妖と恋する聖堕天使   作:火の車

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十五話

 バスに乗り込んで、あこ達は席に座った。

 右側の一番後ろの席で、はっくんが窓側に座ってて、前の席には明日香と六花が座ってる。

 多分、はっくんの力で席確保したんだろうなぁ。

 

「はっくん、お菓子食べるー?」

「貰おうかな。ありがとう。」

「はい!」

 

 はっくんにポッキーを渡した。

 お菓子とかあんまり食べないのかな?物珍しそうに見てる。

 そして数秒した後、ポッキーを口に入れた。

 

「甘い。」

「チョコだもん!」

「そうなのか。」

 

 はっくんは確か、ご飯は食べなくてもいいんだっけ?

 あこが生まれてからこの辺りに来たらしいけど、それで何も食べてなかったのかな。

 

「美味しい?」

「あぁ、美味しい。今の食べ物はすごいんだな。」

「他のもあるけど、食べてみる?」

「あこは食べなくてもいいのか?」

「食べるよ!」

 

 ちゃんと気遣ってくれるんだよねー。

 他の女子にはそう言う素振りないというか、会話もしないし。

 こういう一面を知ってるのがあこだけって言うのも、なんだか良いなー。

 

 そんなことを思いながら、あこはしばらく、はっくんとお菓子を食べた。

__________________

 

 あれから1時間くらい経った。

 バスは全く知らない場所を走ってる。

 

 そのくらいになると、あこは眠気に襲われていた。

 

「んー.......」

「眠たいのか?」

「うーん......眠い......」

「そうか。」

 

 はっくんは小さくそう返事をすると、こっちに手を伸ばしてきた。

 なんだか、少しだけ光ってる気がする。

 

「寝つきが良くなって、疲れが取れる術じゃ。」

「あう......」

 

 はっくんの手が額に当てられると、すぅと目が閉じていく。

 だんだんと意識が落ちて行って、目の前が暗くなった。

__________________

 

 すんっと鼻を鳴らすと、森のような匂いがした。

 どこか懐かしいような、知ってるような匂い。

 ......いや、違う。

 あこはこの匂いを知ってる.....?

 

『__あゆび......』

 

 どこかから、またあの名前が聞こえた。

 意識がないみたいに真っ暗だ。

 

 けど、少しすると光がさしてきて、目の前の光景が見えてきた。

 

「__え?」

 

 見えて景色は、真っ赤だった。

 血のカーテンがかかってるみたいに、見えるもの全部が赤くなっていた。

 そして、そのカーテンの向こうに、人の影が見える。

 

 この人、前に出てきた、綺麗な服の人かな?

 

『教えてくれ。なぜ、兄が__』

 

 声が飛び飛びだ。

 大切な部分だけが聞こえない。

 けど、なんとなく、悲しそうなのは分かる。

 

『人も、妖も、このように醜いものなのか......っ!!』

 

 悲しみと怒りを感じる声。

 そして、この赤い景色。

 これでやっと気づくことが出来た。この時のあこ、あゆびは__

 

「__あこ。」

「っ......!」

 

 他とは違う、現実味のある声。

 それを聞いた瞬間、パッと明るい景色が飛び込んできた。

 バスに、隣に座ってるはっくん。

 それと、心配そうにあこを見てる明日香と六花。

 

 え、どういう状況?

 

「すごいうなされてたけど、大丈夫?」

「え、そうなの?」

「うん。怖い夢でも見てたの......?」

「いや、そんなことはないはずなんだけど......」

 

 あれは多分、はっくんの記憶の種のやつだ。

 何かのきっかけで記憶は戻って行くって言ってたけど、今?

 きっかけは......

 

「もう着いてるから、降りよ。」

「う、うん。」

 

 窓の外を見ると、辺りは地元とは違う、大自然の中だった。

 結構、寝てたみたい。

 

「行こ!あこちゃん!お部屋に荷物おいたら、飯盒炊爨と登山だよ!」

「そ、そうだね!テンション上げていこー!」

「あ、走っちゃダメだって!」

「ははは、元気だな。」

 

 寝ぼけた頭が覚めて、テンション上がってきた。

 記憶も、まだまだ全然戻ってないし、考えてもわかんない。

 今は林間学校を楽しまないと!

 

 “狐白”

 

 前を歩く3人の少し後ろを歩く。

 あこはさっきまでの様子と違い、楽しそうにしておる。

 だが、やはり気になるのう。

 

(あれは恐らく、記憶の種の効果が出たのじゃろう。それにしても......)

 

 記憶の種の効果が表れるのには条件がある。

 あれは妖術、つまりは妖力の塊じゃ。

 それゆえ、種は本人の魂に根付き、必要な妖力を受け取り育つ。

 効果のほどは十人十色じゃが、記憶と縁のある妖力がなければ種は絶対に育たん。

 

(と、なるとのう......)

 

 あの苦しみ方と、あこの魂の記憶。

 それらを基に考えると......おのずと答えが出てくるのう。

 じゃが......

 

「不吉じゃのう......」

 

 ここは、都会とは違う。

 恐らくは......

 まぁ、どうとでもなろう。

 今は、わしが付いておる。

 

「はっくーん!はやくはやくー!」

「あぁ、すぐ行くよ。」

 

 兎にも角にも、今はあこといるこの時間を楽しむとしよう。

 

 今のところは元気そうじゃ......

 何かおかしな反応があるまでは、様子見としよう。

 まずは飯盒炊爨?と言うものらしい。

 何をするかは分からないが、楽しいことなのだろうな。

 

 そのようなことを考えながら、わしはあこの方に歩いて行った。

 

 

 

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