「我々リコリスに取材……ですか?」
「あぁ。このD(defense)組ならば取材を受けても問題ないだろう。D組はDA組織の中でも穏健派で通っている。国の脅威の『殺害や排除』を主に動くA組はB組のリコリスとは違う。お前達D組に与えられている武器は殺傷力を限りなく抑えてある。一種の学生自衛団とでも通せるだろう」
リコリスに取材の依頼がきた。そのことに不安視するフキ。そんなフキを納得させるため丁寧に不安を取り除くよう説明を加える。
DA本部よりD組支部に送られてきた今回の案件。
それはメディアによるリコリスへの取材の依頼が来ているというもの。
DA、ひいてはリコリスは秘匿性の強い組織とシステムである。故に取材などというものを簡単に受けるわけにはいかない。
だが秘匿性が強すぎると、世間には訝しむものが多くなる。隠しすぎればそれ相応に怪しくなりすぎてしまうというジレンマに駆られる。
脅威から守らなければならない市民の支持を受けるにあたり、組織が怪しいものではいずれは自らもまた脅威と捉えられてしまうこともある。
それを避けるため、あえて晒せるものは晒し、与えられる状況は与える。その上で良いものだけを摘出していただき、秘匿するところは隠し通す。
木を隠すなら森の中。というやつである。
「しかし与えられた情報からそれ以上のものを割り出そうとする輩も出てくる可能性もあります。それに外部からの脅威がDAのこの取材の件を受けて余計な動きが活性化することだって……」
「おおむねそれが狙いだろう。あえて我々がメディアの取材というプロパガンダを利用する。それにより他の脅威を触発し我々のテリトリーのおびき寄せる。最近はアンダーテイカー、それに付随するテロリストの動きも静かだからな、こちらから一手を仕掛けるといったところか」
現在この国の東西、そしてそれを統治する中央の関係は緊張状態にある。
かつて国内の戦争に勝利した東側は中央と友好的協力関係にあるとはいえ、問題は西側である。
貧困と国民差別、遺伝子や技術格差により不満が爆発している西側こそ、テロリストの巣窟とかしており、常日頃中央陥落を、そして東側への進行をもくろんでいる。
東側へ進行するためには必然的に中央を突破しなければならない。東側にとっては中央は自分たちにとっては有利かつ都合の良い盾である。
国内における戦争。悲劇を二度と起こさないため、DAによって拾われ兵士としての人生を与えられた女子高生、リコリスは今日も武器を手にし戦っているのである。
(まぁもちろん、我々DAが行き場を失った少女たちを集め"兵士として作り変えていること"などは、公になどできないがな……)
楠木は内心、表には絶対に公表してはならない事実を腹に一物抱えつつ、目の前にいる少女たちを"人とは"けして認識せずに、冷徹に一瞥する。
ならばこそ、楠木は少女たちをどう認識しているのか。そこにいる春川フキに対しては、どのような感情を抱いているのだろうか。それは本人にしかわからないだろう。
「今度の薬物売買を行っている組織の壊滅任務。そこにお前とサクラ、そしてたきなを行かせる。せっかくの取材だ、なるべく戦力としては華があるところを見せた方が良いだろう」
「わかりました。……その」
「なんだ? 思うことがあるなら言ってみろ?」
何かを言いたそうに口ごもるフキに、楠木は正直口にするように言う。
「最近は何かと書類仕事が多くて、実戦が少なくてですね、身体が鈍ってるんですよ。だから、その……」
「……」
そう上目遣いで楠木に何かを言いたげな様子を見せるフキ。
例えるならこれは、母に何かをねだろうとする娘のような、そんな仕草だった。
フキが自身に何を求めているのか、それを正直に言い出せずにいるのも、楠木は半場理解しつつ。
左手の時計を目にし、時間を確認し、息を一つ吐いたところで楠木が口を開いた。
「……1時間ほどなら時間を取れそうだな。仕方ない、久々に稽古をつけてやろうか?」
その楠木の一言に、フキは顔を少し赤らめつつ、晴れやかな表情を浮かべた。
それを見て楠木は、この少女の兵士たる信念の甘さをやや感じつつ、だが根は何かに甘えたくなる欲求を抱えている年頃であることを認識しつつ、あえてフキのための時間を取ろうとした。
