妖と恋する聖堕天使   作:火の車

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七話

 息苦しさと暑さで、大量に汗が流れる。

 周りの景色は煙と蜃気楼でぼんやりとして、頭が変になりそう。

 そんな中に、あこはいる。

 

(か、火事だ......!)

 

 停止してた思考がやっと動き出した。

 そうだ、今は火事なんだ。

 

 そう思うと、今度は心臓が激しく動いた。恐怖だ。

 学校の避難訓練の時も、本当に火事になるなんて思わない。

 言っちゃえば、漫画の中の出来事が現実になった感覚だ。

 怖くないわけがない。

 

(あ、し、白石君!)

 

 そこで思い出した。

 今、あこは白石君と離れてる。

 それに、トイレって言ってたから、もしかしたら個室にいるかも。

 

「ど、どうしよう......。」

 

 白石君も火事には気づいてると思うけど、心配になる。

 もし、逃げ遅れたりしたら......。

 

 そう思うと、足が白石君が歩いて行った方に向いた。

 

「い、行かないとっ。」

 

 怖くて足がすくむ。

 けど、行かないといけない。

 もし、閉じ込められてたりして、それを後で知ったら......絶対、後悔する。

 

(行こう。行かないでお別れしたら、一生後悔する。)

 

 震える足を無理やり動かした。

 

 あこが白石君を連れてこないと。

 心の中でそう意気込んで、トイレの方に走り出した。

____________________

 

 少しずつ、煙が濃くなってる。

 火が燃え移るのが早いみたい。

 出来るだけ急がないと。

 

(ちょっと、やっばいかも......)

 

 もう周りがよく見えない。

 まだ数分しか経ってないのに。

 

 この火事、もしかして、すごい大きい?

 だとしたら、あこ......。

 

(いや!ダメだよ!ここで逃げたら、ダメだ!)

 

 ここに来るまで、白石君とはすれ違わなかった。

 まだ、逃げられてないんだ。

 あこがちゃんと連れてこないと。

 

「うわーん!!!」

「!」

 

 煙の中を歩いてると、どこかから大きな声が聞こえてきた。

 聞いた感じ、小さい子供だ。

 

 それを聞いて、あこの足は床に張り付いたように止まった。

 

「ママ―!!パパ―!!」

「だ、大丈夫!?」

「ふぇ.......?」

 

 気づいたら、そう声をかけてた。

 白石君を迎えに行かないといけないのに、体が勝手に動いた。

 

「パパも、ママも、いないの.......」

「そ、そっか。(はぐれちゃったんだ。向こうの方、すごい混雑してたし。)」

 

 ドクンって、心臓が跳ねた。

 

 目の前の子、多分、小学校低学年くらいかな。

 そんな子が目の前で震えてる。

 

「......っ。」

 

 あこは、白石君を迎えに来た。そんなのは分かってる。

 .......でも、でも......。

 

(.......この子、見捨てられない!)

 

 ほんとは、白石君を迎えに行きたい。

 けど、この子を一緒に連れていけない。

 

 ......ごめん、白石君。

 

「行こう。」

「え......?」

「外に、出よう。逃げないと、死んじゃうよ。」

 

 胸が痛い。

 けど、この子を一緒に死なせるわけにはいかない。

 だから、連れて行かないと。

 

「お姉ちゃん、泣いてるの......?」

「大丈夫、だからっ。行こ__」

 

(ガシャン!!!)

 

「!?」

 

 女の子の手を引いて、出口の方を向いた瞬間、大きな音が天井から聞こえた。

 

 その次の瞬間、天井が崩れて落ちて来た。

 それを見て、燃える炎の中にいるのに、寒気がした。

 

「ど、どうしよう。」

 

 呆然として、そんな言葉しか出ない。

 運が悪いとか、なんで今とか、色々思う。

 けど、それ以上に、死んじゃうっていう感情に体を支配された。

 

(だ、ダメだ......。)

 

 出入り口までの道は塞がれた。

 炎もどんどん大きくなってる。

 

(ど、どうしよう!このままじゃ逃げられない!まだ、大丈夫な道は__)

 

(ガシャン!)

 

「へ?」

 

 あこがパニックになってると、頭の上から、さっきと同じ音が聞こえた。

 上を見ると、天井がヒビ割れてるのが見えた。

 

「あっ__」

「わぷっ!」

 

 足がすくんで動かなかった。

 女の子も同じみたいで、逃げない。

 

 それを見て、あこは本能的に女の子を庇った。

 

(せめて、この子は......っ!)

 

 絶対に痛いし、やけどどころじゃない、焼け死ぬ。

 怖い怖い怖い怖い怖い。

 

(こういう事、最近あったなぁ......。)

 

 あの時も、木から落ちて、同じようなことを思ってた。

 痛いだろうなぁとか、怪我するだろうなぁとか、思ってた。

 

 そうだ、あの時は......白石君が助けてくれたんだ。

 

(ギギギギギ......!)

 

(......助けて、白石君......。)

 

 あこは一回、白石君を諦めた。

 子供のためとはいえ、見捨てたんだ。

 そんなあこが助けてなんて、言っちゃダメなのは分かってる。

 けど、そう思ってしまった......。

 

 そんなあこに罰を与えるように、あこの上の天井が壊れた。

 

(もう、ダメ......っ。)

 

 天井から瓦礫が落ちてくる。

 もう、目を瞑って耐えるしかない。

 

 そう思ってた、その時__

 

(シャン)

 

「__え......?」

 

 空気を切り裂けるくらい綺麗な、鈴の音が聞こえた。

 そして......

 

「瓦礫が......止まった......?」

『__運命とは何か。』

「!?」

 

 呆然としている中、どこかから、妙にスッと心に入ってくる声が聞こえた。

 まるで森とかの自然そのものが語り掛けてきたような、そんな声だ。

 

 あこはその声を主を探すために、辺りを見回した。

 

『運命とは、その清らかな心で、その勇ましき気概で、掴み取るものと言えよう。』

「だ、誰......?」

 

 シャンシャンって、鈴の音が鳴り響く。

 そして、それに反応するように、あこたちの周りから炎が消えていく。

 

 これは、何だろう?夢でも見てるのかな?

 そう思わないといけないくらい、今の状況は現実離れしてる。

 

「__愛しい青き魂よ。」

「!?(なに、これ......?)」

 

 あこが声の主にそう尋ねると、何もないところからナニカが現れた。

 それは大きくて、人間かもわからない。

 けど、なんでか心が安らぐ。まるで......。

 

「今は眠るがいい。」

「え、あ......?」

 

 ナニカが手をかざすと、急に眠気が襲ってきた。

 体に力が入らなくなって、グラッと倒れそうになる。

 

 そんな時に、あこはナニカに抱きかかえられた。

 

「白石、くん......?」

 

 その言葉を最後に、あこは意識を手放した。

 

 あのナニカは何だったんだろう?

 存在感がすごくて、でも、安心感があった。

 人間じゃないことは確かだけど、自分と全く違うとは思えない。

 

 そんなナニカの正体を、あこはまだ知る由もなかった。

 

 

 

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