リコリス・リコイル~3年D組の千束先生   作:トッシー00

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短編です。


第30話:クイズ$中原ミズキ

「やっぱり、人望が大事なんだと思うのよねぇ……」

「ん~~~?」

 

 某所焼き肉店にて。

 仕事終わりにミズキが話を聞いてほしいということで、千束と楠木を連れ焼き肉を食べに来た3人。

 聞いてほしいという話の内容は、まぁ言わずもがな決まって男ができない話やどうすれば結婚できるかといった他愛もない話である。

 その話の中で、ミズキの口から突然出てきた人望というワード。これを聞いて千束は首をかしげる。

 

「私がこの先いい男と結婚したとして、生徒たちから「先生おめでと~!」って祝ってもらうくらいの人望って、大切だなって思ったのよ」

「そもそも結婚に至るにも遠い道のりだというのにさらにその先の野望まで口にし始めたよこの人……」

 

 結婚することなんてとても大変なことだというのに、ミズキはいつも運が悪いだの周りのいい男が自分を見逃しているだの基本的には人のせいにしている。

 そんなぐちぐちと世間の悪口ばかりを言って大した行動もしないから結婚などほど程遠い話だというのに、そんな自分に人望がないのはなぜかとか言い始めている。

 ミズキの愚痴に嫌気をさしている千束を横に、楠木は冷静にその話題に割って入る。

 

「確かに異性と添い遂げるには己を磨き魅力を高めることが必要。人望を集める。あらゆることに挑みそして成功体験を積み重ねることは女性としての磨きをかけるということ。結婚するかどうかは置いといて、今の自分を見つめなおし考えることはよいことです」

「この人そこまで深く考えてないと思いますが教頭……」

 

 楠木は小さなことでも大きなこととしてとらえる癖があり、ミズキがただうわごとのように言った愚痴でさえ、己が成長にどう繋がるかを必死に考えているのだと思っているらしい。

 千束はそんな楠木にツッコミを入れつつ、話は人望について戻し。

 千束はミズキに問う。

 

「人望って。具体的には?」

「例えば生徒に慕われるようなことをするとか」

「まぁ確かに学校の養護教諭としての仕事はこなしているけど。DAの構成員としては基本雑用要因だし、自分が危険だと思ったら生徒を置いてすぐ逃げる(非戦闘員にミズキは戦力にならないためむしろ逃げるのが正解だが)。今の状態ではリコリスにとってミズキ先生はただのパシリとしか思ってないだろうな」

「うぐっ……」

 

 千束が言う通り、今のミズキに生徒たち――リコリスが尊敬する要素など無いに等しい。

 ミズキはDA学園の養護教諭。それはDAの構成員であることを意味する。

 裏方に徹する構成員ではあるが。彼女ができることと言えば運転手だったりとか、ケガを負ったリコリスの治療だったり。

 だが彼女は逃げ癖があり、現場が危なければリコリスを置いてすぐに逃げてしまう。そうなると裏方に控えての工作作業ができない。

 リコリスにとってはもうそれは仕方がないことだと思っており、下手に人質にされたりポカをやらかされるくらいならば逃げてくれた方が良いくらいには扱いが雑なのである。

 

「そんな逃げ上手のアラサー教師に人望があるとお思いで?」

「うっ!」

「正直、養護教諭としてはそれなりですが。構成員としてのあなたに期待していることなど何もありません」

「うっ!!」

 

 千束や楠木からもボロクソに言われ胸が痛むミズキ。

 ちなみに仮にミズキが敵に捕まったとしても楠木としては救援を行うことは一切ないと断じているし、そして捕まった際に敵に知れ渡って困るような情報もミズキには一切提示していない。

 生徒たちからはおろか、千束や楠木からも人望はないミズキなのであった。

 

「ですがまぁそうですね。少しでも人望に直結することをしたいというならば。組織のために活動資金でも集めてきてもらうか……」

「ま、まさか教頭。私にその、ハニートラップとか……? 政治家やら資産家の相手をしてこいとでも……?」

「……こいつなんでこんなに自己意識が高いんだ?」

「知りません」

 

 ミズキは自身が女であることを利用して、金持ちの相手をさせられるとか思っているらしい。

 当然楠木はミズキにそんな用途も期待などしていない。というにも、本番直前でどうせ人知れずにすぐ逃げ出すからである。

 すぐ逃げる。逃げるのが得意という強みを生かすならば囮捜査とかにも使えそうではあるが、囮としての役割をこなす前に逃げられたら作戦も減ったくれもない。

 すっかり自分がそういったことをさせられると思い込んでいるミズキに、楠木はチラシを提示した。

 

「クイズ企画の公開収録?」

「あぁ。有名な配信者が大手スタジオでクイズ番組を配信するらしくてな。全問正解で100万だそうだ。ミズキ先生には100万を取ってきてもらう」

「で、でもこういうのって基本的には賞金が渡らないように裏で操作されていたり……」

「またそうやって後ろ向きに考えて逃げるのか? よく人望がどうだとか言えたな貴様……」

(おや、これは……)

