数が増えてても、琴音先生の正気度が犠牲になってても、なんとか耐久しながら三階に逃げ延びてあとは誰かが放送で下校を促すだけのゲームの実況の続き、もう始まってる!!
三階まで撤退して最終防衛ラインのバリケードの前で防衛戦してる最中から再開です。現状は割と余裕はありますが、それも長くは保たないと思います、なんでだって? そりゃお前、明らかに数が多すぎるもんよコレ。
多すぎるがゆえにバリケードに張り付く前に勝手に階段を落ちて、複数を巻き込んだりしてくれますが、お陰で通常の【かれら】は今までの7日目『雨の日』で済んでるのが幸いですかね?
「うっ、ああ、小さいのが前に出てきてキツイ」
「しっかりして、たかちゃん、ことねえも辛いんだから!」
はい、代わりというべきなのか【かれら(小学生)】が前に出てきて、二人の正気度が普通よりも削られていってます。ですが琴音先生はもう【決意】のお陰で減らないのでただひたすらに【かれら(小学生)】をシャベルで突き刺すだけのマシーンとなってもらいます。
例え、それで精神力へのデバフが酷くなったり、PTSDが悪化するかもしれませんがもう背に腹は代えられないので、チョーカーさんとゆきちゃんの正気度が削られすぎるよりは遥かにマシです。
琴音先生で【決意】を会得したの初めてだったのでどんな感じになるのかと思ったのですが、精神力へのデバフも三段階目で止まり、それ以上は重ね掛けされないんすね。マスクデータの方はわからないですけど、これってRTA的にも上手くやれば相当便利な状態になってるのでは……?
いや、そもそもあのイベントが起こすための行動を考えると微妙ですかね? まぁその手の検証は他の兄貴たちがやるでしょ(他力本願)
「く、来ヶ谷先生、顔が怖い」
「ことねえ、しっかりして!!」
へ? あぁ、無心でキリングマシーンになってたので遂にイカれたと思われたようですね。ダイジョーブ、琴音先生はもうこの程度のことじゃ正気度がゼロになることはないし、精神もぶっ壊れること無いから安心しろって!
え、そういう話じゃない? まぁほら、その話は生き延びてからしよう、な?
「めぐねえ達にも話すからなコレは」
「……」
ゆきちゃんからの返事がないのが怖いですが、撃退はしてくれてるのでとりあえず、そっとしておきましょう。時間的にはそろそろイベントが進むはず、今回は特にギミック解除をしてるので進行が早まってます。
これが解除されてない場合で30%からの撤退が、50%辺りで誰かが閃いて、放送室に駆け込み、下校を促すという流れになってイベント終了となるんですね。
そして今中央のバリケードはもうすぐ耐久値の残りが50%、とすれば両端の階段前のバリケードもそれくらいの筈ですし。出来れば閃くのは放送室に近い、みーくん達が良いのですが……
「ん?って、りーさんがこっち来てる!?」
閃いたのはりーさんか、それでも構いませんが、それって向こうの担当が減ってるということ、バリケードの状態の確認してないからどうなってるか分からないんだよなって?
《こちら、慈!今そっちに若狭さんが走って行ってない!?》
来てますねぇ! 何かあったのかと聞いておきますが、寧ろ向かって来てるりーさんに聞いたほうが早いかもしれなかったなコレ、トランシーバーでめぐねえに返答しながらりーさんにも声を掛けておきます。
《分からないけど、何か思い付いたって!》
「はぁはぁ、この状況を打破できるかもしれない策を思い付いて!」
「策って!?」
「説明してる暇はないの!!ごめんなさい、とにかくもうちょっとだけ耐えて下さい!!」
鬼気迫る表情で言われたら、チョーカーさんもお、おうと返すしか無いよな、うん。とりあえず、イベントは進んだと見ていいでしょう、あとは放送が流れるまでの残り数分を耐えるだけって!?
