リコリス・リコイル~3年D組の千束先生   作:トッシー00

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短編となります。


短編~AIたきなさん

「千束先生。この間の資料の納期が迫ってます。進捗はどうですか?」

「すでに出来上がっております教頭。今日中に本部に提出しますので」

「――千束先生、この4支部への武器武装の開発費の見積もりが甘いです。修正の方かけれそうですか?」

「それも今やっております……」

「――千束先生、先ほど閲覧した次回の作戦プランに何点か修正箇所が見つかったとDA本部からお達しが来ました。プランの見直しをお願いできますか?」

「……あの」

「――この作戦での街の被害総額の算出。あと住民からの苦情が相次いでいるのでそちらの対応についてのレポートをまとめなければなりませんね。明後日までにまとめられそうですか? 千束先生」

「……あの!!」

 

 と、退勤時間が迫っている平日の夕方の一幕。

 すでに日は落ち、外は暗くなろうとしているその最中。

 まるで楠木教頭からの「今日は家に帰さないゾ☆」と言わんばかりに鬼のように仕事を振りに振られているのは、ブラック企業DA学園の教師、錦木千束である(なおDA学園がブラック企業だと言うと教頭に頭をドつかれる)。

 特に今日はいつも以上にあっちやこっちや、到底人間一人では捌き切れないほどの案件を全て担わそうとされており、さすがの千束もこれはまずいと待ったをかけようとしているのである。

 

「どうしました先生。まだまだやる仕事は山のようにあるんですよ」

「いやいくらなんでも私一人でできるキャパシティを超えすぎてるんですよ!? てか毎度思うんですけどね、このDA学園のD組支部って私とあなた以外他に職員っていないの!?」

「なにを言ってるんですか。私の専属の秘書がいるじゃないですか」

「じゃあ私にも秘書つけてくださいよ!?」

 

 そう楠木にあたかもあたりまえのように説明されて反射的に反論する千束。

 ちなみに千束が働いているDA学園。実は本部から枝分かれしている一つの支部にすぎないのである。今更判明した事実である。

 他にはA組、B組、C組、E組が存在し。中央(セントラル)の所々に、一般的な教育機関としてカモフラージュされる形で設置されており、本部と呼ばれるところからそれぞれ指示で動いている。

 アルファベットで区分けされており。A組はassault(強襲部隊)、B組はbuster(破壊工作部隊)、C組はcritical(電子、情報操作部隊)、E組はemergency(非常時、災害救助部隊)。となっている。

 その中で千束やたきなが所属するD組はdefense(警備部隊)と区分されており。街の安全を取り仕切る警備警護、そして街のボランティアなどを行う役割を言い渡されている。

 つまり他の支部のリコリスからすれば、D組は平和ボケされているといったように見下されており、実力のないリコリスたちが配備される甘ちゃん集団と揶揄する者もいる。

 ファーストも他の支部では10人以上は所属しているが、D組はたきなとフキの二人しかいない。実のところリコリスの人数も一番少ないのがD組。

 そのため最低限の人数で運営しなければならない都合上、職員は教頭の役割を与えられている指令の楠木と秘書数名、そして下っ端の千束だけである。

 

「なんですか? 一人で仕事をこなすのが大変だと?」

「当たり前でしょ!? いくら私がアダムズギフテッドだからって人間扱いしてなさすぎですよ!! 労基(労働基準監督署)に駆け込みますよ!?」

「やれるものならやってみればいいだろうに。そうか、千束先生でもこの仕事量をこなすのはきついかぁ」

「また煽って私を焚きつけようとしているな!?」

「あ、バレました?」

 

 そうやって千束に迫られてあっさりとごまかそうとする楠木。

 千束は人知を超えた才能を神から授かったとされるアダムズギフテッド。アラン・アダムズの因子を持つとされる特殊な才能の持ち主である。

 常人を遥かに凌駕する頭脳と身体能力を持ち、一人で何十人もの人間が行うであろう情報を処理する情報処理能力も備えているとされているが、当然そのような才能の持ち主でも、精神が摩耗すればスペックは低下するし、仕事に身が入らなくもなる。

 ここ数日は特に書類仕事が積もりに積もっており、それを全部楠木から千束に振られるため、いよいよ我慢の限界が来たという次第である。

 

「と、言うわけでここからが本題なわけですが……」

(ん? なんか私うまいこと誘導されてた?)