それはフキの上官としての心情か、それとも……。
――――――翌日。
取材が来る日。
待ち合わせは人けの少ない路地。
ここには今回の討伐目的である薬物売買組織が裏で薬物の取引を行っていると情報があった場所である。
リコリスは学生に偽装しているためそう簡単には怪しまれない、まずは下っ端から情報を得ようとする算段である。
現在フキとサクラの二人が現地についている。たきなは後々合流予定である。
「くそおせぇな。先に始めちまうぞ……」
「気合入ってますねぇフキさん。久々に実戦かつ取材だからいつにもまして闘志が燃え滾ってこっちまでやけどしそうっすよ~」
「くだらねぇこと言ってんじゃねぇぞサクラよぉ」
と、そんなことをフキとサクラが話し合っていると、ようやく取材の記者らしき人がやってきた。
リコリスの取材。ということは常に危険と隣り合わせだ。それは相手方にもきちんと伝えてある。
なのでそれなりに危険に対して身を守る術を身に着けているような人物が来るものだと思っていた。だが、やってきた記者の人はなんかイメージと違っていた。
「は……。はじめま、して。本日はその、よろ……よろしく! おねがいしま……しゅ! ひゃ! 嚙んじゃった!!」
「……」「……」
やってきた記者は、地味~な恰好をした細身の童顔の、瓶底眼鏡をかけた。いかにもひ弱そ~うな女性であった。
おまけにドジっ子属性まで持っていそうだった。こんなすぐにでも敵に捕まってしまいそうなやつを引き連れて凶悪組織を壊滅させろなんて言うものだろうか。
「……私よぉ、この女が仮に敵に捕まっても微塵も助けようだなんて思わねぇからな」
「ひぃ!」
「フキさ~ん。いきなりお相手さん怖がらせてどうすんすか~」
今回の任務。要は人質になってもおかしくない戦闘経験のない一般人を守りながら任務をこなす。という一面もある。
自己防衛が多少でもできるような記者なら守ることも視野に入るが、目の前に現れたのを見てもう守りながら戦うのを諦めてしまったフキ。
フキの態度にびびる記者にフキをなだめるサクラ。とりあえず一度互いに自己紹介をすることに。弱弱しい記者から名刺を受け取るフキ。
「えぇと……。
「はい、北ノ湖知佳です。ど、どうも……」
「なんつうか力士みたいな名前だな。てかうちにもいたわ、力士みたいな苗字にあんたと似たようなニュアンスの名前のやつ」
「あ~。確かに言われて見りゃそうっすねぇ~」
フキとサクラが北ノ湖記者の名前から連想する人物は、おそらくあの能天気お気楽女のことだろう。
その二人の会話を聞いて、北ノ湖記者は興味を持ったらしく二人に尋ねる。
「わ、私に似た人がいるんですかぁ~?」
「あぁ名前だけな。キャラは全然ちげぇよ。どっちも私にとってはクソうざく感じるけど」
「がーん」
どうにもフキは初対面で北ノ湖記者のことをあまり好きじゃないと感じたのかボロッくそに暴言を浴びせる。
これから一日行動を共にするというのに、大丈夫だろうか。
「とりあえずまぁ、まずは我々リコリスの実力を見せなきゃ始まらないな。あそこの路地から通れる道筋、その奥で今取引が行われてる。その前で見張りをしてる屈強な男が二人。普通の人ならまず関わらねぇが、私らなら関係ねぇ」
「あ、あきらかに体格差がありすぎますよぉ。事前に話は聞いてますけどだだだ、大丈夫なんですかぁ?」
「いいから素人は黙って見てろ」
そう言ってフキは一切の躊躇を見せずに男二人に向かっていった。
当然男二人は向かってくる女子高生に対し不信感を抱き敵意を丸出しにする。
「おいチビ、ここはガキが来る場所じゃねぇぞ。あっち行きやがれ、でねぇとひどい目にあわすぞ」
「おぉ~。取材に合わせてテンプレ的なセリフありがとー。事前に打ち合わせでもしてんの?」
「あ? 何言っt」
バコーーーーーーーン!!
男がそう口を返そうとした瞬間、フキが思い切り持ってる刀型ラジアータ『菊一文字』を薙ぎ払い、屈強な男を吹き飛ばした。
それを見たもう一人の男が、ナイフを取り出しフキに向かっていく。
「な、なにもんだてめぇ!?」
「なまくらがぁぁぁぁぁぁ!!」
パキーン!!
