「このお祭り会場にテロリストが入り込んでるかもしれないですって?」
ゆるキャラフェスティバル運営スタッフルームにて。
このお祭り会場の中に、ゆるキャラに扮したテロリストが混じっている。
そんな確証どころか信憑性もない疑惑ではあるが、現にテロリストの代表格とも言える人物である真島が、ろぼっしーというゆるキャラに扮して会場内にいることがれっきとした事実なため、確証を得られない状態で動く しかなくなった千束とたきな。
千束は変装を解いて、自分の素性を明かしお祭り運営側にその旨を説明する。
「はい。まだ可能性の段階ではあるんですが、情報提供者の方がそう言ってまして……」
「情報提供者?」
そう運営の人に聞かれ、千束はその情報提供者を紹介する。
「情報提供者のろぼっしーくんです」
『よろしくろぼっしー!』
「……」
――ろぼっしーの正体が真島だと判明した後のこと。
「……このお祭り会場内に、すでにテロリストが紛れ込んでいる」
真島がゆるきゃらに扮してこの会場内にいる。
その要素だけで、真島に連なって同じことをやっている連中が他にもいる。
だがそれだけでは疑惑の域を出ない。可能性の範疇では、お祭りを中止になんてできるはずもない。
かといって派手に動こうものならば、仮にお祭り会場内にテロリストがいるとして、それを気づかれたことになりテロリストたちが動き出すきっかけになるかもしれない。
テロリストが会場内にいるという確証、そして目的はなにか。
全てにおいて情報、根拠が足りなさすぎる。動くにはやはり確証に繋がる明確なきっかけが必要なのである。
「真島くん。そのお祭り会場を襲うとされるテロリストはお前の部下か?」
『おいおい、そういった質問に対して今の俺が素直に答える義理がどこに……』
ガチャ……。
『質問に答えろ。さもないと……』
千束の質問に対しはぐらかそうとする真島に対し、たきなは容赦なく銃を向ける。……ゆるキャラの姿で。
確かに真島の言う通り。真島はこの場で素直に千束達に従う必要はない。なぜなら現時点で優勢なのは真島の方だから。
真島がそのテロリストたちと繋がってようが無関係だろうが、たきなが動けばテロリストが気づいて事を起こすからだ。
つまり解決に向かうことはけして無い。だがこの膠着状態も、長くは続かないだろう。
最悪。派手に動き、多少の犠牲を考えたとしても、動く必要は出てくるだろうか。
『怖い顔すんなよ。つかゆるキャラの姿だから怖くもなんともねぇし。そうだな、俺の要求に答えるなら質問に答えてやろう』
『……テロリストには譲歩しない』
真島の要求に対し、たきなはそれを突っぱねようとするが……。
「……わかった。要求を聞く」
『先生!!』
たきなの思念に反して、千束は真島の要求を呑むと口を開く。
その要求が、より悪い状況を引き起こすかもしれない。DAにとって不利益な物なる可能性が大いにある。
それも、確証も持てない可能性に対しての代償にしてはリスクは格段に大きいだろう。
だが縋る物が他に無いのも事実だ。まずは相手の土俵に乗るのも一興か。
『さすがは千束ちゃんだ。話がはえー』
「そういうのいいから、要求は?」
『あぁ。俺もお前らの捜査に加えろ』
その真島の要求に、千束とたきなは一瞬息をのんだ。
こいつは何を言っているのか。そして何を企んでいるのか。
「……どういうこと?」
『その要求を呑む前提として先に言っとくけどな。俺とその会場に紛れ込んでいるであろうテロリスト共は無関係だ』
――無関係。
真島のその言葉は、本心か、偽りか。
相手はDAに仇なすテロリストの代表格。言葉を鵜呑みにするわけにもいかない。
たきなが真島の言葉の真意を問いただす。
『……それは本当だろうな?』
『この期に及んで嘘をついてお前らをおちょくる必要があるか? 付け加えるなら俺はこの祭り会場を滅茶苦茶にしたいなんて思ってもいねぇ。というかそう言及もしていない』
『……』
『まだ一押し必要か? ならそうだな。俺らのネットワーク。つまり情報屋のところにこの祭りに関しての詳細について聞きに来た輩がいる。それなりの情報量を貰って祭りの詳細について情報を渡した。まぁ当然それだけではテロリストがこの祭りを襲撃する確証には至らないだろうが、可能性は上がったんじゃないか?』
真島は付け加えて、自分たちがこの祭りの襲撃を企てているというテロリストに情報を提供したという供述をする。
それを聞いて、千束は納得したような表情を浮かべ。
「……そうか」
そして真島の近くに寄り。
千束はそのまま真島を思いっきり突き倒して。
『え?』
たきなと二人で真島を踏みつけ始めた。
「なーにが俺たちは無関係だ! 元凶も元凶じゃねえか!!」
『結局お前が余計なことをしたせいだろ!!』
ゲシゲシゲシゲシ!!