 

 ぐちぐちと後ろ向きな発言を繰り返すミズキに、楠木はめずらしく説教モードに入る寸前。

 このピりついた空気を察知し、千束はひやりとした表情を横でしていた。

 

「たまには構成員として成果の一つでもあげて来い。ちょうど訓練室のメンテナンス費用に困っていたところだ」

「し、失敗したら?」

「DAに失敗は許されない。物事を行う際に失敗を前提に考えるバカがどこにいようか。――勝てば得る。負ければ失う。それが我々DAの鉄則だ。そもそも貴様は……」

 

 そのまま楠木の説教からは逃れることはできず。下手な発言からミズキは任務を与えられたばかりか焼肉屋で教頭から説教まで受ける始末。

 こうしてミズキの、クイズ企画で100万を手に入れ皆から人望を勝ち取る作戦が始まろうとしていた。

 

 ―――焼肉屋の一件から三日後。

 

 街中の大手スタジオにて。

 そこには大勢のエキストラが集まっていた。

 そしてその中でクイズ番組の回答者に選ばれたミズキ。

 クイズ企画の名称は。【司会者MJプレゼンツ。クイズ・マジオネア!】と書いてあった。

 なにやらどこかで聞いたことあるような名称だし、どこか嫌な予感も多少しながらミズキと、応援席を与えられた千束がスタジオへとやってきた。

 

「なんかこう、子供の記憶っていうか。小さいころに見たことあるようなやつのパクリな感じが……」

「私もなんか見たことあるぞ。今の小さい子はわからないと思うけど……」

 

 まぁこの手の企画というは大体似たものが多い。

 クイズ番組なんてありふれているし、今のバラエティは昔に比べクイズ物が多い。

 そして収録は始まり、このクイズ企画の名物司会者とやらがやってきた。

 やってきたのは二人組。緑色の髪の毛の周りに狂気を感じさせる男と、アシスタントと思われるロボットの覆面を被った小柄な男の二人組であった。

 

「どうも。司会のMJでーす」

「真島じゃねえか!!」

 

 その男の姿を見て、ミズキは条件反射でツッコミを入れる。

 それはDAと敵対している組織。国の中央を脅かす東西の流れ者達――アンダーテイカーの中核を担う真島グループの総帥である狂気の男、真島であった。

 なぜそのような凶悪テロリストの彼が、人気のクイズ番組の司会者などやっているのだろうか。

 

「あぁん? んだよDA学園の教師っていう表記があったからてっきり千束ちゃんが来るのかと思ったが雑兵のほうかよ……」

「雑兵言うな!!」

 

 真島は普段と変わらず、雑兵だとミズキのことを安く見る。

 真島にとって自分たちの脅威となり、そして渇きを癒す存在はリコリスであり、そしてそのリコリスすらも凌駕にする存在、錦木千束である。

 彼はそんな千束との決着を第一と考えているからこそ、今回あえてDAの刺客を選んだというが、よりにもよって自分の前に立ちふさがったのが、相手にすらならないミズキであったことに心底ガッカリしていた。

 

「おい行き遅れクソババア。今すぐ後ろの応援席に座ってる千束ちゃんと変われや。そしたら手を出さずに見逃してやる」

「行き遅れクソババア!? あんたまだ30にもなってない女性になんて言い草よ!? せめて行き遅れかクソババアかどっちかにしなさいよ!?」

(どっちかならいいのかよ……)

 

 雑兵だけでは飽き足らず、容赦ない呼称をミズキに対して言い放つ真島。

 当然ミズキは大激怒。本人は行き遅れてもいないしまだババアという歳でもないと思っている。

 世間の目はどうかはわからないが、少なくとも真島からはそのように思われているのだろう。

 

「というかあんた。犯罪者が人気のクイズ番組の司会者ってなによ!? しかもこの感じ、私が子供のころにやってた番組のもろパクリじゃない!?」

「そうやって"子供のころにやってた"とか言うから歳を感じさせるんだろうがよ。アラサーが身体からにじみ出てんぞ~」

「うっ……! そ、そうねー。私が子供のころにやってたアニメとか。あ、明日の〇ージャとか~?」

(それも結構古いよ……)

 

 ミズキは少しでも歳をサバ読めるような幼少期の番組をチョイスするが、幼少期の記憶など曖昧なもので、やっぱり歳を感じさせるような物しか口にできていない。

 それを応援席の千束は心の中でツッコミを入れる。そして真島を目にして千束が啖呵を切る。

 

「悪いな真島くん。今日は私が相手じゃないんだ。DAはお前に私やリコリスなんて必要ない、ミズキで充分だって判断したよ」

「ほ~う?」

「ちょっと千束先生……」

 

 怒りながらもどこか弱気なミズキに変わり、千束は真島を煽る。

 それを聞いて真島も余裕綽々な表情から、狩人の表情へと変化させミズキを睨む。

 ミズキはそれにたじろいでしまうが、DAの刺客として真島の目の前に立ってしまったのだから、もうやるしかない。

 今この場で行われるのは、正真正銘DAと真島グループの戦争の一部なのだから。

 

