リコリス・リコイル~3年D組の千束先生   作:トッシー00

15 / 40
第11話です。


第11話:chapter1-4-対してリコリスも動き出す。

 春の寒空、街の夜道。

 寒さ残る街の外で、今日も知らずに事件は起こっている。

 街の平和に隠れ、悪行を重ねる者たちは存在する。

 それがただ表立って世に出ないだけ。なぜなら街の住民が不安になるような情報は基本的には流れないから。

 そしてこの世に蔓延る悪を、闇に紛れて粛清する者たちがいるから。

 

 小さなワゴン車にか弱い女性が数名の男たちに押し込められている。

 このままでは拉致されて、ひどい目にあってしまうその女性。

 周りには誰もいない。目撃者もいない、計画された犯行。

 助けなど来ない。普通ならば。

 

「むーーーーーー!」

「ひひひ! ここには誰も来ねえよ。てか静かにしろよ!!」

 

 口をふさがれ手を縛られている女性が抵抗するが男たちはそれを押さえつける。

 この絶望的な状態に、現れた一人の女子高生。

 

「あーれー! お兄さんらなにやってんっすか?」

 

 能天気なその口調で、今この状況ではありえない態度でせまるその女子高生。

 DA学園、セカンドリコリスが一人、乙女サクラである。

 

「だ、だれだ!? 見張りはなにやってんだ!?」

「見張り? あああっちにいたやつら? なんか絡んできたから再起不能にしてきたっすよ」

 

 絡んできたから返り討ちにした。この少女一人が。

 見張りは3人ほど、体格の良い漢もいたはずだ。

 こんななりをした少女にやられるはずがない。

 

「ふざけんな! んなわけあるか!!」

「てめえもこいつみたいになりたいようだな!!」

 

 相手はナイフなどの凶器を所持している。

 しかもさらに数が増えて危険な漢が5人。普通の女子高生なら絶望的この状況。

 そんな中、サクラに連絡が行く。

 

『こちらサードリコリス。加勢して一気に終わらせますか?』

「いやいいよいいよ。あんたらはスマホでもいじりながら楽してなって。ちょうどこいつの威力も試してみたいんでねぇ」

 

 この状況で恐怖一つ感じていないサクラ。

 男たちにとってはそのサクラに態度が癇に障ったようで。

 5人全員で襲い掛かろうとする。

 その男たち相手に、サクラが忠告とばかりにこう言い放った。

 

「あーそうだ。あんたら武器を手にしたな? 人をそんなもんで傷つけようって腹持ちなら、傷つけられる覚悟も持っていて当然ってわけっすよね?」

「なにわけのわかんないこと言ってんだガキ!」

「まあいいや、実際思い知ればいやでもわかるもんでしょ♪」

 

 そう言って、サクラは腰にかけていた得物を取り出す。

 それは模造刀のような武器であった。ナイフと違い殺傷能力はないように思える。

 

「私の尊敬するフキさんに倣って銃なんてちゃちなもんは使わねえ。喧嘩ってのはこう、白兵戦に限る。あたしの剣技、気が済むまで味合わせてやるっすよ」

「ぶっ潰してやるーーー!!」

 

 そう襲い掛かってきた男たちに対し。

 サクラは狂気的な笑顔を滲ませ、得物の名を口にする。

 その瞬間、その場の男たちは、地獄すら生ぬるい光景を目にすることとなる。

 

「ラジアータ起動。"ハルシャギク"」

 

 その後何があったかは、その場にいる者たちしか知りようがない。

 男たちは一人の女子高生によるその剣技で、残酷で、残虐に打ちのめされる。

 その最後、男たちは恐怖を抱き、その畏怖なるものへの感想を述べるのである。

 

「……この刀……。生きて」

 

 その言葉とともに、男たちは意識を失った。

 

 

 ――――それから数時間後。

 

 

「はーい! 乙女サクラ! 任務を完璧にこなし帰還いたしまs」

 

 どがしゃーーーん!!

