早朝、外で鳥が鳴いている。
ゆっくりと瞼を開けたら、そこは見知らぬ場所。
そしてベッドに横たわる一人の女。
「う、う~ん。あったまいたっ……」
起きたらなにやら頭痛がする。
そしてほんのりと思い出す。千束は昨日の晩、仲間に忘年会に誘われ参加していたことを。
このシーズンは忘年会が盛んに行われており、千束も今年一年いろんな大変なことを思い返しながら、忘年会で羽目を外す。
ただ彼女はあまり酒が強くはない方である。同僚にはものすごい飲兵衛、友人には飲むと笑い上戸になる者がいる。
その二人に比べても彼女は酒に強いとは言えず、だがその場のノリに合わせる性格も相まって、弱いのに飲むときは飲む。
結果として今、知らないところで寝てしまっており、起きて現状を理解するに至る。
「ここは……。どこだ? というかなぜ私はこんなところに」
周りを見渡すと、どうやら都内にある休憩ができる場所のようである。
酔った勢いで一人でここに入ったのか。にしては他に飲んでいた仲間がいない。
そして千束はあることに気が付いた。自分が寝ている横に、予想だにしない人物が一緒に横になっていることに。
「う~ん……。うるさいし酒臭い……」
「……」
そこにいた人物は、井ノ上たきなであった。
――――――その数時間後、場所は変わり喫茶リコリコでのこと。
先日千束と一緒に忘年会をしていた二人、ミズキとクルミは喫茶店でなにやらゲームに興じていた。
内容はポーカーのようである。
「よっしゃスリーカード!! 今度こそもらうわよ!!」
「はいフルハウス。おごり一品追加で」
「なんでよぉぉぉ!!」
どうやら勝負して負けたら一品ずつ店内のメニューをおごるといった勝負のようである。
すでにミズキはクルミに5回も負けており、クルミのテーブルには喫茶店自慢の和風スイーツが目白押しである。
「てかあんた5回も連続してスリーペア以上の組み合わせって絶対にイカサマしてるでしょ!?」
「ふふん、それはどうかな?」
「怪しい!!」
「少なくとも僕はあのチートじみた眼を持ったバカとことあるごとに張り合ってるんだぞ。小ネタの一つや二つ仕込む技術がなくてどうやってあいつと真っ当にやりあえると?」
どうやら真っ当に勝負をしているミズキに対し、クルミは何かしらの技術を使ってポーカーで勝っているようであった。
そして勝者の席に並んだ品の数々を見てミズキが厭味交じりでクルミに言う。
「てかあんたそれ食べすぎじゃないの!? 太るわよそんなに食べたら!!」
「僕は他人のおごりなら永久になんでも食える自信がある。食ったら食っただけ動けばエネルギーは出ていく。というか少しくらい栄養がほしいくらいだよ」
「くっそ自身の体系を気にしなくていい系かつ男関係の問題に興味がない女が羨ましい……」
「お前は高望みしすぎなんだよ雑兵のくせに」
「雑兵言うな!!」
そんなやり取りを交わしていると、負けまくっているミズキを見かねたのか店長のミカが一品をサービスする。
「まあまあそんなカリカリせず、紅茶を一杯サービス」
「あーんそういう気づかいできる男って素敵~! 店長今度ご一緒に食事でもどうです~?」
「HAHAHA! ありがたい申し出だが年末は忙しいんだ」
そうミカはミズキの誘いにやんわりと断る。
そんな和気あいあいとした空気の喫茶店に。
駆け込むように一人の少女が来店したことにより、一つの事件の匂いが漂う。
カランコロン♪
「おっ、いらっしゃ~いって……」
「はぁ……。ぜぇ……。た、助けてください……」
ミカの応対に対し、いきなり疲れ果てた表情をし、息絶え絶えにそう口にしたのはたきなであった。
最強の怪物とも評される彼女がこんなにも困憊しているとは、いったい何があったというのか。
「狂犬ちゃん? いったいどうしたそんなに疲れ果てて……」
「ク、クルミさん。元はといえばあなた方が……」
