「いやーすまないな二人とも。せっかくの休日なのに」
「いいよいいよ。おじさんの頼みとあらば休日の一つや二つ~」
喫茶リコリコにて。
今日は店長のミカに呼ばれてやってきた千束とクルミ。
なにやらミカ直々に頼みたいことがあってのこと。
千束やクルミにとって、ミカは行きつけの喫茶店の店長であると共に旧知の仲。
過去に困ったことがあった際には数えきれないほど力を貸してくれた恩人でもある。
普段滅多に他人に頼みごとをするような人でもないため、今回のようなことは珍しいことなのである。
「しておやっさん。僕らに頼みというのは?」
クルミが本題についてミカに尋ねると。
「これはまだ一般には公表していないこと。私が前に勤めていた警備会社とこの国の自衛隊、警察庁が今後起こりうる犯罪に対応するためのプロジェクトについての話なんだが……」
「ずいぶんまた大きな話が出てきたな……」
「まあお前たち二人が経験したであろう電波塔決戦のような惨事がまたこの街、別のところでおこりうるととも限らん」
今回ミカが二人に依頼するのは、国が独自に進めている犯罪対策についての一件。
千束とクルミ。かつて二人が高校生だったころ。住んでいるこの街では毎日のように抗争が絶えなかった。
反社会をうたう若者たちが数多くのチームやグループを組んでは争い合い、そこにつけこむ悪い大人たちの黒い影があった。
不良、荒くれ物、社会の掃き溜め。千束とクルミが通っていたアラン機関高等学校はその中でも特に荒んだ連中が名を連ねていたことは、かつてこの街では知らないものはいなかった。
その中でもクズ中のクズ、掃き溜めの中の掃き溜め、国の社会の汚点とまで言われた生徒たちを、世間では"アランチルドレン"と呼ばれ忌み嫌われていた時代があった。
今千束と行動を共にしているクルミもまた、アラン機関の狂瀾怒濤、ウォールナットと異名を持つほどの手練れであった。
そんな激動の時代を、後のアラン機関の千手観音と呼ばれた錦木千束は己の力を行使し、周りの街の住民達の支えとともに。
そして戦い認め合い構成させたアランチルドレン達を率いて、この街における史上最悪の事件である電波塔決戦を収めたというのは、今となっては風化しつつある話である。
だがそんな大事件が風化しかけている現状にて、学生治安部隊リコリスや、それに相対する真島グループといった勢力が街でしのぎを削っているというのも事実である。
「確かにね、もうあんな何も生まない醜い争いはね……」
千束は過去を思い出す、二度と起こってはならないと感じそう言葉をつぶやいた。
「てなわけでだ。そういった構想や犯罪に対して対処するため、私にも密かにそれに対策をするための実用戦術兵器のプランニングを依頼されていたのだ」
「実用……」
「戦術兵器ーーー!?」
ミカのその突拍子もない一言に、クルミはいまいちといった反応を、そしてそれとは正反対に千束は目を輝かせている。
ミカは今でこそ喫茶店の店長であるが、口頭でも本人が言っていたように、元警備会社の人間である。
だが千束の育ての父親が病気で他界し、千束を引き取った辺りで警備会社を辞め、喫茶店を開き今に至る。
そして喫茶店を経営する傍ら、趣味の日曜大工で様々な発明品を作るに至り、それがかつての千束やクルミたちを幾度となく助けている。
その発明品が街の人たちからは多大な評価を受け、一部の人からは下町のドラ〇もんと呼ばれていることもある。
そんなミカの技術は、古巣の人も認めているようで、時折依頼を受けては副業として協力をしているのである。
「まあ千束は聞いたら喜ぶと思っていたが。そう、前に千束に街のヒーローショーでかば焼きマン(世間で人気がある国民的人気アニメの主人公、アン〇ンマンみたいな感じ)のスーツアクターを頼んだことがあっただろう?」