「まぁいいや。相手が雑魚だろうがお前がこの場で大恥をかけば。それはDAに泥を塗るということ、俺ら下層の流れ者に、上層の番犬が首を垂れるってことよ。その意味、てめぇはわかってこの場にいるんだよなぁ?」

「うっ! ……上等よ。あんたこそ私が100万円取ったら、真島はDAの中原ミズキに負けたって業界で噂されて赤っ恥かく羽目になるわよ!」

「ふん。やる気はあるみてぇだな。すぐ逃げ出すもんだと思ってたぜ」

 

 真島はミズキを睨みつけ威圧。だがもう置かれたこの状況下で、逃げるという選択はなくなったことをミズキは十分に意識をしている。

 むしろジャイアントキリングして、普段からバカにしている目の前の男の鼻をへし折ってやろうとすら、闘争心を露わにしていた。

 こうして回答者ミズキ、司会者真島によるクイズ対決が幕を開ける。

 

「一応ルールを説明しとく。下に表記するから確認しろや」

 

 というわけで、このクイズ・マジオネア! のルールなのだが。

 

 ・問題は全5問。問題数が少ないのは動画配信という形態であり癪の都合である。

 ・問題は4択の中から答えだと思ったものを押し、正解なら次へ、不正解ならその時点で失格。それぞれA、B、C、Dから選ぶ。

 ・正解するごとに獲得できる金額が上がっていく。下から順に一、百、千、1万、100万となる。

 ・途中でドロップアウトすることも可能。真島の前に怖気づいたらドロップアウトして逃げればいいじゃねえかという真島の粋な計らい。

 ・問題に際し困った時に使えるライフラインという仕様があり。以下の三つ。

 

 ①オーディエンス~観客が4択の中から答えだと思ったボタンを押し、それがパーセンテージで表示される。

 ②50:50~4択から2択へと答えが減る。あてずっぽうでも1/2で正解になる。

 ③テレホン~自分の知り合いに電話をかけ答えが何かを求めることができる。通話時間は30秒。ただしかけた相手に電話が繋がらなければこの時点で失敗、使用権も失われる。

 

 以上がクイズ・マジオネア! のルールとなる。

 

「内容までパクリなのね……」

「いちいち細かいこと気にすんのな。そういうところが歳を感じさせんだっつってんだよ」

「……ていうかあんたなんで組織に狙われてるのにこんな企画堂々と動画配信してんのよ? まさか趣味の一環というわけじゃないんでしょ?」

「広告費だとかいろいろあんだよ。組織の資金取りの一環だっつうの」

 

 どこの組織も資金の収入源は多岐にわたる。そういうものなのかな、とミズキは内心思う。

 そして早速第1問目の問題が表示され、真島がそれを読み上げる。

 

「次の4つの中で、リボルバー(回転式拳銃)に該当する銃はどれ?」

 

 Q:次の4つの中で、リボルバー(回転式拳銃)に該当する銃はどれ?

 

 A:コルトパイソン

 B:コルトガバメント

 C:コルトウッズマン

 D:ジュニアコルト

 

「……なるほど」

 

 その問題を見て、千束はとりあえずは、と納得する。

 この手のクイズ企画は、1問目は答えられて当たり前の内容になるのが鉄板。

 1問目から不正解では番組の進行する上で映えもないし、最初の方は回答者にあえて答えさせる。

 そして中盤に知識的や知恵を使うような問題で徐々に難しくしていき、最後の方、特に最終問題は専門家でないと答えられないほどの、一般人の知り得ない難問で回答者を悩ませる。

 非常によくできた構成である。その中でこの一問目は、真島にとってDAの一員ならば答えられて当然という一種の挑発のような物。

 DAの兵士リコリスの主要武器は銃。中にはあえて銃じゃない武器を好むリコリスもいるが、大方銃を使う組織。言うならば銃社会である。

 ならば銃に精通しているのは当たり前。それがリコリスであっても、一般構成員であってもである。

 当然DAの構成員であるミズキも、答えられて当たり前なはず。なのだが……。

 

「50:50使います」

「「なんでやねん!?」」

 

 ミズキは1問目だというのに速攻ライフラインである50:50の使用を宣言した。

 このミズキの行動には真島と千束はそろってずっこける。

 

「お前これ、拳銃知ってたら当たり前のように答えられるサービス問題だぞ……」

「だって拳銃なんて使ったことないもの! 私が知るわけないでしょ!?」

「おいおい千束ちゃんよ、お前んとこのポンコツ構成員。回転式拳銃と自動式拳銃の違いすら理解してねぇみたいだけど!?」

「すんませーーーん! うちの雑用係が!!」

 

 ミズキのポンコツっぷりに対し、なぜか千束が代わりに謝り恥をかく羽目に。

 ちなみに千束も非戦闘員(……非戦闘員?)だが、リコリスを使役する監視官のような役割もあるため銃の知識はきちんと身に着けている(というか洋画好きなため元々それなりにマニアックな知識は有している)。