 

「んぎゃーーーーーーー!!」

 

 任務をこなし待機していたワゴン車へと帰還してきたサクラに対し、おもっくそな勢いで模造刀を振り、フキはサクラを吹っ飛ばす。

 その表情にはミッションに時間をかけすぎて待たされすぎたことへの怒りが表面に出まくっていた。

 

「いったいいつまで時間かけてんだてめぇ? ほら時間見てみろもう夜の9時すぎてんだよ。私が見たかったTV番組もう始まってんだよどうしてくれんだよおいこら……」

「痛い痛い……。す、すいませんフキさ~ん、あいつら人数が多かったから全員しばくのに時間かかっちゃって」

「だから近くにサード数人待機させてただろうが。全員でかかれば8時半ばには終わってたはずだろうが。それをなにが「こんな連中ならあたし一人で楽勝だからあんたたちはスマホでもいじってそこで楽でもしとけ」だ。くだらないことで時間かけてんじゃねぇよクソがよ」

 

 フキはサクラの自分勝手さと任務を楽しんでやっている呑気さに腹の虫が収まらなく、模造刀をサクラに突き付ける。

 その怒り心頭なフキに対してサクラは膝が抜けビクビクと怯えフキを見上げる。

 そこに奥からエリカが冷や汗をかきつつフキをなだめるため割って入る。

 

「ま、まあまあフキちゃんこの辺で……」

「ちっ……。さっさと車の中に入りやがれ。たきなの方の報告がそろそろ届く」

 

 エリカの制止もあってかそこらへんで怒りを抑えフキはサクラを車に入るよう誘導する。

 他のサードリコリスは現地解散、フキ、サクラ、エリカの3名は任務報告のためワゴン車内で現状待機。

 サクラ主導のチームに与えられていた粛清任務は特に問題なく完了し、残されたのはたきなの錦木千束の討伐任務の結果報告のみ。

 

「しっかし天下のたきな様の任務は楽でいいっすよねぇ~。フキさんには申し訳ないっすけどファーストリコリスの権限ってマジで卑怯すぎやしません?」

「羨ましく思うんだったら無駄にしゃべってねえで戦果上げてファーストになるために努力しろ」

「だからあたしは功績あげるために今回も単独でやることを提案したんすよ~。他のリコリスが傷ついたら現場監督責任っつうのが発生するんで、雑魚引き連れるのも楽じゃないんっすわ~」

「そこをうまく統制すんのも力量なんだよ。学べよ少し……」

「はいは~い。すんませ~ん」

 

 そうサクラはフキに怒られているのだがあまり深くは受け止めていないようである。

 サクラは現状セカンドリコリスの中で最も出世株、ファーストに近いと言われている逸材。

 現状最も任務を多くこなしている。彼女自身も出世に燃えており、他のリコリスの手柄を少しでも自分のモノにしようと躍起になっている。

 そんな会話をして後数分後、楠木教頭からのコールが届いた。

 フキは通話ボタンを押し応対をする。

 

「はいこちらファーストリコリスのフキです」

『楠木だ。そちらの報告はさきほど目を通した。まずはご苦労。サクラはさすがの活躍だな』

「えへへ~。それほどでもないっすよ」

「おい、すぐ調子に乗んじゃねぇ」

 

 楠木に褒められでへっとしているサクラをフキが注意する。

 そして肝心の本題を楠木が話し始めた。

 

「錦木千束の討伐任務なのだが……。"たきなが失敗した"」

 

 その楠木の報告を聞いて、ワゴン車の中にあった時間が、一瞬止まった。そんな気がした。

 車内にあった空気感が、すべて濁った何かに支配されたような感覚に陥った。

 今、楠木が放ったその予想だにしない報告の言葉は、それだけそこにいた者達すべてに衝撃を与えたのは言うまでもない。

 

 ―――井ノ上たきなが、任務に失敗した。

 

 それが何を意味するのか。そこにどれだけの異質さが物語るのか。

 それはそこにいる者がすぐに理解しつつ、そして考えが追い付かないものであることを。

 一瞬止まった時間ののち、最初に口を開いたのはフキだった。

 

「……たきなが……失敗した?」

『ああ、言葉の通りだ。つい先ほど私の方に対象から電話があった。銃を持った女子高生に襲われたといった内容の電話でな。後日それについて調査を行うといったことを言っていたよ』

 

 その楠木の言葉に、エリカが慌てた様子で割って入った。

 

「た、たきなは無事なんですか!?」

『たきなは全く持って無事だ。本人は銃弾を撃ち込んだ相手がくたばったと思い込み撤退したからな。対象に関しては、実際はかろうじて無事だったみたいだが』

「そ、そう……ですか」

「……」

 

