偽りの味だとしても   作:aodama

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あとがきに主人公の設定をちょいと載せました。若干のネタバレが気になる方はスルーでよろ。












あ、名前はまだ秘密で



献立表
第一食 Frenzy Boarのポークシチュー


 

 

 

「やっほー! 遊びに来たわよー!」

「……本日の営業時間は終了いたしました。またの機会をお待ちしています。」

「何馬鹿な事言ってんのよ? 今日が一体何の日か忘れた訳じゃないでしょうね?」

「……ああ、あれ今日だっけか?」

「呆れた。まさか本当に忘れてるなんて……。」

「冗談だよ。()()()()()

 

日は沈み、夕餉に相応しい時間帯はとうの昔に過ぎ去った頃合い、桃色の髪にそばかすが特徴的な少女が勢い良く店の扉を開き、現れる。最初は明るい調子だったのが、約束を忘れたふりをしている姿を見て一転、呆れた様子で此方をジト目で睨んでくる。

 

「そ、ならいいわ。……それにしても相変わらずよね。このお店。アンタも繁盛してんならもう少し店を大きくしてもいいんじゃないの?」

「馬鹿言うな。そんなことしたら俺が過労で死んじまうわ。」

「それもそうか。」

 

「てへっ。」と小さく舌を出し悪戯が成功した子供のような無邪気な様子で納得するリズベットに対しジト目を返す。

 

「でも店員ぐらいは増やしたらいんじゃないの?」

「俺以外に《調理》スキルを持ってる人が居たら考えておく。」

「一人心当たりあるんだけど?」

「閃光様もダメに決まってるだろ……で、注文は決まったのか?」

「んーっとね。じゃあ、おすすめを貰おうかしら。」

「結局いつも通りって訳か。」

「いいじゃない別に。アンタの料理は全部美味しいんだから。」

 

「じゃあ待ってるわねー」という言葉を最後に暇つぶしにアイテムでも整理しているのか、メニュー画面を開きそちらに没頭してしまう。任された本人としては溜め息の一つでもつきたくなるがここは我慢し、厨房に戻りした準備に取り掛かる。

 

「よし、じゃあ作るか。」

 

頭の中で何を作るかを考えながら、必要な食材をストレージから次々と取り出していく。ストレージの中から取り出したトマト、人参、玉葱、ジャガイモを装備した短剣で細かくみじん切りにしていく。その過程でメインである()()()()を別個で取り出し、食べやすいように一口サイズに切っていく。

 

「来んだけ立派な部分なんだから……シチューにするか。」

 

用意したフライパンにバターを入れ、軽く伸ばす。そこに、塩胡椒で軽くした味をつけた豚肉に小麦粉をまぶし、表面をフライパンで軽く焼き、肉の味を閉じ込める。

 

「げっ、もしかして今のバターって……?」

「ん? 勿論《逆襲の牝牛》クエストだよ。もう忘れてしまったのか?」

「そんな訳ないでしょッ!? 普通でも四時間かかるクエストをそのアイテムの為だけ何回周ったと思ってんのッ!?」

「んー? レアドロップ枠だし運が良ければ五周に一個ぐらいじゃなかったか? 」

「一日付き合わさせられたコッチの身にもなりなさいよっ! 結局その日は一個しか落ちなかったし……。」

「(後日一人でやったら、面白いようにドロップしたって言ったらどんな顔するんだろう……?)」

 

苦労して手に入れたバターの話をしているついでにもう一つのフライパンを準備し、先ほど切っておいた玉葱を先に入れ、しんなりしてきたら他の野菜の投入の合図。十分に色づいてきたら、そこにトマト以外の残りの野菜を投入し一緒に絡めるように炒める。

 

「水と赤ワインを適量入れて煮詰めて、っと……。」

 

蓋をして、()()()経ったら再び蓋を開け最後に残ったトマトを投入する。その後は蓋を取り更に()()()煮詰めていく。

 

「相変わらず時間間隔バグるわね……。リアルで作ろうとしたらどんだけ時間かかんのよ?」

「まぁ、煮詰めるだけでも90分前後はかかるな。それをスキルで短縮できるのは楽でいいわ。」

「……本音を言うと?」

「やり甲斐が無くて少しつまらん。」

 

ストレージ整理が終わったのかこちらの調理手際に注目していたリズベットが呆れたように言ってくる。その様子に首を傾げ、疑問をぶつけようとするが、先にリズベットが言いたいことを残す。

 

「あのねぇ…。《調理》スキルで本当なら()()()()の時間なのよ? それなのにアンタの()()()()()》スキルのせいで時間が本来より伸びてることを自覚しなさい。」

「えー」

「えーじゃないわよ。全く」

 