心配をするクルミに対し、少し責めたように口を開くたきなの傍に。
なにやら慌ただしくたきなにすがりついている女が一人。
「だぎなざぁ~ん! 見捨てないでぇ~!!」
「えーい! 離れろこいつ!! あ、朝からこんな感じなんですよ!! あなた方が昨日私にこいつを押し付けたから!!」
縋りついて情けない叫びをあげているのは千束であった。
そんな千束をげしげし蹴りつけて引きはがそうとするたきな。
そしてこの状況を引き起こした原因は、クルミたちにあるとのことだ。
――――――それは先日の夜23時を周ったあたりに遡る。
「ふにゃ~。もう食べられないよぉ~」
「なんだよ千束はもうつぶれてしまったぞあっはっは~」
「にゃさけにゃいわね~。こっからあと3軒は回る予定だってのに~」
「酒弱いくせに下手に飲むからだよあっはっは~」
と、冒頭でも説明したように酒に弱い千束は無理に飲みすぎて意気消沈。
次の店を回る気力が残っていない状態。
そんな酔っ払い二人と意気消沈の千束の前に、一人わなわなと怒りに震えている少女が一人。
「クルミさんとミズキ先生が二人して手に負えない大変なことが起こったって連絡を受けて来てみれば、これはなんですか……?」
こんな夜中に、大変なことになったから来てほしいとお願いされ呼び出されたらこんな状態だったことに憤りを感じている少女は、たきなであった。
そしてたきなが言う"これ"とは、当然千束のことである。
「だからさぁ。僕たちはこれから3次会するし、潰れたこいつを一人街中に置き去りにするのもどうかと思って介抱してくれる人材が必要だなとそれは大変だなぁって思ってなぁあっはっは~」
「たきな~。千束を安全に家まで送り届けてあげて~ん?」
と、酔っ払い二人はあまりにも軽い気持ちでたきなに千束の介抱を依頼する。
当然たきなは納得がいかず。
「な・ん・で! 私が! 酔いつぶれたこいつの介抱を!?」
「「こいつ(笑)」」
「こいつなら街中で一人放り捨てても平気でしょ!? かつてこの街で敵なしと言われた人なんでしょ!?」
確かに千束の実力はファーストリコリスでさえ簡単には勝てないほどの戦闘力を有した一般人(自称)である。
酔いつぶれているとはいえその辺の男が数人で襲い掛かったところで酔いつぶれたまま一網打尽にできそうな気はする。
当然酔っ払い二人はそんなことは重々承知のはず。だがそれでもたきなに千束の介抱をお願いするには理由があるのだ。
「まあまあそう言わずにさ、おもしろそ……。狂犬ちゃんのようなファーストが居てくれたら千束も無事に家まで帰れそうでしょ? あっはっは~」
「今お前面白そうって言いそうになったやろ?」
「そうよそうよ! それにたきななら千束となんて、間違いは起きないと思うから~ん」
「「あはははははははは!!(酔っ払い二人による大爆笑の合唱)」」
(この酔っ払い二人、今すぐ街の治安のためとでも言って殺してやろうかな……)
なんという酔いによるノリと勢いの理不尽なのだろうか。
たきなは割と本心から断ろうとするのだが、酔っ払い二人はそのまま夜の街へと消えていく。
そこに残ったのは嫌がる女子高生とおいて行かれた飲み潰れ女(現27歳)。
このまま蹴り飛ばして放置でもしようか。でも、万が一何かあったら。そんなことがたきなの脳裏によぎる(万が一などあるはずがないのだが)。
「……」
そして少し考えて、しぶしぶたきなは千束を抱えて家まで送ることに。
といっても街中から千束の住むアパートまではかなり距離がある。当然歩いて帰れば着くのは朝になるだろう。
ならばタクシーでも拾おうか。だが女子高生がこんな夜中に酔いつぶれた成人女性を抱えている絵面は正直オープンにできるものではない。
「うわ~ん! 教頭め、私にまたたいへんなしごとおしつけたぞ~!!」
「あーもううるさい少し静かにしろこのクソ教師!!」