そう言ってフキは自分に振るわれたナイフに対し刀を振るいぶつける。
小柄な体格を生かし低い姿勢から振るう斬撃。早く、鋭く、素早く。攻撃と回避を両立したフキ特有の戦闘スタイル。
フキが操るのは殺傷力の無い刀。だがその威力はすさまじく、ナイフの方が真っ二つに裂けているほどである。
剣術を極めし物、其が振るう刃はそれに切断力が無くとも、時としてそれは物体を断ち切ることすら厭わない。
フキに剣術を叩きこんだ人物が、かつてフキに語った真意の一つである。
「な、ナイフが真っ二つに……」
「ふんっ」
バコン!!
そうひと息をついてフキは戸惑っているもう一人の男の脳天に刀を叩き落とし再起不能にさせる。
リコリス。それは女子高生の姿をした、常人以上の戦闘能力を有したDAの兵士である。
これはまださわりでしかないが、外部の人間にリコリスとはなんたるかを示すには出来すぎたデモンストレーションだろう。
その後フキは単独で路地の奥へと進んでいき、そして数分後サクラのスマホに合図を送り、サクラ達が続いて入っていくとさらに5人ほどの男たちをフキが単独で撃破していた。
「も~う。フキさん少しはあたしの分も残しといてくださいよ~」
「うるっせぇ。少しばかり気合入りすぎてんだよ」
「取材だからって浮かれてんすかぁ~? あぁわかった~。昨日久々に楠木教頭と稽古したって聞きましたよ~? それで身持ちが違うんっすねぇ~」
激しい戦のあとでさえ、戦場の緊張感さえ感じさせない女子高生の軽い会話。
彼女たちは強大な戦闘力を有した兵士でありながら、表向きはただの女子高生なのである。
そのスタンスを崩さないやり方。立てば芍薬座れば牡丹か……。
「こ、これが……。リコリス」
「記者さんにも理解してもらえたところで、この場から立ち去りましょうよ~」
驚きで言葉を失っている北ノ湖記者を横目に、サクラが軽いノリでその場から立ち去ろうとすると。
仕留めそこなった男の一人が立ち上がり、この場で一番脅威にならなそうな北ノ湖記者に狙いをつけ。
「そ、そいつを人質にすれば!!」
「や、やっべ!」
ついフキも油断をしすぎていたのか、北ノ湖記者がいたことをすっかりと忘れてしまっていた。
このままでは北ノ湖記者が狙われる。そうすれば状況が拮抗してしまう。
そうフキとサクラが危機と感じた時であった。
「あ、あひゃ~!」
バコ!
北ノ湖記者が抵抗して振り回した持ち手カバンが、襲ってきた男の顎にちょうどよくヒットし返り討ち。
ドジっ子記者のリアルラックな一撃に、フキとサクラが安堵する。
「あわわ~。大丈夫ですか~?」
「おい近寄んじゃねぇ! さっさとずらかるぞ!!」
そうフキは北ノ湖記者の腕を掴み、サクラまとめてその場を後にする。
そしてそこから少し離れた場所、そこはひとけと店が多くある街並み。
その近くのひっそりとした喫茶店の近く。そこはたきなと落ち合う予定の場所である。
「さっきぶちのめした連中から電子機器を奪い取った。一応情報も吐かせるだけ吐かせたが信憑性も定かじゃねぇだろ。ラジアータスキャンにかけて機器から情報を吸い出して情報と照らし合わせる。今日中にはアジト諸共ぶっ潰せるだろ」
フキはそういって男たちから奪った機器をサクラに手渡して、ラジアータの分析にかけて情報の吸出しを行うよう指示する。
数分後、スキャンしたデータをサクラが持ってきたタブレットに転送し(これらの電子機器の操作はフキは苦手なのでできません)、口を割らせた内容と照らし合わせ。
色々と情報が集まったところでたきなの合流を待つことに。
「にしても北ノ湖さんだっけか? 中々やるじゃねぇか」
「た、たまたまですよ。なんかカバン振り回したら上手いこと当たりまして。てへてへ……」
「……やっぱまぐれだったのかな」
一瞬フキとしては北ノ湖記者が意外と自己防衛できるタイプの人間なのかと思ったが、その返答などを聞くとどうもそんなタイプの人間ではない気しかしなかった。
結局はどこかしら敵から守りながら戦わなければならないのか。そう思うとフキは先が思いやられる気がした。
「えぇと、一応取材なのでどこか休める場所はありませんか? 色々と聞きたい話もあります……ので」
「作戦も立てなきゃいけねぇしそんなに時間もねぇぞ。あと答えられることなんてたかが知れてるからあんま期待すんなよ」
「は、はぁ……」
弱弱しく簡単にフキに言いくるめられてしまう北ノ湖記者。
確かに取材なので色々と本人たちの口から聞いて記事にすることもあるだろう。
