「さて、そろそろ戻すかのう。」
狐白がそう呟くと、周りの景色に色が戻り始めた。
まるで、時間が動き出したみたいだ。
「すごい......。」
一瞬で、いつも通りの景色になった。
やっぱり、狐白は普通じゃないんだ。
妖術......って言ってったよね?
ほんとに存在したんだ。
「どうしたの?あこ。」
「え?」
気づいたら、明日香が隣にいた。
前の席には六花もいる。
そして......。
「ボーっとしてたみたいだな。珍しい。」
「そうだね?体調悪い?」
「い、いや、大丈夫だよ!」
狐白......いや、今は白石君か。
さっきまであんな夢みたいなことをしてたとは思えない。
あまりにも目立たない、今はそれすらも異様に感じる。
「そういえば、2人に言っておきたいことがあるんだ。」
「ん?」
「どうしたの?」
白石君は明日香と六花の方にそう言った。
まさか、言うの?あれ。
「俺と宇田川は付き合うことになったんだ。」
「え!?」
「なんやて!?」
(すごい驚き方。)
2人とも、目を真ん丸にしてる。
いや、それもそうか。
昨日までそんな雰囲気なかったんだもん。
ていうか、付き合ってるって白石君が言うんだ.......。
なんだか、嬉しいな。
「2人とも、宇田川を応援してたらしいし、伝えておこうと思ってな。」
「そ、そっか。とりあえず、おめでとう。」
「よかったね、あこちゃん......!」
「う、うん!ありがとう!」
なんだか、今までと少し違う。
白石君の正体を知ったからかな。
ずっと違和感を感じる。
「あこのこと、大事にしてあげてね。」
「あぁ、もちろん。」
白石君はそう言って、ニコッと笑った。
その表情に少しドキっとして。
少し、幸せな気分になった。
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放課後になった。
今日一日は明日香と六花から質問ばっかりされた。
本来なら嬉しい疲れなんだけど。
今はちょっと困る。
「疲れた......」
「大変よのぉ。」
「!」
机に伏せてた顔を上げると、周りの景色が変わってた。
朝みたいに周りの景色から色が消えたんじゃなくて。
周りが草原になってる。
「な、なんで急に!?」
「人間社会に溶け込むというのも疲れるのじゃ。ゆえの結界じゃ。」
「そんなお手軽に出来るの!?」
狐白って、やっぱりすごいのかな。
他の妖なんて見たことないから分からないけど。
皆こんなの出来るとは思えないんだよね。
「ついでに疲れも癒そう。」
「!」
狐白が軽く指を振ると、疲れが取れた感じがした。
こんなことも出来るんだ。
って、ちょっと感心した。
「す、すごい。なんだか、体が軽いよ!」
「わしは妖術を色々持っている。この程度は造作もなきことよ。」
「へぇ、そうなんだー。」
回復魔法みたいなものなのかな?
なんだか、あこが夢見てたものが現実になってるみたい。
まさか、攻撃魔法とかあったりするのかな。あ、妖術。
「兄が憧れるようなものも出来る。分かりやすいものだと......。」
「わっ!」
狐白の周りに青い火の玉が現れた。
あれで攻撃したりできるんだ。
かっこいい!
「ふふっ、触らぬ方がいいぞ。全身に燃え移るゆえ。」
「そ、そうなの!?」
「解除できるが、万が一にも危険にさらすわけにもいかぬ。」
そう言って、火の玉を消した。
こんな風に出来るんだ。
あこもやってみたいなぁ......。
「これ以外にもいろいろとあるが、兄が見たければなんでも見せよう。」
「じゃあ、空飛んだりとかできる?」
「出来るぞ。」
「あこも飛んでみたい!」
「ふむ......。」
あこがそう言うと、狐白はまた指を振った。
すると......。
「わー!」
あこの体は重力から解放されて、宙に浮いた。
今まで味わったことのない感覚だ。
なんか、体のどこにも地面が触れてないのに違和感を感じる。
「すごーい!狐白ってなんでも出来るんだねー!」
「なんでもは出来ぬが、これくらいは容易じゃよ。」
「!」
今度は空中で動き出した。
すごい、ほんとに空飛んでる。
夢でしか起きなかったことが、現実になってる!
「狐白ー!降りるから受け止めて―!」
「うむ、よかろう。」
「いっくよー!」
そう言って、狐白の方に飛び込む。
そんなあこを狐白は軽々受け止めた。
久しぶりにこんなに密着したかも。しかも、あの時の記憶はあいまいだし。
「楽しかったか?」
「うん!すっごく楽しかった!」
「そうか。」
嬉しそうなあこを見て、狐白も嬉しそうにしてる。
なんだか、愛されてるって感じるなー。
「ねぇねぇ。」
「どうした?」
「狐白って名前かっこいいけどさ、なんだか距離感じない?あこのこともけい?って呼んでるし。」
「そうかのう?」
狐白はそう首をかしげる。
やっぱり、付き合ってるんだし、こう、良い感じの呼び方したい!
「うーん、はっくんとかどう?なんだか呼びやすい!」
「わしの呼び方は好きにするがいい。」
「じゃあ、はっくんはあこって呼んで!ずっと!」
「うむ。」
はっくんはそう頷いた。
なんとなく、これで距離も縮まった気がする!
なんか思ってたのとは違うけど!
「そろそろじゃな。」
「え?__!?」
はっくんは何かを小さくつぶやくと、周りの草原が消えた。
そして、見慣れた部屋の中に移動してた。
ここ、あこの部屋だ。
「結界でここまで移動した。」
「そんなこともできるの!?」
「うむ。」
ぜ、全然気づかなかった。
ていうか、家まで送ってもらっちゃったよ。
「それでは、ここらでお暇する。」
「う、うん!また明日!」
「うむ。またのぉ。」
はっくんはそう言うと、ひゅんっと消えた。
なんだか今日は不思議な体験ばっかりだった。
けど、はっくんとの距離も縮まったし、これからもっと仲良くなろ!
そんなことを思いながら、あこはベッドにダイブした。