「あーそんなアルバイトもあったねぇ」
「その時にふと思ったんだが。ゆるキャラ的な着ぐるみの中にコックピット的なものを配置して、武器とか内蔵して警備に配置したら強そうだなぁなんて」
「それ子供たちが見たらトラウマにならね?」
ミカが何気に思い付いたそれは、犯罪抑制には効果がありそうだが子供たちに心の傷を負わせるかもしれないような代物であった。
そんな大の大人が考え付いた内容にクルミはとりあえずツッコミを入れつつ。
そしてそのような構想を聞いて、アクション映画が大好きな千束はさらに期待を膨らませる。
「お、おじさん。それってつまり、アレだよね?」
「そう、言うなら……。パワードスーツってやつだな」
「ぱ、パワードスゥーツ!?(力強い発音で)」
「パワ~ドス~ツ……(いい発音で)」
千束とミカはいまいち場の空気に乗れていないクルミを置き去りに二人で大盛り上がり。
そんな近未来的なパワードスーツが数日前に3機完成したとのことで、うち2機の一般向け試験を、千束とクルミにお願いするというのがミカの依頼であった。
「いいのおじさん!? その、アイア〇マン的なやつ私が操縦してもいいの!?」
「あぁ、千束ならきっと喜ぶだろうなと思ってな」
「おじさん大好きー!!」
「HAHAHA! こらこら……」
アイア〇マン的なものかはさておき、映画を見て一度は夢あこがれるパワードスーツを身にまとえると聞いて千束は大喜びでミカに抱き着く。
「子供かお前は……」
「映画で夢見たことが現実で起こりうるということなら大人でも子供のように喜ぶのが当たり前じゃん! クルミだって電気屋としてはそういうのに期待を抱いたりしないの!?」
「……確かにちょっとは、ゲーム好きだし」
千束にそう付かれ、クルミは少しばかり頬を赤らめ、恥ずかしそうにそう答えた。
そんな話をした後、いよいよ噂のパワードスーツがそのベールを脱ぐ。
大きなトラックが喫茶店の近くで止まり、中から台車で2台のパワードスーツらしき物体が布が被った状態でトラックの荷台から降ろされる。
大きさはというと、一般的なゆるキャラサイズの着ぐるみよりちょっと大きいくらいの、パワードスーツにしては非常にコンパクトな見た目をしている。
「千束が1号機、クルミが2号機を使ってくれ。二人が使えるように登録はしてある」
ミカにそう言われ、それぞれの機体のカギを二人に渡す。
そしていよいよ、そのパワードスーツの実態が明かされる。
業者によっておおわれた布が取り払われ、そこから現れたものは。
「まずは1号機。その名は……チンアナGO!!」
1号機と言われたそのパワードスーツの名前は、チンアナGO。
名前の通りチンアナゴをかたどったゆるい感じの着ぐるみ風のパワードスーツとなっている。
その見た目からはとても犯罪抑制、テロの鎮圧などを行えなさそうな情けない風貌をしているが、それが狙い。
客観的視点から犯罪者やテロリストを欺き、圧倒的な力でその場を収める馬力と能力を秘めているのだ。
パンチは戦車の外装をへこませる程の破壊力。銃で撃たれても傷一つつかない防御力。
まさにこの国のアイア〇マンと呼べるにふさわしい代物であった。
「さあ千束! どうだ、かっこいいだろ!?」
「ダサい!!」
かっこいいとするミカのその言葉に対して、千束が最初に迷うことなく発した感想がそれ。
どう見ても、どう考えてもダサいとしか言葉が出ないそれに、期待で胸が膨らんでいた千束の気持ちは一気に怒りへと変わる。
「ち、千束!? これ……ダサいか?」
「ダサい! 圧倒的にダサい!! なんでよりにもよってモチーフがチンアナゴ!? つーかチンアナゴのゴをGOにしている辺りが最高にダセーしなんかムカつく!!」