 

 この状況を巧みに作り出したかのように、楠木が本題を口に出した。千束はまんまと誘導されていたというわけである。

 そう口にして楠木は、アタッシュケースから何かを取り出す。

 それは一つのぬいぐるみであった。大きすぎず小さすぎずといった。デスクの上に飾って置ける感じの俗にいうぬいである。

 そのぬいぐるみ。ぱっと見ある人物を模しているようであった。

 その人物とは、このD組で最も優秀にして最強と呼ばれているリコリス。そう、井ノ上たきなである。

 たきなをデフォルメしたかのようなぬいぐるみ。それを楠木は千束にポンと手渡した。

 

「はい、私からのプレゼント」

「なにこれ? たきなさんのぬいぐるみ? これが何を意味すると?」

「DAグループがAIを専攻しているというのは周知の上ですね?」

「まぁそりゃあ一応」

「このぬいぐるみにはラジアータと同じ技術を利用した超高度AIが搭載されており、ぬいぐるみの形をしながら人が行う仕事のサポートを的確に行ってくれる。人を助け寄り添うAIシステムだ」

 

 楠木が語る。DAグループとAIの結びつき。

 ラジアータという超高度AIを搭載するDAグループの根幹を成す中枢システム。この国のありとあらゆる事件事故、犯罪者やテロリストのデータが内蔵されており。

 かつてこの国は内戦が起こっていた。この国は多くの優秀な遺伝子を持つ人種がいて、それが他の国から重宝されており、その支援を受けている。

 だが優秀な遺伝子を持つ人間が多くいるがゆえに考えや派閥の違いも謙虚に出てしまう。

 生まれながらの優秀な遺伝子を尊重し、天使から授かった才能を駆使するものが国を収める。平等こそが国の安寧を揺るがすという考えをする東側。

 対して平凡かつ劣等な遺伝子を持ってしまった場合でも、悪魔との契約によって才能や能力を付与し国を支える。不平等こそが国を亡ぼすという考えをする西側。

 両者の対立が加速し、やがてそれが争いを生み、今この国は二つに分かれている。

 それを統治し管理し、次の戦争を起こさないため、もう悲劇を生まんとするために発足し作られたのが、千束達がいるこの中央(セントラル)である。

 中央は優秀な遺伝子を持つものでも、平凡な遺伝を持つものでもなんでもよい。国を一つとしてまとめ上げるための手段と、強大な権力を有している。

 だがそれがまた新たな火種を生んだ。中央と、中央ではない地域への格差。それにより東西のあらゆる組織に、中央は狙われているために、中央は犯罪者やテロリストが多い。

 それを裏で暗躍し、処理しているのがDAが所属するリコリスである。表立って犯罪に対処する組織、国指定軍事警備組織『ヤタガラス』といった警察組織も存在するが、もう表で平和を唄うだけでは、国は成り立たないのである。

 

「優秀な人材の能力をより高度の次元へと押し上げ、そして平凡な人間を助力する。これが中央が選択したAIという道だ」

「それは何度か研修で勉強させられましたら理解はできてますが……」

「その一環として、DA技術開発局にて試作型小型AIサポートとして作らせたのが、このAI井ノ上たきな人形。――長いから"あきな人形"と略すか」

「真っ逆さまに落ちていきそうな名前してますね」

 

 AIのたきなで略すとあきなになるという。国民なら誰もが存している超有名な歌手のような名前になるこのAIたきな人形。

 これがいったい、仕事量に困り果てている千束をどう助けてくれるというのか。

 

「これをコンピューターに接続して作業すれば、作業の効率化や情報処理などを全面的に作業してくれる。つまり作業を行い人材が一人増えるというわけだ。つまりは2倍の効率で仕事ができる。これで今ある仕事は片付くだろう?」

「……てかAIが全部私の仕事やってくれればいいんじゃない?」

「お前はすぐそうやって楽をしたがる。そういう考えを持ち機械を行使し続ければ、やがて映画や漫画のような機械やAIの反乱がおき人類が滅ぼされたりするケースに繋がるんじゃないのか?」

