モンスターなハンターにとって、異世界はアヴァロンです! 作:朝三郎
初めまして、俺の名前は聖龍院 アムロという。
キラキラネームと言いたい者もいるだろうが、この世界ではあまり目立った名前ではない。
まあ、聖龍院は厨二病が発症した頃にゲームのキャラにつけてた名前で、アムロは今の俺にピッタリだと思ったから名乗っているのだ。
まあ、これを見ているということは、この小説のタイトルを見て読んでいると思って説明させてもらおう。
ある日、仕事の残業でクタクタになって帰って来た俺は、ふと漫画が置かれてある棚の上に中学の頃に友達と一緒にやっていた某ハンティングゲームのソフトが入れっぱなしになっているDSを発見してしまった。
懐かしさに駆られてゲームの電源を入れると、視界が真っ白に覆われてしまい、気がついたら、知らない街の真ん中でそのゲームの世界の中にゲームキャラになって立っていたのだ。
最初は夢か幻のどちらかだろうと思ったのだが、人に話しかけられ、飯を食べて、空に浮かぶ太陽を直視してようやく現実を受け止められた。
「いや、ここモンハンの世界やんけぇぇぇ!!!」
真昼間の人通りのある往来の中でたまらず叫んだのだ、周りの人達がみんなこっちを見ている。
流石に我に返った俺は急いでその場から走り去っていった。
馬鹿か俺は!? あんな人通りの多い場所で叫ぶとか! いくらゲームの中の世界に気づいたら立っていたとはいえ、あまりにも愚行だろ!
もしこの場に利根川先生がいたら罵倒と落胆の嵐だぞ!!
例えば──―
『たとえどのような事態に遭おうとも、節度と常識を持つのが大人というものだ!!』
と、こんな感じに怒られるだろう。
そう心の中で恥ずかしさの余りに無我夢中で喚いていたから気づかなかったが、その時の俺は今までに出した事のない速度で走っていたのだ。これは後から気が付いたことなのだが、どうやらこの肉体は完全にネットなので有名なモンスターなハンターさんのものだからか、人間離れした速度で走ったり、物を振り回すことができるようだ。
それから、何故か知っていた自分のマイホームに辿り着き、そのままの勢いで頭からベッドにダイブした。
暫く、ベットの上でジタバタと己のしでかした黒歴史確定の行為に悶えていると、ようやく立ち直った俺は冷静にこの事態の把握を行う。
「一体何が起きてんだよ……。でもアプトノスとかいたし、見覚えのある装備を着た人間と何人かすれ違ったし、何故かは分かんないけどハンターとして活動していた記憶もあるし、本当に意味が分かんねぇ……」
そうなのだ、俺には何故かハンターとしてモンスターと戦っていた記憶がある。
それが偽物ではないという確かなまでに強く強烈で鮮明な記憶が頭の中にあったのだ。
ふと、ベッドから起き上がって部屋の中に設置されているボックスの中を覗いて見ると、そこには俺がゲームしていた頃に集めていた装備やアイテムが所狭しと並べられていた。
「おっ、懐かしいなこれは。みんなとこれ作る為に周回しまくったんだよな」
思い出すのは中学の頃にファミレスで友達4人と駄弁りながらモンハンをしていた記憶だった。
あの頃はこんな日々が毎日続くと思い込んでいたが、年は経つもので俺も今や立派な社会人だ。
あの頃の友達とは今や連絡なんてしておらず、今じゃ何をしているのだろうか?
