【はずかしい……】※るーちゃん視点
わたし【若狭 瑠璃】は今、とっても恥ずかしいと思ってる
「うぅ……」
ことねせんせーを『ママ』って呼んじゃった。起きたばかりでボーってしてたからだけど……
「るーちゃん、まだ気にしてたの?」
「……うん」
りーねえが大丈夫だと思うけどと呟いてるけど、そうじゃなくて、ことねせんせーの顔をまた見たら思い出しちゃって恥ずかしくて隠れちゃいたくなるから困ってるの。
だって今までそんな間違いしたこと無いのに……なんて思ってたらことねせんせーが部屋にやってきた。たしかさっきは地下に行くって話をしててその準備が終わったんだと思う、思うけど
「あっとと、るーちゃん……」
「ん、どうしたんだ瑠璃は?」
うぅ~、やっぱりあの言い間違いを思い出してせんせーの顔が見れずにりーねえの背中に隠れる。そんな事をしたらことねせんせーもどうしたのかとりーねえに聞くのだけど。
「えっと、今朝の言い間違いが恥ずかしいって」
「なんだ、そんな事か。別に気にしなくてもいいし、学校の教師をしてたらよくあることだって聞いてたからな、寧ろ間違われるくらいには嫌われてないってことだからな」
「まぁ、高校でも聞かない話ではないわね。ところで、今日までそんな事あったの、琴音は」
「勿論ながら無いな」
めぐみせんせーの質問に答える、せんせーの声に寂しさみたいなものを感じてこっそりとりーねえの背中から顔を出してみれば、ことねせんせーが私を見て笑っていた。
何時もと変わらない笑顔、だからこそあの時、わたしがそう呼んじゃった時にことねせんせーがした表情を思い出して
「だって、ことねせんせー……わたしが【ママ】って呼んだ時、辛そうな顔をしたから……」
「っ!そうか、いや、瑠璃の、両親が無事かなって思ってな」
そうだったんだ。わたしは、考えないようにしてた、ううん、考えたくなかったんだと思う。
でもせんせーの言葉で考えてしまった。大丈夫なのかなって、どこかに逃げてるのかなって、もしかしたら……アイツラみたいになっちゃったのかもって
「瑠璃」
優しい声で名前を呼ばれて、顔を上げればことねせんせーが気付けば泣いていた私の目をハンカチで拭いてくれた。それから優しくギュッとしてくれてから
「ごめん、私もご両親が無事かどうかは、分からない」
「……」
「けど、瑠璃が、いや、悠里もだな。とにかく、二人がご両親に会えるまで私が、何が起きても私が二人を守る、絶対にだ」
「琴音、貴女……」
「良いんだ慈、これは私が決めたことだ。二人に何かあったら、ご両親に怒られちゃうからな」
優しい声、だけど上手く言えないけど、すごく大事な約束をしているみたいな感じにことねせんせーの言葉にわたしは
「せんせー、無茶しちゃ駄目だよ?」
「が、頑張ろう」
頑張ろうじゃ駄目だよ。ことねせんせーは直ぐに無理しちゃうんだから、でも嬉しかったよ。
……?あれ、りーねえ、なんで驚いた顔してるんだろう、何かびっくりしたのかな?
「あ、コホン。琴音さん、るーちゃんの言う通り、無理や無茶は駄目ですからね。貴女が怪我をしたら悲しみますからね」
あ、戻った。でも今度は凄く嬉しそうな笑顔になってる。もしかして、りーねえもことねせんせーのあの言葉が嬉しかったのかな? そんな事を思いながらもう少しだけ、わたしはことねせんせーに抱き着いてみた。
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システムメッセージ
【若狭 瑠璃】との絆が深まりました。
【若狭姉妹】と【来ヶ谷 琴音】との間に約束が発生しました。
【若狭 悠里】が【来ヶ谷 琴音】へ依存を深めました
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【ワンワンワン放送局!ゲスト 来ヶ谷琴音と佐倉慈】※犬山お姉さん視点
新拠点での初めてのワンワンワン放送局、とは言っても昨日もやってたことなので挨拶自体は何か気負うものではないけどね
「ねぇねぇ、誰か聞いてる?こちらは巡ヶ丘ワンワンワン放送局、この世の終わりに生きてるみんな、元気かーい!」
何時もだったら、ここから先も一人っきりで盛り上げるようにしていた挨拶。けど今は違う、相変わらずその笑顔は非常に怖いし、隣の彼女はまだ緊張でガチガチになってるが関係なし!
