妖と恋する聖堕天使   作:火の車

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一話

 日本地図にも載らないほどの山奥

 軽く数百年は整備されていないであろうそこは、無数の樹木が生い茂っている。人の気配なんてものは、微塵たりとも感じられない。

 そんな深い森の中には、一際目立つ巨木があった。

 

『目覚めよ。目覚めよ。』

 

 巨木なのか、樹海そのものなのかは定かではない。何者かの厳かな声が広大な樹海の中に響く。

 その声は川の水のように流れていく。まるで、何かを探し求めるように。

 

「__なんじゃ。小僧。」

 

 その声に反応した、白い影。

 声からは若さを感じるが、口調には老いを感じる。

 それはノソッと体を起こし、木の枝に腰掛けた。

 

『西の方角。童が集まる所。かの御霊、生まれ落ちる。』

「.....そうか......」

 

 それが空を見上げたと同時に、樹海が騒ぎ出す。

 恐怖か、畏怖か、それとも歓喜か、その意味は定かではない。

 だが、それが、この場所にとって非日常であることは間違いない。

 

「ならば、行こうかのう......。久方ぶりに、人間の世界へ......。」

 

 それは、凝り固まった体を解しつつ立ち上がった。

 それにまた、森がざわつく。

 だが、白い影はそれをあずかり知らぬとばかりに、軽やかに樹海から飛び去った。

____________________

 

 “数年後”

 

「__おっはよー!」

 

 バーン!と教室を開けて、大きな声で挨拶をした。

 その人物こそ、宇田川あこ!

 今年から高校生の15歳!......と言うのは表の顔。

 あこの正体は、魔術を使って戦い聖堕天使__

 

「朝から何やっての......」

「あ!おはよー!明日香ー!」

「元気だね......あこちゃん......」

「ロックもおはよー!」

 

 この2人はあこの友達の明日香にロック!

 入学してから出会って、良くしゃべるお友達!

 明日香はかすみの妹で、ツッコミ役。

 ロックは田舎から羽丘に来たらしくて、偶によくわからない言葉で喋ってる。

 

「あこ。また変なスイッチ入ってたよ?」

「それはね......あこの聖なる力が魔に反応して__」

「あ、白石君。」

「ひょわわ!?///」

 

 白石君という名前を聞いて、あこは飛び跳ねた。

 出来るだけ綺麗に座って、前髪も整える。

 

「始まったよ。あこの乙女モード。」

「なんだか可愛いよね。」

「てか、嘘だし。」

「明日香ー!///」

 

 あこは明日香をジトーっと睨んだ。

 何を隠そう、白石琥珀君は、あこの好きな人。

 特別目立つわけでもないのに独特な雰囲気があって、いつも笑みを浮かべてる。

 背は180cmくらいで、顔もいいのになぜか目立たない。そんな不思議な人物でもある。

 

「あこも好きだよねー。私は分からない。」

「えー!かっこいいのにー!」

「うーん、私も分からないかも......」

「ロックまでー!?」

 

 本当に不思議。

 まるで、あこ以外には別の姿で見えてるみたい。

 これって、好きな人だからなのかな?好きな人ってかっこよく見えるっていうし(多分)

 

「なんで分かってくれないのかなー......白石君はかっこいいのにー。」

「__俺がどうかした?」

「!?///」

「あ、白石君(今度は本物)」

 

 あこはピンと背筋を伸ばした。

 後ろから、気配を感じる。

 どうしよう......振り向けないよぉ......。

 

「おはよう、宇田川。」

「お、おひゃよう!///(か、噛んだー!///)」

 

 もうダメだ......絶対に変な子って思われた......。

 さっきまでちゃんと言えてたのに......なんで噛むかな......。

 

「ふふっ、宇田川は元気だね。」

「う、うん///」

「戸山と朝日もおはよう。」

「おはよ。」

「おはようございます......」

 

 白石君は挨拶を済ませて、あこの隣の席に座った。

 そう、席が隣なの!

 ......席替えで明日香に譲ってもらったんだけどね!

 

「ねぇねぇ!今日の放課後、3人で遊びに行くんだけどさ、白石君も来ない?」

「遠慮しておくよ。」

「えぇ~!」

「いや、当たり前じゃん。」

「女子3人だし......」

 

 気にしなくてもいいのに......。

 

「また機会があったら誘ってほしい。できれば、他の男子もいるときに。」

「うん!また誘うね!」

 

 まだ4月だし、これから誘う機会はあるよね!

 それに、行事もいっぱいあるし!

 

(ほんと、好きだね。)

(なんだか、応援したくなるなぁ......)

 

 これから頑張ろう!

 白石君と仲良くなって、あこのことも知ってもらう!

 それで、いつか、好きになってもらえたらいいなぁ......!

