林間学校2日目から、まるで早送りみたいに時間が進んでいった。
正直、あんまり何をしたかって記憶は残ってない。
けど、一つ、確かなことはある。
この林間学校で、大切な記憶は見つけられなかった。
(やっぱり、ダメだったかぁ......)
分かってた。
あゆびの人生は短かったけど、密度は大きい。
だからこそ、そう簡単に記憶は見つからない。
何か、大きな力が必要になる。
「元気がないな。あこ。」
「はっくん......」
「まるで、道に迷ってるようだな。」
はっくんは、まるであこを見透かすようにそう言った。
この雰囲気......ちょっと、狐白っぽい。
確か、念話みたいなの出来たっけ?
(ねぇ、ちょっとだけ、2人で話せない?)
(ふむ。ならば、あこの魂を少しだけ借りるぞ。)
(うん。いいよ。)
(あぁ。これから行く世界にいるわしは、少し見慣れん姿をしておるが、あまり気にしないでくれ。)
はっくんはそう前置きすると、あこは急な眠気に襲われた。
目に映る景色がまどろんでいって、暗くなって、そのまま、あこの意識は落ちていった。
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「ん、んん......っ。」
目を覚ますと、そこは不思議な空間だった。
紫がかった雲みたいなものが果てしなく続いてて、あこはその上に立ってる。
いや、立ってるって感覚も薄い。
昔、お姉ちゃんと遊んでた、エアドームみたい。
「あれ?はっくんは......」
「待たせた。後ろを見るがよい。」
「え__っ!」
後ろを振り向くと、さっきまでなかった空間に、石段みたいなものが現れた。上には神社もある。
これ、はっくんが作ったの?
まるで、神様みたいだ。
「ここは、魂が形になる空間じゃ。ここでは、ありとあらゆる術が効力を失う。」
「って言う事は、はっくんの本当の姿が見れるの?」
「そう言う事になるのう。」
「じゃあ、見てみたい!」
あこはまだ、はっくんの本当の姿を見てない。
尻尾が生えてる姿は見たことがあるけど。
あれは多分、完全に本当の姿じゃないと思う。
ほんとに、なんとなくなんだけど。
「ふむ。ならば、こっちに来るといい。」
「うん!」
あこは頷いた後、石段を登り始めた。
これの感覚は現実とそこまで変わらないみたい。
「これってどのくらい長いの?」
「すぐに着く。あこが望めば。」
「そうなの?」
じゃあ、上る前に祈ったら石段なかったんじゃ......。
まぁ、いいや!
こういうのって雰囲気が大事だし。
「じゃあ、すぐに行きたい!__」
あこがそう言うと、周りの景色が一気にぼやけた。
霧がかかって、何も見えない状態が数秒続いた。
けど、それもすぐになくなって、霧が晴れていく。
すると......
「__わっ。」
目の前に、大きな神社が現れた。
家の近くにあるのよりも大分立派だ。
「はっくーん、どこにいるのー?」
「目の前におるぞ。よく目を凝らすのじゃ。」
「え?うーん......」
そう言われ、あこは目を細めた。
すると、ボヤみたいなものが現れて、それが形になっていく。
そして、一つの大きな何かになった。
「っ!!」
「この姿は、初めてじゃったのう。」
はっくんの本当の姿は、綺麗だった。
名前の通り、真っ白な狐。
毛並みはサラサラで、目は澄んだ水色で。
ただ座ってる姿でも、普通の人には出せない気品みたいなのを感じた。
「綺麗......」
「ははは、やはり、同じよのう。」
「え?」
はっくんは嬉しそうに笑いながら、そう言った。
どういうこと?
もしかして、あゆびも......
「あゆびも同じように言っておった。わしは自分の姿などは知らない故、よくは分からないが。」
「そうなんだ。」
はっくんの姿はすごく綺麗だ。
でも、それだけじゃない。
なんとなくだけど、すごく存在感がある。
前に感じた、大自然そのものみたいな。
やっぱり、はっくんはただの妖じゃない。
「して、話したいこととは?わしに答えられることなら、何でも聞くと良い。」
「あこは、大切な記憶のピースについて聞きたかったの。これを取り戻せば、あこのはっくんへの気持ちも、全部わかる。」
「そうか__」
「でも、今、分かった。」
「!」
多分だけど、あゆびの一番大切な記憶ははっくんだ。
正確には、本当の姿のはっくん。
この場所は術が全部無効になるらしいけど、なんとなく感じる。
いや、あこの魂が言ってる。これだって。
「ねぇ、はっくん。」
「どうした?」
「現実で、その姿になれる?」
「あぁ。」
「じゃあ、その姿で、あこと会って?」
「もちろんいいが......ふむ、答えは見つけたようじゃな。」
はっくんは安心したように微笑んでる。
人間とは違う姿なのに、ドキドキする。
姿は違っても、はっくんなんだ。
「それで、この記憶を取り戻せたら、ちゃんと決める。これからの、あことはっくんの関係について。」
「あぁ。あこがその目で見て、全てを決めると良い。」
「うん!でも、その前に......」
「どうした?」
「はっくんの尻尾、モフモフしていい?」
「ん?あぁ、構わんが.......」
「やったー!」
あこは飛び跳ねながら、はっくんの尻尾に近づいた。
そして、ますは手で触った。
「す、すごい。モフモフしてる~!」
「ふふ、そうか。」
「気持ちいー!」
(やはり、似ておるのう。あゆびよ。)
それからしばらく、あこははっくんの尻尾をモフモフして、そうしてるうちに意識が落ちていった。
その後、目を覚ましたのはバスが学校に着いた頃だった。