千束は酷評に酷評を重ね、チンアナGOのことをこき下ろした。
アイア〇マン的な構想はどこへやら。仮にゆるキャラ的なものだとしてももうちょっとマシな何かがあったはずである。
だがそれらの人間が考えうる数多くの選択肢の中で、奇跡的に悪いものがかみ合った結果生まれた怪物と言わんがごとくの兵器がこのチンアナGO。
「おじさ~ん! 私アイア〇マン的なやつ身につけたかったよ!?」
「千束、アイア〇マンはな……。著作権的にこう……」
「別にアイア〇マン作れって言ってるんじゃないのさ! だったらメタ〇マンでもよかったさ、なのにどこをどうしたらチンアナGOになるのさ!?」
「本当に、申し訳ない」
「やかましいわ!!」
ミカはメタ〇マン的に謝罪をするが千束はそれを一蹴。
だがどれだけ文句を言っても完成してしまったのがこのチンアナGOであるため、取り返しがつかないのが現実。
すっかりやる気が失せた千束に、ミカはせめて少しでもやる気にあってもらおうと。
「まあまあ千束、このチンアナGOにはな、主題歌もあるのだ」
「主題歌まで作ったんか!?」
「聞いたらきっとやる気になると思うぞ」
そう言ってミカはスマホから警備会社から送られてきたチンアナGOのテーマソングを流し始める。
※読者の方々は某勇者王のOPを思い浮かべて再生してみてください。
チチチ! チチチ! チンアナGO!!
チンチンチチン!! チンアナGO!!
悪に、立ち向かえチンアナGO!
救え! チンケなこの世界を!!
珍妙な奴らに、鉄拳♪
珍事はいつでも、解決さ~♪
ちんたらしてんじゃねぇ~!!
「どうだ千束、かっこいいだろ!!」
「ダサいわぁぁぁぁぁ!!」
主題歌を聞かせて千束のやる気を上げようとしたのがさらに逆効果に。
ミカが聞かせたその歌がさらにチンアナGOのダサさを引き立たせる結果に。
「つかチンチンチンチンうるさい!! 操縦試験するの私! 女の私にチンチン言うやつ操縦させんのか!?」
「う……。確かに女性に対しての配慮が足りなかったか……」
「それ以前の問題な気がするけどね。ていうかたまに思うけど私女扱いされてない時あるよねなんかね」
「男とか女である前に、千束は人を超越した何かだから」
「クルミはちょっとうるさい!!」
確かに学校でリコリスが束で襲い掛かっても汗一つかかずに捌き切るほどの戦闘能力を有している千束は、もはや人を超越した何かであろう。
だがそれは別として、女として扱われないことに関してはモノ申したい千束であった。
「おじさん、私おじさんのことは悪く言いたくないけど。これだけは言わせてもらうからね。この……セクハラ親父」
「ガーン!」
「あぁおやっさん、僕からも言わせてもらうよ。このセクハラじじぃ」
「ガーン!!」
千束とクルミにセクハラだと指摘されて落ち込むミカ。
だが休日をつぶして依頼を受けてしまった以上、千束はチンアナGOの試験運用はきっちりと行わなければならない(一応報酬も受け取っているため)。
どんだけダサかろうが女性に対して配慮が足りていないものだろうが、これが犯罪やテロから街の人たちを守る力になるのであれば。
見た目のダサさなどは、別問題なのである。ちなみに……。
「つか1号機と2号機って同じ? 2号機もそれなら僕帰るからね」
クルミが乗るであろう2号機の詳細がまだであった。
クルミにそんなことを言われ、2号機の布が取り払われると。
そこから出てきたのは、巨大なリスの形をしたパワードスーツであった。
「2号機の名前はウォールナット君。名前はクルミが過去に呼ばれていた異名から取らせてもらったよ。1号機に反して2号機は可愛さを前面に押したデザインにしてあるらしい」
「ふ~ん。まあ悪くないじゃん」