 というわけでミズキは拳銃の基礎的な知識もしらない。当然この問題の答えも知る由もない。

 その中で答えを2択に絞ったところで、じゃあ果たして答えられるかも微妙である。

 

「……とりあえずライフライン使うんだな?」

「えぇ。問題は全5問。最終問題に残り2つ残しとくなんて余裕よ」

「……ってことで答えを2択にするが。こうなる」

 

 A:コルトパイソン

 B:コルトガバメント

 C:

 D:

 

「……」

 

 と、なったわけだがミズキはピンと来ているだろうか。

 どちらも銃が出てくる作品ではオーソドックス、王道かつ有名な2つではあるが。

 ミズキは考える。リコリスたちのデータをちらっと見た時のことや、聞こえてくる会話にそれらしいものはなかったかを。

 

(そういえばたきなのラジアータ:シオンのモデルケースがガバメント? コンバットマスター? がどうたらこうたら言ってたような。リボルバーって要はあれよね? ル〇ンの次〇が使ってるようなやつよね。ってことはたきなのシオンはリボルバーじゃないから……)

 

 と、ミズキはリボルバーがルパ〇三世のキャラが使ってるやつであることは知っているようで。

 そうなるとたきなが使用しているラジアータのモデルケースがガバメントであるためリボルバーではない、つまりAのコルトパイソンが答えということになるのである。

 というか問題文に出ているコルトパイソンもそれと同じくらい有名な漫画のあのキャラが愛用しているリボルバーなのだが。

 

「Aのコルトパイソンで」

「ほう。考えた末になんとなく糸口は掴んだ感じか。したら、ファイナルアンサー?」

「あぁその流れもまんま一緒ね。ファイナルアンサー……」

 

 テテテテーン……♪(あの有名なタメが作り出す空気の間)。

 

「はい正解―。つかわざわざコルトパイソンって有名な奴を選択肢にしてやったのによ……」

「やったーーー!!」

「なんで一問目からしかもライフライン使って正解してそんな喜んでんだこいつ……」

 

 とても1問目での喜び方ではないが、個人的難所を突破してご満悦なミズキ。

 続く第2問。そう、問題はまだあと4問もある。

 そしてライフラインは残り2つ。運よく5問目までに残せるかどうか。

 だがミズキの中では別に2つ残す必要はないと考えていた。彼女がカギとするライフラインは、テレホンである。

 なぜテレホンか。ミズキがテレホンでかけようとしている相手は、井ノ上たきなである。

 たきなはDA学園の模試でトップの戦績。リコリスとしてだけではなく、普通の学生としても頭脳明晰成績優秀。

 どんな難問であれ、たきなに答えを聞き出せば間違いなくそれが正解になると考えているため、テレホンが5問目に残ればよいのである。

 

「てなわけで2問目だが、まさか2問目で2つめのライフライン使うつもりか?」

「んなことしないわよ。あとお願いだから一般常識の問題を出してちょうだい」

「なんで回答者のてめぇが問題傾向決めてんだよ……」

 

 回答者なのに図々しく真島にそう詰め寄るミズキ。

 果たして2問目は、ミズキの思惑通りに一般常識の問題となるのだろうか。

 

「えー。次のうち、目標に対して向こう見ずに突き進むことの意味として、最も適する四字熟語は4つのうちどれ?」

 

 Q:次のうち、目標に対して向こう見ずに突き進むことの意味として、最も適する四字熟語は4つのうちどれ?

 

 A:匹夫之勇

 B:猪突猛進

 C:暴虎馮河

 D:勇猛果敢

 

「ようやく一般常識というか、国語の問題が出たわね」

「ほら、こういうのならわかるんだろ? まだ2問目だぞおい」

 

 2問目は国語の問題である。

 最も適する。という一文がひっかかる。答えに示されている4字熟語は皆ほぼ類義語、似たような意味で微妙に違う意味を持つ言葉である。

 ミズキは頭を悩ませ、そして真島の方を見る。

 この問題の答えは、真島の裁量によるものか。真島が答えがこれと思ったものが答えになるのか。

 ならば。とミズキは真島に対してこう要求をした。

 

「ねぇ。この問題の答え。AからDまで順番に口にしてみてくれないかしら?」

「俺がか? それに何の意味があるのやら。まぁいいが……」

「A」

「匹夫之勇」

「B」

「猪突猛進」

「C」

「暴虎馮河」

「D」

「勇猛果敢」

 

 ミズキに言われたように、真島はA~Dの答えをわざわざひとつずつ口にした。

 それを聞いたミズキは。さらに真島に要求を重ねた。

 

「……Bだけもう一回言って」

「……猪突猛進」

「……かなり強めに言ってもらっていい?」

「猪突猛進!!」

「Bで」

 

 今のやり取りで何が分かったというのか、ミズキはB:猪突猛進を選択。

 よくわからないが。ミズキが選んだのはBということで、真島がお決まりのワードでミズキに問う。

 