先ほど真島は無関係だとは言ったが。情報を提供した時点で無関係なわけもなく。
余計なことをしなければこの祭り会場にテロリストなんてくるわけもなかったと。
そう千束とたきなは真島を責める。
『だーもう話はちゃんと最後まで聞けよ! 情報は提供した。それは俺らがそいつらの親玉を追ってるからなんだよ』
「なに?」
『そいつは身分を隠してはいたが、アンダーテイカーの離反者だ。当然俺らからすれば裏切者、裏切者は罰せよってな。そんな連中が俺らと繋がってる情報屋を頼ってきたんだ。あとは上手いことこの会場におびき寄せたそいつらの関係者をとっちめれば、裏にいる裏切者を一掃できる』
「なるほど。つまり捜査に加えろというのは……」
『そう。テロリストがこの会場にいる詳細を洗い、確証を掴む。そこまではお前らの肩を持つ。その代わり捕まえたテロリストの首を俺に差し出せ。っちゅうことだ』
真島は己の企みを、腹の内を全て千束とたきなに話したことだろう。
それを踏まえたうえで、千束とたきなの選択は……。
『つうことでよ。バランス取ろうぜ。互いの利益のためによぉ……』
――そして時間は戻り。
その後千束の判断で真島の要求を吞み、真島も含めて3人でテロリストの詳細について捜査を行うことに。
最後までたきなは猛反対をしていたが、揉めていても埒が明かないため千束が無理を強行。
千束の後ろでゆるキャラ2体が互いにガンを飛ばしあっており今も互いに協力する姿勢を見せないまま。
この狂犬二匹を引き連れて捜査を行うというのだから、千束は胃に穴が空きそうになっていた。
「もちろんお祭りはこのまま続けてください。2時間……。いえ、1時間で詳細を割り出して対策します。何もなかったならそれでよし、ですが犯人が浮上したならこちらで早々に対処します」
「……わかりました。ですが相手はすでにこの会場に入り込んでいて、どのゆるキャラの着ぐるみの中にいるかもわからない。本当に大丈夫なんですか?」
千束の言葉に対し、運営側は不安そうな口調でそう言葉を返す。
それに対し、千束はその場に見合ったセリフめいた口調で、運営側に対して言葉を返す。
「もちろんです。プロですから……」
らしいようなセリフを口にする千束。
本人が言いたいだけのような気がするが、気にしてはいけない。
そんな千束に対して、真島が茶々を入れる。
『それ悪役の台詞なんだよなぁ……』
「細かいことを気にする男はモテないんだぞ真島くん」
そう二人は、本来は敵同士であることなど感じさせないようなやり取りを交わす。
その二人の様子を後ろからジト目で見るたきな。
そして皮肉っぽく、たきなは千束に言う。
『……そのまま真島の方に鞍替してもいいんですよ? そうすれば心置きなくあなた方二人とも私の手で始末できるので』
「冗談でも言うなそういうこと」
冗談なのか。たきなの言い方は本気にしか聞こえないほどに念がこもっていたような気もするが。
千束としても本気のたきなとはやりあいたくないと考えているので、当然真島側にはつかない。
最も、真島とも戦わずに済むならば越したことはない。彼女としては、余計な戦いは避けたい。
戦わずに解決することが一番。その考えは昔から一貫しているのである。
『俺としても千束ちゃんがこっちに付くってなったとしたらお断りだ。千束ちゃんを叩き潰せなくなるからなぁ』
『あぁそうですか。まぁあなたが千束先生を叩き潰すことはないでしょう。その前に私がそいつの心臓をもらいますので』
「痛い痛い痛い痛い……」
真島とたきながどちらも自分が先に千束を倒すかで揉め始めた。
なんという人気者っぷりだろうか。右に左と取り合いになるほど千束という存在は強者を引き付ける魅力があるのだろうか。
最も千束自身はそんな取り合いをされても迷惑でしかない。ただでさえ戦うのが好きではないだけに、恐ろしい存在二人に狙われてさらに胃に穴が空きそうになる。
『てか余計な話してっと、テロリストが先に動き出すかもしんねぇぞ』
『はぁ? 何あなたが仕切ろうとしてるんですか? あなたはバカなんですか? こっちの言いなりになってもいいというから私はしぶしぶ、嫌々、あなたと協力することを了承したんですよ』