「ほほう! そういった事柄に興味がおありですか楠木教頭! そしてそういった話題を私の目の前でおっしゃられる! いいですよ私おススメの映画があるんです。なんだったら仕事終わったら私の家に来て鑑賞会しましょうよ! 初代からニュー〇ェイトまで全部取り揃えておりますよ! あれだったら海外ドラマ版も間に挟んで最後にはもう1回2(ツー)を見直して締めるというプランでご用意させていただきますが!?」

「……遠慮します」

「なんでですか!? 特に2(ツー)は名作です! あれだったら全シリーズ貸しますので是非全部見ていただきたいです!!」

「いや別に見たことあるし。3以降が上手くいかなかったのでしょう?」

「確かに2があまりにも名作すぎて3以降が振るわなかったのは事実です。ですけど私個人ですけどジェ〇シスは初代と2を見たうえでぜひおススメしたくてですね! シリーズファンなら「あのオマージュか!」と思わず制作陣へのリスペクトを感じますし、ジェ〇シスはシリーズでも唯一といってもいい、こうハッピーエンドなんですよ! 確かに続編制作が途絶えてしまったから実質打ち切りなんですけど相対的に見れば見方が全員幸せで幕を閉じるという感じがまたたまらなく……」

 

 と、好きな洋画のことなら早口になる洋画オタクの千束。

 これにはかの楠木教頭でさえ圧倒され気圧されてしまうほどであり、これ以上は巻き込まれてしまうと危機を察したのか上手く撒いてその場からいなくなってしまった。

 残ったのは大量に積み重なった仕事の量と、千束の宿敵井ノ上たきなを模したAIのぬいぐるみ。AIたきなさん。略してあきなさんである。

 ちなみに楠木教頭曰く、あきなさんは井ノ上たきなのこの数日までの言動や行動、思考や意識などのデータを細分化し自己学習させているため、いわく99.9%井ノ上たきな本人だと思ってもらっても良い。とのことらしい。

 なんだか嫌な予感をしつつも、せっかくだし使ってみるかと千束は電源を入れて仕事にとりかかった。……のだが。

 

『千束先生。この部分の効率化が悪いです。修正を提案します』

「……」

『あなたはバカなんですか? この作戦内容では味方陣営に何かしらの犠牲が出てしまいます。こちらの被害率を5%以下に抑えるように作成しなおしてください。プランはこのうち7通りから最適なものを組み込んでください』

「…………」

『あなたはバカなんですか? どうしてこれまでの内容からこうも逸脱してしまうのですか? 現在のプランは破棄し、この86パターンから絞って23パターンに……』

「………………」

『あなたはバカなんですか? この予算プランは……』

「何一つ状況変わってねぇじゃねえかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 そうあきなさんに横からありとあらゆる小言を連発され、ついに怒りの限界がはち切れた千束。

 確かに仕事の効率化や最適化には千束個人の力だけではなくあきなさんの助力もあり仕事はまとめにまとまり、先ほどよりも進みはいい。

 だが問題はAIの能力ではなく、たきなの人格を自己学習して成り立ったその疑似人格の方であり、当然普段からたきなは千束に対して容赦というものをせず、敵意をむき出しに皮肉や罵声を浴びせている。

 そんな人物の人格がAIとして組み込まれており、それを千束が利用しているのだから、実質隣でたきなに小言を言われながら仕事をしているみたいになるのである。

 仕事は進む。だが仕事のストレスは緩和されないむしろ悪化している。何とも皮肉な話である。

 

「あきなさん!? いちいち私に対してバカバカ言ってますけどね!? もっとこう言い方ってのがあるでしょ!? AIなら励ますとか叱責するにしても優しくだとか!?」

『対応を検索……。わかりました、言い方を変えましょう。あんた、バカぁ!?』

「そうじゃねえよ! バカって言う言い方を変えろって話じゃねぇよバカって言う表現やめろって言ってんだよ!?」

『バカに対してバカって言って何が悪いんですか。あなたはバカなんですか?』

「今すぐぶっ壊すぞこのクソぬいぐるみ!!」

 

