偽りの味だとしても   作:aodama

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そろそろストック切れそう。


第三食 Pointed Beakの唐揚げ&ビール

 

 

「…へぇ? 随分久しぶりの御来店じゃないか。」

 

ゴールデンタイムが終了したお陰か客足が細々としてきた時間帯。いつもの様に明日の準備をしようとしていたところにその人物はやってきた。

 

「おぅ! 邪魔するぜ!」

 

頭には赤いバンダナを巻き、和風の防具と刀を装備した無精髭が良く似合う男が店へと入ってくる。見た目に似合わず気さくな雰囲気を漂わせ席へと着く。

 

「珍しいな、今夜は1人かクライン?」

「へへっ! まぁな。」

 

席に着くと、手慣れた操作で装備を解除していく。その動作が終わるとシャツにズボンとラフな格好に変わっていた。

 

「風林火山のメンツはどうした?」

「今日は解散したぜ。俺は飲み直し、な?」

「ったく...。相変わらず酒好きだな。」

「良いじゃねーか。今日一日頑張った自分へのご褒美だ!」

「社畜みたいなこと言ってんなぁ……社畜だったわ。」

「それに全員分の夕飯代は俺が出したんだからコレぐらいは許して欲しいぜ!」

 

既に飲んでいるのか、やや声量がデカいクラインに注意を促す。

 

「まだ他のお客さんが居るからもう少し静かにな?」

「お、おうすまん...。」

 

周りの迷惑になっているということに気が付きすぐに謝罪をいれる。こういう表裏のないところが、クラインの好かれる人柄に繋がっているのだろう。他のお客の迷惑にならないようにパラパラとメニュー表を捲っていると、とあるページで動く手が止まる。

 

「お! この『Pointed Beakの唐揚げ』ってまだあるか?」

 

指さすページの中央にデカデカと[本日のおすすめ!]と書かれている唐揚げの盛り合わせが載っておりクラインが在庫を聞いてくる。

 

「まだあるが、ソレにするのか?」

「あぁ。今日はこれに決めたぜ!」

 

パタンとメニュー表を閉じ、元あった場所へ丁寧に戻す。注文を受け付け準備を進めていくうえで重要な事を聞き返す。

 

「そういえば酒はどうする?」

「勿論貰うぜ。」

「そうじゃなくて。種類だよ種類。」

「ビール!」

 

エールにウィスキー、日本酒に焼酎など様々な種類の酒があるがクラインは間髪入れずに返答を返す。

 

「はいよ……。で、唐揚げは? シンプルに塩、胡椒かレモン。あるいはマヨネーズか…。」

「マヨネーズがあるのかッ!?」

「おうよ。こちとら《料理》スキル完全習得(コンプリート)済みだ。ある程度の調味料は作成済みよ!」

 

この世界に調味料は殆ど存在しておらず、ほぼ一からの作成であった。今でこそある程度の調味料は唯一、醤油だけが作成できていないのが心残りである。

 

「」

「うぉっ。また悩む質問を……。」

 

眉間に皺を寄せ手で揉み解しながら悩む姿勢を見せるクライン。少しして決まったのか顔を上げリクエストしてくる。

 

「決まった! 全部貰えばいいじゃねぇか!」

「追加料金かかるが大丈夫か?」

「おう問題ねぇぜ!」

 

「りょーかい。」と短く返答したのち調理に取り掛かる。油を用意し、跳ねる寸前まで温度を上げていく。油が温まるまでにアイテム欄から昨日から漬けダレに浸(調合)しておいた《Pointed Beakのもも肉》を取り出し唐揚げ粉をまぶしていく。粉を落とし、黄金色に輝く油に投入していく。

“ジュワァッ!!”と、肉が上がる音と揚げ物特有のいい匂いが店全体に広がっていきクラインは勿論、ほかのお客の鼻にも届き食欲を刺激する。喉を鳴らしながら揚げる風景をじっと見つめ、健気に待つクラインの姿に苦笑を零す。

 

「そんなに見つめたって揚げ時間は早くなったりしないぞ。」

「そりゃ判ってるけどよぅ。ちょっと生殺しすぎやしないか?」

「ははっ! そりゃ料理人としちゃ最高の誉め言葉だな。」

 

料理が待ちきれない。暗にそう言われているようで内心嬉しくなる。腹をすかして俺の作る料理を求める客がいる。なんと料理人冥利に尽きることか。

 

「どうする?揚げ時間の間に先にビールでも飲むか?」

「んー…そうだな。そーするわ。」

 

その返答を聞き、ジョッキにビールを注いでいく。なみなみ注いだビールを持っていくと大きく喉を鳴らし飲んでいく。ゴクゴクと気持ちの良い飲みっぷりを見せ、あっという間に飲み干して一息つく。