そんな風に昔を懐かしみながらボックス内を漁っていると、背後からこっちに近づいて来る者の気配を感じてとっさに後ろを振り向いた。
「誰だ!?」
「ウニャッ!?」
そこにいたのは二足歩行した猫? 否、ゲーム時代に飽きるほど見てきた我が相棒であるアイルーだった。
「どうしたニャご主人? 帰ってくるなりベットにダイブしたりボックスを開いてぶつぶつ独り言を漏らして」
「い、いや……」
「まさか、ついにモンスターと戦いすぎて心の病を発症しちゃったのかニャ!?」
「いや、待て! それは誤解だ!!」
思わずツッコんだが、アイルーは「大変だニャー! 急いでお医者様を呼ばニャいとー!!」と騒いで部屋中を走り回る。
「落ち着けシャム!」
「ブニャッ!?」
仕方なしに部屋中を走り回るアイルーまたの名をシャム(俺が名付けた)の顔を両手で挟んで持ち上げて落ち着かせる。
「俺は大丈夫だ。問題はない」
「ご主人……それは問題のある人のセリフニャ! やっぱり、早く病院へ行った方がいいニャ!」
駄目だ。こいつの中では既に俺は(頭の)重病患者扱いになっているようだ。これ以上こいつと話し合ってもラチがあかないと思った俺は、アイテムボックス内にあったあるアイテムを使ってみることにした。
「ほれほれ」
「ふにゃ~、マタタビにゃ~♪」
アイルーの好物であるマタタビを吸わせると、目をトロンとさせて千鳥足になりながらマタタビと戯れるシャムの完成である。
「ふ~、後でこいつが正気に戻ってからまた話をするか」
それにしても、このアイテムボックスの中身といい、オトモアイルーの容姿といい、ここは完全に俺がプレイして遊んでいたゲームの世界のようだ。
今時のMMORPGのキャラになって異世界転生みたいなパターンだと思えばいいのだろうか?
とりあえず、俺は今後どうするのかを考えなくてはいけない。今の状況を考えるに、俺は自分が育てたキャラに憑依したような形で、この肉体が過去に何をしたのかも鮮明に思い出せることから、差し当たり何か急いでしなくてはいけない──―そう緊急クエストといったものは受けていないようだ。
こう言ってはなんだが、俺は運動や喧嘩などはあまり向いていない。このゲームをやり込んだということから分かるように、俺は陰キャのオタクだ。
コントローラーで動かせるゲームならまだしも、実際に痛みなどがある現実では俺なんかは到底活躍出来ないだろう。
とはいえ、今の俺は高ランクハンターで、厄介事……つまるところ、古龍なんかが出現した際は真っ先に討伐に駆り出される人物なのだ。
ここはゲームと違い現実ゆえに、そうそう古龍なんて危険生物は出現しないが、俺の記憶の中には古龍たちと闘った記憶があり、そのどれもが一歩間違えれば死んでても可笑しくない死闘だった。
それを今後はこの俺がやれと? はっはっはっは! ムリダカラ……。
いやいやいや、絶対に出来る訳ないじゃん! ハンターの体だから出来るでしょっと考えたそこのお前ら!!!
みんなにも経験ないか、高い所から落ちて運よく着地に成功しただとか、スポーツをしている最中に無意識か偶然か普段では出来ないような動きが出来ただとか。
思い返してもよく自分があんな真似できたな~って他人事のように感じる奇跡的な動きをした経験があるだろ?
それを、1回出来たんならもう一度くらいできるだろ? って言われるのと同じなんだよ。
前の体の持ち主ならあんな崖から命綱無しバンジーすることができたり、モンスターの攻撃をアクションスターみたいに避けたり出来てたけど、俺には無理だから!!!
そうやって自問自答を繰り返すこと数分、ようやく精神が落ち着いた……というよりも、諦めの境地にたどり着いたというべきか、その頃にはマタタビの効果も薄れて正気に戻ったシャムが騒ぎ立てているが、もうどうでもよくなって撫でまわしてご機嫌取りするとこっちも落ち着いてリラックスできた。
「あんま考え過ぎてもしょうがないし、取り敢えずギルドに行って下位のドスジャギィのクエストでも受けるか」
「うにゃー」
うだうだと悩んでも現実はそう簡単に変わらないし、とりあえず緊急クエストが発令される前に適当なクエストを受注して体を慣らしていった方がいいだろう。
亀更新なので次話がいつ完成するか分かりません。