妖と恋する聖堕天使   作:火の車

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十八話

 妖は人間とは違う。

 そんなことは分かってたし、それでも付き合ってた。

 けど、あこは全然、はっくんを知らなかった。

 

(特別だ。)

 

 土地神を見下したような態度で、簡単に倒してしまう。

 多分だけど、はっくんは恐ろしく強いんだ。

 それこそ、あこ達が想像する、神様くらい。

 

「わしが怖いか?あこよ。」

「っ......!」

 

 心の中を見透かされたような感覚に襲われた。

 そう、あこは今、はっくんを怖がってる。

 例えるなら、熊とかライオンとかと出くわしたような感じだ。

 生き物として、根本から違う。

 

「......うん。怖い。」

「そうか。」

「ねぇ、はっくんは、何者なの......?」

「それは言えぬ。その答えも、あこの記憶の中にある。」

「......記憶。」

 

 多分、あこの記憶の中に、すごく大切なものがある。

 そして、今、それが必要なんだ。

 なんとなくだけど、今引っかかってるこれを思い出さないと、いけない気がする。

 

「わしはあこを取って食ったりなどせん。まぁ、落ち着くまで考えた方がよいだろう。」

「!」

「部屋に戻す。今なら、あの2人も違和感を感じないだろう。」

 

 はっくんの言葉と同時に、あこは光に包まれた。

 

 早く、見つけないと。

 今、引っかかってる記憶のカギを。

 そうしないと、なんだか、ダメな気がする。

__________________

 

「__あこ?どうしたの?」

「!」

 

 気が付くと、あこは部屋に戻ってきてた。

 明日香も六花も、なんの違和感もなくあこを受け入れてる。

 多分、はっくんが何かしたんだと思う。

 

「ボーっとしてたけど......?」

「あ、だ、大丈夫!」

「まぁ、今日はずっとはしゃいでたし、疲れたんでしょ。早めに寝よっか。」

「そうだね。明日もあるし。」

「そ、そうだねー。」

 

 状況が掴めないまま、あこは布団に入ることになった。

 電気が消えて部屋が暗くなるけど、さっきに比べれば明るい。

 いや、あの闇が深すぎただけか......

 

(.......眠れない。)

 

 体は疲れてるのに、目が冴えてる。

 今日あったことが衝撃的すぎて、考えがまとまらない。

 あの記憶のことも、はっくんのことも、何もかも分からなくなった。

 

(前世のあこ......あゆびは、あの土地神に殺された。同じ村の村人にはめられて。)

 

 生贄っていう言葉が聞こえた。

 多分、飢饉だったかな、そういうのがあったんだと思う。

 どこかの本で、こういう話を見たことがある。

 

(そして、その土地神すら、簡単に殺した、はっくん......)

 

 特別だ。

 妖について知らないあこでも分かる。

 はっくんは多分、妖の中でも特別な存在だ。

 

(そんな、はっくんに愛されてた、あゆびは......あこは、一体何者なの......?)

 

 分からない。

 やっぱり、この記憶を取り戻さないといけない。

 多分、今、うっすらある記憶が、この答えがカギだ。

 これを思い出せば、全部わかる。あゆびのことも、はっくんへの気持ちも。

 

(考えないと、この記憶のカギは......)

 

 それからあこは、記憶を取り戻す方法を考えた。

 

 けど、そんな都合よくアイデアなんて降ってくるわけもなくて、あこは全然、眠れなかった。

__________________

 

 “狐白”

 

 この山から、穢れがなくなった。

 あの残留思念を消し去ったからであろう、漂っていた妖気が消えた。

 堕ちれど土地神、周りへの影響は大きかったのう。

 

(......時は来た。)

 

 あれを殺したことで、あこは気づいたじゃろう。

 わしが、ただの妖でないことに。

 

(さて、どうしたものか......)

 

 恐らく、あこは直に記憶を取り戻すだろう。

 そして、わしのことを明かす必要がある。

 その時に、あこはどんな顔をするだろう.......

 不安など、何百年振りだろうか。

 

(あれから1000年、わしは変わった。あゆびよ......)

 

 ふぅっと息をつき、空に浮かぶ月を見上げる。

 月は今日も、輝いておる。

 まるで、あの魂のように。

 

(兄は、変わってしまったわしを、愛してくれるのだろうか。)

 

 わしは人見を閉じ、精神を集中させた。

 

 あこは、わしよりも生きた時間が遥かに短い。

 心の作りも、体の作りも違う。

 あこがどう変わろうと、受け入れよう。

 

 もしもの時は、待てばいいだけのこと。

 あの魂がまた、生まれ落ちるまで。

__________________

 

 “あこ”

 

 あれから一晩経った。

 いつの間にか、朝日が昇ってて、ビックリした。

 あこってあんなに長く考えられたんだ。

 

「だ、大丈夫?あこ。」

「クマ、すごいよ......?」

「う、うん!大丈夫大丈夫!」

 

 2人から見ても分かりやすいくらいヤバいんだ。

 でも、意外と大丈夫なんだよね。

 頭は思ったよりもスッキリしてる。

 

「__おはよう、3人とも。」

「!」

 

 2人と話してると、はっくんが歩いて来た。

 昨日までは真っ先に近づいてたのに、今はなんだか違う気がする。

 はっくんが嫌とかじゃなくて、そうしちゃいけないような。

 例えるなら、美術品に触っちゃいけないみたい感じだ。

 

「おはよう、はっくん。」

「あぁ。あこは元気がないな。」

 

 はっくんはいつも通りだ。

 でも、多分、あこのことは全部わかってる。

 何をしようとしてるのかも、何を感じてるのかも。

 

 だから、直接、ちゃんと言おう。

 

「はっくん。あこ、見つけるよ。はっくんへの本当の気持ち、一番大切な記憶を。」

「あぁ、そうか。(待っておるぞ、あこ。何十、何百、何千年であろうと。)」

「!(うん。でも、そんなに待たせないよ。)」

 

 早く、見つけないと。

 その先に何があるかは分からないけど、怖がってたら先に進めない。

 この記憶を思い出して、ちゃんとはっくんと向き合うんだ。

 

 

 

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