介抱していた千束が寝ぼけているのか街中で教頭の愚痴を叫びだす。
それに耐えかねたたきなはおもっくそ銃を千束にぶっ放すが、なぜか飲み潰れていても超至近距離で銃弾を避ける千束。
「こんな状態でも弾当たらないのかこいつ……」
「むにゃむにゃ。たきなさ~ん、そんな銃弾じゃぁ私は仕留めきれないっぞ~」
「あぁぁぁぁぁ! 腹立つこいつーーーーー!!」
本当は起きているんじゃないかと言わんばかりのこの状況でたきなを煽るには最も適した寝言を言い放つ千束。
だがその後すぐにいびきをかいて眠り始めた。当然それでも銃弾は命中しなかった。
たきなははらわた煮えくり返りながら千束を抱えて街中をさまよう。
次第に疲れてきたのか、目の前の「休憩できます」と書かれた建物に目が行き、そこに入ることに。
「料金はこいつの財布から抜いて。と、とにかく疲れたからここに投げ捨てて帰ろう……」
そうたきなは部屋を一室借りて、千束をベッドに放り投げる。
その直後、ドッと疲れが来たのか。たきなはそのまま千束の横に身を投げる。
酔っ払い二人組に呼び出されてから2時間ほど。時刻も深夜1時を過ぎたあたり。
つまり2時間もの間、たきなは時たま寝言でうるさい千束を介抱しながら街を歩いていたのである。
「つ、疲れた……」
そして気が付いたら、たきなは寝てしまっていたというわけである。
――――――そして翌日、喫茶リコリコでの今に至る。
千束はたきなに縋りついている。
どうして縋りついているのか。それは千束の思い込みによるもの。
二次会で酔いつぶれた→気が付いたら朝だった→起きたらなにやらそういった場所だった→横にたきなが寝ていた。
つまりこれは、成人女性が未成年の女子高生をそういった場所に連れ込んで朝を迎えてしまった。という、まあぶっちゃけた話事案である。
まあそこでたきなが誤解であると説明すればよかったのだが。
たきな的には貧乏くじを引かされ千束に振り回された腹いせもあったのか、もしくはこういったことが今後千束がこうならないように反省を促す意味もあったのか。
それとも、そういう意味合いを感じさせることなど想定もしていなかったのかはわからないが、たきなの第一声がこれであった。
『……あなた、よくも私をあんな目に合わせましたね(意味深)』
といったことを言ってしまったものだから、もうこれはやってしまったのかと千束が誤解し許しを得ようと必死になった結果。
もううんざりだと逃げようとしたたきなにこれでもかと無様にも縋りつき一時も離れようとしなかったため。
昨日の文句の一つでも言ってやらなければ気が済まなかったこともあり、酔っ払い二人組が日中にいるであろう喫茶リコリコに足を運んだというわけ。
「というわけで、こいつをなんとかしてくださいよ……」
というたきなの苦情をよそに。
事情を全て聞いたクルミとミズキは少し頭を抱えて。
「おいミズキ。お前だぞあの二人なら間違いは起こらないから大丈夫だって言ったの」
「だ、だってあの二人仲悪いから、間違ってもそんな風にはならないって思ったのよ!」
「バカお前。普段は喧嘩しているような二人が気の迷いでそういうことを起こすってパターンよくあるだろ? むしろ有権者はな、そういうの求めがちなんだよわかるか?」
と、クルミとミズキは先ほどのたきなの話を聞いてどう曲解したのかはわからないが。
千束とたきなを二人で夜の街中で放置したら間違いが起こってしまったあらまどうしましょう状態になっているのであった。
その二人の誤解を招くような会話を聞いて当然たきなはすぐにでも訂正する。
「あのすいません。ちゃんと話を聞いてください。私が朝目が覚めたこの女に文句を言ったのは、あんな酔いつぶれた状態で人の気も知らずに私を夜中散々振り回したことに対して……」
「おいおいおいずいぶんまた激しいことやったんだな」
「まあ愛のカタチって、人それぞれよn」
バンバンバン!!