「ファイナルアンサー?」

「ファイナルアンサー」

 

 テテテテーン……♪(あの有名なタメが作り出す空気の間)。

 

「正解。つかさっきのやり取りなんか意味あんの?」

「別に……」

 

 というわけで、2問目はライフラインを使わずに突破したミズキ。

 これで残りは3問。ライフラインは残り2つ。

 次の問題辺りにライフラインを割くことがなければ、ミズキがだいぶ有利になる。

 これはひょっとするとひょっとするかもしれない。ミズキが真島を負かすことになるのかもしれない。

 ミズキ自身、そして応援席にいる千束自身も自信が膨らむ。

 

「じゃあ3問目だ。えーと……。これはある女が結婚相談所に行った時の話、相談所の係の人に理想の男性像を聞かれたときにその女が言い放った、係の人を困らせた言葉は次の4つのうちどれ?」

「ん?」

 

 Q:ある女が結婚相談所に行った時の話、相談所の係の人に理想の男性像を聞かれたときにその女が言い放った、係の人を困らせた言葉は次の4つのうちどれ?

 

 A:優しい人

 B:頼りになる人

 C:お金がなくても愛がある人

 D:3Kはもちろんほしいに決まってるわ! 高収入、高学歴、高身長。それに加えて+α、価値観があって甲斐性があって顔がいい。あらもうこれじゃあ6Kじゃない。でも結婚するならそれくらい完備していて当たり前。だって結婚とは人生よ、中途半端な男なんて論外よねぇ~。

 

「なによこの問題!? てかちょ! え!?」

 

 あからさまに2問目までとは一新したかのような別のテイストな問題内容。

 どうやら問題文に出てくるその女は、ただ男性像を聞かれただけなのにあきらかに高すぎる理想を口にし、相談所の職員どころか周りの人間までドン引きされたらしい。

 そんな痛い女の客、いったいどこの誰なのか。そしてこの問題は、婚活をしているミズキがその人の身になって答えるといったテイストの問題なのだろう。

 ミズキも婚活に勤しむ身の上。そんな問題文に出てくるような痛々しい女ほどひどい妄想を抱いているわけはないが、こんな理想が高すぎるような痛すぎる女ほどひどい人間ではないと思うのだが、まぁ極端な方が答えに導きやすいのだろう。

 

「な、なんかすごい圧が。ちょ、ちょっと待ってよ。なんで? え? なんで……?」

「さっきからどうしたのよ。俺はあくまである女としか言ってねぇぞ。これはうちの工作員を結婚相談所に派遣した時に遭遇したケースを問題にしただけだ。別にお前のことを……。まぁ世間には色々いるってことで」

「今なんか特定の誰かだって答え言わなかった!? てか結婚相談所に派遣ってなに!?」

 

 真島はなんか口を滑らしたような気もするが。

 とりあえず傾向がゴロっと変わったこの問題。

 ミズキは答えにたどり着けるのか。ある意味これは、銃の種類を答えるよりも難しい問題のような気もするが。

 そんな中、応援席の千束がミズキにとある提案をする。

 

「ミズキ先生。ここは……。オーディエンスを使おう」

「なんで!?」

「かなり難しい問題だし。テレホンも残るから、これは私も含めて皆の意見を聞いて答えた方がいい」

 

 千束はミズキにオーディエンスの使用を提案。

 確かにこの手の例え問題ならば、オーディエンスを使用して他の人の意見を集める、

 これの答えは言うならば、周りの共感がカギとなる問題である。

 

「……千束ちゃんナイスアドバイス。てなわけでほら、オーディエンス使えよ」

「……」

 

 ミズキは周りに流されるまま、オーディエンスを使用することに。

 果たしてオーディエンスによって、どのような配分になるのか。

 オーディエンスを使用した結果。答えのパーセンテージは、こう分配された。

 

 A:0%

 B:0%

 C:0%

 D:100%

 

「なんか周りの観客皆Dなんだけど!?」

「じゃあDじゃねえか。てかその女の客よ……。いるんだよなこうやって自分は高根の花で当たり前のようにスペックの高い男が群がってくるって本気で思いこんでるやつよ。そもそもいねぇからそんな高スペックの男。てかそれぐらいのスペック持ってるならそんな女むしろお断りだから。なんでわかんねぇかな、その痛い女のクソ客よ」

「ぐ、ぐぐぐ……」

「てかDでファイナルアンサーでいいんだな、あぁ正解正解。次々」

「まだ私なんも言ってないけど!?」

 

 真島は男として、そのようなモラルの欠けている女に対し苦言を口にする。

 なぜかそれを聞いてミズキは、なぜだろうか。自分のことを言われたかのように苦悶の表情をしていた。なぜなのだろうか。

 というわけで3問目にライフラインを使ってしまった。これで残り2問、ライフラインは残り1つ。

 ミズキはなぜかよくわからないが深い傷を負った状態で、クイズは4問目に。

 

「4問目だ。その日の夜、結婚相談所で痛い女に絡まれた部下に対して俺が「てかお前、その中原ミズキってやつぶっちゃけた話どうなのよ?」って聞いた時にその部下が言った言葉は次の4つのうちどれ?」

「今しれっと私の名前が出たけど!?」

 

 Q:その日の夜、結婚相談所で痛い女に絡まれた部下に対して俺が「てかお前、その中原ミズキってやつぶっちゃけどうなのよ?」って聞いた時にその部下が言った言葉は次の4つのうちどれ?