 報告は以上、と楠木は通話を切った。

 そしてタブレット端末には、つい先ほどたきなと千束のやり取りをドローンで録画していた映像が届く。

 通話が終わった後に、二度目の静寂がワゴン車の中に流れた。

 いまいち、この報告を聞いて何が起こっているのか、理解が追い付かない状況だった。

 そんな中、小さな声で漏れ出す笑い声が、ワゴン車の静寂を動かす。

 

「……クク、フフフククク……。あっはははははははは!!」

 

 耐え切れなく大声で笑い声を発したのは、サクラだった。

 サクラは笑いが抑えきれなく、お腹を押さえながら思っていることを口に出す。

 

「た、対象に銃弾を撃ち込んで。くたばったと思い込んで。て……撤退したら対象が無事で任務失敗したって。あ、あははははははは!!」

「サクラ……」

「さ、最強のファーストリコリスが、一般人相手にナメてかかりすぎでしょ! いやぁやっちまったな井ノ上たきな! これはもうファースト失格だわ!!」

 

 その笑い声にあまり良い感情を思っていないエリカをしり目に笑いが止まらないサクラ。

 そんな空気感をぶち壊す中で、フキは手で口を押えじっくりと何かを考えこんでいた。

 サクラが着目していることに対し、フキは全く別のことに着目していた。

 一見して、陣営のトップが任務でポカをやらかした。そのようにとらえられる今回のケース。

 だがフキは違う。問題なのは、たきなに強襲されても無事だった錦木千束に対して着目をした。

 

(……たきなはラジアータを――銃型のシオンを使用したはずだ。あれはリコリスでもまともに一発食らえば数日は動けなくなるほどの威力を持つフランジブル弾を放つことができる。サードリコリスに配備されている量産型とは威力が桁違いのはずだ。それを……"食らって無事で済んでいる"?)

「どしたんすかフキさ~ん。フキさんも笑いが抑えきれないんですkあぎゃーーー!!」

 

 能天気なサクラが絡んできたことに対し邪魔するなと言わんばかりにフキは模造刀で一発サクラを吹っ飛ばし黙らせる。

 サクラにはフキが何をそんなに思い詰めているのかを理解できていない様子だった。

 一方でエリカもフキとは同じことを思っていたようで、たきなの失態はとりあえずおいて、神妙な表情をしていた。

 

「……とりあえず録画映像を見てみるぞ」

 

 考え込んでいても事態は進まないため、フキは届いた録画映像を再生した。

 そこにはかなり遠目ではあるが、先ほどの二人のやり取りが写っていた。

 夜道を歩く千束にたきなが後ろから近づき。それに気づいた千束が声をかける。

 するとたきなが銃を構え襲い掛かる。

 

「おうおう一般市民相手に容赦ないっすねぇ~」

「サクラ少し黙ってろ」

 

 いい加減うるさくなってきたのかフキはサクラを睨みつけ一括。

 サクラはそろそろ黙らないと殺されるかもしれない。そう思って口を閉じた。

 そして銃弾を撃ち込んだたきな。その銃弾は外れて千束の顔の横を通過する。

 

「初っ端から銃弾を当てないで牽制なんて……。粛清任務なのにどうしてこんな脅すような真似したんすかねあいつ」

「牽制……。銃弾をわざと外し……。!?」

 

 映像に食いつくフキは、何かに気づいた様子でもう一度今の瞬間まで巻き戻した。

 そしてスワイプで二人の視点に寄ってもう一度映像を見る。それを何回も繰り返す。

 

「フキさ~ん。この場面なんか映ってんすか~?」

 

 サクラの呑気な声掛けなど耳にも入っていない様子で、フキはそこに写る信じられない光景に目を疑う。

 

「……サクラ。お前にはこれがたきながわざと銃弾を外して牽制したように見えてんのか?」

「え? そりゃ銃を当たってないなら外したとしか思えないでしょ。まさか、"錦木が飛んできた銃弾を避けてる"なんて言わないでしょ~?」

「……」

「……」

「……え?」

 

 この場では敢えて言わんとしていたことを、サクラは冗談交じりで口に出してしまった。

 その冗談に対し、フキとエリカは冗談だと思う余裕もなく、つい黙ってしまった。

 その二人の反応に、サクラもこの映像が映し出す異様な光景を、それが本当に起こったことだと認識するに至る。

 

「……え? だって、こんな至近距離で銃撃たれて……。え?」

「いや、これ避けてるよね?」

「……い、いやいやいやいや!! エリカまで何本気にして」

「避けてるんだよ」

「え!? フキさん何言って!!」

「錦木千束は、この距離で銃弾避けてるんだよ!!」

 

