リコリス・リコイル~3年D組の千束先生   作:トッシー00

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第一話です。書いているうちに長くなってきたので前後編に分けます。


第1話:合コンに行くわよ!!~前編~

「あんたたち二人を呼び出したのは他でもないの……」

 

 DA学園保険医、中原ミズキの言葉から、この物語は始まるのです。

 眼鏡をかけた茶髪の美人。だが27歳という年齢は世間でいう行き遅れを意味する。

 そんなミズキ先生が呼び出した二人とは、同じくDA学園の教師にして、3年D組の担任である錦木千束。

 そしてそんな千束の昔からの友人である金髪で背の低い、今にも子供と間違われてもおかしくないクルミという女性であった。

 

「おうおうどうしても頼みたいことがあるからっていうから教務終わりの疲れた身体に鞭を打って、我らが憩いの場――喫茶リコリコに来ました千束さんですよ」

「なにその説明口調……」

 

 やたら説明文みたいな言い方をする千束にクルミはツッコミを入れる。

 千束の言う我らが憩いの場、喫茶リコリコは、DA学園の近くにある喫茶店である。

 千束とクルミが高校に通っていたころから行きつけで、今も何かあるたびにここに足を運んでいる。

 夜が更ける今も、ミズキがどうしても二人に頼みたいことがあるというから、喫茶リコリコに集まっているのです。

 

「んで? そんな思い込んだ顔して、何を困ってるんですミズキ先生」

「こんな夜遅くに呼び出すくらいだ。よほど切羽詰まっていることなのか?」

 

 千束とクルミ、二人は友人(腐れ縁?)としてミズキに声をかける。

 ミズキは頼んだハーブティに口をつけ、言い出しづらいことなのか神妙な表情でいる。

 そして、意を決したように二人に本題を告げる。

 

「……合コン、人数合わせで参加してほしいの」

「よし帰るぞ。クルミ久しぶりに私の家に映画でも見に来ないかい?」

「おっいいね。スパ〇ダーマンの新作ある?」

「ちょいちょいちょいちょい!! 話は最後まで聞いてってよ二人ともぉーーーーー!!」

 

 本題を聞いた途端速攻で帰宅しようとする千束とクルミに必死にしがみついて引き留めようとするミズキ。

 あまりの粘着質に、その場から逃げるに逃げれなくなった二人はしぶしぶ喫茶店の席に戻る。

 そしてものすごく嫌そうな表情で千束はミズキに言う。

 

「あのさ? 合コンって男女ともに相手探しに飢えている者たちの相違があって成り立つものですよねミズキ先生? 私ら二人男に飢えているように見えます? クルミに至っては合コンに参加しただけで犯罪臭漂うと思うんです私」

「お前さりげなく今僕のことディスったよね。こんななりでもお前ら同世代じゃ27歳じゃ言わせんなバカ。高校も一緒だっただろうが千束」

 

 子供っぽさをさりげなく馬鹿にされた気がして思わず突っ込まずにはいられなかったクルミ。

 とまあ、実はこの場にいる3人は皆が男気を気にするであろう30間近の27歳なのである。

 年齢的にいい加減結婚を意識しているミズキ。だがなぜか同い年の千束とクルミはまったく結婚を考えていないという。

 

「なんでそもそもあんたたちは結婚とか考えてないのよ? そろそろ意識した方がいいわよほんと」

「ま、まあそうなんだけどさぁ……。ほら今仕事忙しいし」

「私と一緒の高校で勤務してるじゃないのよ。忙しさなら一緒でしょうよ」

 

 仕事を理由にこの話題から逃れようとする千束。それを指摘するミズキ。

 千束も正直なんも考えてないわけではないが、今は仕事に一途なのである。

 

「結婚とか人生の墓場だろ? 出生率とか年々下がってるだろ? テレビとか見てみろよ結婚して大失敗してる芸能人とか山ほどいるぞ?」

「んもうアンタはそうやって興味のないことはなんでもないがしろにしすぎなのよ」

 

 ミズキの言う通り、クルミに至っては結婚そのものに何の興味もない。彼女は興味のないことはとことん興味がないのである。

 ここにいるアラサー間近な女性三人の中で、結婚願望があるのはミズキだけなのである。

 そして結婚願望がない人間を合コンに誘うというのは、無理がすぎる問題なのです。

 

「お願いよぉ。もう相手見つけて、こっちも美人二人連れてくるって言っちゃったのよ~。私から見ても二人はめっちゃ見栄えいいし」

「うっわ~。外見だけ見て選ぶ女は尚更今のご時世結婚できませんぜミズキ先生」

「いやそうじゃなくて~」

 

 こんな時だけまともなことを言う千束。

 このままではせっかくセッティングをした合コンがおじゃんになってしまう。

 話は済んだ。もうこの話にこれ以上も以下でもない、そう席を立とうとする千束とクルミ。

 

「ま、ほかをあたってくださいや。私はシュ〇ちゃんかブルー〇・ウィリスとしか結婚する気ないから」

「ってことでミズキ。一人で合コン頑張ってなぁ~」

 

 そう、流れのまま帰ろうとする千束とクルミに対し、ミズキは眼鏡を光らせ。

 こうなることを予測していたかのように、用意していた切り札を出した。

 

「……ア〇ターの新作の先行試写会のチケット手に入れたんだけどなぁ」

 

 その言葉を聞いて、千束は帰ろうとする足を止めた。

 そして後ろ向きのまま、ミズキのいる席へと戻り……。

 

