妖になりたい、そう思ったのは記憶が戻ってすぐだった。
あゆびの願いは愛した人とずっと一緒にいること。
けど、昔は身分が、今は種族が違う。
はっくんは多分、これから永遠に生きていくと思う。
そうなったら、また、一緒にいられない。
だから......。
「はっくんなら、出来るんじゃないかと思って。」
「......ふむ。」
はっくんは何かを考えこんでるように見える。
多分、あこが妖になることを、はっくんは渋ると思う。
あの記憶を見れば、妖になるのがどういうことか分かるから。
「妖になることは可能じゃ。じゃが、あまりおすすめはせんのう。妖は文字通り永遠の命。その時を生きていくのは、苦しいものとなる。」
「でも、2人なら大丈夫だよ。」
「!」
多分、1人で生きていくなら気が狂うと思う。
はっくんがこうしているのも、特別だからだと思う。
でも、2人なら......。
「一緒にいれば、大丈夫。あこが妖になって、ずっとはっくんといて。それに、ずっと2人きりとも限らないから。」
「......っ!」
あこははっくんを抱きしめた。
大きくて、人間とは少し感触が違う。
絹にでも触れてるような感じがする。
「はっくん......///」
「あこ......?」
「あこと、永遠に愛し合おう?///いつか出来るかもしれない、子ども達と、幸せに暮らそう......?///」
「......」
多分、今のあこは今までと少しだけ違う。
あゆびの意思とあこの意思が、混ざってるんだと思う。
だって......はっくんへの感情が、おかしくなってるから。
自分の身体も命も、はっくんにあげてしまいたい。
だから、気の狂いそうな永遠の時間位、どうってことないように感じる。
「......それも、悪くはないのかも知れぬ。」
「!」
「方法はある。あこが望むなら、いつでもよい。」
「今すぐでもいいよ。」
「......ふむ。ならば。」
「!」
はっくんが小さく呟くと、周りの景色が変わった。
いつもの結界だ。
さっきまで寝転んでたのに、いつの間にか座ってた。
「妖になる方法は色々あるが、そのほとんどは不完全なものとなる。例えば、地縛霊などのような者どもは元の姿とは程遠いものとなる。」
「だから、一度死んで妖になるのはダメってことだね。」
「その通り。完全な自我を持ちつつ、姿を保ったまま妖になるには。」
「妖の体の一部を取り込む。」
「ふむ。その通りじゃ。」
はっくんの記憶を見れば、すぐに分かった。
はっくんは土地神の心臓を取り込んで妖になった。
妖とはいえ、神様に近い存在だったから、はっくんは強くなった。
でも、多分......。
「何も、わしのように心臓を取り込む必要はない。妖の力を体内に入れることに意味がある。」
「つまり、どうするの?」
「わしの血を飲むのが、最も簡単だろう。」
「うん。そう、だよね。」
人間として、血を飲むことには抵抗がある......と言うことは特にない。
いや、他の人や妖なら嫌だけど。
はっくんのなら、むしろ嬉しいかな。
「心の準備は良いか?」
「うん。」
「では。」
はっくんはあこの方に人差し指を出して、次の瞬間、スパッと指先が切れた。
鮮血がポタポタと滴り落ちてる。
それを見てると、ドキドキする。
「じゃあ、飲むよ。」
「うむ。」
「......んっ。」
はっくんの指に口をつけると、鉄っぽい味がした。
血の味は人間と変わらないんだ。
「ぷはっ。これでいいの?」
「ふむ。すぐに始まるであろう。」
「え、始まる__っ!」
はっくんが話した瞬間、心臓がドクンと跳ね上がった。
次に、体中が熱を帯びていく。
まるで、人間の部分が燃えてなくなっていってるみたいに。
「今、妖の力に適応する肉体に変化しておる。」
「はぁ、はぁ......うん、そんな気、するよ。」
「大丈夫かのう?」
「大丈夫......苦しいって訳じゃないから......」
それから、どれくらいか分からないけど、体の熱は続いた。
別に、辛いわけでも痛いわけでもない。
ただ、もどかしい。
体の奥から焦れるような刺激が与えられてるような。
そんな感じがしただけだった。
「__お、治まった......」
「ふむ。流石にわしの血との相性はいいらしい。適応が思ったより早かったのう。」
(不思議な感じだ......)
何かが大きく変わったわけじゃない。
でも、力が湧いてくる感じがする。
ていうか、尻尾生えたりしないんだ。
「あこは人の形態のまま妖になれたようじゃ。」
「尻尾生えたりするかと思ったけど、そうでもないんだ。」
「まぁ、わしも土地神になったわけではなかったしのう。」
「確かに。」
そう言えばそうだった。
でも、あこってどういう妖になったんだろ?
はっくんは九尾の狐だけど。
「妖の肉体はその者の全盛期の姿に留まる。あこの場合、あと4,5年ほどは成長するじゃろう。」
「そうなんだぁ。」
「それと、これも大切な話なのじゃが。あこの体はまだ不安定じゃ。妖の力に慣れる必要がある。」
「えっと、慣れないとどうなるの?」
「間違えて妖術が出たり、人の姿が崩れる可能性が出てくる。」
「た、大変だね。」
つまり、今のあこは乾いてない粘土みたいなものなのかな。
形は出来てるけど、完全に完成はしてないみたいな。
でも、どうすればいいんだろう?
「どうやって慣れればいいの?」
「わしの妖力を流す。それだけじゃ。」
「え、それだけでいいの?」
なんか、意外だ。
もっと、修行とか必要だと思ったのに。
「さて、戻るとしよう。妖力に慣れるには落ち着かないといけないからのう。」
「!」
はっくんが指を振ると、周りが一気に暗くなった。
そして、あことはっくんはベッドに戻ってる。
「それで、なにをするの?」
「あこはいつも通りにいるといい。むしろ、いられるようになれば合格じゃ。」
「え__ひゃあ!///」
はっくんに抱きしめられると、お腹の奥に強い刺激を受けた。
痛みじゃない、むしろ......。
(気持ちいけど、変な感じが......///)
「今、わしの妖力を流した。これに慣れる必要がある。ゆっくり流していくぞ、あこ。」
「え、ちょ、ま__ひゃぁぁぁあ♡」
お腹の中に変な刺激が流れ込んでくる。
へ、変な声出ちゃうよぉ。
こ、これに慣れるって......
「は、はっくん、これ、ダメだよぉ♡へ、変な気分に......♡」
「大丈夫じゃ。直になれる。」
「ひっ♡__」
それから、30分くらいあこは妖力を流され続けた。
幸い、声は妖術で聞こえてないらしかったけど。
心なしか、はっくんの声が楽しそうに聞こえた。