他愛のない会話が終わり、煮込みが終わったところでシチュー用の皿に盛りつけ、テーブルに持っていく。そこには先程の様子とは打って変わって、待ちきれない様子でソワソワしているリズベットがお人形さんのように行儀よく座っていた。しかし、顔は正直なようで早く食わせろと言わんばかりの表情で手に持つ皿を凝視している。そんな様子に呆れながらも嬉しく思い、彼女の目の前に料理を置く。

 

「ビーフシチューならぬ、『Frenzy Boarのポークシチュー』の出来上がり!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前に出された、シチューを前にアタシは思わず唾を飲み込んでしまう。シチュー特有のトマトいっぱいの芳醇なにおいが鼻を擽る。もう待ちきれないとスプーンに手を伸ばし、素早く手を合わせ合唱する。

 

「んんーいい匂い! ホント美味しそー!」

「美味しそうじゃなくて美味しいんだよ。」

「いただきまーす!」

「聞いてねぇし。」

 

シチューを口に運ぶと、溶けだしたトマト特有の臭さは感じられない。代わりに程よい酸味と甘味がシチューに溶けだして、深い味わいを引き出しているのが口全体で感じられる。固形物ではない筈なのに思わず口を動かし噛む動作をしてしまう。喉を通るときもシチューとは思えない存在感を主張し、此処には無い黒パンを思わず探してしまう。

 

「(次は、これね。)」

 

次に目を付けたのは一度火を通したことにより、鮮やかな紅色になった人参を口に運ぶ。人参は柔らかく、しかし確かな歯ごたえを残しながら口の中のサッパリさせてくれる。ジャガイモは歯を立てなくともその原型を崩し、口の中であっさりと蕩ける。これだけでも十分満足なのだが、やはりシチューとして最後の主役をスプーンで掬う。

 

「(重量感やば……。)」

 

ずっしりとスプーン越しに伝わる肉の重量感に自然と口をまた喉が鳴ってしまう。意を決しその怪物を口の中に運ぶ

 

「(ッ!? 美味っしい!)」

 

予想していた通り噛む度に伝わってくる歯ごたえと肉汁、シチューの酸味と甘味全てが混ざり新たな旨味へと昇華する。口に運ぶたびに顔が綻び、自然と口を弧の形に変えてしまう。

 

「(ここでもう1回野菜を口に運んで·····ん〜! やっぱり美味しい!)」

 

野菜を運び、肉の味が残る口の中をサッパリさせる。そして再び肉を頬張る。シチューを運ぶたびに口がその次を欲し、何度もスプーンを往復させる。そんな事を繰り返しているうちに皿の中にあったシチューは全て無くなり、代わりに満足感が身体を包んでいた。

 

「ご馳走様でした! ん~。やっぱりアンタの作る料理が一番美味しいわ!」

「お粗末様でした。そう言ってくれるのは有難いが、出来ればもう少し早い時間帯にしてくれると助かるな。」

「良いじゃない。この時間帯の方が誰もいないお陰で、貸切気分を味わえるんだし。」

「こっちの気持ちはガン無視ですか·····。」

「それに·····この静かな時間、アタシ結構好きだし。」

「··········。」

「ん? どうしたのよ? ボ〜っとしちゃって·····あ、もしかしてアタシに見惚れてたりとか?」

「んなわけねぇだろ。ほら、食うもん食ったらとっとと出すもん出しな。」

 

そう言ったアイツは呆れたような態度を示しながら強盗のような口ぶりで手を差し出す。

 

「立場逆転してない? アンタがアタシにメンテナンス頼んで来たから代金代わりに料理振る舞うって話でしょ。」

「はいはい良いから早く。」

 

「ホントにもう·····」と、愚痴りつつも、ストレージから頼んでおいたアイテムを取り出し、アイツに譲渡する。OKボタンが押され、ストレージに収められるを確認するとアイツは満足そうに頷く。

 

「アンタねぇ·····。一応それ《魔剣》クラスの代物なのよ? それを調理具に·····。」

「《魔剣》だろうがなんだろうがコレが包丁であることには変わりないだろ?」

「それはそうだけど……まぁその《短剣》なら別にいっか。」

 

と、言葉を濁しておく。アイツが持っている《短剣》はステータスこそ《魔剣》クラスだが、如何せん効果が効果だ。

 

「(あんな恐ろしい効果、SAO(このゲーム)にあっていい効果じゃない。)」

 

 

他のプレイヤーの手、それこそあの有名PKギルドの手に渡るより料理馬鹿のアイツに収まっている方が平和なのかもしれない。

 

「ま、いいわ。注文の品は届けて報酬も貰ったしアタシ帰るわ。」

「おう。また食いに来いよ。」

 

そういってアイツは人懐っこい笑みを浮かべ、ひらひらと手を振ってくる。そんな様子にふとした疑問をぶつけてみる。

 