「……なんですって?」

「知り合いの伝手でね、ア〇ターの新作の先行試写会に行けるチケット手に入れたのよ。でも私映画とかあまり見ないから……」

「ほっ、ほほほほほう……。じゃ、じゃあ普段映画鑑賞が趣味の超絶美人教師にそのチケットを譲る……とかって選択肢は?」

「……合コン、参加してほしいなぁ?」

「行きましょう合コン」

 

 あっさりともので釣られた千束先生なのでした。

 この移り変わりの速さに、クルミは唖然として……。

 

「買収されんのはや! プライドとかないのかお前には!?」

「だってア〇ターの新作だぜ!? 私何年待ったと思って……」

 

 趣味映画鑑賞、自称映画評論家の千束からすればア〇ターの新作が誰よりも早く見れる権利というのはぶっちゃけ大金をはたいても手にしたいものなのであった。

 それを知人の合コンに参加するだけで手に入る。これ以上の千載一遇のチャンスはないのです。

 

「ま、まあ二人で合コン楽しんでくれば。僕はもう仕事で疲れて眠いので帰るから……」

 

 普段街の電気屋で働いているクルミは、仕事疲れを理由にその場を帰ろうとする。

 そんなクルミに対しても、ミズキは当然のごとく策を用意していた。

 

「……P〇5の優先購入権のチケットあるんだけどなぁ」

 

 その言葉を聞いて、クルミは先ほどの千束と同じように、巻き戻しのようにミズキのいる席に戻り……。

 

「……なんって言った? 今」

「知り合いの伝手でね、P〇5を優先で買えるチケット手に入れたのよ。でも私コンシューマーゲームとかやらないから」

「じゃ、じゃあ最新ゲーム機が手に入らなくて困っている超絶美少女(見た目は)ゲーマーにその権利を譲る……とかって選択肢は?」

「……合コン、参加してほしいn」

「行くぞ合コン」

 

 ――――――そして週末。夜8時ごろ。

 

「よっしゃ男持ち帰るわよぉぉぉ!!」

 

 この日の合コンに張り切っているミズキ、そしてモノで釣られた27歳女性二人は、町の中心部にあるカラオケボックスへとやってきた。

 当然モノで釣られたというだけで、合コンなんぞ微塵も興味がない千束とクルミは元気なミズキとは打って変わって複雑な面持ちでいた。

 

「時にあんたたち二人。合コンについてはきちんと予習は済んでいて?」

「……大学行ってた時に付き合いで参加していた程度だけど」

「僕は一切そういうのやったことな~い」

 

 合コン上級者のミズキに対し、さわりしか知らない千束と全く初心者のクルミ。

 こんなので本当に大丈夫なのか? と何も考えていないミズキに対し二人は不安でいっぱいだった。

 

「そもそも相手はどんな奴ら呼んだの? ミズキ先生」

「あらあら聞いちゃう~千束先生。相手は今話題の若い男子ユーチューバーグループよぉ」

((うっわうさんくせぇ……))

 

 そのミズキの言葉を聞いて、心底この場から抜け出したいと改めて思う千束とクルミなのでした。

 人気ユーチューバーやってる男性グループなんぞ裏で何やってるかわからない、全く信用ならない連中なのが想像ついてしまう。

 だがここで合コンをバックレると、先行試写会も入手困難なゲーム機も無くなってしまうため、もう行くしかない、止まるんじゃねえぞの精神で身を固める千束とクルミ。

 

「大丈夫大丈夫。もし相手が卑しいこととかしてきたらぁ。私ら3人でぶっ飛ばせばいいし~。10年前この街での一角でシマを荒らしていた女不良グループチームアネモネ、その中でも鏡花水月の異名で通っていたこの中原ミズキ様の手にかかれば今の若造なんぞ」

「いやいや聞いたことないしそんなやつ。自分が有名だったって勘違いしているかわいそうな奴なだけだからいい歳してやめとけ」

「いい歳してって何よクルミ! あんただって10年前この街で狂瀾怒濤のウォールナットって呼ばれてたくせに!!」

「ちっ……。あぁもうこの歳になるとかつてやんちゃしていたことがかえって恥ずかしくなるよな。なぁ? 千手観音の錦木千束さん?」

「私まで巻き込まないでくれるかなぁ? 今の流れ二人だけで元ヤンだった時代懐かしむところじゃん」

 

 千束、クルミ、ミズキの三人はかつてこの街では名の知れた不良だったとのこと。ミズキについては自称なのだが。

 という風に、多少相手が力強い男だったとしても、3人が本気を出せば返り討ちにできるので、合コンついでに襲われる心配はないとのこと。

 こうして過去の話で多少盛り上がっているうちに、相手方が到着する時間が来る。

 

「あらそろそろ時間じゃない。まああんたたちはただ居てくれればいいからさ。襲われそうになったらぼっこぼこにできるでしょ?」

「いやまぁそうだけどさ。ナチュラルに暴力沙汰はちょっと……」

 

 個人の強さはどうであれ、千束もミズキも現状立場は学校の教師である。外部で暴力沙汰をやらかしたとなれば当然学校もクビになりかねない。また楠木教頭の白髪が増えるのである。

 そんな話をしていた時、カラオケルームの扉が開く。

 そしてミズキが呼んだと思われる、3人の若者が姿を現す。

 

「すいません遅くなりました。どうしても終わらせたかった学校の課題がありまして……」

「あーいやいや、私たちも今来たとこ……って」

 

 その時、その場にいた誰もが一瞬でその光景に凍り付いた。

 

 

 なぜなら、ミズキ側からすればセッティングした合コンの場に現れたのは……井ノ上たきな――DA学園の生徒だったからだ。

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