 フキが声を荒げてその現実を口に出したことで、そこにいる全員が認めざるを得なくなった。

 錦木千束は至近距離で飛んできた銃弾を避けている。

 この任務、対象は学校に入職予定のただの一般人の新人教師だと聞いている。

 仮にそうじゃないとしても、それが場数を踏んでいる訓練されたプロだったとしても。

 目の前で放たれた銃弾を簡単に避けることなど、不可能なのである。

 

「え? つまり錦木千束は……。蘭ね〇ちゃんだったってことd」

「エリカ! そこにある量産型の銃使って今すぐサクラで試せ! リコリスの反射神経ならワンチャン銃避けれるかもしれねぇ! やれ!!」

「ままままままま待ってくださいっすよ悪かったっすよ!! つかAIで強化されてるあたしの反射神経でも銃弾なんて避けれるわけ……。え!? こんな近いの!?」

 

 フキは珍しく動揺しているようで、サクラを使って実際に目の前で銃弾を撃たれたら避けれるのかどうかを試そうと言い始める始末。

 当然銃を撃つまではいかなくとも、エリカは映像に写っている距離までサクラの顔の近くに銃を近づける。

 距離にして人間一人分。人体に着弾するまでコンマ0何秒の世界である。

 

「無理でしょ! フェイク映像ですよこれ!」

「なんで報告に使われる映像がフェイク動画に編集されてるんだよ!! どこかに世界最強のハッカーでもいてDAにハッキングでもしてんのか!?」

「そんなやついたら見てみたいっすよ!!」

 

 フキにツッコミに対してサクラもツッコミで返す。

 この数時間でドローンに写った映像をハッキングでフェイクに作り替えられるような、フキが言うような世界最強のハッカーなど存在するはずもない。

 正真正銘のモノホンの映像である。

 動揺しまくっていたフキは、色々思うところはあるがいったん落ち着き。

 とりあえず動画の続きを見ることに。

 

「その後は。銃を奪おうとして腹部に銃を突きつけられて数発撃たれて気絶……か」

「たしかにこれなら銃弾を避けようがないよね」

「ふん。だがあれを4発も撃たれてこの後無事だったってのか? まさかこいつも体内にリコリスを……」

「リコリスは成人した者には投与できないはずだよ。それに何らかの方法で肉体を強化していたとしても、あれを4発も食らって無事なのは異様だよ」

「だとしたら純粋に。まさかアダムズギフテッドか?」

「都市伝説として実しやかに囁かれている。楽園の申し子、神の器たる新人類のこと?」

 

 フキとエリカは互いに動画を見て議論を述べ合う。……後ろにいるサクラは放置して。

 

「二人だけで何しゃべってんすか~。あたしも混ぜてくださいよ~」

「うるせぇてめえが話に入ってくると集中できない」

「ちぇ~」

「ふん……。これは?」

 

 フキはサクラを粗雑に扱い動画を見進める。

 千束が倒れてから数分後まで動画は続いている。

 フキはシークバーを先に進める。すると一人の人物がやってきて千束を引きずって画面外から姿を消した。

 その映像を見て、フキは目を見開いた。

 そしてサクラを無視してエリカにだけこの映像を見せ始めるフキ。

 

「エリカ。これ……みろよ」

「また何かあった?」

 

 そしてその映像に写るもう一人の姿を見て、二人は目を合わせる。

 そこに写っていたその人物に対し、二人は思う何かがあるようで。

 

「……なぜ、この人が錦木と?」

「……」

「……フキちゃん、もしかして私たちは」

 

 二人がそんな会話をしていると、楠木から再度電話が鳴った。

 

『動画は閲覧し終わったか?』

「教頭。この錦木千束という女は何者なのですか?」

『……それは私にもまだわからん。いや、確証がつかないといった方が正しいか』

「……私らをごまかそうとしてるわけではないですよね? 何かまだ……隠していることは?」

『私を疑うか? フキ』

「……いえ」

 

 楠木のその言葉に、フキは多少の疑問を抱くが疑うのをこらえる。

 錦木千束は現状ただの一般人。リコリスに害をなす可能性は限りなく0の人物。

 最もそれはつい数時間前の話。楠木の話では、今回の事態を受けあちらからもアクションがあるとのことだが。

 