何だお前!?離せこら!やめ、やめろぉ! ガチ恋距離はやめろぉ!いくら、正気度が減らなくなって精神力へのデバフもこれ以上悪化しないとは言え、マスクデータ怖いんだよこのゲーム!!こうなったらネイルハンマーで緊急回避だ、くたばれオラァ!!!
「ことねぇ、平気!?」
「噛まれてないよな!?」
ギリギリシャベルで防げたから安心しろチョーカーさん、ゆきちゃん! てかこの小さいのどっから、あ、この自分たちが通るための空間を偶々通ったのか、どんな偶然だよお前……てか、忘れてたけど犬山お姉さん側とかりーさんが抜けためぐねえ側とかは平気なんですかね。
《こっちはまだ平気!そっちこそ大丈夫!?》
《こっちは、ちょっとマズイかもしれません……!》
そらまぁ、この数で一人抜けたらキツイでしょうよ。今のセリフの感じだと40%切ってますね、最悪向こうが放送前に倒壊して逃げてくる可能性も視野に入れておきましょう。
でも正直その前に放送が来ると思ってるのでそこまで心配してません。と言うか、そろそろ流れて(懇願)
『下校の時刻になりました。まだ校舎内に残っている生徒は、速やかに下校してください。繰り返します──』
「え、帰っていく?」
「どうなってんだこれ」
勝ち申した……!! りーさんの声で流れる下校の放送を聞いて【かれら】が急に活動を止めたと思ったらゾロゾロと帰っていきますね。
それを確認しつつ、ステータス画面を開いて状態を確認、うーむ、琴音先生の無茶を見てしまったのもあってゆきちゃんとチョーカーさんの正気度があまりよろしくないですねコレは……
チョーカーさんは確か今日のワンワンワン放送局に出るはずなので回復は容易ですがゆきちゃんは、ちょっと交流しないといけないかも?
とりあえず、トランシーバーで全員の無事を確認してから、放送室に集めましょうか。あ、てか、ワンワンワン放送局やる暇あるかな今日、バリケードの修理とか後始末とか、残党の確認とかあるし。
《ホール側は大丈夫、恵飛須沢さんも無傷よ》
《こっちも平気、はぁ、しんどかった……》
よぉし、『雨の日』は越えれましたね。いやぁ、良かった良かった、全体的に見れば被害は琴音先生の正気度と精神力だけなので安いもんだと思いましょう。
んじゃ、我々も放送室に向かいましょう。合流してからまた忙しくなりそうですし。
「にしても、なんで今の放送で制服姿のやつ以外も帰っていくんだろうな」
疑問はご尤もですがまぁ、流れで帰ってるんじゃないんです?(適当)もしくは昔の記憶が反応したとか、まぁその辺りは学者じゃないので琴音先生にも分かりませんけどね。
しかし、ネイルハンマーを思ったよりも使いませんでしたねって思ったけど、防衛戦だとリーチが短いこれを使うほうが珍しいから当然と言えば当然か。
寧ろ問題ないだろうとたかを括ってたシャベルのほうが一気に耐久値が半分より少し下になってしまった方が困りものです。学園内にまだ予備があると良いのですが、無いとなると近場のホームセンターとかに向かわないといけないですね。
おっと、動画では放送室前に着いたみたいですね。めぐねえ組も、犬山お姉さん組も来てますが揃いも揃って人の顔を見て沈痛な表情、これはまぁ正気度3割で三段階の精神力デバフ食らってるのが理由でしょう。
言っちゃえば、無理やり平常を演じてる状態なんですし、内面は目も当てられないくらいにボロボロなのよこの元不良、それよりもるーちゃんと太郎丸は大丈夫やろな?