 

 A:結婚したい

 B:結婚しよ

 C:性格はちょっとアレですけど。でも美人だし、正直アリかなって、思ってます

 D:いやー、きついでしょ

 

「なによこの問題!?」

「だからなんでお前がキレてんだよ」

「私個人の問題だからキレてんのよ!!」

 

 なんということか、先ほどの結婚相談所にいた痛いお客の正体は、中原ミズキなのであった!

 

「地の文までわざとらしいわね!! てか何!? 私そんなに失礼働いたの!?」

「……あの時は正直ノイローゼになりそうにnゲフンゲフン!!」

「あんたの隣のロボが急に口開いたわよ!?」

 

 さっきまで無言でアシスタントに徹していたロボ太が急にしゃべりだしたが。

 だがすぐにせき込み発言を中止。ロボ太にいったい何があったというのか。

 というわけでロボ太をノイローゼになりそうにした中原ミズキの実体験の問題。

 だがこの問題の答えは、真島サイドでしか知り得ない問題。つまり探りを入れ答えを導かなければならない。

 これはライフラインを使わないと答えが見出せない可能性がある。千束はそれを感じ取り。

 

「……ミズキ先生」

「なに!?」

「……オーディエンス使おう」

「さっき使ってもう無いのよオーディエンス!!」

 

 千束はこの問題の答えも、他の客の意見を取り入れなければ無理だと語るのである。

 だが悲しいか。オーディエンスはもう残っていない。50:50ももう使ってしまっている。

 そして残されたテレホンも、この問題をたきなに問うた所で間違いなく頭に?マークが浮かぶだけである。というかこんな恥ずかしい問題他の人になど聞くことができようか。

 そんな中、真島自身がミズキに提案した。

 

「おい雑兵。テレホン使わねぇか?」

「誰にかけろと!?」

「かける相手はこっちで手配してやるよ」

 

 どうやらテレホンを繋ぐ相手は真島が選ぶようである。

 ミズキはどうにも納得できないまま、不穏な様子を残したまま、流れるままにテレホンの使用を承諾。

 そしてその瞬間、真島の隣にいたロボ太が立ち上がり。

 

「すいませんちょっと、トイレに行ってきます」

「……」

 

 といって席を離れてしまった。

 そしてロボ太の姿がスタジオから消えたのを見計らったかのように、真島がそのタイミングでテレホンをかけた。

 

「ほら、繋がったぞ」

「……」

 

 ミズキは苦い表情で電話を取る。

 相手の声が聞こえるが。なにやらプライバシーの観点からか、機械でいじったような声が聞こえてくる。

 

「モシモシー」

「……もしもし。あの、今から問題と4択の答えを口にするからあんたが答えだと思うものを教えて頂戴」

「ワカリマシター」

「……結婚相談所で痛い女に絡まれた部下に対して俺が「てかお前、その中原ミズキってやつぶっちゃけどうなのよ?」って聞いた時にその部下が言った言葉は次の4つのうちどれ? A:結婚したい。B:結婚しよ。C:性格はちょっとアレですけど。でも美人だし、正直アリかなって、思ってます。D:いやー、きついでしょ」

「イヤー、キツイデショー(即答)」

 

 ガチャ! プープー……。

 

 電話相手から答えを聞き出した直後ミズキは涼し顔で怒りを露わにしつつ電話を早々と切った。

 そして真島に電話を手渡し、もう投げやりと言った表情で、壊れた機械のように答えを繰り返し口にした。

 

「Dでしょ。はいはいDですー。DですDですファイナルアンサ~」

「せいかーい!」

「いえーい。やったー(やけくそ)」

 

 というわけで4問目の問題も正解し、いよいよ最終問題。

 だが最終問題にして、ライフラインはもう残っていない。

 つまり最終問題は、自力で答えを導き出さなければならない。

 だが先ほどのように、ミズキ自身の話題が問題となれば、考える間もなく答えられるはず。

 ……と、そんな簡単なことにはなるはずもない。真島がそう簡単に、100万を相手にくれてやるわけがないのである。

 

「最終問題だ。フランスのリュミエール兄弟が制作した映画の中で、世界初の実写商業映画として公開されたのは次の4つのうちどれ?」

 

 Q:フランスのリュミエール兄弟が制作した映画の中で、世界初の実写商業映画として公開されたのは次の4つのうちどれ?

