バスに乗り込んで、あこ達は席に座った。
右側の一番後ろの席で、はっくんが窓側に座ってて、前の席には明日香と六花が座ってる。
多分、はっくんの力で席確保したんだろうなぁ。
「はっくん、お菓子食べるー?」
「貰おうかな。ありがとう。」
「はい!」
はっくんにポッキーを渡した。
お菓子とかあんまり食べないのかな?物珍しそうに見てる。
そして数秒した後、ポッキーを口に入れた。
「甘い。」
「チョコだもん!」
「そうなのか。」
はっくんは確か、ご飯は食べなくてもいいんだっけ?
あこが生まれてからこの辺りに来たらしいけど、それで何も食べてなかったのかな。
「美味しい?」
「あぁ、美味しい。今の食べ物はすごいんだな。」
「他のもあるけど、食べてみる?」
「あこは食べなくてもいいのか?」
「食べるよ!」
ちゃんと気遣ってくれるんだよねー。
他の女子にはそう言う素振りないというか、会話もしないし。
こういう一面を知ってるのがあこだけって言うのも、なんだか良いなー。
そんなことを思いながら、あこはしばらく、はっくんとお菓子を食べた。
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あれから1時間くらい経った。
バスは全く知らない場所を走ってる。
そのくらいになると、あこは眠気に襲われていた。
「んー.......」
「眠たいのか?」
「うーん......眠い......」
「そうか。」
はっくんは小さくそう返事をすると、こっちに手を伸ばしてきた。
なんだか、少しだけ光ってる気がする。
「寝つきが良くなって、疲れが取れる術じゃ。」
「あう......」
はっくんの手が額に当てられると、すぅと目が閉じていく。
だんだんと意識が落ちて行って、目の前が暗くなった。
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すんっと鼻を鳴らすと、森のような匂いがした。
どこか懐かしいような、知ってるような匂い。
......いや、違う。
あこはこの匂いを知ってる.....?
『__あゆび......』
どこかから、またあの名前が聞こえた。
意識がないみたいに真っ暗だ。
けど、少しすると光がさしてきて、目の前の光景が見えてきた。
「__え?」
見えて景色は、真っ赤だった。
血のカーテンがかかってるみたいに、見えるもの全部が赤くなっていた。
そして、そのカーテンの向こうに、人の影が見える。
この人、前に出てきた、綺麗な服の人かな?
『教えてくれ。なぜ、兄が__』
声が飛び飛びだ。
大切な部分だけが聞こえない。
けど、なんとなく、悲しそうなのは分かる。
『人も、妖も、このように醜いものなのか......っ!!』
悲しみと怒りを感じる声。
そして、この赤い景色。
これでやっと気づくことが出来た。この時のあこ、あゆびは__
「__あこ。」
「っ......!」
他とは違う、現実味のある声。
それを聞いた瞬間、パッと明るい景色が飛び込んできた。
バスに、隣に座ってるはっくん。
それと、心配そうにあこを見てる明日香と六花。
え、どういう状況?
「すごいうなされてたけど、大丈夫?」
「え、そうなの?」
「うん。怖い夢でも見てたの......?」
「いや、そんなことはないはずなんだけど......」
あれは多分、はっくんの記憶の種のやつだ。
何かのきっかけで記憶は戻って行くって言ってたけど、今?
きっかけは......
「もう着いてるから、降りよ。」
「う、うん。」
窓の外を見ると、辺りは地元とは違う、大自然の中だった。
結構、寝てたみたい。
「行こ!あこちゃん!お部屋に荷物おいたら、飯盒炊爨と登山だよ!」
「そ、そうだね!テンション上げていこー!」
「あ、走っちゃダメだって!」
「ははは、元気だな。」
寝ぼけた頭が覚めて、テンション上がってきた。
記憶も、まだまだ全然戻ってないし、考えてもわかんない。
今は林間学校を楽しまないと!
“狐白”
前を歩く3人の少し後ろを歩く。
あこはさっきまでの様子と違い、楽しそうにしておる。
だが、やはり気になるのう。
(あれは恐らく、記憶の種の効果が出たのじゃろう。それにしても......)
記憶の種の効果が表れるのには条件がある。
あれは妖術、つまりは妖力の塊じゃ。
それゆえ、種は本人の魂に根付き、必要な妖力を受け取り育つ。
効果のほどは十人十色じゃが、記憶と縁のある妖力がなければ種は絶対に育たん。
(と、なるとのう......)
あの苦しみ方と、あこの魂の記憶。
それらを基に考えると......おのずと答えが出てくるのう。
じゃが......
「不吉じゃのう......」
ここは、都会とは違う。
恐らくは......
まぁ、どうとでもなろう。
今は、わしが付いておる。
「はっくーん!はやくはやくー!」
「あぁ、すぐ行くよ。」
兎にも角にも、今はあこといるこの時間を楽しむとしよう。
今のところは元気そうじゃ......
何かおかしな反応があるまでは、様子見としよう。
まずは飯盒炊爨?と言うものらしい。
何をするかは分からないが、楽しいことなのだろうな。
そのようなことを考えながら、わしはあこの方に歩いて行った。