【シャベル同好会】
柚村 貴依はこれは何て言葉を掛けるべきか悩んでいたりした。
三人の人物がLL室でブルーシートを広げたそこにて黙々とシャベルを磨く光景に
「……」
「……」
「……」
真剣になっているのだろう、誰一人言葉を出さずに、ただ磨いている何とも言えない空気を醸し出している三人に暇だからと見学してた彼女が
「すげー異様な光景だなこれ」
「え?」
やっとの思いで出せた言葉に反応したのはその三人の中では常識人とも言える佐倉 慈、他二人は我関せずで磨いて仕上げに入ろうとしている。
最も三人がこうして磨いてる理由は貴依も理解してるし、必要だとも納得している、がそれはそれとして違和感が強い光景だとも思っている。
「これがくるみと来ヶ谷先生だけだったら、そんなこと思わないんだけど、そこに佐倉先生の一人が混ざるだけで違和感が強くなるんだよな」
「おい、どういう意味だそれ」
「わ、私ですか?って琴音、何を笑ってるのかしら?」
「要は慈はこの場には似合ってないって言われてるんだよ、ふっ、ふふふ」
笑いを堪えられないと言う感じに肩を震わせる琴音、それに対して慈も言わんとしてることは理解してるとしてから咳払いをして
「まぁ、私も柄じゃないとは思ってます、でも必要なことですから」
「ところでだ、めぐねえが居ると違和感がってことは何だ、あたしはシャベルを振り回しても違和感ないってことか?」
「うん、寧ろイメージ通りでも通じそうまである、来ヶ谷先生も同じだけど寧ろバットの方が似合ってそうだなって」
割りと遠慮を知らない貴依の言葉に胡桃は口元をひくつかせつつも、後者の意見に関しては彼女も確かにと思うところがあり、琴音の方を向けば彼女はシャベルを床に突き立て何かを思い出すかのように目を閉じながら
「まぁ、昔は握ってたなぁ、懐かしい話だが今はシャベルだ……そうだな、折角だからこの3人でシャベル同好会とか作るのはどうだ?」
「……琴音、貴女は昔からだけど突拍子も無いことを真顔で言うのはどうかと思うわよ」
「ごめん琴音先生、流石にそれはあたしもどうかと思う」
「ノーコメントで」
微妙な空気が流れるが、その場の全員の顔は笑っていた、最も全否定を食らった琴音は解せぬと言う表情を晒しているが。
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システムメッセージ
【佐倉 慈】【恵飛須沢 胡桃】【柚村 貴依】との絆が少し深まった。
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【腹筋ばきばき】※りーさん視点
「来ヶ谷先生、ジャケットに血が付いてますよ?」
奴らの行動の調査をしたいとくるみと共に出ていた来ヶ谷先生が戻ってきたのだが、道中で殺してきたのだろう、着ているジャケットには返り血が着いており直ぐに落とさないといけないことになっていた。
先生もそれを自分の目で確認してから
「うわ、これ落ちるかな……ウェットティッシュとかってあったっけ?」
「でしたら私が洗っておきますよ、脱いで下さい」
一応、ライダースジャケット、と言うよりレザージャケットの洗い方は知識として知っている。確かそれ用の洗剤もさっき先生が物資を取りに行った時に混ざっていた、多分だけど適当に取ったのにあったのだろうけど。
私は、佐倉先生や来ヶ谷先生の様に奴らと戦おうとはまだ決心がつかない、だからこういった雑用で役に立ちたいと思い、手を出せば先生は少し悩んでから
「んじゃまぁ、よいしょっと、お願い出来るか?」
「はい、キレイに洗いますね」
ジャケットの下は半袖シャツだったので二の腕とかが見えるのは当たり前なのはいい、だけどその腕とかは意外と筋肉質なものだったことに驚いた、先生って筋トレとかする人なんだろうかと。
また、ぐっと来ヶ谷先生が伸びをした時にチラッと見えた腹筋は割れてるようにも、思わず自分のお腹を触ってしまうがそもそも鍛えていない自分とは比べ物にもならない。
(ちょっと、憧れるのよね、ああいうお腹って)
「せんせー!わぷっ」
「おぉ、どうした瑠璃、暇ってところか?」
なんて思考の海に浸かっているとるーちゃんが来ヶ谷先生のお腹に飛び込んで、それを先生は受け止めたのだが、るーちゃんは何か驚いた感じに彼女の顔を見て
「お腹、かたいね」
