妖と恋する聖堕天使   作:火の車

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十一話

 あの日に感じた違和感が、心の中にまとわりついてる。

 今まで白石君と話すときはドキドキして、楽しかった。

 なのに、最近は色々と考えちゃって、ちゃんと楽しめてない。

 

(気のせい......って可能性もあるよね......?)

 

 あくまでもあこの感覚だし、違う可能性の方が高い。

 けど、あこの感覚だからこそ、自分じゃ否定できない。

 あの抱きしめられた感覚は......。

 

(本人に聞いたら......。って、絶対無理だ......。)

 

 だって、白石君に「人間じゃないの?」って言うんだよ?

 そんなの、絶対に無理だよ。

 今の関係が壊れるのも嫌だし.......。

 いやでも、このままじゃ気まずいままになる......。

 

「はぁ......どうしよ......。」

『どうしたの?あこちゃん?』

「え?」

『何か......悩んでるみたいだけど......。』

「ご、ごめん。声に出ちゃった。」

 

 そうだ、今はりんりんとゲームしてるんだった。

 ちょっと暇な時間が出来たから、つい考えちゃった、

 

『最近、ずっとだよね......?何かあれば相談してね......?』

「う、うん。(相談、かぁ......。)」

 

 そう言えば、考えてなかった。

 明日香とか六花には聞けないけど、りんりんなら大丈夫かも。

 同じ学校じゃないし、白石君のこと知らないし。

 

「も、もしさ、好きな人が普通の人じゃなかったら、りんりんはどうするかな?」

『え......?』

 

 りんりんの困惑した声がヘッドフォンから聞こえてくる。

 それはそうだ。

 だって、自分でもよく分からない質問してるもん。

 

『うーん......よくは分からないけど......。』

「......。」

『そこまで考えて、好きって気持ちが消えてないなら、その人がどんな人でも諦められない......かも。」

「!」

 

 その言葉を聞いて、ビックリした。

 りんりんは危ないと思ったらちゃんと自分を守ると思ってたから。

 そっか......。

 

「......あこ、話してみる。」

『うん......。』

「白石君は優しいから、きっと、ちゃんと聞いたら話してくれると思う。」

 

 2人になれたら、ちゃんと話してみよう。

 その答えがどんなものでも、その時に感じたことを話そう。

 あこはこれ以上空気を悪くしないように、心の中でそう意気込んだ。

____________________

 

 次の日、あこは学校に来た。

 早く目が覚めたから、いつも良い早くに来た。

 心の準備もしたかったし。

 

(と、取り合えず、2人にならないと。)

 

 なんて言えばいいんだろう......。

 話したい事があるの......とか?

 なんか怪しくないかな?

 

(まだ白石君が来るまで時間あるし、落ち着こう......。)

 

 取り合えず、まず2人にならないと。

 あこから行動しないと。

 ちゃんと、白石君と向き合わないと。

 

「白石君......。」

「__あぁ、どうした?」

「っ!?」

 

 その瞬間、心臓が飛び跳ねたような感覚に襲われた。

 あれ、いつからそこにいたの?

 教室に1人でいるから分かる。ドアが開く音なんてしなかった。

 いつもみたいに、気づかなかったなんてことは......ありえない。

 

(や、やっぱり......!)

「やっぱり、白石琥珀は人間じゃない。」

「っ......!」

 

 まるで、心が読まれてるみたいだ。

 ここまで来て、確信した。

 白石君は......。

 

「正しく言うなら、白石琥珀は存在しない人間だ。この世で宇田川あこを除いて、その存在を刷り込まれているんだ。」

「!?」

「これが、その他の人間が見てる、白石琥珀の姿だ。」

 

 そこにいるのは、普通で目立たない男子生徒だ。

 あこが見てた白石君とは違う。

 これ、どういうこと......?

 

「ど、どういうことなの......?わかんないよ......どれが、本物のあなたなの.....?」

「......一つ、弁明しておこう。」

「......?」

 

 白石君は元の姿......かは分からないけど、今までの姿に戻った。

 そして、あこに向かって、やさしく微笑んだ。

 

「俺は決して、宇田川を騙したかったわけではない。」

「じゃあ、どうして......。」

「......そうだな。」

 

 白石君の表情が曇る。

 何かを躊躇ってるみたいな、決めようとしてるみたいな。

 少し苦しそうで、見ていて胸が痛い。

 

 それに、この感覚はなに......?

 初めて見るはずなのに、あこはこの表情を知ってる......?

 

「......楽しい日常だったぞ、宇田川あこ。兄が生れた時から、今日まで。」

「__!」

 

 リンって、空気すら切り裂けそうな鈴の音が鳴り響く。

 周りの景色から、時間が止まったみたいに色が消えて、教室が不思議な空間に変貌した。

 

「こ、これは......。」

「これは空間のみを現実から隔離させる術じゃ。」

「っ!」

 

 ふわっとした風のような声が耳を通り抜ける。

 圧倒的な存在感と安心感がある、大自然みたいな声。

 やっぱり、白石君の正体は......。

 

「.....狐白じゃ。」

「っ!」

 

 ナニカ......いや、狐白は静かにそう言った。

 白石じゃない、ただの狐白。これが、本当の名前なんだ。

 

 あこはその姿を見るために、いまだに見えない狐白を探した。

 

「探さずともおる。兄の目の前にな。」

「!」

 

 声が聞こえた瞬間、あこの目の前に狐白が現れた。

 その姿は、白い少し長めの髪に、白い着物に青色の袴。

 そして、何よりも目を引くのは、大きな九つの尻尾。これって、まるで......。

 

(九尾の、狐......?)

 

 あこは狐白の姿を見て、圧倒された。

 まるで、大自然がそのまま人の形になったような感じがするから。

 

 そんな狐白がどれくらい大きな存在なのかなんて、あこにはわかりっこなかった。

 

 

 

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