「アンタはこの後どうするのよ?」

「俺? まぁこの後は荷物整理を始めとしてどの料理が再現可能なのか研究したいな。」

「…ほんとアンタらしいというか、料理馬鹿というべきか…。」

「おうサンキュー!」

「褒めてないから。」

 

普段の接客中には見せないプライベートな顔に呆れながらも自身の気持ちと相まって小さく本音を零す。

 

「はぁ…なんでよりによってコイツかなぁ…?」

「? なんか言ったか?」

「何でもないわよ。」

 

「それじゃあ帰るわ。」と、言葉を残し扉から出ていく。扉の閉まる際にアイツの顔を思い出し自然と笑みがこぼれる。どうせ鈍感なアイツのことだ。きっとアタシが抱くこの気持ちには気づいてないだろう。

 

「(さっさと気づけよ。バーカ。)」

 

そんなことを心の中で思いながらすっかりと日が落ちた街中で軽やかに帰路に就くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(一応)本日最後のお客さんであるリズベットが居なくなった為、の店内は誰もいなくなり、少し寂しくなりながらもそんな感情を振り落とすかのように頭を振り、直ぐに片付けの準備に入る。明日の献立や仕込みの内容などを頭の中で復唱しながら、テキパキと片付けていく。

 

「それにしても、リズベットの奴。最後なんて言ってたんだ?」

 

あまりにも小さい声だった為、殆ど聞き取ることが出来なかったその言葉が気になって頭の隅で引っかかる。なんとか思い出そうと頭を捻るが

 

「駄目だ。分からん。」

 

考えていても仕方ないと結論付け、明日出す予定のメニューが決まった所で思考も一旦止める。入口扉にある掛札を《open》から《close》に変え、少し早いが眠りにつくため二階の宿屋に戻る。仕事着から部屋着に変更し、メニュー画面から軽くアイテムの整理をしつつベットに入る。睡魔に微睡むなか、決して思ってはならない事が脳裏を過る。

 

「(……()()()()()()()()()()()()()。)」

 

現実に戻ることが目的だと頭では判りつつも、心では戻りたくないと思ってしまっている自分に恐怖を抱く。思考までこの世界に囚われる前に、ゲームクリアされることを祈りながら深い眠りへと落ちていった。

 

 

 




主人公
名前:『』|「」
身長:171cm
体重:68kg
年齢:20→22歳
誕生日:7月5日
血液型:B型
容姿:中肉中背で何処にでも居る青年。乱雑な髪に鋭い目付きから初対面の相手からは怖い印象を直々抱かれてしまう。

性格:男らしい口調とは裏腹に誰隔てなく平等に接し、ついつい手助けしてしまうお人好し。初対面の人に怖がられてしまうことが最近の悩み。。なお余談だが本作では基本タメ口だが初対面の客にはちゃんと敬語である。その様子が知り合いからは似合わないとちょくちょくからかわれる。

生い立ち:三年制の調理専門学校を卒業したばかりの一般人。これから自身の店を持って活動していこうとした矢先、SAO事件に巻き込まれる。本人はデスゲームに囚われながらも自身の持つ料理の知識と元から持つゲームIQの高さで自分なりにアインクラッドを攻略していく


使用武器:短剣

所有スキル
『短剣』 :文字通り短剣を扱う上で必要なスキル。デスゲーム開始時から短剣しか使ってこなかった為か完全習得(コンプリート)済み。

『料理』:主人公の十八番。デスゲームになって呆然としていたところ偶然発見。チュートリアル以降主人公が一番最初に手に入れたスキルである。生粋の料理馬鹿である主人公からしたら精神安定剤のようなもので寝る間もなく料理を続けていた時期がある。また、最初の方は食材を自力で確保する必要があった為一番最初に完全習得(コンプリート)したという背景がある。

『商人』:店を切り盛りしていくためには必須のスキル。クエストを受注して報酬をもらう形式とは別にプレイヤー同士での商売を可能とするスキル。金銭のやり取りを行う事によって微弱ながらも経験値がはいるようになる。(オリジナル設定。)

『調合』:アイテム同士を組み合わせ、新たなアイテムを作れるようになるスキル。本来はポーションを作るうえで必要となるスキルの筈なのだが……?(オリジナル設定。)

『特級厨師』:エクストラスキル。元は中国で与えられる国家資格の中で中国料理調理師の最高位のことを指す。が、本作では名前だけ借用。取得条件として、『短剣』完全習得(コンプリート)&『料理』完全習得(コンプリート)が条件となっている。
得られる効果は
・ボスモンスターから食材アイテムがPOPするようになる。(パッシブ)
・料理を通じてバフを加えられるようになる。
・加えられるバフの内容は食材のレア度によって異なる。
・装備する《短剣》のレア度によってバフ成功率が上がる。
等が存在する。(オリジナル)
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