう?

 

お母さんもいろんな距離を走ったけど、本質的には中距離を得意とするウマ娘だったのだと思う。

 

え?ゴールドシップさんとかスーパークリークさんとかはどうなんだって?

……そのあたりのモンスターと比べてはいけない。

 

重要な話をしている最中なのにこんなバカな自動思考が湧いてくるあたり、あたしはまだ結構リラックスできているのかもしれない。

 

厳しい状況の時だからこそ、ユーモアは大切なのである。

かといって今は自分の今後を左右する、大事なミーティングの最中だ。

 

あたしはことさら真面目ぶった表情を作り、その自動思考を中断してトレーナーとの会話に意識を戻す。

 

「ただ、そのせいで俺も今まで君の本当の距離適性を見極められなった。これは俺の落ち度だ、すまない」

「今までは、ってことは、今はちゃんと把握できているってこと?」

「うむ。俺が推測するに君の真の距離適性は、マイル近辺でほぼ間違いないと思う」

「うーん……あたしにその実感はないんだけど、そうなんだね」

 

マイル(1600M)は芝で4戦走っているけど、5着・7着・6着・6着とそれほど良かったわけじゃないし、手応えがあったという感じもしない。

ただ、勝ち負けに絡んだ2回のレースは、ダートの1800Mだった。

意外と自分の能力というのは自分ではわからないものだから、ここはベテラントレーナーの意見を信頼しておくことにしよう。

 

「今の状況と君の能力を定量的に分析すると……選ぶレースの最適解は、東京レース場のダート1600Mになる」

「……そっか」

 

あたしの記憶が確かなら、残りの未勝利戦の中でそれに当てはまるレースは、一つしかなかったはずだ。

 

「じゃああたしの次のレースは、ダービーが行われる5月最終日、東京レース場未勝利戦・ダート1600Mってことになるかな」

「そういうことになるな。なにか異論はあるかい?」

「トレーナーが決めたのなら、異論はないよ。言いたいことはいっぱいあるけど」

 

あたしの含みのある言い回しに、トレーナーは苦笑いを浮かべるだけだ。

 

「はあ~、目標が決まればあとはそれに向かって全力疾走するだけだから、気楽といえば気楽だね。ミーティングは以上?」

「ああ」

「じゃああたしはカフェに寄って軽く食べてから部屋に戻ることにするよ。ありがとうございました」

 

あたしは自然にそう言って、ていねいに頭を下げた。

学園にいる間は親子である前に、トレーナーとウマ娘の関係である。

 

「おつかれ。食べすぎて過体重にならないように」

 

女の子に向かってなんてこと言うんだ、この男は。

ひょっとしてヤツはあたしのことを、まだ小さいベイビーちゃんだとでも思っているのだろうか。

 

いつまでも子供扱いするこのトレーナーにあたしは精一杯の抗議の意味を込めて、子供っぽくアカンベーをしたのだった。

 

 

次の日からのトレーニングは、一層熱を帯びるものになった。

あたしも真剣だが、トレーナーの熱量も相当なものだ。

 

「アデリナ!脚が上がってないぞ!もうバテたのか!」

「まだ行けます!うぉおぉおぉおおぉ!」

 

本日5本目の坂路トレーニング。

脚はもう限界だけど……限界じゃ、足りない。

限界を超えないと、押し広げないと……!

跳ねる肺と心臓を抑え込み、もう無理だよ!と悲鳴を上げている脚に心のなかで鞭を入れる。

 

うごくじゃないか。

いけるじゃないか!

 

気合と根性だけでゴールに到達し、あたしは思わずその場に倒れ込んだ。

 

「はぁ……はぁ……」

 

体はキツイが、気持ちはかつてないほど充実している。

負けたら引退、というプレッシャーを感じずにすんでいるのは幸いだった。

 

今行っているトレーニングレベルは、次のレースに勝っても負けても少し休養が必要なほどにハードなものだ。

トレーナーがこれほど厳しいトレーニングを課すのは、悔いの残らないようやれるだけのことはやっておきたいということが第一なんだろうけど、あたしをランナーズ・ハイのような状態に置き、引退をできるだけ意識させないようにするため、という意図もあると思う。

 

自室に戻ったら疲れ果てて寝るだけだけだから、寝る前にそれについて思い悩むということもない。

 