あまり取材としてのネタが足りなければ、会社から怒られでもするのだろうか。目の前のフキと、会社の上司からのお叱りとどちらも怖いのか終始あわあわしている北ノ湖記者。
そんなやり取りをしていると、遠くからフキと同じ赤い制服を着た少女がやってくる。井ノ上たきなである。
「井ノ上たきな。ただいま合流致しました」
「おうご苦労。こうやってファーストが2人揃って任務すんのも久しぶりだな」
「そうですね。なんでも取材だとかで。本当に取材なんて受けて大丈夫なんですか?」
「大丈夫だろ。記者もなんか弱そうだし、下手なこと知った時は脅して黙らせればいい」
「ひぃ!?」
そうフキは北ノ湖記者の方を一瞥して威嚇。
北ノ湖記者は当然怯えていた。
そんな北ノ湖記者を、たきなも認識する。あまり他人に興味を抱かない彼女なら、記者など余計なことで関わらなそうではあるが。
「あ、あの……?」
「……」
そう怯え切った小物のような目でたきなを見る北ノ湖記者。
たきなは当然目にもかけないだろう。と、思っていたのだが。
意外なことに、たきなは北ノ湖記者に近づいていった。
「あ、あの~」
「じぃー……」
「え、えぇと……」
「じぃ~~~」
怯える北ノ湖記者を、ジト目で見つめるたきな。
睨みつけるとかではなく、なんかこうなんというかこう、ものすっごく何かを怪しむかのような目線を送っている。
そんなたきなを見てか、フキが宥めるようにたきなに言う。
「おい、あんまりびびらせんなよ」
「フキさんが言いますそれ……」
今に至るまで北ノ湖記者を一番ビビらせているのはフキだろう。サクラはバレないよう横で小さくツッコミを入れる。
そして何かを納得したのか、たきなは改めて北ノ湖記者と挨拶を交わすことに。
「井ノ上たきなです。よろしくお願いします」
そう礼儀正しくたきなは北ノ湖記者に握手を求めた。左手で……。
「(左手……?)よ、よろしくお願い……します」
二人は握手を交わす。なんとなくたきなの握手にいやらしく力が入っていたようにも思える。
(痛っ……)
「さて、では指定した喫茶店に入り作戦の立案でもしましょう」
そうたきなの主導で喫茶店へと入ろうとする一同。
すっかり場がたきなの主導になってきたのか、サクラは嫌そうな表情を浮かべ、フキも少しばかり納得がいってなさそうな表情を浮かべる。
と、喫茶店に入ろうとした時。たきながこの場とは関係のない、こんなことをフキとサクラに問いかけた。
「そういえば、千束先生はどうしたんですか?」
「あぁ、あいつは今日オフだそうだ。仕事続きで疲れてんだろうさ。たまには家で休んでんじゃねぇか?」
「ふ~ん。取材が来るなんて言えばあの超絶お気楽お元気バカは喜んで参加した~い。なんて言いそうですけどね。取材の件は知ってるんですか?」
「あ~。言われてみればそうだな。あのイベント大好き超絶お気楽人外バカなら確かに駄々こねて取材受けたいとか言いかねないもんな。あえて教頭が伝えてねぇんじゃねぇか?」
「…………」
ここに千束本人が目の前にいないからなのか言いたい放題のたきなとフキ。
その会話を聞いて、なんとなく北ノ湖記者が一瞬だけ苦い表情をしたような気がしたが、北ノ湖記者は関係ないはずだからきっと気のせいだろう。
ちなみになぜたきなが千束が今どうしているのか気になるのか。それはこんなことが理由だったからである。
「実は千束先生に合って渡した方がいいのか黙っていた方がいいのかわかんないんですけどね、あいつこの前あまりにも疲れていたのか、命より大事だって言ってた映画館のゴールドパスポートデスクの床に落としたの気づかないで帰っちゃったらしいんですよ」
「!?」
そう、千束は月10回は映画館で映画を見るほどの映画好き(忙しいわりにはしっかりとそういう時間は作っているらしい)。
そんな千束が映画館に行くときに必ず提示するゴールドパスポート。
その中には大体3人ほどが無料で映画を見れるくらいのポイントが溜まっているという。
ちなみにそれだけポイントが溜まっているなら、自分でたまには使って無料で映画を見れば良いじゃないかと思うだろうが。
『ポイント使って無料で映画を見て何が楽しいのかね!? お金を出して映画を見るからこそそれに価値があるんでしょうが!!』
とのことらしく、溜めたポイントを使わないことを信条としている。
あくまでポイントとはどれだけ自分が映画に時間を有しているかを示す経験値であり、それをたまに確認して恍惚とする数値であるとのこと。気持ちわる!!
