あの日に感じた違和感が、心の中にまとわりついてる。
今まで白石君と話すときはドキドキして、楽しかった。
なのに、最近は色々と考えちゃって、ちゃんと楽しめてない。
(気のせい......って可能性もあるよね......?)
あくまでもあこの感覚だし、違う可能性の方が高い。
けど、あこの感覚だからこそ、自分じゃ否定できない。
あの抱きしめられた感覚は......。
(本人に聞いたら......。って、絶対無理だ......。)
だって、白石君に「人間じゃないの?」って言うんだよ?
そんなの、絶対に無理だよ。
今の関係が壊れるのも嫌だし.......。
いやでも、このままじゃ気まずいままになる......。
「はぁ......どうしよ......。」
『どうしたの?あこちゃん?』
「え?」
『何か......悩んでるみたいだけど......。』
「ご、ごめん。声に出ちゃった。」
そうだ、今はりんりんとゲームしてるんだった。
ちょっと暇な時間が出来たから、つい考えちゃった、
『最近、ずっとだよね......?何かあれば相談してね......?』
「う、うん。(相談、かぁ......。)」
そう言えば、考えてなかった。
明日香とか六花には聞けないけど、りんりんなら大丈夫かも。
同じ学校じゃないし、白石君のこと知らないし。
「も、もしさ、好きな人が普通の人じゃなかったら、りんりんはどうするかな?」
『え......?』
りんりんの困惑した声がヘッドフォンから聞こえてくる。
それはそうだ。
だって、自分でもよく分からない質問してるもん。
『うーん......よくは分からないけど......。』
「......。」
『そこまで考えて、好きって気持ちが消えてないなら、その人がどんな人でも諦められない......かも。」
「!」
その言葉を聞いて、ビックリした。
りんりんは危ないと思ったらちゃんと自分を守ると思ってたから。
そっか......。
「......あこ、話してみる。」
『うん......。』
「白石君は優しいから、きっと、ちゃんと聞いたら話してくれると思う。」
2人になれたら、ちゃんと話してみよう。
その答えがどんなものでも、その時に感じたことを話そう。
あこはこれ以上空気を悪くしないように、心の中でそう意気込んだ。
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次の日、あこは学校に来た。
早く目が覚めたから、いつも良い早くに来た。
心の準備もしたかったし。
(と、取り合えず、2人にならないと。)
なんて言えばいいんだろう......。
話したい事があるの......とか?
なんか怪しくないかな?
(まだ白石君が来るまで時間あるし、落ち着こう......。)
取り合えず、まず2人にならないと。
あこから行動しないと。
ちゃんと、白石君と向き合わないと。
「白石君......。」
「__あぁ、どうした?」
「っ!?」
その瞬間、心臓が飛び跳ねたような感覚に襲われた。
あれ、いつからそこにいたの?
教室に1人でいるから分かる。ドアが開く音なんてしなかった。
いつもみたいに、気づかなかったなんてことは......ありえない。
(や、やっぱり......!)
「やっぱり、白石琥珀は人間じゃない。」
「っ......!」
まるで、心が読まれてるみたいだ。
ここまで来て、確信した。
白石君は......。
「正しく言うなら、白石琥珀は存在しない人間だ。この世で宇田川あこを除いて、その存在を刷り込まれているんだ。」
「!?」
「これが、その他の人間が見てる、白石琥珀の姿だ。」
そこにいるのは、普通で目立たない男子生徒だ。
あこが見てた白石君とは違う。
これ、どういうこと......?
「ど、どういうことなの......?わかんないよ......どれが、本物のあなたなの.....?」
「......一つ、弁明しておこう。」
「......?」
白石君は元の姿......かは分からないけど、今までの姿に戻った。
そして、あこに向かって、やさしく微笑んだ。
「俺は決して、宇田川を騙したかったわけではない。」
「じゃあ、どうして......。」
「......そうだな。」
白石君の表情が曇る。
何かを躊躇ってるみたいな、決めようとしてるみたいな。
少し苦しそうで、見ていて胸が痛い。
それに、この感覚はなに......?
初めて見るはずなのに、あこはこの表情を知ってる......?
「......楽しい日常だったぞ、宇田川あこ。兄が生れた時から、今日まで。」
「__!」
リンって、空気すら切り裂けそうな鈴の音が鳴り響く。
周りの景色から、時間が止まったみたいに色が消えて、教室が不思議な空間に変貌した。
「こ、これは......。」
「これは空間のみを現実から隔離させる術じゃ。」
「っ!」
ふわっとした風のような声が耳を通り抜ける。
圧倒的な存在感と安心感がある、大自然みたいな声。
やっぱり、白石君の正体は......。
「.....狐白じゃ。」
「っ!」
ナニカ......いや、狐白は静かにそう言った。
白石じゃない、ただの狐白。これが、本当の名前なんだ。
あこはその姿を見るために、いまだに見えない狐白を探した。
「探さずともおる。兄の目の前にな。」
「!」
声が聞こえた瞬間、あこの目の前に狐白が現れた。
その姿は、白い少し長めの髪に、白い着物に青色の袴。
そして、何よりも目を引くのは、大きな九つの尻尾。これって、まるで......。
(九尾の、狐......?)
あこは狐白の姿を見て、圧倒された。
まるで、大自然がそのまま人の形になったような感じがするから。
そんな狐白がどれくらい大きな存在なのかなんて、あこにはわかりっこなかった。