『たきなが失敗した以上。次はお前に出てもらうことになるが。フキ』

「……ファーストリコリスの権限を使用。この任務、私は引き受けない」

『ほう……?』

 

 楠木の指令に対し、好戦的なフキはらしくもなく、ファーストリコリスの権限を使用してまで任務を拒否する。

 そのフキの言葉に、サクラは驚きを隠せず。

 

「えーーー! フキさんらしくないっすよーーー!!」

「……錦木千束は一般市民だ。私はリコリスとして、こいつを襲うことはできない」

「でも上が脅威に感じてるって」

「できないって言ってるんだ!」

 

 サクラにとって、こんなフキを見るのは初めてだった。

 フキは何を考えているのか。サクラには理解できずにいた。

 だが隣にいたエリカは、フキの心中を察しつつある。

 エリカも同じ思いでいる。だがエリカはセカンドリコリス、もしエリカにこの任務を受けるように指示を出されれば断れない。

 フキはエリカと同じ孤児院で育った幼馴染。エリカを盾に取られれば、フキの気持ちなど関係ない。

 

『なら、今回は……』

「くっ……」

『サクラ、この任務引き受けるか?』

 

 なんと任務の矛先は、エリカではなくサクラに向けられた。

 

「あたし!? あたしっすか!?」

 

 当然サクラは教頭に名指しで指名されたことに喜びをあらわにした。

 何せそれはあの憎き井ノ上たきなが失態を犯したことの尻ぬぐい。

 たきなが失敗した任務を自分がやり遂げれば、間違いなくたきなを引きずり落としファーストへの昇格が約束されるだろう。

 

「やります!! この乙女サクラ! 錦木千束を仕留めて御覧に入れます!!」

『それは心強いな。他のセカンド、サードを配置するかもお前にゆだねる。任務に必要なら声をかけておけ』

「あっはっはー! 一般人相手に他の連中の助けはいらないっすよ~」

(このバカ……)

 

相変わらず楽観的に楠木の言葉に対し答えるサクラ。

それを横目に呆れかえるフキ。

そして伝えることも伝え、楠木は通話を切った。

 

「さーて! あのクソたきなを引きずり下ろしてファーストに昇格になんて~。くぅ~、フキさんもうすぐあなたの隣に立てますよあたしは~」

「あー。無事成功すればな」

「またまた~。相手が再起不能になるのをきちんと確認するまであたしは容赦しないっすよ~」

 

 すっかりサクラは任務の成功を確信していた。

 こうなってはフキの助言など聞く耳は持たないだろう。

 となれば。フキはエリカの首元を掴みそばに寄せる。

 

「ぐえ! フキちゃんどうしたの?」

「エリカ。非情だが私はこう思っている。サクラは今回間違いなく任務はうまくいかない。ここ最近に成功続きで乗った調子も粉みじんに砕かれるだろう」

「……ならなおのことフキちゃんが行った方が」

「ま、失敗も経験に必要さ。それに、私はあの映像を最後まで見て、なおのこと今は出ることはできない。だが、サクラが無事で済まない可能性も無下にはできない。あんなのでも、私にとっては仲間だからな」

「……」

「だからだ。もしその場にあの人がいて、"ウォールナット"が、あいつを叩きのめしそうになったその時は。……お前が行け」

「……あの人は、私たちに危害を加えるかな?」

「こちらから手を出せば可能性はある。そしてサクラは……ウォールナットには絶対に勝てない」

「……フキちゃんは、どうしたいの?」

「今がその時じゃないだけだ。だがいずれ私が……ウォールナットの時代を終わらせる」

 

 フキとエリカが二人だけで色々しゃべっているのを見て、サクラは仲間外れにされているようでむくれていた。

 これは、フキとエリカにしかわからない話であり、サクラに話をしても伝わらないことなのである。

 

「さーてと。そろそろ帰りましょうよ。車出してくださ~い」

 

 サクラは車の座席に座り運転席に向かってそう指示を出す。

 その後、何かを思いついたようで運転席の人物に対しこう口にした。

 

「あ、そうだ。今回の作戦はあなたにも手伝ってもらおっかな♪ 大したことない任務だし危険はないことは保証しますよ~」

「……」

「てなわけで奴らを誘い出すおとりになってもらうっすよ。ミズキ姉さん☆」

 

 こうして乙女サクラに主導による錦木千束粛清任務が始まる。

 喫茶リコリコ陣営とDA学園のリコリスの第二ラウンドが。

 今、始まろうとしていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。