「そりゃまぁ、ちょっと鍛えてた時期はあったからな」
「え、琴音先生のお腹って硬いの?触って良い?」
「減るもんじゃないから良いぞ、つってもあまり期待されるようなもんじゃないと思うが」
こういう時、ゆきちゃんの積極性と言うべきか、コミュニケーション能力の高さが少し羨ましいと思ってしまう、なんて考えつつ許可を得て触った彼女がどういう反応するか気になるので黙って見ることにする。
「おぉ、これは鋼みたいな硬さだ」
「カチカチだ」
「鋼、鋼ねぇ、そこまで鍛えたつもりはないんだが」
どうしよう、凄く気になる、いやでも、私から触らせてほしいなんて言えるわけないじゃない、駄目ね、これ以上は変に考えてしまいそうだし先生のジャケットを洗ってきちゃいましょう。
「そうだ、りーさんも触ってみなよ!」
「ん?なんだ悠里も触りたいのか?」
ゆきちゃん!!!!!と叫びたいのをグッと堪えて、そして私は……
(思ったよりも硬かった)
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システムメッセージ
【若狭 悠里】【丈槍 由紀】【若狭 瑠璃】との絆が少し深まった
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【下校の時間】※めぐねえ視点
「へぇ、話には聞いたことあったけど想像よりも立派な菜園だな」
「自慢の菜園ですよ、今日の昼食で焼きそばに使った野菜もここで取れたものですから」
そろそろ時間だろう、と言う琴音の言葉で私と悠里さん、そして琴音の三人は屋上に出ていた。ジャケットはさっき干されているのを見たので当然ながら今の彼女は半袖シャツ一枚だが寒くないのだろうかと思ってしまう。
けどよくよく考えれば、彼女はあまり寒がったりしなかった、なんて思っていると琴音は何か難しい顔をしつつ
(無駄に立派な菜園、浄水施設に、発電施設……購買部の品揃え、やっぱり妙だな)
「琴音?」
「ん?あ、いや、なんでもない、気にしないでくれ」
彼女がそういう時は決まって隠し事をしてますってことと同じ意味になるのだが本人はこれで隠せていると思ってるからタチが悪い、今は納得しておくけど、夜に聞いてみるとしよう。
それから、少し三人で雑談をしてから下校の時間、屋上から校門を見てみれば……琴音の推測どおりの光景が広がっていた。
「ちょっとズレはあるけど、これでハッキリしたな」
「えぇ、【かれら】は生前の一日を過ごしている、生徒としての、一日を」
本当ならば笑いながら友人たちと過ごしていた一日を、死して、あのような姿になっても過ごしている、それを理解すると胸が辛くなる。
ふと隣の琴音を見れば、彼女の目は鞣河小学校の方角を見つめていた。恐らくは自分と同じ、いや、それ以上の感覚を覚えてしまっているのだろう。そこでふと悠里さんが静かだなと見れば、少し辛そうな彼女の姿に
「悠里さん、辛いなら無理に見なくても大丈夫ですよ」
「い、いえ、大丈夫です。ただ、ちょっと……お母さんとお父さんは、どうしてるかなって」
あぁ、そうか、言われるまで思考が回らなかったが生徒たちには家族だって居る、無事かどうかの心配は当然出てくるだろう。だが確認する術は何もない、遂に携帯電話も使い物にならなくなったのだから。
どうにか出来ないだろうかと琴音にも聞こうとして、言葉を失う。先生としての優しい笑顔を浮かべているつもりなの?無理して、またそんな顔をしてるというの?
「……無事だって、信じておこう」
「そう、ですね。はい、そう考えておきます」
貴女は、もしかして悠里さんと瑠璃ちゃんの両親の安否を知ってるの? 琴音の表情はそれを物語るかのようにどこか強張ってしまっている表情を晒していた。
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システムメッセージ
【佐倉 慈】【若狭 悠里】との絆が少し深まった。
【佐倉 慈】から【来ヶ谷 琴音】へ、不安を強めた。
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今後も5話ずつ位で、その間に起きてそうな小イベントを書くのを繰り返すかもしれません。
評価ありがとうございます!!これからも日刊積み重ねて行きますよ~