『言いなりになるなんていつ言ったよ。お前はバカなのか? そもっそも俺の存在に気づかなかったら今頃お前らテロリストの可能性にも気づかずのほほんと奉仕活動やってた分際だろうが。口のきき方に気をつけろよ狂犬』
『何を、そもそもあなた自分の部下の姿の特徴まんまのゆるキャラで堂々と入ってきて気づかれないとでも思ったんですか? もう少し隠そうとかする努力しようと思わなかったんですか? せっかくですしあなたに似合うゆるキャラ私が見繕ってあげましょうか? そうですねぇ、ブロッコリーくんとかどうですか? あなたの頭ブロッコリーみたいですもんねぇ』
『……おいてめぇ表出ろ。どちらか死ぬまでやんぞ』
『いいでしょう。私を殺せるものなら殺してみろ。私には神ですら殺せない
と、真島とたきながひとたび口を開けばもう喧嘩しかしない。互いにゆるキャラの姿のままだから傍から見れば緊迫感が半減しているのがせめてもの救いか。
当然これでは捜査どころではない。喧嘩しているうちに状況は悪化していくし、事が起こってしまっても遅い。
千束はなんとか、せめて言い争いはやめさせようと二人の間に割って入るが。
「あのさ……。もう時間も惜しいからせめて喧嘩やめよ?」
だが当然、そんな声掛け一つで止まるはずもなく。
『だめだ。いったんどっちが上かはっきりさせねぇとなぁ……』
『テロリスト風情が。その口、力づくで黙らせて……』
と、全く止まらない二人に対し、等々千束は痺れを切らし。
「いい加減にしてよ!!」
『『!?』』
千束が声を荒げると、二人のやり取りもさすがに止まる。
そして千束は言葉を続ける。この状況で、3人がやらねばならないことを口にする。
「いいかな!? この場で私たちが協力することが問題じゃない。私たち3人が揃って何もできなかった方が問題でしょうが!!」
『うっ……』
『……』
その千束の真に迫る言葉に、一度二人が冷静になる。
そう、ここにいる三人は、尻魍魎が数多くのさばるこの街のつわものの中でも、単騎戦力としてはトップクラスの三人。
それぞれが一人でテロ集団一つを壊滅できるほどの戦力を有する怪物と比喩される三人である。
その三人がそろい踏みでテロリストに好き放題されたともなれば、他の連中に何を言われるかわかったもんじゃない。
それぞれの身内には指を指されるだろうし、笑われるだろう。しばらく居酒屋で酒の肴にされること請け合いだろう。
「だからさ。三人で慣れあおうなんて言わないさ。だがせめて、それぞれの面目のために。ここは手を組まないかな?」
『……』『……』
もう互いに手を取り合う理由は、怪物と評されるそれぞれの面目しかないだろう。
三人揃えば組織1つどころか街一つ制圧できるほどのドリームチーム。もうその威光でしか動けないだろう。
だが今はそれだけで十分だろう。酸いも甘いも無い。それぞれの利益と合理性と、誇りを胸に協力するしかないのだ。
「……何も返答がないということはYESと捉えていいね? あと一応この会場での指揮権は私にゆだねられているので、私が捜査を仕切りますが、かまわないですね?」
『……』『……』
「かまわんね!?」
『『はーい』』
「全くもう……」
千束の念押しの確認に、真島とたきなは力ない返事で返す。
なんともくだらないことに時間を使ってしまったことだろう。
だが事は一刻を争うだろう。千束が捜査についてそれぞれの役割を割り当てることに。
「真島くん。お前のテロリストとしての経験を元に、犯人がゆるキャラの着ぐるみを奪取したと思われる場所、そしてその手口について推定してほしい」
『ほ~う。俺の能力を買ってのことか?』
「あぁ。街の監視カメラを全て調べていては時間がかかる。ならば場所を絞れば、例えばここら一体周辺のどこらへんとかに目星がつけば、そこだけを調べればいいからすぐに犯人が特定できるかもしれない」
千束が真島に命じたのは、経験則による犯人の行動の推理、推定である。
まずゆるキャラの着ぐるみが運ばれたのが祭り当日。祭りが始まる数時間前。
