妖と恋する聖堕天使   作:火の車

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十二話

 景色から色が消えて、時間が止まったみたいになって。

 そして、目の前には人間じゃない、九尾の狐......。

 そんな現実離れした状況に、あこの頭は混乱してる。

 

「狐に化かされたような顔をしておるのう......ま、その通りなのじゃが。」

「え、えっと、九尾の狐って.....お化け、なの?」

 

 とりあえず、思ったことを口に出した。

 見た感じ、あこのことを敵視してるわけでもなさそうだし。

 

「お化けというより、妖じゃ。別の言い方をするなら、もののけ、魔物といったところかのう。」

「妖......。」

 

 迷信とかじゃなくて、実在したんだ。

 しかも、九尾の狐って、神社とかあるし。

 狐白はそういうのなのかな?

 

「なんで、そんな存在が白石君を演じてたの......?」

「わしが白石琥珀として生活していた理由か......うむ......。」

 

 狐白は考え込むような様子を見せた。

 別に、いきなり目の前に出て来てもよかったはずなのに。

 なんでわざわざ、白石君としてあこに近づいたの......?

 なんで、好きにさせたの......?

 

「特に理由などない。」

「え......?」

「兄が生まれた時から見ていたが、そこからのわしの行動は全て気まぐれじゃよ。」

 

 その言葉に驚愕した。

 あの出来事全部が、狐白にとっては気まぐれだったの?

 一緒に過ごした日々は全部、偽物だったの......?

 そう思うと、悲しくて目じりに涙が溜まってきた。

 

「ただ、わしが白石琥珀として話していた内容に嘘はない。すべて本心じゃ。」

「......!」

 

 フワリと、優しい風に包まれた。

 狐白が目の前に来たんだ。

 近くで見ると、透明感があって、綺麗だ。

 あこが見てた白石君の面影もある。

 

「なんで、あこだったの......?」

「愛しておるからじゃ。」

「え......!?///」

 

 あこの問に答えた狐白の言葉に、不覚にもドキっとした。

 白石君の時とは違う、真っすぐな言葉。

 一応、狐白は白石君なわけで、これが本心だったのかな......?

 

「い、いつから......?///」

「兄が生れる前から。」

「え......?」

「宇田川あことして生れ落ちる前から、愛しておる。千年前から。」

 

 ど、どういうこと?

 あこがあことして生まれる前?千年前?

 スケールが違いすぎて、よくわからない。

 

「そ、それは、どういう......?」

「直に分かる......が、少し力を貸そうか。」

「!」

 

 狐白は光り輝く種?を出した。

 なんだろう、これ。

 魔法みたいなものなのかな?

 

「これはわしの妖術の一つ。これを兄に授けよう。」

 

 そう言って、狐白はその種をあこの頭に近づけた。

 

 その時だった。

 見たこともない風景が頭の中に流れ込んできた。

 

(なに、これ......?)

 

 見たこともないような大自然に、今にも壊れそうな家。

 それに田んぼに、そこで働く人たち。

 まるで、教科書に載ってった風景だ。

 

 そして......。

 

『__あゆび。兄は__』

 

 農民とは違う、綺麗な服を着た男。

 その男の話声がぼやけていく......。

 ここで、流れ込んできた記憶は途切れた。

 

 あれはなんだったの?

 

「あれは、魂に刻まれた記憶を蘇らせるものじゃ。」

「魂、記憶......。」

「それは記憶と関連するものを見たり、触れたりすれば育っていく。のんびり探していけばよい。」

 

 狐白はそう言って、また座りなおした。

 その間もあこは困惑してた。

 あの光景は狐白が見てた景色だとは思う。

 けど、あゆびって名前は......。

 

「さて、そろそろ術を解くか。」

 

 狐白はそう言って、ふーっと息をついた。

 それを見て、あこは狐白に声をかけた。

 

「ねぇ、狐白?」

「どうした?」

 

 狐白は首を傾げた。

 

 やっぱり、狐白は白石君だ。

 話し方が変わっても、雰囲気が変わっても、あこの中の何かが白石君って判断してる。

 

「狐白はあこのこと、好きなの?」

「そうじゃ。」

「じゃあさ、あこと付き合わない?」

 

 あこはそう言った。

 結局、あこは白石君が好きみたいだ。

 こんなに姿が変わっても、あこは狐白に白石君を見てる。

 それに、まだ、ドキドキしてる。

 

「ふむ。(わしの正体を知ってなお、そう言うか......。)」

「あこ、白石君が好きだけど、狐白も白石君だから。」

 

 自分がおかしなことを言ってるのは分かってる。

 けど、なぜか、狐白が好きって思ってる。

 やっぱり、理由とかわからないけど。

 なんとなく、一緒にいたいって思ってる。

 

「いいのか?まだ、わしのことは何も知らないであろう?」

「いいよ。それに、何か......違和感があるから。」

「?」

 

 狐白が白石君だから好き......とは少し違う。

 あの記憶の種の術を受けてから、おかしい。

 なにか、新しいものが生れた気がする。

 

(なんだろう......はるか遠い記憶に、狐白がいるみたいな......。)

「わしはしばらく、白石琥珀のままで生活するが、それでいいか?」

「うん、いいよ。これからよろしくね、狐白。」

「あぁ。愛しき魂よ。」

 

 なんだか思ってたのと違うけど、あこは白石君......狐白と付き合うことになった。

 これから何があるのか分からない。

 けど、これから狐白といればわかる気がする。

 あの記憶と、違和感の正体が。

 

 

 

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