「!!!?」
「……どうした北ノ湖記者?」
「え!? いやあの! え!?」
なぜか全く関係のない人物の話題なのによくわからないが自分の持っている財布の中身を確認し始める北ノ湖記者。気持ちわる!!(2回目)。
「すぐにでもここに来れるっていうなら親切心で手渡しても良いんですけどね、家でおくつろぎのところをわざわざここに呼び出すのもなんか悪いですし」
「別にいいんじゃねぇの? 気づいたら電話かけてくんだろ。気づかないってことは所詮あいつにとってゴールドパスはその程度のもんだったってことだろうよ。それよりポイント結構溜まってんだろ、任務終わったらポイント使って映画見に行かねぇか? 私ゾンビラ〇ドサガ見てぇんだよ」
「そうですね。まぁ先生のご厚意とでも思って素直に受け取っておきましょう」
そうフキとたきなはなんと人の落としたパスポートを勝手に使って映画を見に行こうと企て始めた。
サクラも釣られて乗り気である。そんな中、その行為に対して激しく意を唱えた人物がいた。
「だめぇぇぇぇぇぇ!!」
そう叫んだのは北ノ湖記者であった。
思わずびっくりするフキとサクラ。たきなは冷徹な目線を送り続けている。
「ど、どうした北ノ湖記者?」
「あ、あの……。えぇと……。他人の必死に溜めたポイント勝手に使うのはどうかと……」
「……まぁ、いくらあいつのポイントとはいえ財産だもんな」
「そ、そうだ。私一回会社にお電話してこないとだったんだ。すいませんちょっとしつれいしまーす」
「???」
北ノ湖記者は後半なんか棒読みでフキを言いくるめてその場から一旦姿を消した。
そして北ノ湖記者が姿を消してから数分してから、たきなのスマホに電話がかかってきた。
それは、さきほどゴールドパスで話題に出した千束からのタイムリーな電話であった。
「……もしもし?」
「た、たきなさん! 私の映画館のゴールドパスポート拾ったりしてない!?」
「……まるで私が拾ったことをなんとなくわかったうえで私にピンポイントで電話してきたみたいな感じですね。どうして私が拾ったと?」
「い、いやそれはあの……。とにかく拾ったなら今から取りに行くからそこで待ってて!」
「あなたそこで待っててって、場所も確認しないでくr」
ブツッ! ぷーぷー!
「ぐっ!」
なんと一方的に電話してきて一方的に電話を切る千束。
そしてなんと数分もしないうちにその場にやってきた千束。
あまりにも出来すぎた展開。だがそんな違和感も3人に感じさせる間も与えないほどに千束は言葉をまくしたててたきなに詰め寄る。
「あーたまたま歩いてたらたまたま君たちが3人そこにいるのをたまたま見つけた! あ! ほらやっぱり私のパスポート持ってた! も~う勝手にこれ使って無料で映画見ようとしてたな! だめだからねそんな悪いことしたら! 先生さすがに怒っちゃうぞ☆ 今度拾ってくれたお礼にゾンビ〇ンドサガの映画見に連れて行ってあげるからさ。あぁ私この後用事あるから帰るからねぇ~。任務頑張ってねぇ~」
とまぁ3人に言葉を返す隙すら与えず長々とセリフを読み上げるかのように言いたいこと一方的に言い放って流星のように現れ流星のように去っていった千束。
そんな千束に呆気にとられながら、フキは千束がいなくなってから抱いてた疑問を口にした。
「……あいつなんでここの近くにいたん?」
そしてそんな疑問など空を切り。
そこから数分して、会社に電話すると言って一旦場を離れた北ノ湖記者が返ってきた。
「あ~。お待たせしました~。さてでは喫茶店に入って取材の方をよろしいでしょうか~」
「……」
こうしてリコリス3人と謎の記者1名は、取材件組織壊滅のために作戦を立てるため喫茶店へと入っていくのだった。
――続く。