それを前提として、真島にその詳細を目にしてもらい、犯人の行動を推理してもらうことに。
『……まずそうだな。テロリストが俺と同じく自作のゆるキャラを使って会場に勝手に入ったって線はねぇのか?』
「自作だったんかいそれ。てかリストにもないゆるキャラ勝手に会場に入れたんかい」
真島に言われた通り、千束は運営スタッフと会場に潜入している数人のリコリスに指示を出し、リスト外のゆるキャラが他にいないかを調べてもらうことに。
数分後、どうやら自作のゆるキャラを使って勝手に祭り会場に入ったのは真島一人だけとわかった。
『まぁそれだけ自作のゆるキャラが多かったら目立つもんなぁ。逆に一体くらいならバレずに会場に居続けられるってわけよ』
「まぁバレたんだけどね」
地惚れる真島に対して千束がツッコミを入れるがそれは華麗にスルーされる。
次に、テロリストがゆるキャラの着ぐるみを奪取して祭り会場に潜入するとするならば。
『……ゆるキャラの中に入るやつが使う控室の場所は?』
『会場内の建物に男性用と女性用を分けて使ってましたよ。ですがゆるキャラの数が多いので、一部の参加者は少し遠くにある休館している体育館を使ってもらっているはずです』
真島の質問に今度はたきなが詳細を説明。
ようやく三人協力した捜査っぽくなってきたではないか。
千束も少しばかり安心しているようであった。
『……会場近くはラジアータの見識に引っかかる。武器類やそれに近しいものは持ち込めない。だがゆるキャラの中に入ったうえで会場に入れば、参加者として危険物の有無はパスできる。まぁそんな発想でテロリストが会場に入り込むなんてまず考えに至らねぇからな』
『会場内のリコリスは別ですけどね。言うて暴徒鎮圧用の武器ですし』
『とするならば、会場から離れたところからゆるキャラの着ぐるみを着てそのまま会場入りをした。つまりテロリストが着ぐるみを入手した場所は、この休館している体育館だな』
そう真島は推理した。
その体育館周辺の監視カメラに絞って映像を見れば、テロリストの動向を観測できる可能性がある。
だがもし監視カメラに何も映っていなければ操作は振り出し。それでテロリストなんてはなっからいませんでしたで済むなら平和的に解決するが。
それでなお、真島が言ったように、テロリストがゆるキャラの姿で会場内にいたとするならば。もう証拠も確証も掴む手段はなくなってしまう。
「もうその線にかけよう」
『この期に及んでまだこいつが適当なことを言っている可能性が』
「たきなさんまだそんなことを。いくら真島くんでもこの状況で出まかせ言うかい?」
『あなたはテロリストの言うことを信じすぎなんですよ。この素人が……』
「あぁ素人で悪かったね。どうせ私はかつて街の平和ために出しゃばっただけの所詮民間人さ。まぁ最もその民間人ごときが10年前に他の脅威から街を守り切ったものさ。我ながらよくやったよ」
と、今度は千束とたきなが言い争い。
もうそんなことをしている時間もないというのに。
『そうですね。もし真島の推理が外れたり、それがでたらめだった場合。指切り落としてもらいましょう』
『てめぇはヤクザか。エンコ詰めろってか?』
たきなはそう真島に対して凄んで見せた。
それに対して真島は特に動じるそぶりも見せずに涼しい顔でツッコミ。
まぁゆるキャラの中はぶっちゃけ涼しくないのだが。正直脱ぎたくてしょうがないらしいが脱ぐと他のリコリスがやってくるため脱げずにいる。
『俺にだって意地があんだよ。いいからとっとと映像でもカメラでも調べろ。それともロボ太にハッキングしてもらってこっちで映像提供すっか? そうなったらもうお前ら足手まといだな』
「む……」『ふん……』
ということで、真島の言う通り体育館付近の映像を確認することに。すると……。
「……真島くん。残念なお知らせだ」
『エンコか?』
「……それらしき連中がカメラにはっきりと移ってたわ」
なんと、真島の推理は見事に的中してしまった。
これではただのDAの協力者みたいになってしまっているではないか。