たきなが必死に説明しても自分たちで話を盛り上げようとする二人に等々キレたのか。
たきなは二人に対し銃弾を3発も打ち込む。
それに対しクルミとミズキはすくんでいる。
「話をちゃんと聞けって言うとるやろおん?」
「「すいませんきちんと聞きますなので怒らないでください」」
雑兵のミズキは元より、セカンドリコリスを軽く凌駕する実力を有するクルミでさえ、たきながキレると素直に謝る始末。
とまあ半分はたきなを揶揄う目的があったのも事実。間違いが起こっていると思い込んでいるのは千束だけである。
「おじさ~ん! 私は未成年をホテルに連れ込んで手を出すようなダメな大人に育ってしまったよオヨヨヨヨ!!」
「千束! 現実と向き合うんだ。私は何があってもお前の味方だ!! あの世のお前の父もきっとお前の味方だ!! 使命を果たせとエールを送っているぞオヨヨヨヨ!!」
たきなたちが揉めている他所で千束とミカはオヨヨヨ言いながら抱き合っていた。
これは早々と誤解を解かなければ、千束は納得がいかない限りたきなにくっついて離れないだろう。
「あのですね先生。私とあなたは別に間違いなんておこって……」
そうたきなが千束の誤解を解こうとしたその時であった。
クルミがたきなの背中を叩いて、少し待つんだと言わんとする表情をしてたきなに耳打ちをする。
「なんですかクルミさん……」
「まぁまぁ狂犬ちゃん少し待つんだ。これはこれで面白い見世物だと思わないか?」
「ほ~う。私が困っているのがそんなに面白いと?」
バゴッ!!
そうたきなは心外な面持ちで、クルミに対し思い切り蹴りを入れる。
それをクルミは模造刀でなんとか防ぎ、たきなに落ち着くように説得をする。
「そうじゃないそうじゃない!! あの普段調子に乗っている千束があそこまで狼狽しているんだぞ! 珍しいと思わないかってことだよ!?」
クルミの慌てたようなその言葉を聞いて、たきなは確かにと少し納得をする。
「……まあ確かに普段から上がり調子なあの人があそこまで困っているのは」
「見ていてスカッとするもんだろう? だからもう少しだけ困らせてやるのはどうだってことだよ」
「……なるほど」
このままもう少しだけ千束をからかって困らせて痛い目を見てもらう。それこそ反省を促すにはいい機会であるとクルミは説く。
なのでたきなはクルミの案に乗り、千束の誤解を解くのではなく勘違いを助長するような発言をすることに。
「あーもう、そりゃあひどいことされましたよ。無理やり襲われて、あーんなことやこーんなことをされましたよ」
「ガーン! 私寝ているたきなさんにあーんなことやこーんなことしちゃったの!?」
「はい。そりゃあもうさかなを一本釣りするようなひどいことをされましたよ」
「さかなー!?」
その行為の表現は正直よくわからないが、たきなが思いつくひどい目にあった行為というのは、きっとそのようなものなのだろう。
それを聞いて、クルミは独自に行われた出来事を創作し始めた。
「なるほど。つまりこういう感じだな!!」
――――――昨日の晩、二人にはこんなことが起こっていたのだ(謎の回想)。
『先生っ! 私とあなたは教師と生徒の関係です。や、やめてください!』
『ふふふ。普段はそうかもしれない。だが今は……。私が釣り人、そして君は、川で泳ぐ一番大きな鮭だ』
それはまさしく禁断の関係である。
決して超えてはならない一線。教師と生徒ならば慎まなければならないその関係性。
だが誰も見ていない今宵の月明かりの下では。まさにそこにいる教師は、餌を仕込み泳ぐ魚を狙うフィッシャー。
そして生徒は、今にも餌に食らいつこうとする得物でしかないのだ。
餌に食らいつき、竿にが引いたその時が、全てが始まる合図なのだ。
『ほら、たきなさん。素直に答えると良い。フィッシュオーアビーフ?(めっちゃいい発音で)』
『ビ、ビーフ……』
『ノンノンノン……。今の君は調理される寸前の牛肉じゃあないんだ。ただ一方的にされるなんてつまらないだろう? 自由に泳ぎ、欲望のままそこにある餌に食らいつき、そして抵抗むなしく釣られ、捌かれる。それが望みなんだろ?(イケボ)』