「お、どうやらクルミの方は気に入ってくれたみたいなだな」
「私そっちがいいんだけどーーー!」
千束が乗るチンアナGOとは打って変わってかなりまともなデザインのウォールナット君を見て、千束の不満は爆発。
もはや差別すら感じざるを得ないこの対応の違いに、クルミからウォールナット君を奪おうとさえし始めた。
「ち、千束はそのダサ……かっこいいチンアナGOに乗ればいいだろ!!」
「今思いっきりダサいって言おうとしただろお前! 私もせめてその可愛いリスがいい!!」
「文句言うな決まったことなんだから! チンアナGOもお前に乗られることを期待してるぞチンアナ千束!!」
「チンアナ千束ってなんだ! もうアレな言葉にしか聞こえないじゃんバカー!!」
「こらこら喧嘩するな二人とも」
「「誰のせいだと思ってるんだこのセクハラ色黒店主!!」」
「がーん!!」
数分の言い争いの末、チンアナGOは千束が、ウォールナット君はクルミが担当することになった。
「マニュアルは各自のスマホに転送してある。30分ほどの動画形式になっているからそれで使用方法を覚えてくれ」
「あー30分か。おじさんマニュアルの書面形式のってある?」
「一応あるが、結構多いぞ」
「それ貸して」
そう言って千束がミカからおおよそ数百ページのマニュアルを受け取ると。
次々とペラペラとめくり、30分どころか5分ほどで、マニュアルを閉じ。
その足取りでチンアナGOに乗り込んだ。
「速読か……。お前の千の特技ってやつ?」
「この眼で見たものは一瞬で覚えられるんでね」
クルミが言う千束の千の特技。それは本当かどうかはわからないが、千束は自称千の特技を持っている。とよく言っている。
その中でも身内で知りえているのは、千束のその眼の良さ。
そこからくる動体視力は、目の前で撃たれた銃弾を瞬時に避けるほど。
その他、彼女が眼で見たものは瞬時に記憶される。
その眼で見た相手の特技や技術、癖といったものを記憶し把握、さらには模倣し自分のモノにするといった芸当まで行える。
これにより彼女が担任しているD組のリコリスたちの戦闘技術や思考、癖や戦い方などは全て網羅しているため、本人の化け物じみた能力を相まってセカンドリコリス以下の生徒は彼女に傷一つ負わすことすらできないと言われている。
彼女に対抗できるのは、怪物と称されるほどの戦闘能力を有するファーストリコリスか、真島グループのリーダーにして彼女と同じアダムスギフテッドの真島くらいであろう。
「おー! 珍妙な見た目からは想像ができないくらい中身はめっちゃSFしてるー!!」
チンアナGOに乗り込んだ千束はその内装に驚愕した。
おおよそ人一人分のスペースの中には、外部が写る最新鋭のモニターや、電子で手足が連動する最新鋭の操縦システムなどがこれでもかというくらいに盛り込まれていた。
これで見た目が最高なら申し分ないのだが……。
30分後、クルミもマニュアルを覚え終わりウォールナット君に乗り込む。
「うわー! すごいなこれ!! 戦〇の絆最初にプレイした時以上の衝撃だぞこれ!!」
ゲーム好きのクルミも、ウォールナット君の内装に申し分ない感想を述べた。
こうして二人による試験運用が始まる。
基礎動作の確認。各種内蔵されている武器の安全点検(もちろん一般人に迷惑のかからない場所にて安全面を考慮してやっています)。
そして模擬戦といったことを行い。時刻は夕方に迫る。
「ふ~。中身も冷房が効いてて快適だし。次は3号機持ってきてね。もう私チンアナGOはいやだ」
「そうかそうか。3号機はチンアナGOとウォールナット君をさらに改良した仕上げになっているようで。3機の中で一番"バランスが取れている"そうだぞ」