「ことねせんせー!」
「琴音さん!!」
琴音先生ですが、放送室の扉を開けたら幼女と少女に抱き着かれて尻餅をつきました。いや、待て待て、琴音先生は返り血で大変なことになってるから引っ付くと君たちも血でヤバいことになるから離れなさいって。
「ワンワン!」
太郎丸も人の顔を舐めるの止めーや。あと周りも見てないで止めてもらえると非常に助かるのですが、その。
「ずっと、若狭さんは琴音を気にしてましたから、それくらいは許して上げなさいな」
「るーちゃんなんかはずっと一人で耐えてたのだから尚の事だね」
「言おうか悩んだけど、今のことねえは見てて辛いから、少しでも休めって」
この流れはもう覚えた、後は自分たちがやるから休めって流れだ。それを言ったら君たちもちょっとは休むべきではあると思うぞ? あの戦いは消耗キツイし、君たちだってフラフラなのは変わらないでしょうよ。
「そうね、皆、後処理とかは休憩を挟んでからにしましょう」
「あれから、まだそんなに時間経って無いんだ、もう一日経った気持ちだよ、ね、美紀、美紀?」
「……あ、そ、う、うん、実際は一時間経ったかどうかですからね。でも雨が降っただけでどうしてあんなに来たのでしょうか」
「雨宿り、とか?」
「傍迷惑な雨宿りがあったもんだな」
本当だよ。でも未来を知ってるプレイヤーはこれをまた5日後には同じ光景を見ることになるって思うとゲンナリだよね、フフッ、(最終日が)怖い。と言うことで、無事に『雨の日』イベントも乗り越えた所で今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。
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一か八かの賭けだったと言えば、そうだったとしか言えない。だけどあのままバリケードを守るために戦ってても何れは突破されて大変なことになる、私【若狭 悠里】は漠然とそんな事を思い、思考を巡らせた。
もっと言えば、このまま時間を掛けてしまえば琴音さんが壊れてしまうという焦りもあった。度々バリケードに張り付いてくる小学生くらいの【かれら】を見て、その気持ちは膨れ上がっていた。
「何か、この状況をどうにか出来ないの?」
「どうにかって、コイツラが帰ってくれるまでどうすることも出来ないだろ!?」
胡桃さんの言葉も理解は出来る、けれど今回はこの状況が異常だ。今までこんな行動しなかった【かれら】が急に押し寄せてきた、なにかの法則があると考えるべき。
今までと違うのは、雨が降ったと言う一点だけ、そして今までの行動は生前の記憶を朧気ながら辿っているというのは分かってる。
(なら、押し寄せてきてるのは雨宿りのつもり……?)
「若狭さん!!」
「りーさん、どうした!?急に手を止めないでくれ、対処が間に合わなくなるから!!」
二人の声で意識が浮上して、慌てて刺股で【かれら】をバリケードから剥がすように突き刺して階段から落とす。
落としながら思考をまた巡らせる。急がないと、その焦りが私を突き動かす、そう、生前の記憶、下校時間に帰るのだってそれが理由……そこまで考えて閃きが走った。
もし、コレが正しい仮説なら、コイツラをすぐにでも追い返せるかもしれない、だがそれを行うにはここを二人に任せて放送室まで走らないと、もしコレが違ったら二人を犠牲にしてしまう。
「(……『琴音さん』には変えられない!)佐倉先生、胡桃さん、ごめんなさい、試したいことが思い付いたので、放送室に行ってきます!!」
「試したいことってなんだよ、りーさんって、りーさん!?」
「恵飛須沢さん、バリケードに集中して!こうなったら若狭さんに賭けましょう!」
佐倉先生は私がなにか思い付いたのが理解してくれたみたいで胡桃さんにそう言ってるのが背後から聞こえたけど振り向くなんてことはしない。
とにかく走る、ホールから放送室、距離が思ったよりも離れてて息が辛くなるが、足を止める暇はない。
「ん?って、りーさんがこっち来てる!?」
「悠里、どうしたんだ!?」
中央階段前で応戦してた琴音さん達が声を掛けてきて、その時に琴音さんの顔を見た時、心臓が止まるかと思った。