____________________

 

 って、思うんだけどね。

 放課後になったら、白石君は消えちゃう。

 今のところ、教室を出る姿も見たことない。

 いつ帰ってるんだろう?

 

「ああー!また消えちゃったよー!」

「ど、ドンマイ。(白石って、マジでいつの間に移動してるんだろう。)」

(教室を出入りしてるところ、見たことない......)

 

 帰りに挨拶して、また明日ねって言いたいのに......。

 このままじゃ、言えないままで3年間が終わっちゃうよ!

 

「白石君ってほんと不思議だよねー。掴みどころがないというか、なんというか。」

「別に暗い方ってわけでもないのに、友達って呼べる人いないし......そもそも、あこちゃんや私たち以外と話してるの、見たことないかも。」

「ミステリアスでかっこいいよね!」

「あ、はい。」

 

 明日香は面倒くさそうに返事をした。

 やっぱり、白石君の魅力は分からないみたい。

 まぁ、あこだけが知ってたらいいんだけどね。

 

「まっ!白石君のことは明日から頑張るよ!今日は3人であそぼー!」

「お、おー!」

「六花、そんな無理しなくても......」

 

「__にゃ~。」

 

「ん?」

 

 学校を出て、少ししたところにある公園に来た頃、どこからか猫の鳴き声が聞こえた。

 どこにいるんだろう?そう思って、辺りを見渡した。

 けど、足元にはいなくて、上の方を見た。

 

「にゃ~......」

「猫いたー!」

「あー、降りられなくなってるね。」

「そうなの?」

 

 猫って飛び降りられるんじゃないの?

 そういう子もいるのかな?

 

「困ってるっぽいし、助けてあげよ!」

 

 そう言って、あこは木登りを始めた。

 あこ、木登りできるし、あの子を助けてあげよ!

 

「あこちゃん!?」

「ちょ、危ないって!」

「大丈夫大丈夫ー!」

 

 そう言いながら、どんどん木を登っていく。

 そしたらすぐに猫のいるところまでこれた。

 ほらね!やっぱり余裕だよ!

 

「ほら、おいで!」

「フシャー!」

「えっ?__」

 

 猫のところに来て、助けようと手を伸ばした。

 けど、何か気に入らなかったみたいで、あこの手は引っかかれて、それにビックリして、足が外れた。

 まるで、時間が止まったような感覚になった。けど、それは一瞬で、そこから一気にあこの体は下に落ちていった。

 

(うあっ、これ、絶対痛い......!)

「あこ!」

「あこちゃん......!」

 

 落ちていくのが怖くて、ギュッと目を閉じる。

 これ、絶対に痛い。怪我しちゃうかも。

 やだ、やだよぉ......。

 

(......あれ?)

 

 目を瞑ってから、何秒か経った。

 けど、来るはずの痛みが来ない。

 なんで?あこ、ほんとに飛べるようになった?何かの力に目覚めちゃった?

 

 そう思いながら、ゆっくり目を開けた。

 

「大丈夫か。宇田川。」

「!?///」

 

 そこには、白石君がいた。

 そして、少しして、白石君に助けられたんだって気づいた。

 

「あ、え、えっと......///」

「怪我は?」

「だ、だいじょうぶ......///」

 

 白石君はいつも通り笑ってる。柔らかそうな黒髪を揺らしながら、やさしく。

 なんでここにいるのとか、そんなのはどうでもいい。

 ただ、白石君に助けてもらったということだけが、あこの鼓動を激しくする。

 

「大丈夫そうならよかった。猫は気まぐれだからね。気を付けることだ。」

「う、うん///」

 

 優しい声でそう言いながら、あこを立たせてくれた。

 ちゃんと立てたのを見て、白石君は軽く頷いて、あこに背中を向けた。

 

「じゃあ、また。」

「う、うん、また......///」

 

 軽く手を振りながら、去って行く。

 まるで何事もなかったみたいに、平然と。

 

「あこ、大丈夫!?」

「怪我してない......!?」

「......し。」

「し......?」

 

 すごく、ドキドキしてる。

 今までも白石君と話すときはしてたけど、もっとすごい。

 

 これって、なんていうんだろう......。

 

「白石君、好き......///」

(うわ、今までで一番すごい顔してる。)

(ていうか、白石君、どこから現れたんやろ......?偶々、通りかかったんかな.......?)

 

(白石君.....///)

 

 今までよりもっとドキドキして、顔が熱くて、苦しい。

 それに、もっともっと、白石君がかっこよく見える。

 

 今までも好きだったけど、ちょっと違う。

 さっきまでは、明日もたくさんお話ししようと思ってたのに、今は話しかけるのを想像して、ドキドキしてる。

 白石君とどう接していいか、分からなくなった。

 

 

 これ、あれだ......。

 本気の恋、始めっちゃったかも......。

 

 

 

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