 

 A:ラ・シオタ駅への列車の到着

 B:水をかけられた散水夫

 C:工場の出口

 D:金魚鉢の中の金魚

 

「……最後の最後でクイズ番組っぽい知る由もない難問を」

「これは、映画史の問題。なるほど私と同じく映画が好きな真島くんらしい最終問題……」

 

 ミズキ、千束両者とも。改めてこれがクイズ企画であることを思い知らされる内容の最後の問題。

 フランスの映画発明家、映画の父とも称されるリュミエール兄弟に関する問題である。

 映画史を理解していなければ答えなど知る由もない。真島と同じく映画が好きかつ博識な千束ならば迷わず答えられる問題も、ミズキにとっては知るはずもない問題である。

 さきほどまでのふざけた内容の問題とは打って変わって。クイズ番組らしく王道の、そして最終問題にふさわしい難問中の難問である。

 

「ほらさっきまでの勢いはどうしたんだよ?」

「……全然わかんない」

「だろうな。ってなるとこの手のクイズ番組は1/4を当てるゲームになんのよ。ようやく映えのある映像ができあがるってもんよ」

 

 真島の言う通り、答えがわからなければ残されたのはリアルラック。つまり運要素である。

 運も実力の内とは言ったもの。時と場合、与えられた状況や空気を味方につけられるのも勝者にとって必要な要因である。

 運に見放された。もしあの時あの選択をしていれば。敗者が口にするのは、決まってそういう言葉だろう。

 だがこの場合。運だけが残されたわけではない。糸口があるとすれば、出題者の問題の出題傾向。

 つまり、真島がこの問題の答えを、"どこに配置したか"が重要となるのである。

 ここまでの答えの順番は。A→B→D→Dとなっている。だが3問目と4問目のDに関しては、ミズキを辱めるために最後の方に答えを持ってくるというオチをつけるためのもの。

 そこは判断材料になるかはわからない。ミズキは真島を観察する。

 そしてそんなミズキを応援席で千束は見守る。ちなみに、千束はこの問題の答えを知っているのである。

 

「もうライフラインは残ってねぇ。あとはてめぇがどれを選ぶかだ。選ぶ答えによっては、俺たちの勝利か、てめぇらの勝利かが決まる」

「……」

「重てぇか? 今のてめぇはDAを背負って立つ側の人間だ。勝つか負けるかも全部てめぇにかかってる。あぁちなみにドロップアウトって選択もある。要はあれだ、てめぇが得意な奴だ。そう、"逃げる"って選択だよ」

「ちょっと黙ってよ!!」

 

 真島はミズキを煽り、そして追い詰める。

 真島はその顔が見たかったのだ。軽い気持ちでクイズ企画に参加し、順当に進みながらも道中辱められつつ。

 そして最後に問題を解けずに絶望するその様だ。この手の企画は、出題者側が常に有利と相場が決まっているのだ。

 自らが場を与え、状況を支配し、上に立ち相手を見下せる。相手は一度でも失敗すればすべてが終わりという状況を、出題者という立場で躍らせられるのである。

 この状況を見かねた千束が、真島に対して発破を掛けた。

 

「真島くん。圧倒的有利な相手に圧倒的有利な状況で舌なめずりとはらしくないんじゃない?」

「んだよ千束ちゃんよ、それだとまるで俺が弱い者いじめしてるみてぇじゃねぇか」

「あぁ弱い者いじめだよ。今のお前がやってることはこう、お前の矜持に反してんじゃないですか~。ほらぁ、"アレ"が、取れてないんじゃないですか~?」

「はっはっは! それ言われたら言い返す言葉もねぇよ。そうだなぁ、この世に必要なのは"バランス"だよ。バランスは大事だ。バランスとらねぇとなぁ!!」

 

 千束に煽られて、真島も狂気的に強気にそう言葉を返す。

 この世は均衡が保たれていない。だから真島は口癖のように言うのだ。バランスはとらなければならないと。

 そしてその何気ない会話を耳にして、考え込んでいるミズキが、何かに気づく。それが、この状況の覆すための一手となる。

 

「……バランス。バランスとらないと。……そっか」

(……顔つきが変わりやがった)

 

 ミズキは真島を睨む。

 そして決心がついたかのように、ミズキは答えを選択する。

 ミズキが選択した答え、それは……。

 

「Cの、工場の出口」

「……一応聞くが、どうしてCを選んだ?」

 

 ミズキが選んだ答えはCの工場の出口。

 4つある答えの中で、それをなぜ答えだと思ったか。

 ミズキには考えがあった。そしてそれは、確信とさえ思える根拠があった。

 

「あんたさっき言ったじゃない。バランスとらないとな……って」

「あぁ」

「今まで出た4問。それぞれの答えがA→B→D→D。まぁ3問目と4問目は意図的にDだとして。この時点で答えの選択肢にまだ出ていないのが……。Cなのよ」

「んだよ、つまんねえ考察しやがって。今まで答えの選択肢になってないからそれが最終問題の答えだってか。そんな子供じみた考えg」

 

 その真島の卑下するような発言を、ミズキは遮ってこう言葉を口にする。

 