急がないとと思ってた、けどそれはもう手遅れに近かった。そんな顔の琴音さんを見たくなかった、ここに来るまでに一体どれほどの小さい【かれら】を殺してしまったのだ。
私にどうしたと聞きながらもシャベルで【かれら】を殺す手を止めない、それが小さい【かれら】でも、流れ作業のように殺して、次を殺す。
そんな姿の琴音さんを見て本気で心臓が止まりかけて、息が出来なくなるかと思った。けれどそれを無理やり動かすために
「はぁはぁ、この状況を打破できるかもしれない策を思い付いて!」
「策って!?」
「説明してる暇はないの!!ごめんなさい、とにかくもうちょっとだけ耐えて下さい!!」
つい、貴依さんに厳しい口調になってしまったのを早口で謝罪してから放送室に走り込む、中ではるーちゃんが太郎丸を抱きかかえて震えていたが、私を見ると
「りーねえ、どうかしたの?」
「皆を、琴音さんを助ける手段を思い付いたのよ。えっと、これで電源を入れて……こうして、よし、これで」
マイクを前に息を整えて、少しだけ祈りながら私はそっと
「下校の時刻になりました。まだ校舎内に残っている生徒は、速やかに下校してください。繰り返します──」
生前の記憶を頼りに動いているのなら、これで【かれら】は帰るはず、不安要素なのは学園関係者以外の【かれら】が帰ってくれるとは思えない所。
けど数は大幅に減らせるはずだと、放送を行ってから私はまた祈るように今度はるーちゃんを太郎丸ごと抱きしめてから
「りーねえ?」
「お願い、帰って、これ以上琴音さんを苦しめないで……」
祈りが通じたのかもしれない。そう感じたのは外の戦闘音が急に静かになったからだ。それから放送室の前に複数の足音と
「琴音、貴方また無茶を」
「無茶って、あれくらいもう慣れたっての」
琴音さんのその言葉を聞いた瞬間、私は泣きそうになった。間に合わなかったと、声だけで分かる、琴音さんは無茶を重ねすぎて壊れかけてしまっていると。
佐倉先生の声で沈痛な気持ちが込められていることから、きっと表情も隠せないほどに酷い事になっているのだろう。見ればるーちゃんも琴音さんの声が聞こえたのか不安そうな表情で扉の先を見つめている。
だからだろうか、放送室の扉が開かれると同時に気付けば私たちは琴音さんに駆け寄って、その勢いのまま
「ことねせんせー!」
「琴音さん!!」
「うぉっ!?ったく、瑠璃はまだしも、悠里もどうしたっての?」
あぁ、この人は自分でも分かってないくらいに心を壊して、それを無意識に隠しているんだ……それが不思議なくらいあっさりと私には理解できた。
声に抑揚がないとか、違和感があるとか、そういう話ではない。もっとこう、直感的に近いものではあるけど確信できた。
この人の心は限界を超えてしまったのだと。けれど私達姉妹を守るためにそれを無理やり直して動いているのだと、お願い、琴音さん。
(私達に寄りかかってもいいから、もっと自分を大切にしてください)
じゃないと、私も壊れてしまう。もう、琴音さんと言う支えなしに私も生きていけるとは思えない。ねぇ、どうしたら私達は貴女を支えられる家族になれるの?
(こうなったら、もうはっきりと伝えるべきなのだろうか。その場合はるーちゃんに先に話すべきではあると思うけど)
顔を上げれば、太郎丸に顔を舐められて、佐倉先生達からは休めと言われて困ったように笑う琴音さん、けれどもう昨日までの笑みとは明らかに違うくらいに貼り付けたそれを見て胸に痛みが走って、そしてこのまま琴音さんが居なくなりそうな未来が見えてしまって
「もう私達から居なくならないで……お義母さん」
「りーねえ、いまなにか言った?」
「いいえ、何も言ってないわよ」
いけない、口に出してしまったみたいだ。るーちゃんに指摘されて誤魔化すような笑みを返す。けれど今のは心からの言葉かもしれない、そして
「……(やっぱり、悠里先輩は)」
美紀さん、貴方は本当に勘がいい人なのね。何かを確信した表情を一瞬だけした彼女を今度は見逃さなかった。
被害は琴音先生の正気度と精神力だけ、ほぼ無傷だな!!!