『あなた自身が自作自演で仕込んでるとかじゃなきゃいいんですけどねぇ~』
「たきなさん……」
真島のお手柄に対してたきなは素直に認められないのか、この状況でも嫌味全開だった。
そんなたきなの態度に千束は呆れつつ。敵ではあるが真島の行動には素直に賞賛する。
『ってことで俺の役割は終わりだ。テロリストの対処はお前らでやれや。俺はその後にいいとこだけ取らせてもらう』
『調子に乗って……』
真島の尊大な言い方に対してたきなはどうしても真島を認められず。
その後は二人の役どころだろう。状況は次に移る。
だが、その前に千束は、真島にどうしても確認したかったことがある。
「……真島くん。わたしゃ一つだけど~うしても気になってることがあってさ」
『なんだ?』
真島の問いかけに対し、千束は言葉を続ける。
「真島くんがゆるキャラに扮して会場に入ってテロリストの動向を探るってやり方。遠回りすぎるというか、私たちに有利すぎるのがどうしても気になるのよ」
『というと?』
「お前は裏切者を探るために、会場内のテロリストを狙っているって言ったね。例えばそのテロリストが事を起こした後に、自分の仲間を引き連れてテロリストを襲撃すれば、その連中と君らとリコリスの三つ巴。つまり厄介な連中を二つ、自分たちが優勢な状態で手にかけることもできたはずだ。この会場には多くの一般客、子供も大勢いる。どうしてその状況を作らなかった?」
そう、真島が今回ゆるキャラに扮して会場に潜入するというやり方は、真島側としては非常に遠回りなのである。
そして結果的に、自分が行った行為で、千束とたきなにテロリストの手段についての可能性に気づかせてしまっている。
これはまるで、千束とたきなが有利になるような手段を、真島がわざわざ取ったことになるのだ。
それについての真意を、千束は聞いておきたかったのである。
『……そうだな。まず第一に、そんな卑怯な手を使ってリコリス共や千束ちゃんを負かしても意味がねぇんだわ。俺らこの国の下層の民、西側の力が東側が作り出した力を真っ向から叩きのめさなきゃならねぇ。
「……」
『まぁそれともう一つ。これはうちのボスからの命令でもあるし、俺もそれに対して賛同しちまったことなんだが。その……なんだ。子供がテロに巻き込まれて悲しむってのが気に食わねぇんだわ』
「……真島くん」
その真島の言葉は、果たして真意だっただろうか。
だがその口から発せられたそれに、千束は少なくとも何かを感じただろう。
どこかに嘘があるかもしれない、適当さも含まれているかもしれない。
だが彼にもこちらの正義と相容れない個人の正義を振るう信念、そして意地もあり、今の世の中への想いもあるのだろう。
と、そんな千束に対してたきなが三度背中を蹴った。
バシン!
「痛いってそれやめなさい! リコリコのOPか!!」
『何を絆されそうになってるんですか。テロリストの言葉に耳を貸すな。そいつは悪だ。どうしようもない悪だ。この世の平和を乱す悪意に満ちた存在。私たちの敵なんですよ』
そう冷徹に真島に言い放つたきな。
あくまでたきなは己の絶対的な正義に従う。テロリストの言葉に耳を貸さない。
悪の言葉に価値はない。悪は所詮悪でしかない。
故に悪は正々堂々であるわけもないし、子供を大切に思っているわけもない。
だからこそ悪は滅する。絶対的な力で秩序を乱すものを叩き潰す、それこそが正義だとたきなは信じている。
そのたきなの姿勢に、真島は小さく笑い答えた。
『……なんだわかってんじゃねぇか。千束ちゃん今の-500点な』
「……はは、私もたるんでるな。すっかり騙されるところだった。やっぱりお前はぶちのめすよ、今度改めて……ね」
こうしてそれぞれの立場も改めて理解しあったところで。
会場から離れた体育館。そこにテロリストの動きに対しての重要なヒントがある。
ならば今すぐにでも向かい、調査する必要がある。
「――体育館には私が行く」
次に動くのは錦木千束。
果たして祭り会場に潜入しているテロリストの詳細は掴めるのだろうか。
そしてこのお祭りは無事に終わるのか、最強の三人、そしてお祭りにいる者達の運命は……。