「単純な考えだと思うでしょうね。けどあんたはこの問題の答えをCに配置するのよ。だってあんた、物事にはバランスが取れていないと腹立たしいんでしょ。……答えの選択肢がAとBとDだけで終わるような、そんなアンバランスな問題構成をあんたが作るわけがないのよ。だから最後にCを配置して、バランスよくしたうえで相手を負かす。それがあんたが考える美学よ」

「……ほう。よく俺のことを観察してんじゃねぇか。それは言われてもぐうの音が出ねぇよ。だが、その俺のこだわりをあえてブラフにすることだって」

「……しないわよ」

 

 もう、流れは完全にミズキが支配していた。

 真島の言葉の数々を論破し、その上で真島が己のこだわりをブラフにさえしない理由を、ミズキは言い放った。

 

「逃げてばかりの雑兵とバカにしている相手に対してブラフをしかけるですって? そんな雑魚と見下している相手に対して、"逃げに徹した一手"を、あんたが私に打つかしらねぇ!?」

 

 その言葉は、言うなればミズキの勝利宣言だった。

 散々人を逃げてばかりだと嘲笑う男が、そんな雑魚を相手に己の矜持を曲げるはずがない。

 そんな相手に曲げる矜持など持ち合わせていない。だから真島は問題にバランスを取るために、最後の問題はCに配置するしかないのである。

 そう、千束は答えを知っていて、その答えがCに配置されていることから、真島の癖を見抜き。

 それをミズキに気づかせるために、さきほど真島に発破をかけることで、真島からあの口癖を引き出したのである。

 まんまと嵌められた真島は千束を睨む。その真島に対し、千束は厭味な笑いで返した。

 

(ちっ。してやられたってわけか。俺も、相手を舐めすぎていたようだな……)

「さあどうなのよ? はやくあのワードを私に言いなさいよ? 得意のやつをよぉ!?」

「粋がんじゃねぇよ雑兵がよ。……ファイナルアンサー?」

「ファイナルアンサー!」

 

 ……。

 …………。

 

 ……………………。

 

「……今回は俺の負けだよ。正解だ!」

 

 正解はCの工場の出口である。

 一応他の選択肢も同時期に作られた映画とされているが、世に最初に出たとされるのはCなのである。

 見事に全問正解で幕を閉じた。そう、中原ミズキはあの真島に、クイズ企画という形式ではあるが勝ったのである。

 

「……勝った。私……が」

 

 満身創痍のミズキは千束の方を見る。

 千束は歓喜の表情で、ミズキにサムズアップを送るのだ。

 

「あは、ははは……」

「今回はまぁ負けだが、これで終わりじゃねぇ。俺たちアンダーテイカーは、必ずこの腐った世界を正すために中央を落とす。てめぇらDAを滅ぼしてなぁ」

「……うちの生徒は皆優秀よ。あんたらなんかに負けるわけはないわ」

「ふん。あぁそうだ賞金の100万だ。ほらよ」

 

 そう言って真島は札束が入った袋をミズキに投げ渡す。

 それを受け取るミズキ。これで楠木に言われた使命は完遂したし、DAの機器のメンテナンス資金も手に入れた。

 ……かのように思われたのだが。ミズキが袋の中を見ると。

 確かにお札が大量に入っているが、札束に印刷された肖像画が真島の顔になっており。

 

「なによこれ!? 偽札じゃないのよ!?」

「あぁん。ちゃんと100万渡しただろうが何を文句言ってんだ」

「100万円じゃないでしょこれ!?」

「100万ペ〇カだ。チラシちゃんと見たか? 100万"円"なんてどこに書いてんだ馬鹿か」

「ペ〇カってなによ!?」

「地下帝国で使える紙幣だ。俺らのところに遊びに来た時にそれ使って豪遊でもするんだな」

「地下帝国ってどこよ!?」

 

 確かにクイズ・マジオネア! の広告には賞金100万とは書いてあるが、円とは書いていなかったのである。

 地下帝国でしか使えない胡散臭い紙幣を100万枚もらえるだけ。当然地下帝国でしか使えないためDAの資金には充てられない。

 途方に暮れる中、ミズキに1本の電話がかかってくる。楠木からである。

 

『どうやら無事全問正解したようだな。今から見積書をスマホに転送する。まぁ今回の賞金を超過することはないから、残った分はポケットにでも閉まっておけ』

 

 そう楠木から電話が切られた後、ミズキのスマホにメンテナンスの見積書が送られてきて。

 それをミズキは恐る恐る目にする。なぜなら、そのメンテナンス費用はミズキ持ちだからである。

 

「……ミズキ先生」

 

 千束はそんなミズキに声を掛けようとすると。

 

「……オロロロロロロロロロロロロ!!(リアルに吐く音)」

「ぎゃあああああああああ! ミズキ先生が嘔吐したーーー!!」

 

 慌ただしいミズキと千束を背に、去り際に真島が満足げな表情で、こう言葉をつぶやいた。

 

「ふんっ。楽しかったぜ、"中原ミズキ"」

 

 これは、真島にとってミズキも値する敵と認められた証。なのだろうか……。

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