「聞こえない人は返事してー」
「イエーイ!」
「い、イエーイ?」
「いいねぇ!ノリがいいのは私も好きだ、という事でワンワンワン放送局はっじまるよー!今回も盛り上げ司会進行役は私、犬山なぎさがお送りするよー!」
それにしても琴音がここまでノリがいいとは思わなかったっていや、見た目のイメージだけで語ったけど、よく考えれば割とノリだけで生きてる感じあったわ。
っとと、次のセリフっと
「さぁて、まずは重大告知が一つ、今回からのワンワンワン放送局は新拠点で行ってるよ!だからごめん、前回の放送で言った住所に来てももう誰も居ないから注意してほしい」
「あ、確かに、前回は住所を言ってましたね」
「いやぁ、まさか本当に人が来るとは思わなくてさ。それと拠点の移動のお陰で今回からは賑やかなゲストを呼べるようになったんだ!では、新拠点一発目のゲストはこの方達だ!」
バッと手を琴音に向ければ、向こうも意味を理解したようで笑顔のまま設置してある卓上マイクに向かって
「ゲストとして招かれた来ヶ谷 琴音だ。小学校の先生をしてる、ラジオは初めてだが盛り上げれるように努力しよう」
「……あ、私か。え、えっと、ゲストの佐倉 慈です。高校教師をしてます、はい」
なんだろう、本来なら慈の態度が普通だと思うんだ。だってラジオ慣れなんてしてないはずだし、だと言うのに琴音はまるで緊張せずに余裕すら感じられる、もしかして先生になる前は私と同業者だったのだろうかとすら思ってしまう。
それは現在進行系でトークをしてても変わらない、緊張して口が回らない慈をフォローする余裕すらある、これには最早疑問を抑えることが出来ずに
「それにしても、琴音ってこういうの慣れてるの?」
「いや、初めてだが?」
「嘘でしょ、どう考えても場馴れしてる感じじゃん」
言葉にはしてないが、琴音の隣の慈も私の言葉に同意するように頷いている。それを見て、琴音はあ~と言葉を探すように唸ってから
「まぁなんだ、小学生を相手にしてるとこういうノリが大事になってくるんだよ」
「な、なるほど……私もはっちゃけた方が良いのでしょうか」
「まぁ無理しなくてもいいけどね、てか慈がはっちゃける姿を想像するほうが難しそうだ」
このおっとり系先生がはっちゃける姿、それを考えようとしても浮かばないくらいにこの人はそういう人間だというイメージが強すぎる。
けど、それは
「いや、これが酒が入ると変わるもんだ、酔わないくせに」
「ちょっと待って、放送止めて」
「止めなくていいぞ、なんだ、折角だからもっと言ってやろうか、酒豪佐倉慈さんよぉ?」
おっとこれは非常に気になる話が出てきたな、大丈夫、今日のゴキゲンなナンバーは既に流し終えてるから、このトークが終わったらもう一度流せばいいから。
だから話すんだそれを!!!
「しゅ、酒豪とか言いがかりでしょ!?」
「そう言って、付き合いで飲んだ男何人沈めたんだよ、言ってみろよ」
「……10より先は数えてない」
つまり、最低でも10人以上の男を、末恐ろしい先生だなぁ。思わず笑ってしまえば、慈は顔を手で覆って、はぁ~と大きくため息を吐き出してから
「弱いのが悪いと思うのよ」
「そんな事言ってるから恋人居ない=年齢になってるんだよ」
「五月蠅いわよ、貴女だって同じでしょ?」
「その話は私にも容赦なく刺さるから止めてほしい」
思わぬ流れ弾に胸に痛みを感じなくはない。けど、この賑やかなラジオがすごく久しぶりで、やっぱり
(楽しいなぁ、こういうのって)
だからこそ、心の中で告げる。あの時、来てくれて本当にありがとうって。因みにその後は琴音と慈と私の過去話ぶっちゃけトークと音楽を流し続けるのであった。
結果は凄まじい痛み分けで終わることになるけど、不思議とそれが楽しく、満足の行く放送になって、これは次が楽しみだなと思った。
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システムメッセージ
【犬山 なぎさ】【佐倉 慈】との好感度が上昇、正気度が大幅に回復しました。
【犬山 なぎさ】との絆が深まりました。
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【疑惑、片鱗】※みーくん視点
夜の見回りの最中、私【直樹 美紀】は考え事をしていた。
まだ出会って二日目、けどその短い間でも疑問と言うか、違和感を覚える事があったにはあった。
言動と行動、その節々に彼女が中心になりつつあったことを、それに気づけたのは正直に言えば偶々だ。
(あの時、悠里先輩は笑っていた。そしてそれは間違いなく来ヶ谷先生への物だった)
話は聞いてた、来ヶ谷先生は何かと無理をして、この学園に合流してからは四時間くらいしか寝れず、それ以降はずっと起きて見回りと見張りをしていることを。
初めはそれを軽減できるということで安堵の笑みかと思いたかった。けどあれは違う、先輩は隠しているつもりだったかもしれないが、あの笑みには確かに歓喜が混ざっていたと。
(どうして、歓喜?そんなに嬉しいことだと?)