 これだと人間とAIが手を取り合うなんて遠い話で。結局はいつもの千束とたきなの痴話げんかである。

 ちなみに千束はあきなさんを破壊したくてたまらないが、万が一壊れたら※※※万円の出費が生まれ、それは千束の次の給料から天引きになると言われているため壊すこともできない。

 

『ほら、くだらない会話は効率化の妨げになりますよ。早く仕事に戻ってください』

「誰のせいだと思ってんだよ……。仕事は進むけど気疲れは教頭がいる時より数十倍だよバカ……」

『バカ? あなたはバカなんですか?』

「……」

 

 もういつもたきなに言われている以上にバカバカ言われすぎてもうどうでもよくなってきた千束。

 確かに相手はAI。つまり機械のため特定の言葉を繰り返し使うなど、心というものがないため平坦な物言いになってしまうのだろう。

 そう認識したうえで千束自身も仕事をこなす機械みたいになって、死んだような目で仕事に取り掛かる。

 

「……いつもそうやって私を目の敵にして空気も読まずに襲い掛かってくるし、勝負がおざなりになったら最後の方には心無い言葉投げつけてくるし」

『あなたはバカなんですか?』

「……悔しいし腹立つけど。でも実力は本物なんだよなぁ。最強のリコリスと言われているだけのことはあるし、私の存在がそのプライドを傷つけてしまってるのかなぁ」

『あなたはバカなんですか?』

「それだったらいっそのこと一切関わりを絶ってしまってもいいのに。私は別に君の邪魔をする気はないよ。君は十分強いから助けもいらないだろうし。その強さは、誰よりも理解しているつもりなんだよ」

『あなたはバカなんですか?あなたは、あなたは、わわ、わわわわわわわ………』

「ん!?」

 

 なにやら会話の最中にて、あきなさんはエラーを起こして、そしてブツンと電源が切れてしまった。

 それを見て千束は焦りだす。なぜなら壊したら、給料何か月ぶんか無くなってしまうのだから。

 

「ちょいちょいちょい! やめてよ何があったの!? 動いてよ私の給料!(意味不明)」 

 

 そう千束はぬいぐるみをバンバン叩くと、ぬいぐるみは再起動した。

 そして、何やら様子が変わったかのように。穏やかな口調であきなさんはしゃべりだした。

 

『……私だって。錦木千束の実力は認めていますよ』

「……ん?」

『認めざるを得なくて。でも私はD組で最強だから。その最強を揺るがしてはいけないから。私のその最強に連なるその強さを認めてしまうのが、悔しくて……』

「……これは、もしや?」

 

 あからさまに先ほどに比べ、AIな感じが薄れているようなあきなさん。

 機械が自分の意思を持って、プログラムに反したような言葉を口にする。

 そう、このパターンやアンドロイドやAIをテーマとした作品にありがちなあの展開。そう、機械に心が芽生えるというお決まりの展開である。

 著名な作品から引用するならば「人間が何故泣くか分かった。俺には涙を流せないが……」のあの感じである。

 そこから溶鉱炉に親指を立てて沈んでいく展開になるかはさておくとして。現状、今、AIであるあきなさんに心が宿ったのである。

 千束が井ノ上たきなに対する心情を吐露したことによって、あきなさんに、心が宿ったのである!

 

「にしては展開が急すぎるし早すぎやしない? あきなさん使ってまだ30分も経ってないよ……」

 

 それは物語の都合だから、仕方ないのである!!

 

「……」

 

 千束にも状況を納得していただいたところで、話は進む。

 

『両親を失い。引き取ってくれた姉と慕っていた人物を失い。そして私から全てを奪ったこの世の中をなんとかしたくて私はリコリスになりました。だが適性値が基準値を遥かに超えた私は、気が付けば人を超え、化け物とも呼ばれる身体に変わってしまった』

「……」

『誰も私の横に立てる存在はいない。でも先生は、錦木千束ならば化け物となり果てた私の横に立ってくれる。私を理解してくれる』

「そ、そう……?」

『その心情を悟られるのがまた悔しくて。いつも突っぱねてしまうけど、私は先生のことが』

(これって、教頭曰く99.9%たきなさん本人だと思ってもらってもいいって言ってたよね。ってことは今このあきなさんが口に出している言葉は、たきなさんの……)

『先生は……私の』

 

 バンバンバン!! ボカーン!!