「ふ~ん。そりゃ一度見てみたいもので……」
千束とミカがそんな会話をしているその時。
ミカのスマホに一本の電話が入った。
「はいもしもし私だ」
ミカが通話に出ると、そのスマホの奥から焦る男の声で、耳を疑う内容の言葉が聞こえてくる。
「ミカさん大変だ! 3号機のロボゾーが、何者かに奪取された!!」
「なんだと!?」
なんと警備会社に配備されている調整用の3号機が、何者かの手で盗まれたとの衝撃の電話であった。
千束とクルミにはその起こっていることの重大性が理解できる。先ほどまで動かしていたそれは、まごうことなき犯罪の抑止力。
並みのテロ組織なら鎮圧できるほどの強大な力を有する、見た目とかちょっとあれだけどそれだけの兵器が、一般人―――それも悪い者の手に渡るということ。
そして最悪それは、一般人に危害を加える事態にもなりかねないということ。
「今奪取された3号機はどこに!?」
「どうやら街の中央で……。なにやら赤い制服の女の子と戦っているみたいです!」
その会話を聞いて、千束とクルミは状況を察する。
「千束、これは……」
「いや~な予感がしてきたな」
――場所は市内中央。
そこでは奪取された3号機と戦っている赤服、ファーストリコリスの井ノ上たきながいた。
「なにやら街で着ぐるみが暴れているっていう通報があったから来てみましたが、これ……本当にただの着ぐるみ?」
ただの着ぐるみが暴れているだけならば、取り押さえることも簡単だっただろう。
だがそれは着ぐるみの皮を被った対犯罪用兵器である。
その異様な機動力と破壊力に、徐々に押されるたきな。
「ぐっ! この!!」
たきなは着ぐるみに銃をぶっ放す。
本来一般人に当たれば気絶するほどのダメージを与えられる特注のゴム弾。普通の着ぐるみスーツならば損壊させられるほどの破壊力を有しているが。
この3号機ロボゾーは、たとえ実弾であっても傷を負わない代物。プラスチック製ゴム弾では当然機能を止めることはできない。
そんな劣勢な中、一台の巨大トラックが二人の近くに停車。
そこから同じような着ぐるみが2機、荷台から降りてきた。
「着ぐるみが増えた!? 一つだけでも厄介なのに!!」
たきなは敵が増えたことに焦りを隠せずにいる。
だが降りてきたそれは敵ではなく、味方である。
そう、チンアナGOを操縦する千束と、ウォールナット君を操縦するクルミである。
「リコリスの狂犬! 僕だクルミだ!! 敵じゃないぞ!!」
「クルミさん!? じゃあそっちは……」
「どうやら、目には目を、歯には歯を、パワードスーツにはパワードスーツってわけか」
「先生!!」
街で暴走する3号機に対して、こちらには1号機と2号機がある。
戦況は逆転した。だが3号機は起こった状況を見て、逃げるでもなく戦う姿勢を見せる。
この状況でも争いを望むそれに、3人は覚えがあった。
「3機の中で最も"バランスが取れている"って言ったな。ならそれを遊び半分で、しかも厳重に配備されている場所から盗み出せるなんか、一人しかいないよな。”"真島くん"」
そう千束に名を呼ばれ、3号機から操縦者が言葉を発した。
「はっはっは!! やっぱりてめぇかよ千束ちゃ~ん! うれしいねぇ、こういう状況でも俺が望んだ形で表れてくれるわぁ」
そう狂気を発する真島。
バランスが取れているといえばもうこの男しかないだろう。
この世界、現実におけるバランサー。理不尽と静寂を嫌う狂気の男である。
「つか千束ちゃん。俺のロボゾーも別にかっこいい見た目ってわけじゃねえが……。それめっちゃだせーな」
「言うな!!」
邂逅早々、真島は千束が動かしているチンアナGOの見た目のダサさを指摘する。
ちなみに真島が動かしているロボゾーは、真島の部下のロボ太が被っているロボットの被り物がモチーフのシンメトリーなこてこてのロボットな見た目をしていた。
