妖と恋する聖堕天使   作:火の車

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十七話

 あれから、あこたちはカレーを食べ終わって、次は登山だった。

 普段はあんまりしないし、こういうのもすごく楽しい。

 空気もなんだか澄んでる気がする。

 

「ほらー!はやくはやくー!」

「は、早いよぉ......」

「元気すぎでしょ......」

「あはは、それがあこの良い所だよ。」

 

 一番前をあこが歩いて、その後ろを3人が付いてきてる。

 明日香と六花は疲れてそうだけど、はっくんは余裕そう。

 そもそも、登山くらいじゃ疲れないか。

 

「ほら!もうすぐ頂上だよ!」

「ま、待って~......」

「まぁ、もう一息だし、一気に行こうか。」

 

 明日香たちの歩くのが早くなって、追いついて来た。

 そのままのペースであこ達は一気に頂上まで登って行った。

 

「__着いたー!」

 

 頂上に着くと、あこはそう叫んだ。

 すっごい気持ちい。

 なんか、いつもとは違う世界にいるみたいだ。

 

「じゃあ、私は先生に報告してくるから、3人は休憩してて。」

「う、うん.....じゃあ、そこに座ってるね......」

「行ってらっしゃーい!」

「ありがとう。」

 

 明日香は先生の所に行って、六花はベンチに座った。

 それで、あことはっくんの2人が残った。

 

「どうする?折角だし、景色でも見るか?」

「うん!一緒に行こ!」

「あぁ。行こうか。」

 

 そんな会話をして、2人で並んで歩く。

 はっくんの方がずっと背が高いのに、ペースを合わせてくれてる。

 こういうとこ、好きだなぁ......

 

「わぁ!きれーい!」

「そうだな。」

 

 山頂から見る景色はすごく綺麗だった。

 どこまでも続いていきそうな自然、雲一つない青空。

 なんだか、気分がよくなる気がする。

 

「はっくんは見慣れてるかな?」

「......いいや。あこと見る景色は、今までとは違う。どの景色より、綺麗じゃ。」

「そうなんだ。はっくんは相変わらず、あこのこと好きだねー!」

「あぁ、もちろん。愛しておるよ。」

「!///」

 

 あ、あっさりこういうこと言う......!

 嬉しいからいいんだけど、恥ずかしい......

 でも、やっぱり、嬉しいが勝つ。

 

「あこも大好き......///ずっと、一緒にいられたらいいね......///」

「......そうじゃのう。」

「んっ///」

 

 はっくんはあこの頭を撫でた。

 すごく安心する。

 

「はっくん__」

「あのー、お二人さん?ここでいちゃつくのはちょっとまずいよ?」

「っ!///」

「あはは、そうだよな。」

「明日香ちゃん、すごいね......」

 

 明日香に話しかけられて、ハッとした。

 そうだった、明日香はちょっと離れてるだけなんだった。

 周りに人少ないから、油断してた......

 

「もう先生との確認は終わったのか?」

「うん。ここからは下山して、自由だって。」

「そうか。なら、さっさと行こうか。」

「そ、そうだね~///」

「うん......(あこちゃん、顔真っ赤だ。)」

 

 そうして、あこ達は下山を始めた。

 

 あの時間、すごく幸せだったけど、次は2人きりの時にしよ。

 流石に、恥ずかしかったから......

 あこはそう心に誓った。

__________________

 

 “狐白”

 

 山登りも終わり、今は今夜泊まる宿にいる。

 思っていた以上にいい場所じゃな。

 昔ならいくらかかったことか。

 

「......さて。」

 

 わしは術を解き、置いてある座布団に腰を下ろした。

 認識阻害......これは中々、使い勝手がいい。

 正体を隠すだけでなく、他にも応用が利く。

 例えば、今のように部屋を1人部屋にしたりのう。

 

(あこのことはどうするか。)

 

 朝から、完全に気配が消えておる。

 わしでも察知できぬとは、流石に同じ時代のものか。

 あまり、甘く見るのはよくないかもしれなのう......

 

「......悔しいのう。」

 

 あこのことは何よりも大切じゃ。

 何が何でも守りたい。

 だが、あこの記憶を目覚めさせるには、どうしてもあやつが必要になってしまう。

 

(仕方ない。利用させてもらうぞ。古き時代の妖よ。」

 

 わしはそう呟き、瞳を閉じた。

 

 何が起きても、あこだけは必ず守る。

 だが、ある程度、栄養だけは貰うぞ。

 あこの記憶を目覚めさせるための、栄養を。

__________________

 

 “あこ”

 

 今日泊まる場所はちょっとだけ古い、宿だった。

 なんだか何か出そうな雰囲気がある。

 まぁ、はっくんがいる時点でいるはいるんだけどね。

 

「ふんふ~ん♪」

 

 あこはお風呂から上がって、部屋に戻ってる。

 明日香と六花はもう少しゆっくりするらしい。

 

(どうしようかなー、はっくんいないかなー。)

 

 電気がついてるのに薄暗い廊下を歩く。

 はっくんいなかったら、正直怖かったかも。

 お化け出るかもって。

 

(部屋で何してようかなー?)

『__び。』

「ん?」

 

 廊下を歩いてると、何か変な音が聞こえた。

 なんだろ?隙間風かな?

 この建物、古いからねー。

 

『__び。』

「......」

 

 2回目の、同じ音。

 隙間風にも聞こえるそれは、隙間風の音じゃない。声だ。

 地の底から聞こえたようなその声は、聞いただけで背筋が凍るような感じがした。

 

 それに、なんだろう......