 

「ッかァ~!! やっぱ一日の終わりといえばビールでしょ!!」

「おかわりは?」

「とーぜん!」

 

追加のビールを用意すると同時にそろそろ揚がる唐揚げを油の中からすくう。唐揚げを盛り付け、別の小皿に塩胡椒、レモン、マヨネーズと用意していく。そこに刻んだキャベツを添えて完成させる。

 

「うしっ!『Pointed Beakの唐揚げ』の完成!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

追加のビールと運ばれてきた唐揚げには小皿が複数ついており、中には注文した調味料が入っていた。

 

「(さて…さっそく頂くとしますかね。)」

 

先ずはスタンダートに何も付けずに齧りつく事にする。箸で持ち上げると分かるが中々の重量感だ。我慢できずに口に放り込むと肉汁がこれでもかと言うほど溢れ出てくる。外はサクサクで嚙むたびに程よい弾力が伝わり、たまらずビールを煽る。

 

「―ッかァ!! たまんねぇなッ! 美味すぎるわコレ!」

 

ビールと唐揚げ。合わないはずがないだろう。口の中が火傷しそうなくらい熱々の唐揚げを口に放り込み、その熱が収まらないうちにビールで流し込む。なんて贅沢なのだろうか。

 

「(仕込みが良いんだろうな。肉以外のガツンとした味付けがより食欲をそそるぜ。)」

 

六個もあったこぶし大の唐揚げのうち二つはあっという間に胃の中へ納まってしまった。追加のビールを頼みつつ今度は頼んでおいた調味料に目を向ける。

 

「君が先発だ!」

 

そう言って唐揚げに軽く塩胡椒をつけ口の中に放り込む。先程の唐揚げの良さを更に引き出しており、より肉々しさが増して濃い味を楽しめる。ビールも合うが少し米を掻っ込みたくなる。

 

「ほらよ、ライスだ。」

「おまっ、これ。」

「サービスだよ。この時間帯は客来ねぇだろうし、それにライスが食いたいってもろ顔に出てたぞ。」

 

ニシシ、と腕を組みながら笑うアイツは此方の願望を見事にかなえてくれる。お言葉に甘え早速ライスを掻っ込むとこの上ない多幸感が襲ってくる。

 

「ほぁー幸せすぎるッ! にしても良く米が欲しいって分かったな?」

「ちょっと前にライスを忘れるという失態を犯してな。それ以来人一倍気を遣うようになったわ。」

「お前が? 珍しい失敗もあるもんだな。」

「ま、こっちの話だ。気にせず食べててくれ。」

 

言いたいことを言い残し、さっさとアイツは厨房に戻っていく。気を取り直して今度はマヨネーズにつけて放り込む。

 

「(んぐ。これも美味いな。)」

 

先程の塩、胡椒が唐揚げの引き立て役とするならば此方のマヨネーズは相棒。強い酸味とコクが唐揚げと綺麗に合わさり新しい味へと変化する。口の中を洗い流すかのようにビールを飲み干し追加のビールを注文する。

 

「ビールおかわり!」

「程々にしとけよ。明日に響くぞ。」

「こんな美味い唐揚げにビールがなくてどうする!?」

「完全に酔っぱらってるなこの野武士。」

 

追加のビールが来たところで最後の味変としてレモンをかけて頬張る。今までの唐揚げとは違ってサッパリとした味わいが広がっていき、口の中に残っていた油を消してくれる。

 

「(残るは一個、か……。)」

 

 

最後に残った唐揚げを見つめ、幕引きに相応しい食べ方について考える。どれも美味かっただけに、どれにするか悩むがチラリと横のビールを見て内容を決める。

 

「フィナーレを飾るのはやっぱビールにあう食い方っしょッ!」

 

最初に食べた塩、胡椒。肉本来の旨味を一番引き出してくれるこの食い方がビールと相性が良かった。最後の一個を口に放り込み残ったビールを飲み干す。

 

「ご馳走さん! いやー食ったし飲んだわ!」

「ビール三杯、唐揚げ(大)、追加の調味料で合計3,000コルな。」

「はいよ。」

「有難うございました。またのお越しをお待ちしています。」

 

しっかりと支払いを済ませ、後ろで見送ってくるアイツに軽く手を振りながら店を後にする。店を出て少し考え事をしながら帰る。

 

「(もう少し行く頻度を増やすか。)」

 

それこそ風林火山のメンツやキリト達でも誘って行くのも面白いと思いつつ上機嫌になりながら帰るのであった。

 

 

翌日、二日酔いのデバフによって風林火山のメンバーに揶揄われたのはここだけの話である。

 

 




あと数話出した後に原作に絡ませる予定。早く原作に追いつかせたい
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