妖と恋する聖堕天使   作:火の車

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八話

 優しい何かに包まれてる感じがする。

 今までにない不思議な体験のはずなのに、ワクワクも怖さも感じない。

 それどころか、すごく安心感がある。

 なんなんだろう、この感じ......。

 

(この感じ、どこかで......。)

 

 どこかなんて、全然覚えてない。

 けど、どこかで感じたことのある気がする。

 あれ、ほんとにいつだったかな......?

 

「__こ__」

 

(ん......なに......?)

 

「あこ!!!」

「__!?」

 

 どこかから聞こえた大声で、あこは目を覚ました。

 真っ白な天井と薄緑のカーテン、それに、独特の薬の匂い。

 その情報でここが病院ってことが分かった。

 

「起きたか!あこ!」

「わっ!お姉ちゃん!」

 

 目を開けると、いきなりお姉ちゃんに抱きしめられた。

 力が強いから、少しだけ苦しい。

 

「く、苦しいよ、お姉ちゃん。」

「あ、あぁ、悪い悪い!」

 

 あこがそういうと、お姉ちゃんはバッと離れた。

 まぁ、苦しかったけど心配してくれてるのは分かったし、いいや。

 って、あ!

 

「し、白石君は!?」

「いきなりどうした!?」

「あこと一緒にいた男の子!あの建物に__」

「__あぁ、起きたのか、宇田川。」

「!」

 

 あこが叫んでると、病室のドアが開いて、優しい声が聞こえてきた。

 よかった、無事だったんだ......!

 もしものことがあったらどうしようと思ってた......。

 

「し、白石君!無事だった__っ!?」

「あぁ、なんとかな。」

「そ、それ......」

 

 白石君の手に、包帯が巻かれてる。

 あれは、まさか.......。

 

「これか?ちょっとした怪我だ。心配するな。」

「で、でも、それ.......」

「火傷か?それ。」

 

 あこが上手く話せないでいると、お姉ちゃんがそう言った。

 それを聞いても、白石君はいつも通りの無表情。

 本当に何もないみたいにしてる。

 

「違いますよ。」

「え......?」

「火傷はしてません。上手く炎からは逃れましたから。」

(よ、よかった......。)

 

 取り合えず、安心した。

 あこも白石君も大きな火傷がなくて。

 でも、それなら、あの包帯はなんだろう......?

 怪我であることには変わりなさそうだけど。

 

「これは個人的なものです。色々と事情がありましてね......。そんなことより......。」

「!」

 

 白石君はベッドの横まで歩いてきて、少し屈んだ。

 今日は、いつもに比べて表情豊かな気がする。

 こんなにずっと笑ってること、中々ないもん。

 

「......うん。大丈夫みたいだな。よかった。」

「!?///」

 

 そう言って、白石君はあこの頭を撫でた。

 え、こんなことあるの?

 手つきすごく優しくて、すごく安心する。

 

「無事でよかった。また、学校で会おう。」

「う、うん!///」

「じゃあ、今日のところはお暇するよ。ちゃんと休んでくれ。」

「わかった......///」

 

 あこが頷くと、白石君は満足気な顔をした。

 その後に、お姉ちゃんに軽く頭を下げて、部屋から得ていった。

 

(白石君、優しくて、かっこいい......///)

(あぁ、あこはあいつが好きなんだなぁ......。にしても、あの包帯、なんだったんだ?)

 

 白石君が帰ってからしばらく、あこは顔が真っ赤なままだった。

 それで看護師さんにすごく心配されて、お医者さん呼ばれそうになったけど、それは何とか止めた。

 そんな様子をお姉ちゃんは生暖かい目で見てるだけだった。

__________________

 

 “??”

 

「良い。最高だ、宇田川あこ。」

 

 何年待っただろうか、この時を。

 あの命が生まれ落ちてから十数年、ずっと見守ってきた。

 待っていたんだ。あの魂が実るのを。何年も何年も。

 

 そして、その時は着々と近づいてきてる。

 

(やはり、美しい魂だ。)

 

 あの炎の中で、自分以外を守ろうとする心。

 普段の行動から見えてくる優しさ。

 いざと言うときに自身を盾にする勇気。

 

 やはり、宇田川あこの魂はこの世で最も美しい。

 

(もう時期に来る。宇田川あこが俺のもとに。)

 

 こちらから動くことはない。

 運命が宇田川あこを導いてくる。

 本人の意思に関係なく。

 

(.....今度こそ。)

 

 体に力が入るのを感じる。

 何十年ぶりだろう、この高ぶりは。

 

 いや、まだ落ち着いていないといけないな。

 いずれ出会う運命なのだ。待とうじゃないか。

 運命が、導いてくるまで。

 

 そして、もし、宇田川あこがここに辿り着いた時。

 その時は、今度こそ、幸せにしてみせよう。

 

 

 

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