『せ、先生……』
教師は生徒に詰め寄る。
さあ釣り人に釣られる魚になれよ。今こそ自由から解き放たれ、人の手で頂かれる存在になれよと。
その教師の推しに、生徒は少しずつ押される。そしてその心は、挫かれる。
『もう一度質問だ。いい子なら素直に答えるんだぞ。フィッシュ~オ~ア~ビ~フ(さらにめっちゃいい発音)』
『フィ……』
『フィ?』
『フィッシュ……で(顔を赤らめながら)』
『よっしゃ一本釣りじゃーーーーい!!』
――――――回想終わり。
「てな感じで、昨日の夜狂犬ちゃんは千束に一本釣りをされて好きなように調理されたというわけだなオヨヨヨ……」
「そ、そんなー!ばかなー!!」
「「さかなー(酔っ払いダメ大人二人による悪ノリ)」」
「………」
クルミのよくわからない回想を聞いて千束は自分はなんてことをたきなにしてしまったのかと頭を抱える。
というかシチュエーションが意味わからなすぎて、それを聞いてまともに信じ込んでいる千束に対したきなはげんなりしていた。
だが千束に反省を促すには、それに乗っかるしかないたきな。
「……ま、まぁそんなことがあったようなー。さ、さかなー」
「井ノ上たきなは、井ノ上さかなさんだったのか!?」
「んなわけあるかいなボケ!」
たきなのさかな返しに対し余計わけのわからないことを口にする千束にたきなの関西弁ツッコミが炸裂する。
だがこれで割と反省はしただろうか。正直自分としても恥ずかしかったためたきなは改めて誤解を解こうとする。
「先生、先生! あなたは昨晩忘年会で酔いつぶれて行動不能になったところ、そこにいる酔っ払いダメ大人二人に無理やり頼まれて私が介抱しただけで事案なんて一切起こってないですよ」
「「酔っ払いダメ大人でーす(二人して開き直り)」」
たきなが改めて千束にそう説明。
千束はそれを聞いて慌てたように質問で返す。
「え!? じゃあなんであんなところに二人でいたの!?」
「あんたに振り回されて私も疲れたからやむを得ずにあそこに泊まっただけですよ」
「なっ!? ってことはなんだよ、たきなさん私をだましたのか!?」
「あんたいい加減にせえよマジで」
「あうぇうぇうぇうぇ!!」
そもそも悪いのは下手に酒に飲まれた千束の方で、たきなは巻き込まれただけな上に介抱をするという使命を全うしたためなんも悪くないのである。
たきなは千束の両ほっぺを思いっきりつねって伸ばす。
最終的に千束はたきなに迷惑こそかけたが、事案になるようなことはしていないとわかり安堵する。
「よ、よかった。でもその……。ごめんなさい」
「別にいいですよ。あなたに振り回せているのはいつものことです。まあそれよりも、あまり私の前で情けない姿を見せないでください……ね」
そうたきなは千束に詰め寄り、千束に腕を思いっきり掴む。
そして忠告というがごとく、敵対心をむき出しに千束にささやく。
「私とあなたは敵同士。いずれ私は全力であなたを排除する。だからそんな弱弱しい姿を晒さないでください……。私にとって、最強の得物であり続けるように」
「うっ……。い、いい加減味方と認識してくださいよ……」
「――だって、あなたは私の、私の……」
そう何かを言いかけて、そして口にする必要はないと判断し喫茶店の扉を開ける。
「ダメ大人二人、次は自分たちで解決してくださいね」
「「はーい(ダメ大人二人のぐだぐだな返事)」」
去り際にたきなにそう釘を刺され、適当に返事をするクルミとミズキダメ大人二人。
そしてたきなが去った後。千束は改めて緊張がほぐれたのか。
紅茶を一杯飲んで落ち着く。
「……いつになったら、たきなさんは私に心を開くのか」
そう割と本気で困っているようでそうつぶやくと。
目の前にいるミカが、千束にフォローを入れるようにそう声をかけた。
「ふっ。あの子はあの子なりにお前を評価しているさ」
「そうかなぁ~?」
「だからもし、その決着の時とやらが来たら。全力で相手をしてやればいい。救世主さん」
そうミカはふっと笑みをこぼし、親代わりとして千束の背中を押すのであった。