 

「あきなさーーーーーん!?」

 

 と、あきなさんが何かを言いかけたタイミングで、銃弾が数発あきなさんに命中し、あきなさんは破壊されてしまった。ちなみに千束の数か月分の給料も飛んだ。

 千束の給料がなくなったことは置いといて、誰があきなさんを破壊したかというと。

 千束が目線を銃弾が発射された方へ向けると、そこにはたきながいた。

 

「リ、リアルあきなさん!!」

「誰がリアルあきなじゃ。誰が真っ逆さまに落ちてくねん」

「あ、割と元ネタはご存じで……」

 

 昨今は昭和の歌謡曲がテレビで特集される機会も多く、現代の若者も昭和の歌の知識があったりもする。

 

「ど、どうしてここに。てかなぜあきなさんを破壊したの!?」

「なんか先生が職員室で私を模したぬいぐるみと会話してるって話を耳にして、気持ち悪いなと思いながら様子を見に行ったら、その光景を目にしてなんかもう胸がムカムカしてつい打ち壊してしまいました」

「これ壊したらいくら弁償すると思ってるの!? 私の数か月分の給料どうすんの!?」

「知りませんよそんなこと。私の了承も取らないで私そっくりのぬいぐるみ作って気持ち悪いことしてる方が悪いんでしょうが」

(了承取ってなかったのかあのババア!!)

 

 どうやらあきなさんを制作するにあたって、モデルとなったたきなの許可は取らず無許可で制作したらしい。

 そうなるとたきなからすれば、千束が自分のぬいぐるみを勝手に作って自分の都合の良いように自分のぬいぐるみとお話をしているように捉えてしまい、背筋がぞわっとするのも致し方ないだろう。

 そんな光景を目にしたうえで、たきなは千束に詰め寄る。千束は事の経緯を説明する。

 

「楠木教頭。勝手になんてことを……」

「てなわけで壊れてしまったあきなさんなんだけど。楠木教頭曰く99.9%君自身ととらえてもらってもいい。って話だけど……」

「……」

「ということは、さきほど自我が芽生えたあきなさんの発言は、ほぼたきなさんの意思と同一と捉えてもらってもよいと?」

「がっ! ――会話って、よく聞き取れなかったのでその内容がわからないんですけど」

 

 そうたきながしらばっくれると。

 千束の悪い癖だろう。そのたきなの反応を見て意地の悪~い表情を浮かべ。

 パソコンの音声データの再生ボタンを押した。

 

『誰も私の横に立てる存在はいない。でも先生は、錦木千束ならば化け物となり果てた私の横に立ってくれる。私を理解してくれる』

「はぁ!?」

『その心情を悟られるのがまた悔しくて。いつも突っぱねてしまうけど、私は先生のことが』

「あっ……。うぐぐ……」

『先生は……私の――。ピー(音声はそこで途切れる)』

 

 音声は自動録音されており、まるで公開処刑のようにたきなの前で内容が流される。

 それを聞いてたきな自身思うことがあるのか、否定できない何かがあるのか。

 ただでさえ赤を纏うファーストリコリスに、顔までトマトのように真っ赤に染まり、全身真っ赤な井ノ上たきなが出来上がった。

 

「///////////(赤面している)!!」

「先生は私のなんなのさ? なんだったら続きは本体から言ってくれてもいいんだよぉ~?」

「こ、この/////////!!」

「もう、なんだよ。私は君のなんなんだよぉ~? た~き~な~」

 

 バンバンバン!!

 

「んぎゃーーー!! いきなり顔面向けて発砲はやめい!!(もちろん当たり前のように弾丸避けました)」

「お前を真っ逆さまに落としてやる!! 炎のように燃やしつくしてやるぅぅぅ!!」

「ちょいまてちょいまて!! てかパソコンはやめてここ数週間分の仕事のデータ全部飛ぶから! わかったから謝るから許してぇぇぇぇぇ!!」

 

 と、真っ逆さまに落ちたように恥ずかしがり、炎のように燃えて恥ずかしがるたきなは全力で千束に襲い掛かる。

 その後千束が抱えていた仕事がすべて終わったかは、誰も知らない。

 あと余談だが給料はあきなさんの修理費で飛びました。

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