違う、もしそうだとしてもあんな、あんな、歪みを感じさせる笑みを浮かべる人ではない。ならばもっと他の原因と言うか、そういうのがあるはずだ。
けど、それは何だというのだろうか? いや、一旦私が分かってる範囲の事を整理してみよう。
(来ヶ谷先生に向けていた歓喜を含んだ歪みを感じさせる笑み、どうして先生だったのだろうか)
知ってる範囲では、来ヶ谷先生も悠里先輩、もっと言えば若狭姉妹の事を気にかけているのは分かってるし胡桃先輩たちの話から知っている。
そう言えば、今日の朝に瑠璃ちゃんと先生が話してる時に、途中から悠里先輩が驚いた表情をして、それから笑っていた事を思い出す。あの時は圭とちょっと離れた位置で会話をしてたので向こうの会話は聞けなかったから内容は分からないが。
(ともすれば、それが原因?)
そう考えたら、もっと分からなくなって、思わずため息が出てしまった。
「どうしたのかしら、そんなため息を吐き出すなんて」
「あっ、すみません。ちょっと考え事が行き詰まってしまって」
しまったと思いつつ、犬山さんに謝罪をする。今は見回りの途中、これは重要な事で、油断してて奴らに噛まれましたなんて洒落にならないから気を引き締めなければならないのに
「考え事?もし良かったら話してみなよ、なにかアドバイスできるかも」
「……いえ、コレはかなり個人的ですし、まだ確証みたいなものも掴めなくて」
迂闊に話せば、不和の原因になりかねない。だから申し訳ないけど犬山さんにも、佐倉先生にも、勿論、来ヶ谷先生にも話せない。
コレはコレで抱えてることでストレスになるような気がしないでもないけど。
(いっそ、悠里先輩に聞いてみてしまうのもありかな)
いや、駄目でしょ。誰に言うでもなく一人で心の中でツッコミを入れてから、見回りに集中しないとと気を引き締め直した、けど
「さて、そろそろ交代の時間だ。戻ろうか」
「へ?あ、はい」
もうそんなに時間経ってたっけ? ふと腕時計を見てみれば確かに経ってて考え事に意識を持って行き過ぎたと反省する。
圭にもよく言われたが私は考え過ぎるきらいがある、それが今回はかなり悪い方向に動いてしまったようだ。そもそも、悠里先輩に何か違和感を感じたからって、悪いことが起きてるわけでもないのだから気にする必要はないのではないのだろうか。
そんな風にさっきまでの考えを頭から追い出そうとしながら生徒会室に戻ってみれば、悠里先輩が既に起きていて瑠璃ちゃんに膝枕をしながら
「もう少しかしら、いえ、まだ早いわね。でもきっとこのまま行けばお義母さんになって……」
事情も、そしてこの世界が崩壊した状況でもなければそれは妙絶な笑みとして絵になったかもしれない。けど、今このタイミングでそれを見た私が感じたのはゾワッとした得体の知れない寒気、口を動かしているのに何を言ってるのかは聞こえなかったのは、小声だったからなのか、それとも無意識に聞こえないようにしてしまったのか。
だが扉が開く音に直ぐに気付いた悠里先輩は私を見るときには昼間見た、目を細めた柔らかな微笑みの表情で、今のは私が考えすぎで見てしまった幻覚だったのではと思ってしまうほどに普通の笑み。
「ふふ、時間ぴったりに目が覚めたみたいね」
「そ、そうですね。あっと、瑠璃ちゃんの膝枕、変わりますか?」
「大丈夫よ……はい、じゃあ行ってきますね」
刺股を持って出ていく悠里先輩を見送ってから、ふぅと息を吐き出し私は圭の隣に体を横にして目を閉じる。
きっとあれは、私の良くない見間違いだって自分自身に言い聞かせながら……
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システムメッセージ
【直樹 美紀】の正気度が減少と寝不足が発生しました。
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りーさんが欲しい言葉を的確にぶっ刺していく女教師が居るらしい
なお、本人は決意表明をしてるだけの模様