妖は人間とは違う。
そんなことは分かってたし、それでも付き合ってた。
けど、あこは全然、はっくんを知らなかった。
(特別だ。)
土地神を見下したような態度で、簡単に倒してしまう。
多分だけど、はっくんは恐ろしく強いんだ。
それこそ、あこ達が想像する、神様くらい。
「わしが怖いか?あこよ。」
「っ......!」
心の中を見透かされたような感覚に襲われた。
そう、あこは今、はっくんを怖がってる。
例えるなら、熊とかライオンとかと出くわしたような感じだ。
生き物として、根本から違う。
「......うん。怖い。」
「そうか。」
「ねぇ、はっくんは、何者なの......?」
「それは言えぬ。その答えも、あこの記憶の中にある。」
「......記憶。」
多分、あこの記憶の中に、すごく大切なものがある。
そして、今、それが必要なんだ。
なんとなくだけど、今引っかかってるこれを思い出さないと、いけない気がする。
「わしはあこを取って食ったりなどせん。まぁ、落ち着くまで考えた方がよいだろう。」
「!」
「部屋に戻す。今なら、あの2人も違和感を感じないだろう。」
はっくんの言葉と同時に、あこは光に包まれた。
早く、見つけないと。
今、引っかかってる記憶のカギを。
そうしないと、なんだか、ダメな気がする。
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「__あこ?どうしたの?」
「!」
気が付くと、あこは部屋に戻ってきてた。
明日香も六花も、なんの違和感もなくあこを受け入れてる。
多分、はっくんが何かしたんだと思う。
「ボーっとしてたけど......?」
「あ、だ、大丈夫!」
「まぁ、今日はずっとはしゃいでたし、疲れたんでしょ。早めに寝よっか。」
「そうだね。明日もあるし。」
「そ、そうだねー。」
状況が掴めないまま、あこは布団に入ることになった。
電気が消えて部屋が暗くなるけど、さっきに比べれば明るい。
いや、あの闇が深すぎただけか......
(.......眠れない。)
体は疲れてるのに、目が冴えてる。
今日あったことが衝撃的すぎて、考えがまとまらない。
あの記憶のことも、はっくんのことも、何もかも分からなくなった。
(前世のあこ......あゆびは、あの土地神に殺された。同じ村の村人にはめられて。)
生贄っていう言葉が聞こえた。
多分、飢饉だったかな、そういうのがあったんだと思う。
どこかの本で、こういう話を見たことがある。
(そして、その土地神すら、簡単に殺した、はっくん......)
特別だ。
妖について知らないあこでも分かる。
はっくんは多分、妖の中でも特別な存在だ。
(そんな、はっくんに愛されてた、あゆびは......あこは、一体何者なの......?)
分からない。
やっぱり、この記憶を取り戻さないといけない。
多分、今、うっすらある記憶が、この答えがカギだ。
これを思い出せば、全部わかる。あゆびのことも、はっくんへの気持ちも。
(考えないと、この記憶のカギは......)
それからあこは、記憶を取り戻す方法を考えた。
けど、そんな都合よくアイデアなんて降ってくるわけもなくて、あこは全然、眠れなかった。
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“狐白”
この山から、穢れがなくなった。
あの残留思念を消し去ったからであろう、漂っていた妖気が消えた。
堕ちれど土地神、周りへの影響は大きかったのう。
(......時は来た。)
あれを殺したことで、あこは気づいたじゃろう。
わしが、ただの妖でないことに。
(さて、どうしたものか......)
恐らく、あこは直に記憶を取り戻すだろう。
そして、わしのことを明かす必要がある。
その時に、あこはどんな顔をするだろう.......
不安など、何百年振りだろうか。
(あれから1000年、わしは変わった。あゆびよ......)
ふぅっと息をつき、空に浮かぶ月を見上げる。
月は今日も、輝いておる。
まるで、あの魂のように。
(兄は、変わってしまったわしを、愛してくれるのだろうか。)
わしは人見を閉じ、精神を集中させた。
あこは、わしよりも生きた時間が遥かに短い。
心の作りも、体の作りも違う。
あこがどう変わろうと、受け入れよう。
もしもの時は、待てばいいだけのこと。
あの魂がまた、生まれ落ちるまで。
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“あこ”
あれから一晩経った。
いつの間にか、朝日が昇ってて、ビックリした。
あこってあんなに長く考えられたんだ。
「だ、大丈夫?あこ。」
「クマ、すごいよ......?」
「う、うん!大丈夫大丈夫!」
2人から見ても分かりやすいくらいヤバいんだ。
でも、意外と大丈夫なんだよね。
頭は思ったよりもスッキリしてる。
「__おはよう、3人とも。」
「!」
2人と話してると、はっくんが歩いて来た。
昨日までは真っ先に近づいてたのに、今はなんだか違う気がする。
はっくんが嫌とかじゃなくて、そうしちゃいけないような。
例えるなら、美術品に触っちゃいけないみたい感じだ。
「おはよう、はっくん。」
「あぁ。あこは元気がないな。」
はっくんはいつも通りだ。
でも、多分、あこのことは全部わかってる。
何をしようとしてるのかも、何を感じてるのかも。
だから、直接、ちゃんと言おう。
「はっくん。あこ、見つけるよ。はっくんへの本当の気持ち、一番大切な記憶を。」
「あぁ、そうか。(待っておるぞ、あこ。何十、何百、何千年であろうと。)」
「!(うん。でも、そんなに待たせないよ。)」
早く、見つけないと。
その先に何があるかは分からないけど、怖がってたら先に進めない。
この記憶を思い出して、ちゃんとはっくんと向き合うんだ。