なんというかやっぱり真島から見てもダサいのは仕方がなかった。改めてショックを受ける千束。
「……先生が動かしてるそれ」
「あーたきなさん言わなくてもいいですよ。またいつもみたいに私に対して容赦ない罵声浴びせるんでしょ? 今まさにチャンスみたいなもんですもんねははは……」
「……かっこいい、ですね」
「嘘やろ!?×3」
なんと誰が見てもダサいと言わざるを得ないチンアナGOを見て、たきなはかっこいいと感想を述べた。
確かにミカもダサいとは思っていなかったが(開発側の視点でダサいと言いたくても言えない可能性はあるが)、この見た目をかっこいいと思える人種がいたとは。
千束、クルミ、真島はたきなのセンスにツッコミを入れざるを得なかった。
「ま、まあいいや。てなわけで千束ちゃんよぉ。今回は生身の喧嘩じゃなく、このパワードスーツを使って喧嘩しようや」
「おい、お前もそれ使ってわかってると思うが、この状態でこれ同士が戦闘を行ったら周りに被害が出る。今回は穏便に引いてくんない? そしたら警備会社の人にこってり絞られる程度で納めてもらうように説得してみるから」
「それは聞けない話だな。これを使ったマジの喧嘩、きっと最高の喧嘩になる。パワードスーツとパワードスーツの喧嘩なら、バランスが取れてる!!」
「ていうか会社の備品盗み出した時点で立派な犯罪だかんね。なんでそんなことしたの? 私が同じのに乗ってるって知ってたわけでもないし……」
確かに千束がこの場に同じパワードスーツで表れたことは、真島にとって偶然でしかない。
となると、真島が警備会社からロボゾーを盗んだのには、別の理由があるはずなのである。
「ちっ、まあ確かにこのパワードスーツの噂を聞きつけて警備会社を襲ったのにはきちんと理由があんだよ」
「お前のことだし、リコリスに対応するためにパワードスーツを奪取したわけでもないだろう? そうすると互いの勢力のバランスが崩れる。圧倒的な殲滅はお前の好みじゃないはず」
「……」
「なら、いったいなんでこんな真似を?」
そう千束の質問に対し。
真島は少しばかり、恥ずかしそうに答えた。
「……先日たまたまアイア〇マン見て、こんなパワードスーツ動かしてみてぇなって思ってさ」
「わかる!!」
「おい×2」
真島の行動の真意を聞いて千束はつい共感してしまった。その千束に対しクルミとたきなは思わずツッコミ。
だが悪いことは悪いこと。真島のやったことはただで許されていいものではない。
どうやらすんなりとパワードスーツを返してくれそうではないようで、真島的にはパワードスーツ同士でバトルをするまでは満足できそうにないようである。
「まあ同じ映画評論家として気持ちを理解はしてやる。情も沸こう。だが……。一学校の教師としては、悪いことをした輩にはお灸をすえてやらねばなるまい」
「やっとやる気になったかよ千束ちゃ~ん」
「おじさん聞いてる? どうやらこれが、最終試験になるらしい」
「しかたない、思いっきりぶちかましてやれ」
千束はミカにそう連絡を入れ。本腰を構える。
「さてとしたら……。ってうお!?」
千束が真島に向かってチンアナGOを動かそうとした時、たきながチンアナGOの中に入ってきた。
当然これは1人用なので、中身はとても狭く二人は密着する。
「たきなさん何してんの!? あっちで隠れてなさい!!」
「真島は私がやります。先生こそここから出て行ってください」
「いやいや操縦方法わかんないでしょ君! てかせまい!!」
千束が真島と戦う前に、チンアナGO内部でいつものように争い始めた千束とたきな。
そんな二人を見て呆れを感じながら、クルミ率いるウォールナット君が真島のロボゾーに突撃しに行った。
