妖と恋する聖堕天使   作:火の車

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十九話

 林間学校2日目から、まるで早送りみたいに時間が進んでいった。

 正直、あんまり何をしたかって記憶は残ってない。

 けど、一つ、確かなことはある。

 この林間学校で、大切な記憶は見つけられなかった。

 

(やっぱり、ダメだったかぁ......)

 

 分かってた。

 あゆびの人生は短かったけど、密度は大きい。

 だからこそ、そう簡単に記憶は見つからない。

 何か、大きな力が必要になる。

 

「元気がないな。あこ。」

「はっくん......」

「まるで、道に迷ってるようだな。」

 

 はっくんは、まるであこを見透かすようにそう言った。

 この雰囲気......ちょっと、狐白っぽい。

 

 確か、念話みたいなの出来たっけ?

 

(ねぇ、ちょっとだけ、2人で話せない?)

(ふむ。ならば、あこの魂を少しだけ借りるぞ。)

(うん。いいよ。)

(あぁ。これから行く世界にいるわしは、少し見慣れん姿をしておるが、あまり気にしないでくれ。)

 

 はっくんはそう前置きすると、あこは急な眠気に襲われた。

 目に映る景色がまどろんでいって、暗くなって、そのまま、あこの意識は落ちていった。

__________________

 

「ん、んん......っ。」

 

 目を覚ますと、そこは不思議な空間だった。

 紫がかった雲みたいなものが果てしなく続いてて、あこはその上に立ってる。

 いや、立ってるって感覚も薄い。

 昔、お姉ちゃんと遊んでた、エアドームみたい。

 

「あれ?はっくんは......」

「待たせた。後ろを見るがよい。」

「え__っ!」

 

 後ろを振り向くと、さっきまでなかった空間に、石段みたいなものが現れた。上には神社もある。

 これ、はっくんが作ったの?

 まるで、神様みたいだ。

 

「ここは、魂が形になる空間じゃ。ここでは、ありとあらゆる術が効力を失う。」

「って言う事は、はっくんの本当の姿が見れるの?」

「そう言う事になるのう。」

「じゃあ、見てみたい!」

 

 あこはまだ、はっくんの本当の姿を見てない。

 尻尾が生えてる姿は見たことがあるけど。

 あれは多分、完全に本当の姿じゃないと思う。

 ほんとに、なんとなくなんだけど。

 

「ふむ。ならば、こっちに来るといい。」

「うん!」

 

 あこは頷いた後、石段を登り始めた。

 これの感覚は現実とそこまで変わらないみたい。

 

「これってどのくらい長いの?」

「すぐに着く。あこが望めば。」

「そうなの?」

 

 じゃあ、上る前に祈ったら石段なかったんじゃ......。

 まぁ、いいや!

 こういうのって雰囲気が大事だし。

 

「じゃあ、すぐに行きたい!__」

 

 あこがそう言うと、周りの景色が一気にぼやけた。

 霧がかかって、何も見えない状態が数秒続いた。

 

 けど、それもすぐになくなって、霧が晴れていく。

 すると......

 

「__わっ。」

 

 目の前に、大きな神社が現れた。

 家の近くにあるのよりも大分立派だ。

 

「はっくーん、どこにいるのー?」

「目の前におるぞ。よく目を凝らすのじゃ。」

「え?うーん......」

 

 そう言われ、あこは目を細めた。

 すると、ボヤみたいなものが現れて、それが形になっていく。

 そして、一つの大きな何かになった。

 

「っ!!」

「この姿は、初めてじゃったのう。」

 

 はっくんの本当の姿は、綺麗だった。

 名前の通り、真っ白な狐。

 毛並みはサラサラで、目は澄んだ水色で。

 ただ座ってる姿でも、普通の人には出せない気品みたいなのを感じた。

 

「綺麗......」

「ははは、やはり、同じよのう。」

「え?」

 

 はっくんは嬉しそうに笑いながら、そう言った。

 どういうこと?

 もしかして、あゆびも......

 

「あゆびも同じように言っておった。わしは自分の姿などは知らない故、よくは分からないが。」

「そうなんだ。」

 

 はっくんの姿はすごく綺麗だ。

 でも、それだけじゃない。

 なんとなくだけど、すごく存在感がある。

 前に感じた、大自然そのものみたいな。

 

 やっぱり、はっくんはただの妖じゃない。

 

「して、話したいこととは?わしに答えられることなら、何でも聞くと良い。」

「あこは、大切な記憶のピースについて聞きたかったの。これを取り戻せば、あこのはっくんへの気持ちも、全部わかる。」

「そうか__」

「でも、今、分かった。」

「!」

 

 多分だけど、あゆびの一番大切な記憶ははっくんだ。

 正確には、本当の姿のはっくん。

 この場所は術が全部無効になるらしいけど、なんとなく感じる。

 

 いや、あこの魂が言ってる。これだって。

 

「ねぇ、はっくん。」

「どうした?」

「現実で、その姿になれる?」

「あぁ。」

「じゃあ、その姿で、あこと会って?」

「もちろんいいが......ふむ、答えは見つけたようじゃな。」

 

 はっくんは安心したように微笑んでる。

 人間とは違う姿なのに、ドキドキする。

 姿は違っても、はっくんなんだ。

 

「それで、この記憶を取り戻せたら、ちゃんと決める。これからの、あことはっくんの関係について。」

「あぁ。あこがその目で見て、全てを決めると良い。」

「うん!でも、その前に......」

「どうした?」

「はっくんの尻尾、モフモフしていい?」

「ん?あぁ、構わんが.......」

「やったー!」

 

 あこは飛び跳ねながら、はっくんの尻尾に近づいた。

 そして、ますは手で触った。

 

「す、すごい。モフモフしてる~!」

「ふふ、そうか。」

「気持ちいー!」

(やはり、似ておるのう。あゆびよ。)

 

 それからしばらく、あこははっくんの尻尾をモフモフして、そうしてるうちに意識が落ちていった。

 

 その後、目を覚ましたのはバスが学校に着いた頃だった。

 

 

 

 

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