 ただ怖いだけじゃない、何か違う気がする。

 

『__あゆびっ!!!』

「っ......!?」

 

 その声がハッキリと聞こえた瞬間、薄暗い廊下は真っ暗になった。

 電気が消えたってレベルの暗さじゃない。

 光一つ通さないような、闇だ。

 

「こ、これは......」

 

 似たような経験がある。

 この、別の空間に飛ばされたみたいな感覚。

 はっくんの結界と同じだ。

 

「......あや、かし......?」

 

 頭にそんな言葉が浮かんできた。

 けど、はっくんとは少し違う。

 まるで、悪意の塊......人の言葉なんて通じない存在。

 そんな感覚だ。

 

『あ゛ゆ゛び......』

「ひっ!」

 

 暗闇から、それは姿を現した。

 全身がドロドロになったみたいな、大柄の生き物。

 人間......いや、猿......?

 どっちか分からない、変な生物。

 これは、妖なの?

 

「な、なに、これ......?」

『み゛つ゛け゛た゛ぞ』

 

 血走った目であこのことを見てる。

 まるで、お腹がすいてるときに肉を出された獣みたいだ。

 なんで、あこに......?

 

『わ゛が゛゛く゛も゛つ゛ゥゥゥゥゥゥ』

「くも、つ......っ?」

 

 今の社会じゃ使うことはないであろう、その言葉。

 けど、その言葉を聞くと、あこの心臓はドクンと音を立てた。

 

『__逃げたぞ!追えー!』

『や、やめて!助けて!』

 

 村の広場に仏壇みたいなものを作って、それを村人が囲ってる。

 全員、まるで、あこ......いや、あゆびが死ぬことを望んでるような顔をしてる。

 

 そんな中で、どこかへ走って行こうと足掻いてる。

 

『死ね』

『死ね』

『死ね』

『死ね』

『助けて!__』

 

「あ、あぁ......っ!」

 

 少しだけ、記憶が戻った。

 そうだ、あこは土地神の供物だったんだ。

 そうなるように仕立て上げられたんだ。

 なんでか分からないけど、あゆびをそうしようとしたんだ。

 

 そして、最後に......

 

(呼びたかった名前を、呼べないまま、殺された......土地神に......)

 

 なんで今、これを思い出したの?

 その答えは分かり切ってる。さっきの記憶にもいた。

 こいつは、こいつは......

 

 土地神だ。

 

『い゛い゛た゛ま゛し゛い゛だ゛。く゛わ゛せ゛ろ゛ォォォォォ』

「ひぃ!た......っ!」

 

 『助けて』

 

 その言葉が出てこなかった。

 首を絞められたように、上手く声が出せない。

 

 これは、呪いだ。

 さっきの記憶を見てわかった。

 あゆびも最後はその言葉を言えなかった。

 村人たちに首を絞められて......

 

「あ、がっ......!」

 

 苦しい。

 徹底的に声が出せないようにされてる。

 

「た、たす.....」

 

 ダメだ、何度も何度も言おうとしても出来ない。

 どうすればいいの?

 前世と同じように、死んじゃうの?

 

 いやだいやだ、まだこれからなのに......

 まだ全部思い出せてないけど、大切な人と一緒にいられるのに......

 

「こ、はく......(っ!)」

 

 遠のく意識の中、その名前を口にした。

 息苦しさはずっとマシになってる。

 これなら......

 

「狐白!!!」

「__やっと見つけたぞ。あこ。」

『!?』

「!(はっくん.....!)」

 

 その瞬間、周りの景色は真っ白に塗り替えられた。

 さっきを地獄とするなら、まるでこっちは天国みたいだ。

 

 感覚で分かる。これは、はっくんの術だ。

 暖かくて、家みたいに安心する。

 

「なるほど、土地神か。通りでわしでも見つけるのに時間がかかるわけじゃ。」

『お゛ま゛え゛は゛ぁ゛,,,,,,!』

「久しいのう。残留思念だけで生き残るとは......若気の至りが過ぎたのう。」

『!!!????』

「え......?」

 

 狐白が右手で空を握る。

 それと同時にこの空間で異変が起きた。

 

 土地神が、ひしゃげていく。

 

『う゛ご゛ご゛ご゛ご゛......!!!』

「この空間はわしがあらゆる事象を操作できる。今は、そうよのう......この世で最も深い海の中にいるぐらいの圧がかかっておる。」

『ば゛が゛な゛......!!そ゛ん゛な゛......!!!』

 

 グググ......っと、はっくんの手が握られていく。

 それに反応するように、土地神はしぼられた雑巾みたいに赤い液体が噴き出して、小さくなっていく。

 

「よい働きであったぞ。あこの記憶を取り戻すのに役立った。」

『お゛まえは゛......!!』

「消えろ。土地神風情が。」

「!」

 

 きゅっと手を握ると、土地神はプチュンと音を立て、消えた。

 ていうか、土地神風情......?

 神様のはずなのに、こんな風に言えちゃうの?

 

「すまないのう。中々、出来る奴じゃった故、気配を見失っていた。」

「い、いや、いいよ。助かったから。」

「まぁ、あこの記憶を取り戻すためには多少の接触は必要じゃった。ここまで危険にさらすつもりはながったのじゃが。」

「はっくん、結構、鬼畜なんだね。」

 

 半ば放心状態で軽口を言いつつ、周りを見る。

 そこにはさっきの土地神の血が飛び散ってる。

 これを、はっくんがやったの?しかも、あんなにあっさりと。

 しかも、土地神よりも強いなんて、きっと普通じゃない。

 

 やっぱり、はっくんは、あことは違う......

 

(あこは......はっくんといて、いいのかな......?)

 

 あこは白と赤の空間を眺めながら、そんなことを考えた。

 あことはっくんは人間と妖。生き物として、全然違う。

 

 そんなあこは、はっくんといることに、不安を感じてしまった。

 

 

 

 

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