「イチャイチャしてるんだったら先に僕が行ってるぞ」
「「イチャイチャしてない!!」」
クルミにそう言われ千束とたきなは全力でそれを否定。
ウォールナット君とロボゾーが戦っている間、千束は仕方なくたきなに操縦方法の一部をレクチャーする。
「もうくだらないことで言い争ってる場合じゃない。いやしかしせまいな。たきなさんがスレンダーな体系をしているからまだなんとか空間があるが。いやよかったよ君の胸がぺったんこdむぐっ!!」
「先生~。今この中は逃げ場のない密閉された空間。つまりどういうことか、あなたの常日頃人を馬鹿にしたようなお得意の回避術は意味をなさないということです。つまりこの中では……私はあなたに攻撃を当て放題というわけで」
たきなはいつものようにバカにしてきた千束の首を片手で締めながら脅すように怒りを交えた言葉でそう脅した。
本気で怒らせたらチンアナGOの中でもお構いなしに銃をぶっ放しかねない、千束は悪口を言わないよう口を閉じた。
「別に操縦方法とかはいいです。なにかこう武器とかないんですか?」
たきながそう千束に問うと。
千束はモニターを操作して武器欄にカーソルを合わせる。
「えーとこれか。……無駄に正式名称が長いな」
「チンアナGOポジトロニウムバスタービーム。これでは長すぎます。こう、略してチン……」
そうたきなが武器名を略して言おうとして、何かに気づいたようですぐに口を閉じた。
そしてなにやら頬を赤らめて、モニターから視線を外しているではないか。
その様子を見て、千束は冷静なまなざしでたきなに迫るように質問する。
「……たきなさん、今なんて言おうとしたの?」
「うるさいです」
「ねえたきなさん、チンアナGOポジトロニウムバスタービームを略したら何ビームになるの?」
「黙って!!」
「たきなさん! ひょっとしてあなた思いっきり※※※って!」
「黙れこのセクハラクソ教師!!」
千束とたきなの醜い争いはさらに熱を増すばかり。
そうこうしているうちに、クルミのウォールナット君が真島のロボゾーに殴り飛ばされウォールナット君が機能停止している。
それなりにロボゾーにもダメージを与えたようではあるが、ロボゾーは狙いをチンアナGOに定め向かってきた。
「さてウォールナットは倒したし。次はお前だチンアナGO!!」
このままではただやられるだけ。
ボロゾーを倒すには、この謎のビーム兵器を使うしかない。
「ああもうなんでもいいから、たきなさんビーム打って!!」
「あなたに言われなくても。目標に狙いを定めて……」
そしてたきなはロボゾーに標準を合わせ。
チンアナGO渾身の一撃を、ロボゾーに打ち込んだ。
「なんとかビーム!」
「ぎゃーーーーー!!」
たきなの渾身のなんとかビームが直撃し、真島はロボゾーごと遠くまで吹っ飛ばされた。
こうして真島とのパワードスーツ対決は、千束とたきなに軍配が上がった。
すっかり日も暮れ、パワードスーツは警備会社に返されることに。
「いやしかしイレギュラーな事態に巻き込んでしまってすまなかったな。夜ご飯タダでごちそうするからそれで許してほしい」
「あ、ありがとうございます」
ミカは今回の不備について申し訳なく思っているのか、3人にご飯をタダで作ってあげることに。
「いやしかしチンアナGOをかっこいいと思えるとは。たきなちゃんはいい目をしているな。次の運用試験の時は任せちゃおうかな」
「別にかまいませんが。店長に一つだけ言いたいことがあります」
「ん? 何かね?」
たきながミカにどうしても言いたいこと。それは……。
「……このセクハラ親父」
「ガーン」
やはりあのビームの名前は、女性に対してはセクハラ以外の何物でもなかった。