「5分休憩したら、トレーニングルームで筋トレするぞ。いけるな?」

「はい」

 

あたしは5分の間、とりあえず酸素を体に送り込むことに集中しようと心に決めた。

 

 

激しいトレーニングを終えてシャワーを浴び、夕食をお腹いっぱいに食べた後、くたくたになった体を引きずりながらあたしはほうほうの体で自室に戻った。

もうとにかく、早くベッドで横になりたい。

そんなことを考えながら部屋の扉を開けると、スターちゃんがなぜか部屋の灯りもつけず、机の上で頭を抱えていた。

 

「ただいま。どうしたのスターちゃん。大丈夫?」

 

あたしは部屋の蛍光灯をつけると、とりあえず彼女にそう声をかけた。

 

「私の、次のレースが決まったんだ」

「そうなんだ!いつのレースになったの?」

 

スターちゃんも、次が引退をかけた大勝負のはずだ。

それで少しナイーブになっていたのだろうか。

 

あたしの質問に彼女は深いため息をついてから、纏わせた重たい雰囲気にふさわしい口調で答えてくれた。

 

「……5月最終日、東京レース場未勝利戦・ダート1600M」

「それって……」

 

あたしが出走する予定のレースだ……。

 

あたしのほうが先に引退をかけたレースの日程が決まっていたので、スターちゃんにはそれを日々の会話の中でそれとなく伝えていたんだ。

 

だからこそ、彼女は思い悩んでいた。

 

あたしたちは確かに友人である前に、レースを走るウマ娘であり、レース場では命の次に大切な一勝を奪い合うライバル同士である。

それを重々承知して、あたしたちは儚い、それでも確かな友情を育み合ってきた。

 

でも。

でも、こんなのって……。

未勝利戦を行っているレース場や日程は、他にもあるのに……。

二人が同じレースを走ることなんて、今まで一度もなかったのに……!

 

「……しかた、なかったんだ。私もトレーナーさんに抗議したよ。『トレーナーさんも私がアデリナちゃんとはルームメイトで、しかも仲が良いのも知ってらっしゃるじゃないですか。どうしてこのレースにエントリーしたんですか?』って。でも、もうそこしかエントリーできるレースが残っていなかったの。トレーナーさんも、苦渋の決断だったんだと思う……」

 

スターちゃんの抗議は、トレーナーによっては甘いこと言ってるんじゃない、と叱責されそうなものだった。

しかし彼女のトレーナーは優しい感じの若い女性で、そういう厳しいことを言ったり、ウマ娘を今回のような精神的に厳しい状況に置いてメンタルを鍛え上げようとするタイプではないことは、あたしも知っている。

 

ということは、本当に仕方なかったのだろう。

そういうことなら、仕方がない。

 

「スターちゃん。あたし、負けない。絶対負けない。あたしが、勝つ」

 

あたしはあえて厳しい表情を作り、挑発的に聞こえるようそう宣言して、彼女の大きな瞳を睨みつけた。

これがあたしの、精一杯の友情表現だった。

 

「………………」

 

スターちゃんはあたしと違って、本当に心根が優しい娘だ。

激しい感情が、彼女の心の中をかき乱しているに違いない。

 

でも、スターちゃんは優しいだけでなく、それ以上にハートの強いウマ娘だ。

そうでなければどうして、結果の出ない中で、あたし以上のハードトレーニングを黙々と続けてこられるだろう。

 

「私にだって、積み重ねてきた努力がある。勝利を諦めたことなんて一度もない。勝つのは私の方だよ、アデリナちゃん」

 

半泣きになりながらも、彼女はウマ娘らしい、勝負師らしい誠意を持ってあたしの言葉に応えてくれた。

 

スポ根漫画やアニメにあるように、わざとらしく健闘を祈り合う握手なんてしなかった。

あたしたちにはその言葉の交換だけで、十分だったのだから。




長文読了、本当にお疲れさまでした。
そして、ありがとうございました。

長い文章で読者の方々にご負担をおかけしてしまうのは大変申し訳なく思いましたが、
どうしてもここは一つの章として読んでいただきたかったのです。

読んでくださった方々に、長文だけど読んだ価値あった、と思っていただければ
それ以上の喜びはありません。

重ね重ねになりますが、長文読了、本当にありがとうございました。

また近いうちに、次話のあとがきでお会いしましょう!

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